健康知識:新型コロナウイルス感染後遺症について

1、概説

新型コロナウイルス性肺炎は、中医学において外感病証の「疫病」の範疇に属する。疫病は強烈な伝染性と流行性を持つ疾病の一種であり、通常の外感六淫(風寒湿燥火)とは異なり、「疫癘(えきれい)」(瘟(おん)疫(えき)、疫毒(えきどく)、癘(れい)気(き)、疫(えき)気(き)、毒気、異気、雑気、乖戻之(かいれいの)気(き)などとも言う)という病邪(致病素因)により起こされる。疫癘の形成は自然界の異常気候、環境の汚染、飲食の不潔、社会制度などと密接に関係している。新型コロナウイルス性肺炎の発生は、急速な蔓延・広範囲の流行・重篤な病状などの特徴から一般的な外感六淫ではなくて「疫癘」によるものである。病状の性質から見ると、主に寒湿の邪気と密接な関係を持って「寒湿疫」と定義している。

中医学における邪気は一つの抽象的な概念で、人体に疾病を致す全ての素因を指し、いわゆる致病素因のことである。致病素因は大まかに外感病因(風寒湿燥火の六淫、疫癘)、内傷病因(喜怒憂悲恐驚の五臓七情)、そして不内外病因(飲食、労逸、外傷、寄生虫、水湿痰飲、瘀血など)の三大類に分けられるが、新型コロナウイルス性肺炎には外感病因の疫癘が致病素因となっている。邪気は主に発病する時に病状の特徴に従って病邪の性質をまとめてきたのであり、現代医学における細菌やウイルスなど具体的なものと全く一致しない。例えば、一種のウイルスが人体に感染して様々な病状を現して来る時に、そのうち寒の特徴が現れる場合は寒邪による外感病証と判断するが、同時に湿の特徴も現れる場合は寒邪と湿邪が合わさって侵襲することによる外感病証と診断する。

また、中医学は単なる病邪から病証を認識するのではなく、生体と病邪を統一して一つの複合体として疾病の解析を行う。病因病機学説によると、正気は発病の決定素因で、邪気が発病の重要条件であるとされている。これは新型コロナウイルス性肺炎の感染発症時期にも感染後遺症時期にも同様である。感染初期では、発熱悪寒、咳嗽咽痛、頭身重痛、倦怠無力などの症状が見られるが、患者の体質などに従って臨床特徴が異なってくる。体質強壮のものは悪寒発熱や頭身緊痛など風寒束表の現れを主としているが、一方、体質虚弱のものは風寒表証のほか、疲労無力など気虚の現れも伴う。また感染後期では、身体困憊など湿邪が強い現れも認められている。

新型コロナウイルス性肺炎が治癒してから、多くの患者には様々な後遺症状が残っている。病状、体質、そして症状によって1~3ヶ月が続くものが多く見られるが、6ヶ月更に1年ほど続くこともある。疫病流行早期の病邪(デルタ種までのウイルス)は比較的強くて直接肺臓を侵襲するため、後遺症状も重篤であり、主に肺線維化(呼吸困難や胸痛など)、心筋損傷(不整脈や心胸重痛など)、嗅覚味覚喪失、疲労無力、睡眠障害、記憶障害ないし脳萎縮、性機能障害などが見られ、これは古代における瘟疫の記載に類似している。現在のオミクロン種ウイルスは感染力が強くなったものの、しばしば上気道を侵襲して症状が激しくなくなり、後遺症状も変化してきて疲労困憊、呼吸急迫、心拍過多、慢性疼痛、筋肉無力、感覚機能異常、不眠、認知障害などを主としている。

2、病機

感染症の初期では、主に正邪闘争の病理反応であり、高熱や煩渇など実熱の徴候が現れる。これによって邪気が追い払われるが、同時に正気も大いに消耗されて弱まっている。感染症の後期では、生体の正気虚損が主な病理となり、陰陽気血虚損の徴候が多く現れ、五臓虚弱の証を呈している。ほかに、病邪が完全に駆除されず体内に残存して痰熱内阻の徴候や、内生の毒が解消されず臓腑機能と気血運行を擾乱して瘀血・痰濁など病理産物による気機阻滞の徴候も伴い、虚実夾雑の証も見られる。

