健康知識:爪先立ち・踵落としの健康動作

爪先立ち・踵落としの動作は早く中国古代から健康養生に応用され、「敦踵法」と称されていた。前漢初期の《引書》に「敦踵以利胸中」や「敦踵,一敦左,一敦右,三百而已。」の記載があった。800年の歴史を持つ導引養生術の八段錦は、完結式動作を「背後七顛百病消」と言い、爪先立ち・踵落としで背中に振動を広げることで、五臓六腑に優しい按摩作用を果たして百病解消の効果があるとされている。

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健康知識:爪先立ち・踵落としの健康動作

爪先立ち・踵落としの動作は早く中国古代から健康養生に応用され、「敦踵法」と称されていた。前漢初期の《引書》に「敦踵以利胸中」や「敦踵,一敦左,一敦右,三百而已。」の記載があった。800年の歴史を持つ導引養生術の八段錦は、完結式動作を「背後七顛百病消」と言い、爪先立ち・踵落としで背中に振動を広げることで、五臓六腑に優しい按摩作用を果たして百病解消の効果があるとされている。

爪先立ち・踵落としは効果的な有酸素運動である。爪先立ちの際に、両側下腿の後部筋群から圧出した血液量は、凡そ心臓拍動時に拍出された血液量に相当する。これにより心臓のポンプ作用を助長して心脳血管の健康に有益である。同時に下腿の筋肉及び足関節を鍛え、静脈怒張を予防し、足関節の安定性を保つ。また四肢と頭脳を動かすことで、長時間の脳力集中や突然の立ち上がりによる目眩と頭暈を解消できる。膝関節の損傷も避けられるため、中老年の方には特に相応しいと言える。

動作効果

爪先立ち・踵落としは簡単な動作であるが、毎日行うと、以下の効果が期待できる。

① 強化臓腑、祛病養生:爪先立ち・踵落としの動作は全身に相応しい震動を起こし、五臓六腑の機能を激発し、生体の代謝を促進させて生命の活力を高進させ、陰陽調和・気血通暢に達し、糖尿病や肥満症の予防、冷え症の改善などに応用でき、健康増進の効果が期待できる。

② 通陽気、健脳髄:足趾は足三陰経の起始部位である。爪先立ち・踵落としの動作は肝・脾・腎の足三陰経と足太陽膀胱経を刺激し、陽気の上昇・宣通をさせ、頭部・顔面部の気血循行を促進させ、健脳益知・開竅解鬱の効果を図り、記憶力向上、認知症予防のためになる。

同時に肝・脾・腎三臓の機能を激発して気・血・精を養い、健康養生に最も密接に関係する。

③ 補腎気、強腰膝:腎気虚弱や腎陽不足の方は往々にして畏寒肢冷、下肢浮腫、足根冷痛などの症状が見られる。踵落としの動作は膀胱経と腎経が刺激され、腎気を補って腎気の通陽気化作用を促進する。補腎により白髪や脱毛の減少、性機能や生殖能力の増強、骨密度の増加で骨粗鬆症の予防などに効果的である。

また風寒湿邪が膀胱経絡に侵入して気血循行が阻害されて疼痛が発生する。踵落としの動作は膀胱経気を開通し疼痛を解消し、後頭痛、頚椎症、腰椎症などの予防と治療もできる。

④ 行血脈、防中風:足部は心臓から最も離れている末梢部位である。爪先立ち・踵落としの動作は末梢血液循環を促進させ、全身の血脈に大きく影響を及ぼし、動脈硬化、高血圧病、心筋梗塞、脳卒中などの予防に役立つ。

中医学的には、中風(脳血管障害)は真陽損傷による陰盛陽衰の証候とされており、脳出血や脳虚血は「陰盛格陽」によって陽気上衝の病証である。踵落としの衝撃は、脳部の気血運行を刺激すると同時に、浮陽を引き下げて膀胱経と腎経に沿って足部までに下行させる「潜陽」効果がある。

⑤ 小便不利改善:中医学の角度から見ると、小便不利は膀胱の気化不利による病症である。踵落としの刺激は、膀胱の気化機能を促進して排尿障害に働き、前立腺肥大や前立腺炎などにも良い治療法だと言える。

動作方法

身体を直立姿勢に保ち、両脚を自然に開き、両手を身体の両側に下ろし、ゆっくりと足趾で強く地面を掴むように爪先立ちして踵を上げる。その後、重心を趾先から足裏前半へと移し、身体をリラックスさせて自然にストンと踵を軽く地面に落とす。この柔らかい震動は両下肢に沿って上半身まで伝達されていく。一回に20~30で、10秒ほど休んでからもう一回続け、5~10回繰り返し、速度は自分で適当に調節する。

中老年の方や体力の弱い方には坐位で行うことができる。椅子に座って膝と太股を水平に保ち、体力によりペットボトルやペットを太股の上に置いて荷重練習しても良い。ゆっくりと爪先立ちして踵を上げから、ストンと踵を落として軽く地面にぶつける。一回に30~50で、直立姿勢と同様に繰り返す。

上記のほか、また爪先立ち・踵落としの関連動作を行うことができる。

1、爪先歩き:爪先立って歩き、一回は30~50歩で、暫く休んでから自分の体力に従って数回繰り返す。速度は軽くて気持ちよいことを程度とする。初心者は壁を支えても良い。

2、臥位の趾上げ(踵下げ):横に休む時に、両下肢を合わせて真っ直ぐに伸ばし、趾先を最大限に上げてから下げる(踵を踏み出す)。両脚を同時に行っても交互に行っても良い。下腿が疲れたら、暫く止めて休む。一回に20~30で、10秒ほど休んでからもう一回続け、5~10回繰り返し、速度は自分で適当に調節する。

動作注意

中老年以降の方が爪先立ち・踵落としを行う際に注意事項がある。

① 爪先立って歩く場合は、全身の協調性を必要としているため、高血圧や骨粗鬆症の方には強引に行うと、損傷の恐れがある。

② 爪先立ち・踵落としの練習は順を追って少しずつ進めなければならず、力を激しく入れ過ぎると足根痛の恐れがある。

③ デスクワークや将棋や麻雀など長く座り続け立って動かない場合は、一時間おきに一度爪先立ち・踵落としの運動を行えば、下肢の血液回流をスムーズにし、下肢の痺れなどを改善する。