会員通信:NPO法人伝統医学教育会事業活動報告書(2022年度)

1、講習会

2022年度の講習会は、4月から12月にかけて「飲食薬膳療法の基礎と応用」講習を行い、4月から11月にかけて前年度実施した「常見病証の針灸治療実技」のⅡ期講習を行いました。

「中医飲食薬膳療法」はテーマが非常に大きくて講習内容がとても広範囲ではありますが、これまでに二度ほど講習を行いました。昨年は10年ぶりの講習に備え、テキストを修正したほか、疫病蔓延の時期における健康増進のため新たな解説方法を加え、これまでと同様に理論と実用の知識に重点を置いて講習しました。最後に薬膳一品の作成実演と試食、薬酒の試飲も行いました。

一方、「常見病証の針灸治療実技」講習は前年度から開催していましたが、今年はⅡ期として継続し、計4名が参加されました。今回も伝統医学教育の実用性に重点を置き、針灸臨床に常見される6病証を新たに取り上げ、その基本概念、病因病機、そして辨証分型を明確にしたうえ、治療原則と選穴処方を解説し、具体的な刺針実技を指導しながら、技能練習を行いました。参加者の皆さんは実技も積極的に練習し臨床での即戦力が高まったようです。

 

2、健康支援

教育事業活動のほか、会員の健康支援活動も引き続き行っています。伝統医学教育会ホームページの会員専用ページにて健康知識を定期的に更新していますので、皆様の健康増進の参考にして頂きたいです。

また、長くご支援下さった会員の皆様に感謝の気持ちを込めて、健康支援のために伝統医学的な薬茶をお送りしました。今回は主に新型コロナウイルス感染の急増状態、及び盛夏の暑熱湿聚の特徴に従って5種類の薬茶を考案して処方と見本を送付しました。会員の皆様にお送りした薬茶の主要材料は比較的容易に入手できる身近なものを使って作成しましたが、作成方法は教育会の会員専用ページに公開しています。

 

健康知識:葱姜蒜による春季の疫病予防

春が近付くと自然界は陽気昇発という特徴になり、万物生成の光景が現れている。同時に春は風を主り、風を特徴とする病証が流行り易い。そこで、今の季節には新型コロナウイルス感染症に加え、様々な感染症が多発している。感染症の予防には感染源遮断と免疫力増強が重要な方針である。マスク着装・対人距離保持・随時の手洗いなどは感染源遮断のため効果的な方法であるが、人体生命力の一面である免疫力は医療気功、針灸推拿、薬剤薬膳など東洋的な医療方法により強化できる。

古来、伝統医学では薬食同源を提唱して食物の特性を以て疾病の予防と治療に用いている。これによって陰陽のバランスを取り戻して生体の免疫力を高める。「厨房三宝」と呼ばれる長葱・生姜・大蒜は薬食両用の重要な食材である。辛熱発散の薬性を持っているため、春の特徴と共通し、人体の陽気を助長して風寒湿の邪気を取り除き、疫病の予防効果を果たす。《傷寒論》、《千金方》、《本草綱目》など薬物経典に収録してある疫病の予防治療の食療処方に長葱・生姜・大蒜を含むものが数多くあり、また熱く炒って臍や合谷などの経穴に付けて熱罨法を行う外治療法をも記載している。

ここでは長葱・生姜・大蒜の薬性効果と応用方法について紹介する。疫病蔓延の時期に当たって多めに食用することにより、予防治療の作用を果たして欲しい。

1、長葱

葱は辛味・温性で、肺・胃に帰経し、発汗解表・通達陽気・殺虫解毒の薬効を持つ。風寒感冒の良薬であり、医聖張仲景はその通陽作用を熟用して君薬(処方の主薬)として推奨し、《本草綱目》には「生辛散,熟甘温,外実中空,肺之菜也,肺病宜食之。」と記載している。

長葱には発揮油が含まれ、その成分はアリシンAllicinで、強い殺菌作用がある。調理上、長く茹で過ぎたり煮過ぎたりすべきではない

[応用]葱白粥。

[作り方]お米50g、長葱の白い根、砂糖適量。先ずお米を煮込み、柔らかくなりそうな時に葱白を段冊切りして入れ、一度沸騰してから、砂糖で調味して温かく飲む。1日に1回。

[効能]解表散寒、和胃補中。主に風寒感冒に適応する。

また、咳嗽咽喉疼痛を伴う場合は、長葱を丸ごとフライパンで柔らかくなるまで炒るかグリルで焼いてガーゼやハンカチに巻いて喉に巻き付けることも効果的である。

2、生姜

姜は辛味・温性で、脾・胃・肺に帰経し、発散風寒・発汗解表・活血除湿・化痰止咳・温中止嘔・解毒などの薬効を持つ。これによって血液循環を促進し、毛穴を広げて汗を排出させ体内の余分の熱や邪気を払い出し、また人体の新陳代謝を速めるほか、血栓の形成を予防する。

