会員通信:NPO法人伝統医学教育会事業活動計画(2023年度)

2023年度は、昨年に引き続き教育活動である講習会及び普及活動の健康支援を進展していきたいと思います。

講習会は「常見病証の針灸治療実技」Ⅲ期を企画しており、感染防止を徹底して少数人数で実行する予定です。2年連続の講習経験を活かし、今回は日本の針灸現場で余り見られない針灸治療で、特効が得られる病証を取り挙げ、同じく実用性に重点を置き、具体的な刺針実技を指導しながら練習を実行し、更に個人的な心得と経験を伝授します。これにより辨証論治の思想を導き、臨床実践の技術能力が高まると同時に針灸治療の特殊技法を身に付けられる事を期待しています。講習は4月後半に開講し、計8回で12月前半に終了する予定です。

健康支援活動はホームページを通じて健康情報を発信するほか、臨床センターにて会員の皆様の健康養生法の相談や指導なども催してゆきたいと思います。ほかに、状況が可能な範囲で会員限定の無料講座も実施する予定です。また引き続き季節の変化や社会の情勢に合わせて薬茶を新たに考案して見本をお送りします。

コロナ禍で3年ほど会員の年末懇親会を開催することができず、非常に残念でしたが、疫病情勢はようやく少し落ち着いてきたようで、夏頃に安全確保の上で会員の交流を深めるため、懇親会を企画してゆく予定です。

 

会員通信:NPO法人伝統医学教育会事業活動報告書(2022年度)

1、講習会

2022年度の講習会は、4月から12月にかけて「飲食薬膳療法の基礎と応用」講習を行い、4月から11月にかけて前年度実施した「常見病証の針灸治療実技」のⅡ期講習を行いました。

「中医飲食薬膳療法」はテーマが非常に大きくて講習内容がとても広範囲ではありますが、これまでに二度ほど講習を行いました。昨年は10年ぶりの講習に備え、テキストを修正したほか、疫病蔓延の時期における健康増進のため新たな解説方法を加え、これまでと同様に理論と実用の知識に重点を置いて講習しました。最後に薬膳一品の作成実演と試食、薬酒の試飲も行いました。

一方、「常見病証の針灸治療実技」講習は前年度から開催していましたが、今年はⅡ期として継続し、計4名が参加されました。今回も伝統医学教育の実用性に重点を置き、針灸臨床に常見される6病証を新たに取り上げ、その基本概念、病因病機、そして辨証分型を明確にしたうえ、治療原則と選穴処方を解説し、具体的な刺針実技を指導しながら、技能練習を行いました。参加者の皆さんは実技も積極的に練習し臨床での即戦力が高まったようです。

 

2、健康支援

教育事業活動のほか、会員の健康支援活動も引き続き行っています。伝統医学教育会ホームページの会員専用ページにて健康知識を定期的に更新していますので、皆様の健康増進の参考にして頂きたいです。

また、長くご支援下さった会員の皆様に感謝の気持ちを込めて、健康支援のために伝統医学的な薬茶をお送りしました。今回は主に新型コロナウイルス感染の急増状態、及び盛夏の暑熱湿聚の特徴に従って5種類の薬茶を考案して処方と見本を送付しました。会員の皆様にお送りした薬茶の主要材料は比較的容易に入手できる身近なものを使って作成しましたが、作成方法は教育会の会員専用ページに公開しています。

 

活動案内:「常見病証の針灸治療実技(Ⅲ期)」講習会

針灸医学は理論に基づいた実践的な学科です。臨床では、中医学の辨証論治を元にして正確な診断を下すことができて、初めて正しい治療方針が立てられます。そこから、腧穴の性能に従って相応しい処方を組み合わせ、更に正しい技術を用いた効果的な治療を実施できます。日本の現状は、中医学の病証に対して基本概念がはっきり認識されておらず、また総合的な辨別分析の考え方も欠けているため、辨証論治の臨床応用は広く普及されていません。更に学校教育では実践に接した臨床実習が不足しているため、臨床現場に入ると、患者さんに対応し難く感じる方が多いようです。

