会員通信:NPO法人伝統医学教育会事業活動計画(2022年度)

2022年度は引き続き教育活動の講習会と普及活動の健康支援を進展していきたいと思います。

講習会は「飲食薬膳療法の基礎と応用」と「常見病証の針灸治療実技(Ⅱ期)」の二つを予定しており、いずれも感染防止を徹底して実行する予定です。「飲食薬膳療法の基礎と応用」は、健康ブームで多く取り挙げられた時期もありました。当会ではその話題性を避けて伝統性・科学性・実用性の教育方針に基づき、伝統医学の一学科として12年前から2度と講習を行っていました。今年は4月後半に開講し、慣例の年間通しで計8回(4~7月後半と9~12月前半の日曜日午前中)を予定しています。一方、「常見病証の針灸治療実技」は昨年の講習経験を活かし、新たに針灸臨床において常見される6病証を取り挙げ、同じく実用性に重点を置いて実施します。今回も少数人数の設定で、5月後半に開講し、上記「飲食薬膳療法の基礎と応用」講習会の同日午後に行い、計6回で11月前半に終了する予定です。

健康支援は主に会員の皆様のために行っていきます。ホームページを通じて健康情報を発信するほか、臨床センターにて健康養生法の相談や指導なども催しております。ほかに、状況が可能な範囲で会員限定の特別講座も実施する予定です。

会員通信:NPO法人伝統医学教育会事業活動報告(2021年度)

1、講習会

2021年度の講習会は、6月から12月まで「常見病証の針灸治療実技」を行いました。本講習は梅田会員の希望と協力により実現し、感染防止対策により少数人数の設定で、針灸学校の卒業生・高学年生及び当会の鍼灸師を主として計6名が参加ししが参加されんで汁が淡い赤色になってから、枸杞とました。

針灸治療学(針灸学校では「東洋医学臨床論」に当たる)は実用的な臨床技能を育成するための最も実践的な学科とされています。日本では、東洋科目の西洋化傾向で伝統医学の病証に対して基本概念の認識がはっきりせず、また総合的な辨別分析の考え方も欠けているため、辨証論治の臨床応用は未だに広く普及されていません。更に学校教育では実践に接した臨床実習が不足しているため、臨床現場に入ると患者さんに対応し難く感じる方が多いようです。この現状を踏まえ、本講習は伝統医学教育の実用性に重点を置き、針灸臨床において最も常見される6病証を代表例として取り挙げ、その基本概念を明確にし、病因病機と辨証分型を解明し、治療原則と選穴処方を解説したうえ、具体的な診察技能及び刺針実技を指導しながら、技能練習を行ないました。参加者の皆さんは全て針灸医学の有志者で勉学意志が強く、講習では常に病証に対する認識を充分に理解したうえ、実技も積極的に練習しました。また講習内容を超えた関連する知識と経験も交流でき、明らかに臨床実践の技術能力が高まりました。

2、健康支援

講習会のほか、会員の健康支援活動も引き続き行っています。伝統医学教育会ホームページの会員専用ページにて健康知識を定期的に更新していますので、皆様の健康増進の参考にして頂きたいです。

また、コロナ禍で既に2年ほど会員の年末懇親会を行うことができませんでした。今年3月に感染情勢が安定して皆様との懇親を深めたいと期待していましたが、非常に残念ながら蔓延防止措置の期間延長により開催する事を断念しました。

その代わりとして、長くご支援下さった会員の皆様に感謝の気持ちを込めて健康支援のため、伝統医学的な薬茶を提案しました。事務局で様々な調査、そして試飲を重ねた結果、5種類の薬茶の処方と見本を送付しました。比較的容易に入手できる材料を用いて手頃に作成できるように工夫しましたので、長期に飲用し続けることで健康増進・病症改善の効果を期待しております。今回は先ず在宅時間増加の現状と季節変化の特徴に合わせて健康維持のための薬茶を考案しましたが、今後も季節の変化や社会の情勢に合わせて薬茶処方をお送りします。

健康知識:常に擦ると長寿に繋がる身体の九か所(後編)

5、手掌を擦って強心健脳

両肘を下げて両手の十本指を伸ばして交差し擦る。一度に1分間或いは200回ほど続けて速やかに行うか、毎日の起床後と就寝前に20~30分間ほどゆっくりと行う。

手には生体の臓腑器官と緊密に連係している腧穴が沢山位置しており、表裏関係にある陰陽経脈が手指において交接している。特に手少陰心経と手太陰肺経が循行しているため、手を擦ることで、手掌に循行する経脈を疏通して腧穴に刺激を与えて全身の臓腑を調節し、とりわけ心肺に有益である。研究によると、手を擦る動作は走行より激しくないが、1分間だけ速く擦ることで、明らかに心拍を増加させて汗(心の液であるが、肺が皮毛を調節する)をかく反応が見られ、心肺機能を高める。また人類の手は非常に進化して巧緻運動に適し、手の筋肉と関節の運動は脳の調節に従っているため、手を擦ることは手指の敏捷度を高めるほか、手と脳の反射を強化して健脳作用も果たす。

6、胸郭を擦って理気活血

両手を重ねて手根部を胸骨中央の膻中穴(両側乳頭の中点)に軽く当て、円を描くように擦る。その後、両側の手掌をそれぞれ脇肋に軽く当て、同じく円を描くように擦る。各部位にそれぞれ54回ほど擦り、1日に何度も行う。