[応用]生姜紅棗水

[作り方]生姜5スライス、棗5個、黒砂糖適量。たっぷりのお水を入れたお鍋に生姜と棗を入れて強火で沸かしてから、弱火に変えて15分間ほど煮込む。黒砂糖で調味して飲用する。

[加減]好みによって黒砂糖を食塩に変えても良い。寒性体質の場合は生姜を増量する;薄い鼻水、鼻詰まりの場合は長葱の白い根を4~5個加え、根の鬚が更に良い;熱性体質で逆上せ易い場合は生姜を減量し、杭白菊を数個加える。

3、大蒜

大蒜は辛味・温性で、脾・胃・肺・大腸に帰経し、温中健胃・消食止痢・解毒殺虫・理気止咳・抗癌消瘤・宣竅通閉・健脳益知・老衰遅延などの薬効を持つ。「天然の広域スペクトル抗生物質」と呼ばれるように、インフルエンザウイルスや寄生虫などに対して優れている抑制や殺傷の作用を果たす。

大蒜にはアリシンAllicinが含有され、広範の抗菌・殺菌・抗原虫の作用を持っているが、有効成分は加熱すると失ってしまうため、生で食用するのが適宜である。

[応用1]大蒜水

[作り方]生の大蒜を数欠片スライスに切るか潰し、朝昼晩に分けて温湯に浸して飲用する。或いは醤油、お酢、胡麻油で食用する。

[応用2]大蒜泥吸入

[作り方]生の大蒜を泥状に磨り潰し、匙一杯を口に入れ、深呼吸を行う。1回15分間繰り返して1日に3回行う。鼻水、痰、涙などが出る場合は直ぐに鼻をかんだり、痰を出したりして呼吸を続ける。

[効能]清肺健脾、抗ウイルス。

 

健康知識:冬季における感冒咳嗽の食療方法

冬の季節は、感冒(風邪)に罹り易くなり、悪寒発熱や鼻水頭痛などの症状が伴うほか、咳が多く見られる。しかも諸症状が治まっても咳だけが中々治らず、飲食や睡眠など日常生活に支障を来たし、更に慢性化すると咽喉炎や気管支拡張なども起こし易い。

中医学の飲食薬膳療法を活用することで、早急に咳の症状を改善させることができる。具体的に応用する際には、感冒の臨床辨証を行う必要があり、これにより咳嗽の治効を高める。

中医学的に、感冒は外界の邪気を感受して発病する外感病(外感表証)に属する。感冒による咳嗽は主に風寒か風熱の邪気から起こされるが、ほかに風燥によるものもある。臨床では、主に寒熱の辨証に従って相応しい薬膳献立を選択して対応することができる。

1、風寒咳嗽:咳の音は重く濁る、咽喉が痒い、喀痰が薄くて白い、また悪寒発熱、無汗、頭痛、全身痠痛、嚏、鼻詰まり、薄い鼻水など風寒束表の症状を伴う。

寒性咳嗽の場合は、大根葱白生姜湯を勧める。宣肺解表・止咳化痰・理気消食の作用を以て風寒咳嗽に多く用いられる。作り方は、大根と長葱の白い部分と生姜をそれぞれ15g薄切りにしておき、先ず大根をお椀3杯ほどの水に入れて柔らかくなるまで煮て、葱と生姜を加えて再度沸騰させ、汁を飲んで具も食する。

また、大根のスライスを紫蘇の実(或いは棗)と蜜柑の皮と一緒に煮て黒糖を加えて温かく飲む事も風寒疏散・宣肺止咳・消食化痰の効果を果たす。

ほかに、風寒感冒で悪寒無汗、全身痠痛などで苦しい場合は、生姜と黒糖の煮汁を大量に飲用して発汗することで対策するが、駆寒暖胃の効能に加えて潤肺止咳の効果も強化するため、生姜黒糖大蒜の煮汁をお勧めする。人体の免疫力強化に繋がって風寒感冒の予防策としても用いられる。作り方は、大蒜を15gスライスして10~15分ほど放置し、生姜も15gスライスし、お椀1杯ほどの水に入れて煮立てて大蒜のスライスと黒糖を加え、再度沸騰したら弱火にして10分間煮込む。

2、肺熱咳嗽:咳、咽喉が乾いて腫れて痛い、喀痰が黄色く粘っこい、また発熱頭痛、汗出悪風、黄色い鼻水などの風熱襲肺の症状、或いは空咳で痰が少なくて吐き出し難い、咳が甚だしい時に血痰、胸痛など燥熱傷肺の症状を伴う。

熱性咳嗽の場合は、オレンジの塩蒸しをお勧めする。オレンジの実には理気化痰・潤肺止咳の効能があるが、オレンジの皮にも化痰止咳の重要な成分のノスカピンと橙皮油が含まれ、皮つきで蒸してはじめて有効成分が取り出される。作り方は、食塩でオレンジの外皮を綺麗に洗い、オレンジの上端を水平に切って蓋として残しておく。オレンジを茶碗に入れ、お箸でオレンジの果肉に数個の穴を刺し、適量の食塩を塗してから切り落とした蓋を閉める。鍋に入れて10分間ほど蒸し煮し、オレンジの果肉を取り出して汁と一緒に温かく飲む。通常一日に一個を食す。