伝統医学教育会では、これを踏まえ鍼灸師・鍼灸在学生を対象として針灸臨床にて多く見られる病証を取り挙げて、これまでに治療実技の二回講習を行いました。今回も少数人数で、実用性に重点を置き、日本の針灸現場で余り見られず針灸治療で特効が得られる病証を取り挙げ、その基本概念、病因病機、辨証技能、治療方針などを解説したうえ、具体的な刺針実技を指導しながら練習を実行し、更に個人的な心得と経験を伝授する予定です。これにより辨証論治の思想を導き、臨床実践の技術能力が高まる事と同時に針灸治療の特殊技法を身に付けられる事を期待しています。

講習終了時、NPO法人伝統医学教育会の修了証書を交付します。

 

講 師:陳 志強 医学博士

日 程:全8回 月1回 日曜日10時30分~13時00分(計20学時間)

毎回約30分理論解説、120分実習指導

① 04月23日 喘息(灸法操作を含む);

② 05月28日 帯状疱疹;

③ 06月25日 円形脱毛(梅花針操作を含む);

④ 07月30日 美容針灸の観点(美顔、痩身);

⑤ 09月03日 眩暈;

⑥ 10月01日 顔面神経麻痺;

⑦ 11月05日 坐骨神経痛;

⑧ 12月03日 COVID-19感染後遺症対策(倦怠疲労、咳嗽咽痛、味覚障害)。

場 所:東京都千代田区外神田6-4-5-401 NPO法人伝統医学教育会臨床センター

交 通:東京メトロ銀座線末広町駅より徒歩4分、千代田線湯島駅より徒歩4分

都営地下鉄大江戸線上野御徒町より徒歩8分

JR御徒町駅・秋葉原駅・御茶ノ水駅より徒歩10分~12分

定 員4名以上で開講 6名まで

費 用:73,000円(実習用具の費用込み、分割払い可) 当会会員は8,000円割引

振込先:特定非営利活動法人伝統医学教育会

郵便貯金総合口座 10100-55927971

申込み:NPO法人伝統医学教育会事務局 FAX 03(5816)5235

締切り:2023年4月10日(月)まで

健康知識:葱姜蒜による春季の疫病予防

春が近付くと自然界は陽気昇発という特徴になり、万物生成の光景が現れている。同時に春は風を主り、風を特徴とする病証が流行り易い。そこで、今の季節には新型コロナウイルス感染症に加え、様々な感染症が多発している。感染症の予防には感染源遮断と免疫力増強が重要な方針である。マスク着装・対人距離保持・随時の手洗いなどは感染源遮断のため効果的な方法であるが、人体生命力の一面である免疫力は医療気功、針灸推拿、薬剤薬膳など東洋的な医療方法により強化できる。

古来、伝統医学では薬食同源を提唱して食物の特性を以て疾病の予防と治療に用いている。これによって陰陽のバランスを取り戻して生体の免疫力を高める。「厨房三宝」と呼ばれる長葱・生姜・大蒜は薬食両用の重要な食材である。辛熱発散の薬性を持っているため、春の特徴と共通し、人体の陽気を助長して風寒湿の邪気を取り除き、疫病の予防効果を果たす。《傷寒論》、《千金方》、《本草綱目》など薬物経典に収録してある疫病の予防治療の食療処方に長葱・生姜・大蒜を含むものが数多くあり、また熱く炒って臍や合谷などの経穴に付けて熱罨法を行う外治療法をも記載している。

ここでは長葱・生姜・大蒜の薬性効果と応用方法について紹介する。疫病蔓延の時期に当たって多めに食用することにより、予防治療の作用を果たして欲しい。

続きは会員専用ページにてご覧いただけます

健康知識:葱姜蒜による春季の疫病予防

春が近付くと自然界は陽気昇発という特徴になり、万物生成の光景が現れている。同時に春は風を主り、風を特徴とする病証が流行り易い。そこで、今の季節には新型コロナウイルス感染症に加え、様々な感染症が多発している。感染症の予防には感染源遮断と免疫力増強が重要な方針である。マスク着装・対人距離保持・随時の手洗いなどは感染源遮断のため効果的な方法であるが、人体生命力の一面である免疫力は医療気功、針灸推拿、薬剤薬膳など東洋的な医療方法により強化できる。