伝統医学的には「肺は気を主る」、「心は血脈を主る」とされ、胸は心肺二臓を納め、気血との関係が特に密接である。普段、精神不安で情緒が激動する時に、無意識で胸を擦ったり叩いたりして気分をスッキリし落ち着くことが多いが、実際この胸に対する動作は怒りによる逆気や鬱気を治まるためだけではなく、同時に心肺機能を高めて寛胸理気・調暢気血の効果が得、これによって情緒を調節して精神を安定させる。更に長期に続けていくことにより、胸に循行する任脈、肝・脾・腎の足三陰経、そして足陽明胃経など経絡に刺激を与え、養心益肺・活血通脈・老衰対抗などの作用があり、健康増進で疾病予防の役割を果たす。

7、臍腹を擦って健脾和胃

両側の手掌を交互に用いて臍を中心にして円を描くように腹壁を擦り、それぞれ時計回り方向と反時計回り方向に36回か54回ほど行う。その後、両手を温かくなるまで擦ってから重ねて臍中央に当て(男性には左手を下に、女性には右手を下に置く)円を描くように腹壁を揉み、それぞれ時計回り方向と反時計回り方向に36回か54回ほど行う。

伝統医学的には、「脾は運化を主る」、「脾胃は気血生化の源と為り」とされ、腹は脾に属し、「気機の枢」中焦に当たり、生命の後天根本である脾胃の所在である。脾胃不調で脾が健運を失って胃が和降を失うと、気血が不足して身体虚弱になるか、鬱滞させて肥満になる。また臍を人間の先天的な供養通路とし、生体を補養する任脈・衝脈・帯脈などが近くに順行している。腹を擦ることは、健脾和胃の効能を持ち、飲食物の消化吸収と気血の運化などを促進し、生体は充足な栄養を得られ、気血積滞による肥満も解消させ、健康強壮・養生長寿に繋がる。また毎晩の就寝前に行うと、腹筋への刺激により腹部の自律神経節及び血液循環及び・リンパ循環を調節することもでき精神状態を整えて睡眠を改善する。

8、腰骶を擦って補腎壮腰

両手を温かくなるまで擦ってから、腰両側の腰眼穴(第4腰椎棘突起両側3~4寸陥凹部)に当て、暫く温めてから下方へ尾骨端の長強穴(尾骨端と肛門との中点)まで、上下方向に54回か81回ほど擦る。1日に朝晩2回行う。

また風寒や寒湿や過労による腰痛の場合は特に腰眼穴の按揉をお勧めする。両手の拇指と四指を開き、四指を前方に、拇指を後方に両側から腰に当て、拇指がほぼ腰眼穴に当たり、ゆっくりと50~100回按揉する。拇指の代わりに両拳を用いても良い。

伝統医学的には「腰は腎の府なり」とされ、腎は「先天の本」として精を蔵している。過労や加齢に伴って腎気が消耗されて虚弱になり、腰脊冷痛・筋骨変形などの病症が多く見られる。腰骶を擦ることで、局所の毛細血管を拡張させて腰筋を強化すると同時に、腎陽を温煦させて腎精を固摂させ、養生長寿の役割を果たす。腰眼穴は、腰を環状に巡って縦行する帯脈に位置しており、帯脈は諸経脈を制約してそれらの連係を強化する作用を持ち、腰脊疼痛・腹部脹満などの病候を主るため、腰眼穴の按揉は帯脈を疏通させて気血を調暢させ、補腎固精・強壮腰脊の効果がある。

9、足底を擦って強身長寿

毎日の就寝前と起床後に、両手を温かくなるまで擦ってから、一側の手で同側の足背を支え、反対側の手を用いて足裏を前後に36回か72回ほど擦り、この時、気持ちよく感じる中等度の力で行うと足が温かくなる。夜には40℃くらいのお湯で足浴し、脚が赤く手が温かくなってから行うと、もっと効果的である。

老人の足底が乾燥する場合はオイルを数滴垂らしてから擦る。また足が怠く痛い場合は、焼酎などの蒸留酒を少し濡らしてから行うと活血止痛の効果が高まる。足底を擦った後、直ぐに床を踏むや歩くことをしないように、15分ほど休んでから動く。

人体を樹木に喩えると、足は木の根に当たる。木の根が枯れると、枝も葉も枯れて落ちてしまう。伝統医学的には、足は肝・脾・腎の三経脈が循行し始まる所として、生体の根本とされ、特に足心と足根は「先天の本」である腎に属する。また足は「第二の心臓」と言われるように、足の末梢循環は全身の循環に大きく関連している。足底を擦ることで、局所に活血通絡の効果を果たすほか、補腎固精の作用を持つ上、養心安神・健脾益気の効能もある。長期に続けていくと血圧安定・不眠改善、そして人体の免疫強化にも繋がる。

健康知識:常に擦ると長寿に繋がる身体の九か所(前篇)

現代社会では日常の生活や仕事で心身疲労が溜まり易い。特に、ここ二年間はコロナ禍に影響されて精神的にストレスが大いに溜まっているほか、普段必要な運動も取り入れられず、ディスクワークなどで体内の気血循行が余計に弱まってくるため、様々な不快感や遅鈍化が現れる。

日頃より両手で身体の各部位を擦ることで、調気活血・通利官竅・舒筋通絡の効能を果たすほか、先天と後天の本として養生長寿に密接に関連する肺・脾・腎の機能を高めて疾病予防と延年益寿の目的を果たす。ここでは効果的な九か所を紹介し、常に擦って健康の維持と増進に役立てて欲しい。

1、頭髪を擦って益腎黒髪

毎日の就寝前と起床後に、櫛の代わりに十本指を用いて髪の毛を梳かす。前頭と側頭の髪際から上方へ頭頂の中央まで、繰り返して数十回から数百回ほど行い、最後に頭髪を整える。