老年性慢性気管支炎による咳嗽で痰が多い場合は、大根蜂蜜水をお勧めする。大根には生津止咳・理気化痰の効能があり、蜂蜜には潤肺止咳・潤腸通便・潤膚美顔の効能がある。作り方は、大根を綺麗に洗って千切りするか小さい塊に切り、適量の蜂蜜を掛けて均等に混ぜ、水も油もない容器に2時間ほど放置すると汁が染み出る。汁を飲んで大根も食す。

肺燥による空咳が長らく止らない場合は、鶏卵の胡麻油炒めをお勧めする。胡麻油は通気理肺の効能を持って咳嗽を軽減させるほか、様々な異物による肺臓への損傷を軽減させ、鶏卵は補肺養血・清熱解毒・潤利咽喉の効能を持っている。作り方は、胡麻油を鍋に入れて熱し、生姜の微塵切りを少々加えて香りが出たら、溶いた鶏卵を入れて熱が通るまで炒め、調味料は入れない。

健康知識:冬至に冬季養生を再び語る

二十四節気の冬至が到来し、これから本格的な厳冬時期を迎える。今年は陰陽消長の変化が激しく、夏は余りにも酷暑であったため、冬は例年より酷寒になりそうで、冬季の養生についてもっと意識を強化する必要がある。

* 2020年送付した《中国伝統医学 健康養生知識》の112頁における「冬季における補腎養生(2014年12日公開)」も参照できる。

陰盛陽衰の冬季では冬至が一年中の陰陽転化の転換点であり、自然界の陰気が極めて盛んになると同時に陽気が生み始める。この陰陽変化に従い、生体も陽気が生み始めて弱いため、外界の寒邪に損なわれ易い。そのため、健康養生のため陽気の封蔵と養護はこの時期、最も重要な原則とされている。また中医学では、腎気は冬気に繋がっており、冬季は腎陽腎気を大切に補う時期でもある。

この養生原則の下で、具体的な方法を紹介する。

1、保暖避寒・少動多蔵:陽気は最も陰寒に傷められ易いため、常に暖めなければならない。普段の服装や室温でも充分に保温に気を付け、また身体に持病のある方や体調不良の場合にホカロンなども活用して良い。また封蔵を特徴とする季節なので、陽気の損耗や漏洩などを避けて活動運動も少なめにし、特に激しい運動を控える。最もお勧めするのは八段錦や太極拳など優しい動きの医療気功である。

2、早寝遅起・必待日光:この時期ではある程度の「懶惰」が必要である。日が未だ短いため、早く寝て遅く起き、日が出てから動き出して陽気の消耗を避ける。また自然界の陽気を以て生体の陽気を補充する方法として、背中に日を浴びるか、晴天の夕方に日差しで温まった椅子やベンチに座るなどがある。

3、艾灸腧穴・袪寒壮陽:艾を燃やして身体の腧穴に据えて温まる艾灸法はこの時期に最適である。艾灸法には温陽益気・袪散寒湿の効能があり、陽気を温めて補うことで抵抗力・免疫力・修復力など人体生命力を高めるほか、寒湿邪気や疫病邪気を追い払う作用を以て、この疫病蔓延の冬季に一石二鳥の効果が期待できる。実際、中国の大学病院では新型コロナウイルス肺炎の治療に対して、温灸の応用で確実な効果が臨床治験に実証され、現在艾灸も防疫物資の一種に数えられている。

4、飲食調養・加食牛羊:飲食薬膳療法は健康養生の重要な手段とされている。秋の収穫に恵まれ、冬は補うための充実した季節だと言える。食べる事で一番身体を補養でき、翌年春夏の生長に堅実な土台を築く。また腎陽が生体の元陽となり、冬季は補腎に相応しい。腎陽を補うため、羊肉、牛肉、海老、韮、山芋などが多く用いられる。

ほかに、基礎保健気功には、「鳴天鼓」(手掌で外耳道開口を覆い、示指で後頭部を軽く叩く)を行ったり、臍下丹田を揉んだり、耳介・腰・足裏を擦ったりすることも補腎の役割を果たして冬季養生の一環として重要である。

健康知識:重曹の薬用効果

重曹は重炭酸曹達(ソーダ)の略称で、重炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムとも呼ばれる白い粉末であり、生活用品や食品、医療、農業、工業、土木など、様々な分野で活用され、重要な役割を果たしている。

重曹は天然の原料を使用して精製されている。現在、製法は原料から大きく二つに分け、岩塩を水に溶かして電気分解するか、重曹成分を含有する鉱石などを水に溶かし、炭酸ガスを添加して結晶化する方法である。

