会員通信:NPO法人伝統医学教育会事業活動計画(2023年度)

2023年度は、昨年に引き続き教育活動である講習会及び普及活動の健康支援を進展していきたいと思います。

講習会は「常見病証の針灸治療実技」Ⅲ期を企画しており、感染防止を徹底して少数人数で実行する予定です。2年連続の講習経験を活かし、今回は日本の針灸現場で余り見られない針灸治療で、特効が得られる病証を取り挙げ、同じく実用性に重点を置き、具体的な刺針実技を指導しながら練習を実行し、更に個人的な心得と経験を伝授します。これにより辨証論治の思想を導き、臨床実践の技術能力が高まると同時に針灸治療の特殊技法を身に付けられる事を期待しています。講習は4月後半に開講し、計8回で12月前半に終了する予定です。

健康支援活動はホームページを通じて健康情報を発信するほか、臨床センターにて会員の皆様の健康養生法の相談や指導なども催してゆきたいと思います。ほかに、状況が可能な範囲で会員限定の無料講座も実施する予定です。また引き続き季節の変化や社会の情勢に合わせて薬茶を新たに考案して見本をお送りします。

コロナ禍で3年ほど会員の年末懇親会を開催することができず、非常に残念でしたが、疫病情勢はようやく少し落ち着いてきたようで、夏頃に安全確保の上で会員の交流を深めるため、懇親会を企画してゆく予定です。

 

健康知識:中医薬茶材料製作法

立秋を過ぎた途端、 逆に猛暑が戻って残暑が過ごし難く感じられます。まだ熱中対策を続けて行かなければならないようです。
さて、3月末と7月末に会員の皆様に健康応援の目的で、薬茶の処方と見本をお送りしました。気に入ってご自身でも作って長く続けて欲しいです。
健康増進のための薬茶は日常生活の中で色・香・味を楽しむほか、季節と環境に従い、各自の体質や体調に合わせて相応しいものを選び、長く飲み続ける事で健康効果が果たせます。そのため、容易に入手できる身近な材料を用いて手頃に作成できるように工夫しました。
ここでは、関連する薬茶材料を自ら作成する方法を紹介します。皆様参考にして、ご自身の体調に合わせた薬茶を続けるよう努力しましょう。

① 橘皮(蜜柑の皮)

蜜柑の皮を半乾きになるまで陰干しし、細長く切ってから更に完全に乾燥するまで陰干ししておく。

② 蓮芯(蓮実の芯)

乾燥した蓮の実を水で浸して軟らかくなってから中の芯を取り出し、乾燥しておく。

③ 竹葉(竹の葉)

竹の柔らかい葉先を採って綺麗に洗い、乾燥するまで天日干ししてから、細かく切っておく。

④ 魚腥草(ドクダミ)

開花期のドクダミの新芽を採って綺麗に洗い、八分乾燥するまで天日干ししてから、陰干して乾燥しておく。使用する前にフライパンで茶色く香ばしさが出るまで弱火で炒る。

⑤ 蒲公英(タンポポ)

開花していないタンポポの全草(葉と茎を主とする)を採って綺麗に洗い、八分乾燥するまで天日干ししてから細かく切り、完全に乾燥しておく。

⑥ 冬瓜皮(冬瓜の緑皮)

冬瓜の皮の緑と白の部分を薄く剥き、細く切って完全に乾燥するまで天日干ししておく。

⑦ 西瓜皮(西瓜の緑皮)

西瓜の皮の緑と白の部分を薄く剥き、細く切って完全に乾燥するまで天日干ししておく。

⑧ 薏米(はと麦)

はと麦をフライパンに入れて焦げないように混ぜながら弱火で炒り、黄色く香ばしくなったら火を止め、冷めてから密封容器に保存しておく。

⑨ 枇杷葉(枇杷の葉)

枇杷の葉を採って八分乾燥するまで天日干ししてから、細かく切って完全に乾燥しておく。

 

健康知識:常に擦ると長寿に繋がる身体の九か所(後編)

5、手掌を擦って強心健脳

両肘を下げて両手の十本指を伸ばして交差し擦る。一度に1分間或いは200回ほど続けて速やかに行うか、毎日の起床後と就寝前に20~30分間ほどゆっくりと行う。

手には生体の臓腑器官と緊密に連係している腧穴が沢山位置しており、表裏関係にある陰陽経脈が手指において交接している。特に手少陰心経と手太陰肺経が循行しているため、手を擦ることで、手掌に循行する経脈を疏通して腧穴に刺激を与えて全身の臓腑を調節し、とりわけ心肺に有益である。研究によると、手を擦る動作は走行より激しくないが、1分間だけ速く擦ることで、明らかに心拍を増加させて汗(心の液であるが、肺が皮毛を調節する)をかく反応が見られ、心肺機能を高める。また人類の手は非常に進化して巧緻運動に適し、手の筋肉と関節の運動は脳の調節に従っているため、手を擦ることは手指の敏捷度を高めるほか、手と脳の反射を強化して健脳作用も果たす。

6、胸郭を擦って理気活血

両手を重ねて手根部を胸骨中央の膻中穴(両側乳頭の中点)に軽く当て、円を描くように擦る。その後、両側の手掌をそれぞれ脇肋に軽く当て、同じく円を描くように擦る。各部位にそれぞれ54回ほど擦り、1日に何度も行う。