この方法は古代から「引鬢髪」や「流通」と伝えられて重要な健康養生法とされている。伝統医学的には「髪は血の余と為り」、「腎は骨を主り、髄を生じ、其の華は髪に在り」とされ、気血が旺盛で腎気が充足すれば、髪の毛も濃密で黒い。現代では若者にも年齢に相応しくなく脱毛や白髪が多く現れるが、いずれも気血が不足して腎気が虚弱する病理変化である。頭髪を擦ることで、清陽上昇と気血調和を促し、これによって腎気も強くなり、骨が強健で髄が充満され、脳髄充足で健脳作用を果たし、髪の毛もしっかりと丈夫になって白髪を無くす。

2、顔面を擦って醒神栄顔

両手を温かくなるまで擦ってから、目を閉じて顔を洗うような動作で擦る。顔面下方の下顎から上方へ前頭まで、3~5分間ほど顔が熱く感じるまで繰り返し、力は軽くから徐々に強くする。1日に2回ほど行う。皮膚乾燥の方は擦傷になる恐れがあるため、動作の力度と速度に気を付ける。

また疲労時は特に前頭を擦ることをお勧めする。両手の四指を合わせて手指の手掌面を前頭の正中から左右両側へ側頭にかけて、一方方向に36回か54回ほど擦る。これによって清醒神志の効能をもたらし、また皺取りの効果もある。顔面が気持よくなり目も明るく感じ、気分が爽やかになるため、毎朝醒めてから行うのが良い。

喜怒哀楽の神志活動は先ず顔面に表し、また身体の健康状態も顔面から現れている。伝統医学的には「心は神志と血脈を主り、其の華は面に在り」、「心は五臓六腑の大主と為り」とされており、精神と肉体の健康状態はいずれも心の制御に頼り、顔面は心と密接に連係している。顔面を擦ることで、気血の循行を促進させ、情緒の緊張も緩和させ、これによって心気を調整して精神が優れると共に、顔面の張りを高めて皺を取って若返りの効果も期待できる。

3、鼻翼を擦って利肺通鼻

鼻の両側にクリームを塗り付け、次指または中指の指腹を用いて鼻翼から鼻根にかけて上下方向に100~200回ほど擦る。その後、鼻翼中点外方で鼻唇溝にある迎香穴、及びその上方で鼻唇溝上端にある鼻通穴(上迎香穴)をそれぞれ60回ほど揉む。力は中等度にして皮膚の擦傷を避け、また行ってから少し多めに水分を取ることも助力となる。

伝統医学的には「肺は気を主り、呼吸を司る」、「鼻に開竅する」とされ、肺は一身の気を主リ、鼻は肺の開竅で自然界からの清気を取り込む重要な玄関口であり、同時に邪気が体内に侵入する入口でもある。鼻に充足な気血が巡ると、呼吸機能も健全に働くし、外邪の侵襲も防御できる。気血循行の不調により、嚏や鼻閉(鼻詰まり)や鼻汁(鼻水)が止まらず、更に鼻炎などが現れ、呼吸に支障を来たす。鼻翼を擦ることで、気血運行を促進し、効果的に諸症状を緩解でき、鼻炎や蓄膿症も改善させる。毎日1~2回で長期に続けていくと、肺気を通利することによって呼吸系の免疫機能を強化する予防と養生の作用を果たす。

 4、耳介を擦って補腎聡耳

両手を温かくなるまで擦ってから、手掌を用いて耳介全体を揉みながら擦る。その後、拇指を耳介の後面に当てて、次指中指を用いて耳輪(耳介の外周でまくれた軟骨部分)を上方から下方へ耳垂(耳たぶ)まで揉み下ろし、最後に耳垂を引っ張る。それぞれ36回か81回ほど行うと耳介全体が温かく感じる。

また静養気功法の「鳴天鼓」動作をお勧めする。両側の手掌を用いて耳介全体に当てて外耳道開口をしっかり塞ぎ、次指中指環指の指先で後頭を18回か36回ほど軽く叩く、音は太鼓を敲くようである。耳介を深く按えたまま暫く経ってから、手掌を耳介から速やかに離す。この鳴天鼓の動作を数回ほど繰り返す。

耳介には生体の各部に繋がる腧穴が密布しており、体内に病理変化が発生すると、往々にして耳介に現れてくる。伝統医学的には「腎は耳に開竅する」とされ、耳は先天の本である腎気に密接に関連している。耳介を擦ることで、腎気を補って養生長寿の効果が果たせる。また耳輪の刺激により毛細血管を充満させて末梢循環を改善させるし、耳輪にある耳穴は清熱の効能を以て逆上せや発熱にも効果的である。「鳴天鼓」の動作を長期に続けていくと、醒脳清竅・記憶増進の効果を果たし、また高血圧の方には血管拡張で血圧安定の作用がある。

(つづき)

健康知識:大根の皮の特別な応用価値

秋から冬にかけて旬の野菜である大根はとても美味しく食卓で不可欠な存在だと言える。また健康食材としても数えられ、理気解鬱・消食化痰の薬効を以て鬱気を解消して消化を促進し、消化不良、腹部脹満、咳嗽痰多などの病症に用いられる。

しかし日頃調理する際に、殆ど大根の皮を剥いて捨てることが多い。昔から大根の皮を漬物にして食べることがあるが、更に薄切りして塩、お酢、胡麻油で調味して和え物の一品としてあっさりと美味しいし、酒酔いにも効果的である。実際、この大根の皮は沢山特別な応用効果が期待できる。

ここでは幾つの応用方法を紹介する。

1、腹脹解消

長い在宅で、つい食べ過ぎてしまい、腹部脹満の不快感が現れることがあるが、一枚の大根皮さえあれば、簡単に解消できる。

方法:大根の皮をコインの厚さ、クラッカーの大きさに切り、沸かしたお湯の中に1分間ほど通し、大根の皮の裏面を臍に貼り付け、更に絆創膏で固定しておく。食後に1時間ほど貼り付け、1日三回で、一週間で消化不良による腹脹を解消する。