重曹は日常生活において料理や清掃など幅広く応用価値があるが、薬用効果を以て下記の活用もできる。

1、リウマチ関節痛の緩解

重曹を膏薬状(糊状)に調合し、関節疼痛の局部に塗り付け、自然に乾燥してから綺麗に洗い落とす。

またタオルに重曹の溶液を浸けて患部に熱布することができる。

2、痛風の予防治療

300~400gの重曹をお湯で希釈し、タオルで巻いた脚(患部)にかけて20分間ほど温める。お湯の温度は熱過ぎないように注意しよう。一日に二回行い、慢性痛風の場合は更に多く行うことをお薦め。

3、身体疲労の解消

適量の重曹と食塩を浴槽のお湯に入れて30分間ほど入浴すると、鎮静作用を果たし、また筋緊張を緩和させ、同時に皮膚のタコ消除できる。

因みに、長期の家事などで両手の皮膚が粗くなる場合があるが、重曹とココナツオイルでスクラブを作って両手で擦ることで、手の皮膚がきめ細かく柔らかくなる。

重曹の安全性について、元々生体の中にもあるし、天然成分なので、身体に大きな危害は無いと考えられる。しかし弱アルカリ性(pH約8.2~8.6)のため、肌に長時間付着したり、目に入ったりすると沁みる刺激性がある。また重曹には薬用、食品用、工業用、飼料用など様々な種類があり、服用の際は塩化物基準や純度、衛生面などを考慮して薬用か、食品用の物を使用し、1日目安は概ね3gくらいにした方がよい。長期間の服用は身体の健康に適せず、口腔異臭や食欲不振などが現れ、更に筋肉痛、引き攣り、持続性頭痛などが見られる。

健康知識:林檎の薬用効果を高める食用方法

秋の深まりに伴い、気候が乾燥して来ている。炎熱の夏季とは異なり、寒冷時期は飲料水などが体内で気化され難いため、身体を潤わせるために果物は最も相応しいと言える。寒い季節の果物と言えば、蜜柑と並び、林檎のイメージが強い。

林檎は人類が食する最古の果物とされ、約八千年前から栽培されていたと見られる。欧米では「一日一個の林檎は医者を遠ざける」と言われるように、栄養価が高くて食べ易いため、世界中に好まれている。

中医学的には、林檎は甘・酸・涼の性味で、肺・脾・胃・心に帰経する。開胃生津・止渇除煩・潤肺養膚・酒毒解消などの効能を持ち、脾胃虚弱、消化不良、食少、食後腹脹、便秘、泄瀉(慢性結腸炎);気喘(気管支喘息)、津液不足、煩熱口渇、飲酒過度などに用いられる。現代研究によると、林檎にはリンゴ酸やクエン酸など疲労回復を促進する有機酸、整腸排毒とコレステロール吸収抑制の効果を持つ水溶性食物繊維のペクチン、更に脂肪低減や抗酸化・老化防止効果の期待できるポリフェノールが豊富であり、また効果的にコレステロール・血糖・血脂を降下させ、美容養顔・減肥瘦身も注目されている。

これらの薬用効果を最大限に発揮させるため、食用方法が重要である。通常、林檎は生食されるほか、加工してジュース、酒、ジャム、菓子などにも広く利用されている。実際、生食より煮る方法が最も栄養素を吸収し易く、また加熱した林檎は様々な病症の改善に役立つ。

① 酸化防止:加熱した林檎に含まれるポリフェノール類の天然抗酸化物質が大幅に増加し、血脂降下・血糖降下の効能を持つほか、抗菌消炎・フリーラジカルを抑制する抗酸化の作用があり、老化防止に繋がる。

② 血圧降下:加熱した林檎はカリウム塩に富み、人体に摂取後ナトリウム塩に置き換えられて体外に排出させ、血圧降下の効能を持ち、心血管疾患の保護に繋がる。

③ 泄瀉治療:加熱した林檎に含まれるペクチンとタンニン酸などは共に収斂止瀉の効能を果たし、同時に腸内有益細菌叢の生長を刺激して腸管炎症を解消する。

④ 胃腸保護:林檎を多食すると腹脹や下痢を起こし易い。煮てから食すると、胃腸への刺激を軽減させ、胃腸機能が低下する方、身体が虚弱する方、そして冷え性の方に対しては胃腸への一種の保護とし、同時に林檎の栄養素の吸収促進にも有益である。

⑤ 内熱解消:気候が乾燥する時に、身体も乾燥して逆上せ易い内熱症状が現れ易い。この場合は林檎を皮付きで細かく切ってお水で煮て食すると、口唇の熱瘡、歯肉炎症、舌炎など内熱症状の予防治療に効果的である。

また水腫患者は利尿薬物による治療後、林檎の食用でカリウムの補充ができるし、またナトリウムの含量が少ないため水腫の増悪にもならない。

なお、食物繊維は主に皮にあるので、一般に皮ごと食するのをお勧めする。

ここでは、冬季における林檎を用いた止咳処方「枸杞林檎水」を紹介する。

[材料]林檎1個、枸杞の実15g、氷砂糖30g。

[方法]林檎の皮と種を除いてスライスに切り、お椀3杯ほどのお水を加えて弱火で2~3分間煮る;沸かしたら枸杞の実を入れて更に弱火で5分間ほど煮る;林檎が半透明の状態まで煮て氷砂糖を加えて更に2~3分間煮て火を止める。