伝統医学的には「肺は気を主る」、「心は血脈を主る」とされ、胸は心肺二臓を納め、気血との関係が特に密接である。普段、精神不安で情緒が激動する時に、無意識で胸を擦ったり叩いたりして気分をスッキリし落ち着くことが多いが、実際この胸に対する動作は怒りによる逆気や鬱気を治まるためだけではなく、同時に心肺機能を高めて寛胸理気・調暢気血の効果が得、これによって情緒を調節して精神を安定させる。更に長期に続けていくことにより、胸に循行する任脈、肝・脾・腎の足三陰経、そして足陽明胃経など経絡に刺激を与え、養心益肺・活血通脈・老衰対抗などの作用があり、健康増進で疾病予防の役割を果たす。

7、臍腹を擦って健脾和胃

両側の手掌を交互に用いて臍を中心にして円を描くように腹壁を擦り、それぞれ時計回り方向と反時計回り方向に36回か54回ほど行う。その後、両手を温かくなるまで擦ってから重ねて臍中央に当て(男性には左手を下に、女性には右手を下に置く)円を描くように腹壁を揉み、それぞれ時計回り方向と反時計回り方向に36回か54回ほど行う。

伝統医学的には、「脾は運化を主る」、「脾胃は気血生化の源と為り」とされ、腹は脾に属し、「気機の枢」中焦に当たり、生命の後天根本である脾胃の所在である。脾胃不調で脾が健運を失って胃が和降を失うと、気血が不足して身体虚弱になるか、鬱滞させて肥満になる。また臍を人間の先天的な供養通路とし、生体を補養する任脈・衝脈・帯脈などが近くに順行している。腹を擦ることは、健脾和胃の効能を持ち、飲食物の消化吸収と気血の運化などを促進し、生体は充足な栄養を得られ、気血積滞による肥満も解消させ、健康強壮・養生長寿に繋がる。また毎晩の就寝前に行うと、腹筋への刺激により腹部の自律神経節及び血液循環及び・リンパ循環を調節することもでき精神状態を整えて睡眠を改善する。

8、腰骶を擦って補腎壮腰

両手を温かくなるまで擦ってから、腰両側の腰眼穴(第4腰椎棘突起両側3~4寸陥凹部)に当て、暫く温めてから下方へ尾骨端の長強穴(尾骨端と肛門との中点)まで、上下方向に54回か81回ほど擦る。1日に朝晩2回行う。

また風寒や寒湿や過労による腰痛の場合は特に腰眼穴の按揉をお勧めする。両手の拇指と四指を開き、四指を前方に、拇指を後方に両側から腰に当て、拇指がほぼ腰眼穴に当たり、ゆっくりと50~100回按揉する。拇指の代わりに両拳を用いても良い。

伝統医学的には「腰は腎の府なり」とされ、腎は「先天の本」として精を蔵している。過労や加齢に伴って腎気が消耗されて虚弱になり、腰脊冷痛・筋骨変形などの病症が多く見られる。腰骶を擦ることで、局所の毛細血管を拡張させて腰筋を強化すると同時に、腎陽を温煦させて腎精を固摂させ、養生長寿の役割を果たす。腰眼穴は、腰を環状に巡って縦行する帯脈に位置しており、帯脈は諸経脈を制約してそれらの連係を強化する作用を持ち、腰脊疼痛・腹部脹満などの病候を主るため、腰眼穴の按揉は帯脈を疏通させて気血を調暢させ、補腎固精・強壮腰脊の効果がある。

9、足底を擦って強身長寿

毎日の就寝前と起床後に、両手を温かくなるまで擦ってから、一側の手で同側の足背を支え、反対側の手を用いて足裏を前後に36回か72回ほど擦り、この時、気持ちよく感じる中等度の力で行うと足が温かくなる。夜には40℃くらいのお湯で足浴し、脚が赤く手が温かくなってから行うと、もっと効果的である。

老人の足底が乾燥する場合はオイルを数滴垂らしてから擦る。また足が怠く痛い場合は、焼酎などの蒸留酒を少し濡らしてから行うと活血止痛の効果が高まる。足底を擦った後、直ぐに床を踏むや歩くことをしないように、15分ほど休んでから動く。

人体を樹木に喩えると、足は木の根に当たる。木の根が枯れると、枝も葉も枯れて落ちてしまう。伝統医学的には、足は肝・脾・腎の三経脈が循行し始まる所として、生体の根本とされ、特に足心と足根は「先天の本」である腎に属する。また足は「第二の心臓」と言われるように、足の末梢循環は全身の循環に大きく関連している。足底を擦ることで、局所に活血通絡の効果を果たすほか、補腎固精の作用を持つ上、養心安神・健脾益気の効能もある。長期に続けていくと血圧安定・不眠改善、そして人体の免疫強化にも繋がる。

健康知識:春季における養肝昇陽の五種粥

陽春の三か月から人体の陽気が昇発になり、養肝補陽気に工夫する時節である。春には肝気が旺盛になり、脾胃の消化吸収機能に影響を及ぼし易いため、飲食上であっさりした物を主とすべきである。

ここでは春季の養生献立として養肝昇陽の作用を果たすお粥を紹介する。

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