2、皮膚潤滑

大根にはビタミンAとCが豊かに含まれ、黒色素の生長を効果的に抑制して美白の効果を持つほか、皮膚のかさつきや面皰などを改善させる。洗顔するとさっぱりとした感じになり、滑々して柔らかくなる。

方法:大根の皮を磨り潰し、汁に適量のぬるま湯を加えて洗顔する。

3、偏頭痛緩解

大根には芳香族アミノ酸が含まれ、頭部の血液循環を改善して血管抵抗を減少させ、これによって頭暈や偏頭痛などを緩解する。

方法:大根の皮を盃口の大きさのスライスに切り、両側の顳顬(こめかみ)にある太陽穴に20分間ほど付ける。病状に従って回数を決める。

4、足根痛緩解

大根の皮は含有する芳香族アミノ酸の血液循環を改善する作用により、偏頭痛と同じように足跟痛も緩解する。

方法:大根の皮を鍋で煮込んでからできればガーゼ布で包み踵に貼り付ける。冷めたら鍋に入れて温めて再度踵に付ける。30分間ほど繰り返していくと、足根の疼痛が大分緩解できる。

5、足消臭

大根には食物繊維のほか、カルシウム、燐、鉄、カリウム、ビタミンC、葉酸などが豊富であり、免疫力を効果的に強化して病気抵抗力を高める。

方法:大根の皮を水で煮込んでから、両脚を洗う。毎晩1ヶ月ほど続けていくと、足の臭みが解消できる。

健康知識:冬季に必要な九つのお粥献立

お粥は人間の最も原始的な調理法による食物と言われており、煮込むことにより食物の栄養成分を効率よく吸収し易いため、滋養作用の高い食物調理法だと言える。王孟英の《随息居飲食譜》には「粥飯為世間第一補人之物」と記載されているように、お粥は生体を補う最も効果的な食物である。冬季は一年の中で万物が休養する重要な季節で、補益が養生要旨とされているため、お粥を食するのに適切な時期である。

今年の真冬は例年より寒いので、普段の食卓にお粥を多めに取り入れると、益肺潤燥・健脾補腎の養生価値が期待できる。ここでは冬季に相応しい九種のお粥を紹介し、身体温補の目的を図って健康的に極寒を乗り越えて欲しい。

1、羊肉粥

羊肉200g、綺麗に洗って角切りにし、大根と一緒に煮込んで生臭みを取り除く。大根を取り出してから、羊肉汁にお米を150g加えて柔らかくとろみが出るまで煮込み、適量の青葱や醤油または塩胡椒などで調味して食する。

羊肉は温熱の性質で脾・胃・腎に帰経し、健脾温腎・補益気血の効能を持ち、特に温養脾腎の効果が高い。また高蛋白で低コレステロールの食物の一つと数えられる。冬至の時から多く食することにより、益気補虚・温中暖下の作用を果たし、脾胃虚寒による肢冷不温・神疲無力、腎陽不足による腰膝酸軟・畏寒頻尿など脾腎虚弱の者に適している。

2、高麗人参粥

高麗人参3gをお水と一緒に土鍋に入れてとろ火で20分間煎じ、更に100gのお米を加えて柔らかくとろみが出るまで煮込み、適量の蜂蜜または氷砂糖で調味してから食する。

高麗人参は甘・温・微苦の性質で肺・腎に帰経し、大補元気・固脱生津・安神益智の効能を持ち、労傷虚損で元気虚衰の重篤証候及び気血津液不足の全ての病証に第一選択の温補薬材とされている。高麗人参粥の食用は、大病久病や年老腎虚による体調虚弱、脾胃虚弱による食少便溏・倦怠無力、肺気虚損による咳嗽喘息、気血虚損による自汗眩暈・不眠健忘などに適しているが、また心脳血管疾患の患者に対して効果的である。

3、竜眼粟の粥

竜眼肉15gを綺麗に洗って粟100~200gと一緒に煮込み、強火で沸かしてから弱火で柔らかくとろみが出るまで煮込む。

竜眼は甘温の性質で心・脾に帰経し、補益心脾・養血安神の効能を持ち、特に養心安神の効果が高い。粟は甘・咸・涼の性質で脾・胃・腎に帰経し、健脾和胃・益腎利尿・除煩止渇の効能を持ち、補益脾腎作用と同時に竜眼の清心安神作用を強化する。竜眼粟粥の食用は、心脾両虚による精神不安・思慮過度・不眠健忘、気血両虚による顔色無華・頭暈目眩・自汗盗汗、脾胃虚弱による下痢食少・倦怠無力などの者に適している。

4、胡桃粥

胡桃仁20gを綺麗に洗ってから細かく磨り潰し、お米100~200gと一緒に柔らかくとろみが出るまで煮込む。

胡桃は甘・温の性質で腎・肝・肺に帰経し、補腎固精・温肺定喘・潤腸通便の効能を持ち、特に滋補腎精の効果が高い。胡桃粥の服用は、腎虚による腰腿冷痛・耳鳴髪白・多尿遺精、肺虚または肺腎不足による咳喘気短・腸燥便秘などの者に適している。但し、脾胃湿熱または下痢の者は食しない。

5、山薬栗粥

栗50gの殻を剥いて山薬15~30g、棗3~5個、お米100gを一緒に柔らかくとろみが出るまで煮込む。

山薬は甘・平の性質で脾・肺・腎に帰経し、健脾補肺・固腎益精の効能を持ち、先天・後天を共に補益する。栗は甘・温の性質で脾・腎に帰経し、健脾益気・補腎強筋の効能を持ち、山薬の脾腎補益効果を助長する。山薬栗粥の食用は、脾虚による下痢溏便・食少嘔吐・倦怠無力、腎虚による腰膝疼痛無力・多尿浮腫・遺精帯下、肺虚による気喘咳嗽など、特に脾腎両虚の者に適している。但し一度に多食すると、飲食停滞で消化不良の恐れがある。