冬季の最も効果的な止咳処方として健康維持のために活用しよう。

健康知識:健康増進と免疫強化について

新型コロナウイルス感染が三年ほど延び、疫病情勢が緩和したり、また緊張したりし、収束の目途が中々見えない。ワクチン接種は元々重症化防止のためで、直接感染予防に役立たないし、ワクチン自身の生体に起こした免疫反応の安全性が未だに確認されていない。明確な効果を持つ特効治療薬の無い現段階では、感染されない、或いは感染されても発症せずに済むことは非常に重要で、それは恐らく自力に頼るしかない。そのため、健康増進に関連して免疫強化の話題も注目されてきた。

日常生活で何を食べれば免疫力が高められるのか?患者さんや学生さんに多く質問されるが、回答として、日常生活で免疫力を高める食物は無い。確かに普段、何らかのキノコ類の食べ物や菌類の飲み物の商品には免疫力アップや免疫力ケアの効果があると宣伝されているが、実際あくまでも人体の免疫力に関わる栄養物質を増やす効果に限られ、正確な意味では直接免疫力強化の効能とは言えない。

そもそも免疫とは病疫から免れることを指す。現代医学における免疫力は、人体が本来備える生理機能として、外界または体内の病邪(疾病を起こす素因)に対する自己防御機能である。具体的に血液中の白血球がこれを担っており、小食細胞と呼ばれる好中球(顆粒球)、大食細胞と呼ばれるマクロファージ(単球)、特定の抗体を作って病原体の侵襲を抵抗するB細胞(リンパ球)、病原体に感染された細胞を攻撃してその繁殖を抑えるT細胞(リンパ球)、そして主に癌細胞を見付け出して攻撃するNK細胞など、五つの免疫細胞が常に働いている。

こう見ると、日頃より何かの飲食物を多く摂取するだけで簡単にこれらの免疫細胞を増やしたり、活性化させたりすることは先ず無理であろう。また免疫力は増強され難いだけでなく、逆に減弱され易い。精神的なストレス、体力低下、栄養失調、睡眠障害、理化学的な不良刺激など、生活における様々な不良素因の影響により免疫低下が容易に起こされる。

一方、免疫力は人体の生命力の一方面として、治癒力や修復力(回復力)などと同じく、生体全体の健康状態の総合改善に従って増強できる。そのうち、体力と気力(精神力)は健康の基本となっているため、先ずは重要な影響素因となる睡眠と飲食を確保し、心身両面の消耗による免疫力減弱を避けなければならない。このうえに、東洋的な観点から医学的な手段を用いて免疫強化が可能である。

中医学的には、人体の正気が免疫力に当たる。具体的に体内の陰陽から言うと、身体の滋潤・栄養作用を持つ陰気に対して生体の推動・温煦・防御機能を持つ陽気が免疫力となり、また脈に流れている営衛之気から言うと、脈内に流れて栄養作用を持つ営気(営陰)に対して脈外に流れて防御機能を持つ衛気(衛陽)が免疫力となる。普段、背中に日光浴し、自然界の陽気を以て生体の陽気を保養する効果があるが、更に様々な中医療法の活用により免疫力を高める事が出来る。

1、長期的な養生法:医療気功

調身、調息、そして調神の三調節を長期的に持続することにより、生体全体の生理機能を高めるに伴い、人体の自然抵抗力と治癒力を高める。

2、即効性を持つ治療法:針灸推拿

体外から理学的な刺激を与えることで、体内に良性反応を起こして生体の免疫力を増強させる。実験針灸学の研究によると、ある特定の経穴に温灸または刺針を行うことにより、血液中の白血球数が顕著に増加する。お勧めできる経穴として、大椎、肝兪、脾兪、腎兪、足三里などがある。

また全身推拿を行うことで、全身の循環・呼吸・消化・泌尿・運動・神経・内分泌などの機能を調節するほか、免疫機能に明らかな良性調節作用を果たしている。実験研究によると、推拿施術は血液中の白血球総数を増加させ、リンパ球の比例も高め、白血球の呑食能力を増強させる。動物実験の結果で、推拿療法は免疫系への調節作用によりNK細胞を増加させることを示している。

3、総合的な健康法:薬剤薬膳

罹病患者には病証に基づく中薬処方の服用、また本来体質虚弱の者には薬効食物と食用薬物の相応しい応用により、それぞれの免疫力を改善させられる。基本的には補気養血の効能を持つ薬食両用のものを主としており、中には最も効能が優れてお勧めできるのは植物性の大棗と動物性の阿膠であり、両者は共に赤血球と白血球を明らかに増加させ、特に後者の阿膠は骨髄の造血機能を保護し、血球の外に血小板も増加させる。

陽気保養のための背中に日光を浴びる方法、温灸を行う方法、そして大棗を食用する方法などは、伝統医学教育会ホームページの会員専用ページの健康知識に紹介されているので、参考にして実施し、免疫力を高めて欲しい。