病位:疫癘は口鼻の径路から侵入して先ず肺系(気道)を通して肺臓を侵襲し、主に肺臓及び肺系を損傷する。その後は次第に心・脾胃など他臓腑に影響を及ぼす。

病機:臨床で主な病理機序は陽気損傷、痰湿停滞、そして陰液損耗などがある。

① 陽気損傷:寒は陰邪に属して陽気(主に心陽・脾陽・腎陽)を損傷する;また凝滞・収引の特徴を持ち、臓腑機能と気血運行に障害を来たす。

② 痰湿停滞:湿は土気にあたって脾に通じるため、湿邪が盛んになると、脾胃を損傷する;また重濁・粘着停滞の特徴を持ち、中焦の昇降失調を起こして体内の気機を阻害する。

③ 陰液損耗:疫癘が急激に人体に侵入すると、正気は奮い立って対抗し、これによって生体に高熱を起こし、陰液を損耗する。

上記のほか、外来の毒によって臓腑機能と気血運行の障害を起こし、瘀血・痰濁など内生の毒が生じ、生体の気機不利を起こし、昇降失調の病理を致す。

病状:臨床で多く見られる感染後遺症状は、疲労倦怠無力、胸悶気短、咳嗽気喘、咽痒腫痛、嗅覚味覚障害、動悸不眠、抑鬱焦慮などがある。

肺は気を主り、呼吸を司る。余邪が残存することで肺は宣発粛降機能を失い、肺気が上逆して咳嗽や気喘を起こす。外邪の侵襲により肺が損傷されて肺気は虚弱になると、胸悶や気短が現れる。また肺は鼻に開竅し、喉は肺の戸となるため、肺気が損耗されて不足すると、咽喉腫痛、嗅覚障害が見られる。

脾胃は後天の本であり、運化を主り、気血生化の源となり、また脾は肌肉を主る。外邪の侵襲により脾気が虚弱になると、全身まで気血を輸送できないか、湿邪が体内に停滞することで、身体疲労や倦怠無力が見られる。また湿邪が中焦に停滞して脾胃機能を障害し、悪心納呆や腹脹泄瀉、更に味覚障害が現れる。

心は神志を主る。余熱が完全に追い払わず心神を擾乱すると、動悸不安や虚煩不眠が見られる。心気が虚弱になると、精神疲労、更に抑鬱焦慮などを来たす。また心は舌に開竅するため、心気損傷なら味覚障害が現れる。

3、辨証

臨床では、感染後遺症に痰熱壅肺、陽気不足、気陰両虚、陰虚火旺、昇降不和などの証候が多く見られる。各証候の特徴を把握して辨別する。

① 痰熱壅肺:咳、呼吸急迫、喉中痰鳴、粘稠で黄色い痰を吐く、胸脇脹満、煩躁不安、または胸痛、食欲不振、大便秘結、舌は紅、苔は黄膩、脈は滑数。

② 陽気不足:精神萎靡、面色蒼白または萎黄無華、頭目眩暈、動くと汗かいて気喘、心悸、気短、話したがらない、手足不温、畏寒悪風、また頭痛、頸項痛、全身疼痛または肩背骨節痛が見られる、舌は胖淡、苔は白、脈は沈細無力。

③ 気陰両虚:倦怠無力、咳嗽で長く止まらない、咳音が低くて弱い、胸悶気短、身熱多汗、悪風、心悸、口乾、嘔悪納呆、精神疲労または虚煩不眠、舌は淡紅、苔は少、脈は沈細または虚数;また嗅覚・味覚の減退が見られる。