6、生姜大棗粥

新鮮な生姜または乾燥の生姜6~9gを綺麗に洗って微塵切りにし、お米または糯米100~150g、棗2~4個と一緒に柔らかくとろみが出るまで煮込む。

生姜は辛・温の性質で脾・胃・肺に帰経し、散寒解表(乾燥の者は散寒暖胃)・化痰止咳・止嘔解毒の効能を持ち、主に脾胃虚寒の治療に用いられる。大棗は同じく甘・温の性質で脾・胃に帰経し、健脾和胃・益気養血・生津止渇の効能を持ち、生姜の温補脾胃効果を強化させる。生姜大棗粥を多く食することにより、暖胃散寒・温肺化痰の作用を果たし、脾胃虚寒による腹部冷痛・食少嘔吐・下痢脱肛、風寒感冒による悪寒発熱・頭痛鼻閉、肺気虚寒による寒痰咳嗽・痰飲気喘などの者に適している。但し陰虚体質や妊婦は内熱旺盛の恐れがあるため慎重に食用する。

7、韮粥

お米を柔らかくとろみが出るまで煮込んだ後、適量の韮を微塵切りにして入れ、更に暫く煮込んで食する。

韮は甘・辛・温の性質で肝・胃・腎に帰経し、補腎助陽・温中開胃・行気散瘀の効能を持ち、特に温補腎陽の効果が高い。またビタミンA、B、Cとカルシウム、燐、鉄などのミネラルが豊富である。韮粥を多く食することにより、助陽通絡・補中緩下の作用を果たし、肩背寒冷、腰膝痠冷などの者に適している。

8、人参粥

新鮮な人参50gを小さなスライスに切り、お米200gと一緒に煮込み、強火で沸かしてから、弱火で柔らかくとろみが出るまで煮込む。

人参は甘・平(生の物は甘・涼)の性質で脾・肝・肺に帰経、健脾化滞・滋肝明目・化痰止咳の効能を持ち、特に健脾養肝の効果が高い。人参粥を多く食することにより、健脾胃・助運化・益肝明目の作用を果たし、脾胃虚弱による食少腹脹・食積不化・下痢便秘、肝虚による目乾夜盲・視物不清などに適している。

9、鶏肉ピータン粥

鶏肉200gを小さい角切りしてお水と一緒に土鍋に入れ、スープが濃厚になるまで煮込んでから、鶏肉を取り出してスープにお米200~300gを加えて柔らかくとろみが出るまでとろ火で煮込む。お粥が出来上がりそうな時に、小さく切っておいたピータン2個と鶏肉を一緒に加え、更に生姜、葱、塩などを適量掛けて調味して食する。

鶏肉は甘・温の性質で脾・胃に帰経し、温中益気・補精添隨の効能を持ち、主に気血の補益に用いられる。鶏肉ピータン粥を多く食することにより、補益気血・開胃生津・滋養五臓の作用を果たし、虚弱損耗、大病久病、気血不足、身体羸痩、心悸頭暈、脾虚による食少下痢、腎虚による頻尿水腫・耳鳴耳聾・遺精帯下などに適している。

ほかに、お粥の栄養価値を高めるため、雑穀米の併用が重要である。例えば蕎麦、燕麦(オーツ麦)、玉蜀黍の粉、粟、黒米、はと麦、更に豆類や芋類などが挙げられ、これらの雑穀類食物の摂取により飲食のバランスが取れ易い。但し食物繊維が豊富なため、消化され難くて消化不良を招く恐れがあるため、事前にお水で浸しておいてから調理するか、長く煮込むことをお勧めする。

健康知識:秋冬季節における膝関節の養護

秋冬季節に向けて天気が陰寒性質に変わり、生体の経脈気血の循行が遅くなる。この時期に膝関節の症状が発作し易い。

膝関節の症状として、下記が挙げられる。

① 疼痛:膝関節の症状に最も多く見られる。「不通則痛」と記されている通り、経絡気血の停滞で痛みが生じる。痛みは動くと増悪し、休むと緩和するが、捻挫や寒冷や過労などを伴う場合は痛みが激しく、更に自由に動けなくなる。

② 発赤腫脹:膝関節内における滑膜の過形成と積液の蓄積で関節の腫脹と発赤が起こされる。初期では寒冷や外傷によって来されるが、進行していくと慢性的な腫脹が続くこともある。

③ クリック音:運動中に音の出る現象が多く現れ、関節軟骨が磨り減って関節面が滑々ではなくなったと考えられる。歩く時や立ち上がる時に、関節が引っ掛かって動けず、屈曲など関節を緩める運動を何度も試し、クリック音が出てからはじめて自由に動ける。

④ 無力感:歩行中、特に階段を降りる時に膝が弱くて力が入らず、激しい時に転倒する現象も見られ、多くは疼痛を伴う。また長時間座ると関節「癒着」の現象もあり、即時に運動ができなくなる。

⑤ その他:軟骨の破壊や滑膜の過形成などにより膝関節は完全に伸展・屈曲ができず、しゃがむ動作や重い荷物も持てなくなる。更に膝関節の炎症進展に従って関節変形や奇形(X脚やO脚など)も現れる。

膝関節の症状を改善させるためには気血調和が重要な前提となっている。ここでは効果的な薬膳料理と養生動作を紹介する。

1、生姜炖鶏肉(若鶏の生姜煮込み)