健康知識:三伏天における生姜の特別な応用

中国では「寒は三九にあり、熱は三伏にあり」の諺がある。夏の三伏天になると、生体の陽気が体表に浮いてくるが、その時冷たい飲食を好んで過食すれば、体内の脾胃は虚寒状態に陥ってしまう。そこで、一年中で最も熱い時期では、一切寒冷を求めてはいけず、正確な養生方法として「熱を以て熱を制す」という原則を活用しなければならない。このことから、最も相応しい食べ物として生姜が挙げられる。

生姜は性味が辛温で脾・胃・肺に帰経し、散寒除湿・発汗解表・化痰止咳・温中止嘔・活血止血・解毒など様々な効能を持ち、風寒感冒、悪寒発熱、頭痛鼻閉、肺寒咳痰、痰飲喘咳、胸脇脹満;脾胃虚寒、脘腹冷痛、泄瀉;胃寒または胃気不和、悪心嘔吐、食少;婦人月経不順、崩漏、産後血暈、瘀血腹痛、吐血、鼻衄、喀血、便血;魚蟹や半夏(漢方生薬)の中毒など広く用いられる。三伏天では脾胃の虚寒を駆除するほか、冬病夏治の作用が大いに期待できる。

上記の病証のみならず、夏に多く見られる小さい問題も生姜を使って効果的に解消できる。

1、食欲不振

生姜にあるギンゲロールは舌の味覚神経及び胃粘膜の受容体を刺激し、神経反射によって胃腸の充血を催し、同時に消化液の分泌を促進する。これによって健脾開胃・消化促進・食欲増進の効果を果たす。

方法:生姜を綺麗に洗ってから水気を取り、薄くスライスし、少々塩を塗して12時間ほど漬けておく。出来上がった生姜のスライスを綺麗な密封容器に移し、充分浸すほど酢を入れ、ラップしてから蓋を閉め、4日以上放置してから食用できる。毎朝1~3スライスお勧めする。

2、胃腸不調

生姜は外へ発散するという特別な特徴があり寒邪を排除することができる。脾胃虚寒の方や、冷やされた後に吐気・腹痛・泄瀉などが現れる方は生姜棗茶或いは生姜米茶が役立つ。

生姜棗茶:皮付きの生姜3スライスと棗6個(千切って種を除く)を一緒にお鍋に入れ、水を加えて20分間ほど煮込む。煮込むのが難しい場合は直接コップに入れてお湯を加え、暫く蓋を閉めて浸しても良い。

生姜米茶:生姜と米を1:2の比例にし、生姜を千切りして2分間ほど炒って水気を取り、米を加えて約20分間混ぜ合わせながら炒り、黄色い焦げになったら密封容器に保存しておく。毎度50gほどを取り出して500mlの水で10分間ほど煮る。

3、肩腰疼痛

冷房に吹かれた頸肩や背腰は特に風寒湿などの病邪に侵襲され易い。また設定温度が低いと、肩や腰の持病も再燃することが多い。この場合は、生姜の煮汁を使えば効果的である。

方法:生姜を煮込んだ汁の中に少々塩と酢を加え、タオルを浸して絞り、患部に置いて温める。数回ほど繰り返すと疼痛を緩和させる。

4、傷風感冒

長期に渡って空調環境に身を置くことが続くと、室内外の温度差が多いため、体内の調節システムが乱れて免疫力も下がり、風寒を感受して感冒に罹患し易い。傷風感冒の場合は直ちに数スライスの生姜を食べるか、生姜黒糖スープを飲むと、寒邪の駆除に大きく役立つ。

方法:皮付きの生姜を5スライス切り、沸騰するお湯に入れて3分間経て黒糖を加え、均等に混ぜて飲用できる。

生姜は非常に良い食べ物であるが、実際に使用する際に注意しなければならない事がある。

先ず生姜の食用時間に気を付けて欲しい。一般に朝や午前中に食すと、陽気の昇発を助長できるが、夕方や夜に食すと、心神が収斂できない恐れがある。故に「朝に食す生姜は人参(漢方生薬)の如き、晩に食す生姜は砒素の如き」との説がある。

次に生姜は辛温の性味で、熱性疾患には適しない。陰虚内熱(面色潮紅、心煩盗汗、手足心熱、口渇咽乾、皮膚乾燥、舌痩紅、苔少など)や、体内実熱(風熱感冒、肺熱の咳嗽で黄粘痰、胃熱の嘔吐口臭、膀胱湿熱の尿黄赤で渋痛、肝火の煩躁易怒、心火の神志不安、瘡瘍潰爛、痔瘡出血など)の方には少なめに食すか、食用しない。

また肝病証(肝気は昇発主動)、目疾患(肝の竅)、そして小児(純陽の体質特性)にも慎重に食用しなければならない。

健康知識:馬歯莧の性能と応用

馬歯莧はスベリヒユ科の植物でスベリヒユの全草である。初夏から晩秋までに畑、道端、庭園、廃墟など日当たりの良い場所に自生している。葉が丸くて小さく、茎が赤く、肉質が肥えて厚みがあり、夏には黄色の花が咲いて綺麗に見せている。