古来、伝統医学では薬食同源を提唱して食物の特性を以て疾病の予防と治療に用いている。これによって陰陽のバランスを取り戻して生体の免疫力を高める。「厨房三宝」と呼ばれる長葱・生姜・大蒜は薬食両用の重要な食材である。辛熱発散の薬性を持っているため、春の特徴と共通し、人体の陽気を助長して風寒湿の邪気を取り除き、疫病の予防効果を果たす。《傷寒論》、《千金方》、《本草綱目》など薬物経典に収録してある疫病の予防治療の食療処方に長葱・生姜・大蒜を含むものが数多くあり、また熱く炒って臍や合谷などの経穴に付けて熱罨法を行う外治療法をも記載している。

ここでは長葱・生姜・大蒜の薬性効果と応用方法について紹介する。疫病蔓延の時期に当たって多めに食用することにより、予防治療の作用を果たして欲しい。

1、長葱

葱は辛味・温性で、肺・胃に帰経し、発汗解表・通達陽気・殺虫解毒の薬効を持つ。風寒感冒の良薬であり、医聖張仲景はその通陽作用を熟用して君薬(処方の主薬)として推奨し、《本草綱目》には「生辛散,熟甘温,外実中空,肺之菜也,肺病宜食之。」と記載している。

長葱には発揮油が含まれ、その成分はアリシンAllicinで、強い殺菌作用がある。調理上、長く茹で過ぎたり煮過ぎたりすべきではない

[応用]葱白粥。

[作り方]お米50g、長葱の白い根、砂糖適量。先ずお米を煮込み、柔らかくなりそうな時に葱白を段冊切りして入れ、一度沸騰してから、砂糖で調味して温かく飲む。1日に1回。

[効能]解表散寒、和胃補中。主に風寒感冒に適応する。

また、咳嗽咽喉疼痛を伴う場合は、長葱を丸ごとフライパンで柔らかくなるまで炒るかグリルで焼いてガーゼやハンカチに巻いて喉に巻き付けることも効果的である。

2、生姜

姜は辛味・温性で、脾・胃・肺に帰経し、発散風寒・発汗解表・活血除湿・化痰止咳・温中止嘔・解毒などの薬効を持つ。これによって血液循環を促進し、毛穴を広げて汗を排出させ体内の余分の熱や邪気を払い出し、また人体の新陳代謝を速めるほか、血栓の形成を予防する。

[応用]生姜紅棗水

[作り方]生姜5スライス、棗5個、黒砂糖適量。たっぷりのお水を入れたお鍋に生姜と棗を入れて強火で沸かしてから、弱火に変えて15分間ほど煮込む。黒砂糖で調味して飲用する。

[加減]好みによって黒砂糖を食塩に変えても良い。寒性体質の場合は生姜を増量する;薄い鼻水、鼻詰まりの場合は長葱の白い根を4~5個加え、根の鬚が更に良い;熱性体質で逆上せ易い場合は生姜を減量し、杭白菊を数個加える。

3、大蒜

大蒜は辛味・温性で、脾・胃・肺・大腸に帰経し、温中健胃・消食止痢・解毒殺虫・理気止咳・抗癌消瘤・宣竅通閉・健脳益知・老衰遅延などの薬効を持つ。「天然の広域スペクトル抗生物質」と呼ばれるように、インフルエンザウイルスや寄生虫などに対して優れている抑制や殺傷の作用を果たす。

大蒜にはアリシンAllicinが含有され、広範の抗菌・殺菌・抗原虫の作用を持っているが、有効成分は加熱すると失ってしまうため、生で食用するのが適宜である。

[応用1]大蒜水

[作り方]生の大蒜を数欠片スライスに切るか潰し、朝昼晩に分けて温湯に浸して飲用する。或いは醤油、お酢、胡麻油で食用する。

[応用2]大蒜泥吸入

[作り方]生の大蒜を泥状に磨り潰し、匙一杯を口に入れ、深呼吸を行う。1回15分間繰り返して1日に3回行う。鼻水、痰、涙などが出る場合は直ぐに鼻をかんだり、痰を出したりして呼吸を続ける。

[効能]清肺健脾、抗ウイルス。