鶏肉は温中益気・補虚填精の効能を持ち、また生姜は辛温発散の性能で活血祛寒の効能がある。両者の併用により、血脈疏通・筋骨増強の作用を発揮して膝関節の寒湿瘀滞を取り除く。

[材料]雄の若鶏(初めて鳴き声を出した雄の若鶏→童子鶏がベスト)1羽、生姜100~200g、サラダ油、食塩、料理酒(紹興酒がベスト)。

[方法]鶏肉と生姜を小さく角切りしておく。お鍋にサラダ油を入れ、熱くなったら鶏肉と生姜を入れて強火で炒め、料理酒を加えて火が通るまで10分間ほど蒸し、食塩を振ってお皿に盛り付ける。1日以内に食し、1~2週間おきに1回。

2、膝養護三動作

膝関節の壮健を作るために、適宜な運動の必要があり、適宜な運動を行う事で膝関節の退化性病変を防ぎ、骨密度の増加を図る。但し運動方式が重要であり、散歩や水泳などの優しい運動をお勧めするが、階段上りやランニングや山登りなど過剰な運動は膝関節の負担を増やし、諸症状が増悪する恐れがある。下記の三動作は経絡疏通・気血調和の作用があり、下肢の血液循環を促進して膝関節の養護に大いに役立つ。

(1) 下肢摩擦:椅子に座り、両側の手掌を用いて大腿の付け根から足首まで擦る。個人状況にもよるが、1日に20~30回行う。これにより、盛んな気血を大腿下腿の筋肉に注がせ、筋力を増強させて骨格も強壮になる。

(2) 下腿挙上:椅子に座り、両側の下肢を交互に上げ、水平位置で十数秒間止める。1日20~30回行う。下肢を真っ直ぐに進展させると、大腿四頭筋が十分に収縮でき、筋力強化に伴って骨格も強くなる。

(3) 膝蓋按揉:膝を軽く曲げ、両側の手指を用いて経穴を按える。それぞれ示指を内膝眼穴(膝関節の内下方にある陥凹部)に、中指を外膝眼穴(膝関節の外下方にある陥凹部)に、拇指を血海穴(膝蓋骨内側縁の上方3横指)に、環指または小指を梁丘穴(膝蓋骨外側縁の上方3横指)に当て、膝蓋骨を掴むように直接経穴を揉んで按える。更に動作を強化するために、両側の拇指を用いて内膝眼穴と外膝眼穴を再度刺激することもできる。1日に朝晩2回で、1回に5~6分間行う。少し力を強く揉むことで、膝蓋骨軟化に効果的である。

膝養護三動作は一度で直ぐに病状を治すことは無く、長期に続けてはじめて効果が現れてくる。これを参考に適宜な養生動作を行うことで、丈夫な膝関節を作ろう。

健康知識:久坐腰傷を避ける腰部養護動作

新型コロナウイルス感染が長期化する情勢で、不要不急の外出を避けるほか、在宅勤務なども推奨されており、こんな状況はこれからも長引いていくと予想される。

家に居てどうしても長く座り続けがちである。長時間、座ったり立ったりする場合は、腰椎への圧力が大きく、腰筋も緊張が続くため、この状態を長期に繰り返していくと慢性腰筋損傷や腰椎間板ヘルニアなどの疾病に罹り易い。腰椎病変予防の最も簡単な方法として、長時間に同一姿勢を持続せず、適度な運動及び充分な休息を保たなければならない事が重要である。

ここでは、腰部養護の四動作を紹介する。毎日仕事の合間に行うと、腰部の疲労が解消される。また長く続けることで、腰部の関節と筋肉を調節する効果があり、慢性腰筋過労損傷や腰椎・腰椎間板病変を予防する事もできる。

1、腰部按推

[方法]真っ直ぐに立って身体を正面に向ける。

両手は拳を握り、示指の中手指節間関節を用いて手が届く高さの腰椎両側に当てておく。吸気時に腹部の方向へ垂直に按圧して痠感や脹感(怠くて張った感じ)が現れるまで行う。その後、呼気に伴って腰を徐々に伸ばし、手の関節は腰部体表から離れず、按圧しながら上方から下方へ骶骨まで推し下ろし、同時に腰を後方に伸展する。

計3回繰り返す。

[注意]先に按圧して後に推し下ろし、腰は手の按推に伴って真っ直ぐまで伸ばす。

2、腰部回転

[方法]椅子に座って身体を正面に向ける。

左手で左側の背もたれ上部を握り、右手は左側の大腿外側に当てて固定する。呼吸時に腰を最大限に左側へ回して10秒間ほど保持してから、吸気に伴ってゆっくりと正面に戻る。その後、呼気に伴って右側に変えて同様に行う。

左右交互に10回繰り返す。

[注意]上半身を真っ直ぐにし、腰を回す時に下肢は動いてはいけない。

3、腰部牽引

[方法]椅子に座って身体を正面に向ける。

両手の十指を交差させ、吸気時に手掌を頭上に向けて上方へ押し上げ、同時に身体も上方へ引き延ばし、最大限になったら、1秒間ほど止める。呼気時に身体を一側に倒し、最大限になったら1秒間ほど止め、吸気時に正中に戻る。その後、呼気に伴って反対側に変えて同様に行う。

左右交互に5回繰り返す。

[注意]上方へ押し上げて腰部に伸ばされた感じが現れてから、左右の側屈を行う。

4、両手攀足

[方法]椅子に座って身体を正面に向ける。

呼気時に腰を前屈させ、胸をなるべく大腿部に付くようにし、両手は両踝を掴み、最大限になったら5~10秒間ほど止めてから、ゆっくりと腰を戻す。

連続して10回繰り返す。

[注意]膝関節は90度屈曲するが、難度が高くするために真っ直ぐに伸ばしても良い。

健康知識:秋分後の経穴を用いた心肺養護

立秋から秋季に入ったが、初秋は残暑で夏のように暑くて殆ど涼しく過ごせない。秋分は秋の季節を均等に分ける時節であり、秋分を過ぎると秋が急に深まり一気に寒気襲来し、身体が付いていけないことが多い。