薬食両用の植物として、夏季に食用するほか、全草が薬用できるし、また種子も生薬として応用される。歴代の薬草専門書では馬歯莧について「馬歯莧,又名五行草,以其葉青,粳赤,花黄,根白,子黒也。」(馬歯莧、又の名は五色草で、其の葉が青く、茎が赤く、鼻が黄色く、根が白く、種が黒いためである)と描いており、小さな草でありながら、五行色の全部を占めて決してその価値も軽視してはいけない。民間では「長寿草」や「長命草」などと呼ばれている。

新鮮な馬歯莧は口当たりが柔らかいが、シャキシャキし、ツルツルする感じで、やや酸味がある。野菜として味は普通であるが、薬用価値が大きい。

薬用効果

中医学的に、馬歯莧は酸味で寒涼の性質であり、心・肝・肺・大腸経に帰経する。主に清熱利湿・涼血止痢・解毒消腫・止咳止渇などの効能があり、様々な病状の治療に用いられる。

① 消化管伝染病の予防と治療:馬歯莧は赤痢菌、腸チフス菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌などに対して強い抑制作用を持ち、熱毒による赤痢、テネスムス(裏急後重ともいい、頻回に便意を催すが便は出ない症状)、細菌性下痢(湿熱泄瀉)、大腸炎などの治療を補助するほか、実熱による大便秘結、痔瘡出血、腸ポリーブなどにも著しい効果がある;

② 皮膚疾患の治療:「諸痛痒瘡,皆属于心」(《黄帝内経》)、また肺は皮毛を主る。馬歯莧は清心火・散肺熱の作用を持ち、口内炎、舌炎、癕腫疔毒、湿疹乾癬、丹毒など血熱による皮膚疾患のほか、蛇虫咬傷や蜂刺傷にも効果的である;

③ 眼目赤腫の改善:肝は目に開竅するため、肝熱が経脈に沿って目に上がると、目の発赤や腫脹、目脂などが見られる。馬歯莧は酸味が肝に入り、清肝涼血明目の効果が期待でき、特に夜更かしによる肝の陰血を損なった後の赤目に役立つ。種子の明目作用が最も顕著である。また若者の白髪も肝熱が盛んで頭頂に上がって発症したもので、治効がある。

④ 出血疾患の改善:心は血脈を主り、肝は蔵血を主る。馬歯莧は清熱涼血止血の効能を持ち、性器不正出血、産後・流産による出血などに適応する。

ほかに、止咳の効能を百日咳に用いたり、利尿の効能を浮腫に用いたり、止渴の効能を消渇(糖尿病)の口渇に用いたりすることができる。近年、馬歯莧の抗がん作用も研究されている。

食用方法

馬歯莧の茎と葉が茂っている時期に、その若い部分を取って根を除き、綺麗に洗っておく。温惣菜の場合は、少し油で炒め、柔らかくなったら潰した大蒜を加えて塩で調味してできる。冷惣菜の場合は、熱湯に2分間ほど通し、取り出して水で冷やして軽く水気を取り、潰した大蒜や生姜を入れて塩、醤油、お酢、胡麻油などで調味する。また新鮮な馬歯莧を湯がいてから天日干しして乾燥させ、使用する時にお湯で戻し、炒めても餃子などの具としても活用できる。

なお、お湯を通した煮汁は捨てず砂糖(黒砂糖を使用しない)を加えて飲むと治療効果が得られる。特に前立腺炎の治療処方として紹介すると、

[材料]新鮮な馬歯莧500g。

[作り方]綺麗に洗って潰し、ガーゼで包んで汁を絞り出す。

[飲み方]毎日朝晩空腹時に砂糖少々を加えて白湯で薄めて飲む。

[効果]一週間で治癒。

皮膚疾患の治療においては、食用に伴って新鮮な馬歯莧を潰して患部に直接塗るか、更に乾燥した馬歯莧の煎じ汁をお風呂に入れて入浴すると、治療効果が高められる。

注意事項

注意しなければならないのは、馬歯莧は寒滑性質のため、寒邪による泄瀉や脾虚便溏の者はお勧めしない。また滑利の特性を持っているため、妊婦、特に習慣性流産の妊婦は食用しない。ほかに、鼈甲を含んだ漢方処方を服用する際に食用しない。

 

健康知識:静座健康法

生理学の研究によると、生体は「静養」の状態において神経の緊張度が緩め、呼吸・心拍・血圧・体温はいずれも適度に低下している。この低代謝の蓄積反応によって生命も延長していくため、「静養」は一種の精神的な健康運動だと言える。静養の最も相応しい方法として静座が挙げられる。