秋が深まることにより、人体は上焦の肺と心の二臓が特に弱くなり易いため、大事に養護しなければならない。

1、三経穴を以て肺気養護

五行学説によると、秋の気は燥を特徴とし、人体の肺に繋がる。中医学的には、肺は呼吸を司って全身の気を主り、皮毛腠理(体表)を調節するとされており、「嬌臓」と呼ばれてデリケートなため、風・寒・暑・湿・燥・火熱など多く外邪に侵襲される。秋季では特に自然界の燥気によって病を起こされ易い。下記の三経穴を用いて肺気を強める。

① 迎香穴の按揉

鼻は肺の竅で、肺の門戸である。秋季になると鼻粘膜が敏感になり、風邪燥邪の侵襲で嚏・鼻水などの症状が現れ易い。迎香穴の按揉で鼻竅を通暢させて呼吸系の病邪抵抗能力を高める。

[方法]両手の拇指球部に少しクリームを付け、鼻翼両側の迎香穴から上迎香穴にかけて36回ほど擦る。少し早く行うが圧力を強くしない。1分間ほどで局所が温かく感じる。

鼻閉・鼻痒・嚏などの状況も緩和させるが、また毎日3~5分間を行うことで、感冒予防・鼻炎緩解のほか、脾胃の気を上方へ引き上げる効果も果たす。

② 大椎穴の揉擦

大椎穴は人体において陽の部位に位置し、また諸陽経が集まる場所であるため、陽中の陽とされている。大椎穴の揉擦で全身の陽気を振奮させて生体の防御機能を高める。

[方法]両側の手掌を擦り合わせ、熱くなったら項部の付け根にある大椎穴に当て暖まる。その後は左右の方向へ36回ほど擦る。

ほかに、温灸法を行うことも大変効果的である。

③ 中府穴の点按

中府穴は手太陰肺経の募穴で、主に肺気に繋がって肺臓を調節する。従来肺臓が弱いか、肺臓に持病を持っている方は、中府穴の点按で肺気を調節して防御力と抵抗力を高める。

[方法]一側の手を腰に当て、反対側の示指中指薬指の指腹を用いて鎖骨下縁に沿って外側へ擦り、肩関節の内側に止まる処(鎖骨下窩)から更に下方へ約拇指1本の幅に下がって中府穴に当たり、時計回りと反時計回りの方向へ36回ずつゆっくりと按えながら揉む。

2、三経穴を以て心神養護

秋分を過ぎると、陽気が明らかに収まる。秋風が吹いて花木が枯れてしまい、特に黄昏の夕日を見ると、何となく胸が塞ぎ込んで憂鬱な悲しむ気分が出るのは、どうしても避けられない。秋季の抑鬱を解消させ、神気を納めて神志を安定させることはとりわけ重要である。下記の三穴を用いて心気を整える。

① 膻中穴の按揉

膻中穴は胸部の中央に位置して気の会穴とされ、上焦心肺の気を調節して解鬱効果を果たす。

[方法]拇指指腹または拇指球部を用いて両側の乳頭連接線中点(前正中線上で第4肋間と同じ高さ)にある膻中穴に当て、やや痛怠く感じる程度で力を強く入れ、時計回りと反時計回りの方向へ36回ずつ按えながら揉む。

また按揉後に適量の胸を広げる運動を行うと、寛胸理気の効果を高める。

② 極泉穴の弾撥

極泉穴は手少陰心経の体表起始穴であり、心気を調節して神志を安定させ、憂鬱気分を解消できる。

[方法]一側の中指または拇指の指先を用いて反対側の腋窩頂点にある極泉穴に当て、大きな筋を前方へ弾くと感電感が上腕と手掌の尺側まで響く。

③ 神門穴の点按

神門穴は手少陰心経の原穴であり、心気保養の効果が強い。心気の充足で心神が安定でき、精神状態も落ち着く。

[方法]一側の拇指指尖を用いて反対側の手関節手掌面尺側の豆状骨突起にある神門穴に当て、爪先で豆状骨の橈側際に抓って左右36回ずつ按える。

 

健康知識:百会穴 毎日触ることで健康長寿

百会穴は「陽脈の海」と言われる督脈に属し、頭頂部の中央に位置して人体の最高点となり、天の気に通じる処とされている。天は陽に属しているため、百会穴は人体において陽気が最も盛んになる部位と言える。

また百会穴で交会する督脈と足太陽膀胱経は共に直接脳に通じている。脳は「髄の海」となり、人体の神志機能の根本的な所在であるため、百会穴は神志に最も深く関連すると考えられる。

百会穴の意味

百会穴の名称は手足三陽経脈及び督脈の陽気が交会する意味である。「頭は諸陽の会なり」と言われるように、全ての陽経が頭部に集まっており、百会穴は頭部の中心となり、百脈がここで交会するため、名付けられたのである。

百脈が交会することは、この一点を刺激すると百脈まで影響を及ぼす意味である。従って長期に百会穴を按摩することで、人体の半分以上の経絡及び大部分の経穴を引導し推進することができる。身体虚弱や老年の者に対して陰陽保養の作用をもたらし、《針灸資生経》に「百病皆主」と記載されている通り、百会穴は治療範囲が非常に広い。

百会穴の定位

百会穴は人体の頭頂部にあり、前髪際正中の直上5寸に定位される。具体的に応用する際、前髪際正中と後髪際正中の中点から前方へ1寸の処に取る。便宜の取り方として、左右の耳介を後方から前方へ折り曲げる時に、両側の耳尖を直上に結ぶ線と正中線との交点に取るか、自己取穴では両手の拇指指先で外耳道開口を押さえ、両手の中指指先が合わせている処に取ることができる。

いずれの方法でも、正中線上の前後に按えて詳しく探り当てると、明らかな陥凹部が確認でき、これが精確な位置である。古人は「百会可納豆」(百会穴には豆を納められる)と描いたように、身体が直立する際に、頭頂部の百会穴に一粒の豆を置くと、歩いても落ちないため、この凹みは小さくなく、探し易いはずである。

百会穴の効能主治

針灸臨床では、百会穴は主に頭部・顔面部疾患及び五官疾患、神志疾患の重要経穴として常用されているほか、また気虚下陥の病証にも多く応用されている。

中医針灸学では、百会穴は疏風散邪・清頭明目・安神鎮静・平肝熄風・醒神開竅・昇陽固脱などの効能を持ち、主に頭痛、頭重、頭脹、頭暈、目眩;不眠、健忘、驚悸(驚恐動悸);中風失語、失神卒倒、癲狂癇証、臓躁(躁鬱)、瘈瘲(痙攣)、後弓反張、小児驚風;脱肛、痔瘡、慢性泄瀉、遺尿、陰挺(子宮脱)、気喘、虚損;耳鳴、耳聾、鼻閉、鼻衄などの治療に応用する。

また現代医学では、高血圧、低血圧、ショック、脳循環不全症;鼻炎、副鼻腔炎、内耳性眩暈(メニエール病)、神経性頭痛、不眠症、鬱病、統合失調症、老人性認知症、脳血管障害による意識障害、片麻痺、言語障害;胃下垂、脱肛、子宮下垂などの内臓下垂;舞踏病、夜尿症、小児高熱痙攣、小児夜泣きなどに適応する。

百会穴の日常応用

日常生活では、百会穴は病症改善・健康増進に広く活用でき、大きな役割を果たしている。

血圧調節

百会穴は血圧に対して二方向の良性調節作用を持っている。ある程度まで、高血圧の者に血圧降下の作用を、低血圧の者に血圧上昇の作用を果たす。また健康動作「金鶏独立」では、低血圧や貧血の者は動作を行う際に意識を百会穴に集中すると効果がより高い。

鎮静安眠・頭痛緩和

百会穴は精神安定の効能を持っている。緊張過度、精神疲労、ストレスなどによる不眠や頭痛で困っている者は百会穴を用いた治療で即時に良好な効果が得られる。

精神振奮・健脳養神

百会穴は脳神に繋がり、脳機能の調節作用を以て、心力不足、煩悶驚恐、健忘、不眠惰眠、慢性頭痛、意欲低下、孤独内向など様々な精神状態の低下症状を調整する。また学生は毎日百会穴を軽く叩くことにより、脳疲労の解消に伴い、健脳作用を得る。

陽気補充

陽気は温煦作用を以て全身を暖めており、陽気不足の者は普段寒がりで、年中手足が冷え、時々下痢が発作する。百会穴は全身の陽経と督脈の経気を振奮させ、これによって陽虚体質を改善させる。

昇陽挙陥

脾気は陽気昇挙の作用を以て気血栄養を身体上部に持ち上げるに伴い、全身の臓器を一定の位置に固定する役割も担っている。中気虚弱(脾気虚)の者は上昇不足で気陥が発生し、泄瀉が長期に渡って治らず、更に胃下垂や子宮下垂など内臓下垂が見られる。百会穴は陽気を上昇させる効能を持ち、これらの症状を改善させる。

百会穴の施術操作

通常、百会穴を用いた健康増進の場合は経穴の按揉法を行う。片手の中指または示指を用いて百会穴に当て、徐々に力を強くして30~50回按え、その後それぞれ時計回りと反時計回りの方向に30~50回揉む。体調が弱い方や内臓下垂に患う方は最初軽くして次第に強く変わり、回数も少しずつ増やすことができる。

また精神振奮や頭痛緩和の場合は、百会穴において叩打法を行うことができる。空心掌を用いて百会穴を10回ほど軽く叩くことで、精神をゆったりさせてストレスを解消し、頭痛が緩和できる。

陽気虚弱や中気下陥の場合は、百会穴において温灸法を行うと更に高い効果が期待できる。艾灸箱を頭頂部に固定して一回で15分間、一週間に2~3回の温灸を行う。忙しくて艾灸できない場合は、片手で百会穴を100回ほど軽く叩くことだけでも陽気を保養に役立つ。

百会穴の応用注意

百会穴による健康増進は青年、中年、老年に適し、年齢が高ければ適応するが、児童の場合は慎重に応用しなければならない。特に嬰児幼児の場合は頭蓋骨が柔らかく、泉門が閉鎖していないため、百会穴の応用はとりわけ小心が必要である。

また、推拿手法において軽刺激は補で通と、強刺激は瀉で滞だとされている。百会穴の按揉を行う際に、強い力で按圧してはいけない。猛烈な力をかけると、経脈に損傷を与えて気血の運行失調を起こす恐れがあり、頭痛や頭暈など不快感が現れ易く、更に「一竅乱而百竅乱」(一穴の乱れにより百竅の乱れを致す)の結果になり、五官五感の失調が発生してしまう。百会穴には陽気を上昇させて下陥気血を挙上させる効能があるが、強刺激を与えると、虚弱の陽気が上昇し過ぎるか、肝陽が上亢し易い。特に本来血圧の高い方には、強い力で按圧することで、気血が急激に変動して頭暈目眩などを起こし易く、更に高血圧症の症状発作を来たす。

最後に、経穴推拿は治療の補助手段として応用できるが、降圧薬の代わりにはならない。