中医学的には、養生の第一要旨は養神にあるとされているが、静座こそ養神の具体的な方法であり、気功養生で最も重視されている。また歴史上の各種気功養生法は共に心神の修練を大切な目的とし、心身の静寂を取り戻すために、儒学気功の静坐や坐忘、仏教気功の禅定(坐禅)、道教気功の内丹や存想など様々な方法が行われ、その基本が全て静座にある。現代でも瞑想なども同じように静座が多く用いられている。

生理実験では、僅か5~10分間の高質静座を行うだけで、脳の酸素消費量が17%ほど低下すると証明され、この数値は7時間の深い睡眠の後の変化に当たる。静座中の呼吸が体内の気体交換を速め、神経の緊張を解消し、筋肉も緩和されて疼痛の現象を緩解させ、更に体内温度、血液のpH、血圧、血糖、血脂、及びカリウム、ナトリウム、燐などの化合物を一定の範囲に安定させる。これは正しく気功養生における調身・調息・調神という三要領の目的と一致している。

臨床医学でも、静座によって疲労を解消させるに伴い、ある慢性疾患に効果的な補助治療の作用を果たし、例えば胃腸炎、肩関節周囲炎、腰腿痛、慢性腎炎、高血圧などはいずれも顕著な効果が見られる。静座は頭暈や卒倒などの発生を効果的に減少させ、特に朝起きの時は心脳血管疾患の多発時間帯に当たり、起床を急いで動きが速過ぎたり激しかったりすると、これらの病症が誘発され易い。

静座の具体的な操作

主に平坐式と盤式(胡坐式)がある。平坐式は初心者に最も多く用いられるが、盤式は静功練習に最も適宜な姿勢であり、更に双盤、単盤、自然盤に分けられる。

① 平坐式:下腿と同じ高さの椅子やベンチの座面の前方1/3に坐って深く座らない。両膝を90度に屈曲させ、両脚は肩と同じ幅に開いて平らたく地面に置くか、左脚を右脚の足背に乗せる。

② 自然盤:両側下腿を交差させ、両脚を反対側の大腿の下に置く。比較的に簡単な姿勢であるが、両膝が座面につかず浮いているため、身体が不安定で歪み易い。

③ 単盤:左脚を右側大腿の上にかけ、右脚を左側大腿の下に置く。左膝が座面に着かないため、時間が長くなると身体が左側に歪み易い。

④ 双盤:筋骨が比較的に柔らかい方に適している。左脚を右側大腿の上に乗せ、右脚を左側大腿の上に乗せる。この際、両側の足裏が上に向く、両側の下腿が交差して三角形を呈している。両膝が座面にしっかり着いているため、身体の姿勢が自然に端正で、前後や左右に歪まない。

上記の諸姿勢から自分に相応しい座り方を取ってから、全身各部を整えていく。上半身は真っ直ぐに伸ばして腰を伸展させ、臀をやや後方へ突き出してもよい;頭頸を端正に直立させて顔を前に向け、両目はやや閉じ、口を閉じて舌先を上顎に当て、下顎をやや引き締める。両腕は充分に緩めておく。両手は手掌を上に向けて重ねて下腹付近の下腿の上に軽く置くか、両肘を外へ開いて手掌を下に向けてそれぞれ大腿の付け根の上に置くか、或いは両腕を自然に下ろして手掌を上に向けて膝の上に自然に置く。他に、立式気功の抱球式または托球式を取ることもできる。

姿勢を揃ってから全身をリラックスさせ、呼吸を自然に整えて心を静めて深く静かに思いを巡らす状態に入る。

静座の操作時間帯

静座は一日中にいつでも行えるが、最もお勧めの時間帯は朝の起床後、昼の食事後、夜の就寝前である。

朝の起床後は心に雑念が入っていない時間帯で、覚めてから急いでベッドから降りず、先ず静座を行った方が良い。目を閉じて意念を集中させ、36~50回ほど深呼吸を行い、瞑想などで心神を安定させる。その後、ゆっくりと降りて一日の予定に動き出す。

昼の食事後は目を閉じて静座を行うと心神を補える。中医学的には、一日の午前は気血の運化が全て陽気の運動に属し、午後から陰気が生み養心の時間となる。昼食後の11~13時の間に静座を10~30分間ほど行う事で、心神を補うのに大いに役立ち、午後から晩までの精力を充足させ、気血運行の助力となる。

夜の就寝前は静座を行う事で、一部の神経系や消化系の慢性疾患に明らかな治療効果がある。洗顔後、椅子で平坐式か、またはベッドで盤式を取って座り、全身の筋肉を緩め、呼吸を自然に落ち着き、徐々に静かな状態に入り、意念を臍下の丹田に集中させて興奮状態の思惟活動を平静状態に転化させると次第に一種のほろ酔いの様な、有るや無しや(無心?)の境界に入っている。1回で20分間以上をお勧めするが、初心者は短い時間から始めて少しずつ延長していけば良い。

静座養生法は簡単且つ実用で、特別な器具や場所が必要としないし、また老人、身体虚弱者、或いは心脳血管疾患や呼吸疾患の罹病で激しい運動ができない方に対して健康養生の効果が大きい。