④ 陰虚火旺:面色潮紅、咽喉腫痛または咽喉乾痛で切られるよう、空咳、口鼻乾燥、口渇で冷飲を好む、五心煩熱、頭暈心悸、不眠多夢、盗汗、舌は紅、苔は少、脈は細数。

⑤ 昇降不和:胸脇苦満、心胸不快、呼吸障害、発熱が持続して冷めない、心拍過多など全身症状が明らかであるが、また呑酸、噯気、悪心、嘈雑、泄瀉、矢気、不眠、抑鬱、焦慮などが見られる、飲酒や過労により症状が増悪する、舌は白、苔は厚膩、脈は弦滑数。

4、対策

新型コロナウイルス感染後遺症に対する全体的な対策は辨証治療と飲食調節の二大方面から考える。

辨証治療は、健脾益気、潤肺滋陰、補腎温陽、養心安神を原則とし、相応する中薬処方や経穴処方を考える。

飲食調節は、補気、健脾、潤肺、安神の順位で薬効食物と食用薬物を組み合わせて考える。

ほかに、様々な養生方法も効果的に応用できる。例えば、就寝前に生姜や艾葉による足浴を行う、或いは太極拳、八段錦、五禽戯、坐禅などを行うことで睡眠補助が期待できる。腹式呼吸で気錬を行うことで老年の咳嗽・喀痰困黯の助力になる。

健康知識:便秘解消の五経穴

便秘は日常生活で多く見られ、年齢増加や運動不足などにより胃腸の機能が減退して現れ易い。特に秋季の乾燥に伴って便秘に悩まされている方が増えている。大便が乾燥して腸管に閉塞することで、腹脹腹痛や食思不振、更に煩躁不安などの病症が起こされることもある。

中医学的には、便秘の病位は大腸にあるが、脾胃・肺・肝・腎など臓腑の機能失調に関係している。

便秘の問題の解決には生活方式の調整するほか、人体における経穴の按揉法を行うことも効果的である。下記の五経穴は腑気通調・潤腸通便の効果を発揮して便秘の解消にお勧めできる。

 

① 天枢

足陽明胃経の腧穴である。中腹部にあり、臍中央から外方2寸に取る。

天枢穴の所在位置は腸に近隣して大腸の募穴であり、大腸の気が腹部に集結する場所となるため、大腸の機能を調節する作用を持ち、便秘、泄瀉、腹痛など腸管関係の病証を治療することができる。また便秘の場合は天枢穴に圧痛反応も現れ易い。

 

② 大腸兪

足太陽膀胱経の腧穴である。下腰部にあり、第4腰椎棘突起下(ほぼ両側の腸骨稜最高点を結ぶ線と同じ高さ)から外方1.5寸に取る。

大腸兪穴は大腸の背部兪穴であり、大腸の気が腰部に輸注する場所となるため、便秘、泄瀉、痔瘡など大腸に関係する病証の治療に効果的に用いられる。

 

天枢穴と大腸兪穴の併用は兪募配穴の方法であり、針灸臨床治療における前後配穴の代表方法となる。両者の配合には「陰病行陽、陽病行陰」の意味が含んでおり、これによって便秘に対して良好な調節作用が期待できる。

 

③ 上巨虚

足陽明胃経の腧穴である。下腿前外方にあり、外膝眼(膝蓋靭帯の外方陥凹部)の下方6寸で、脛骨前縁の外方1横指(中指)に取る。

上巨虚穴は大腸の下合穴であり、大腸の気が下って足陽明胃経に合する場所となり、《黄帝内経霊枢・邪気臓腑病形》にいわゆる「合治内腑」の理論により、便秘、泄瀉、腸癕(虫垂炎)など大腸疾患には上巨虚穴を取って治療する。

 

天枢穴と上巨虚穴の併用は募合配穴の方法であり、針灸臨床治療における上下配穴の代表方法となる。両者の配合により共同に大腸腑気を通調させる作用を果たして便秘治療のために役立つ。

 

④ 支溝

手少陽三焦経の腧穴である。前腕背側にあり、手関節背側遠位横紋の上方3寸で、橈骨と尺骨の間の中央に取る。

支溝穴は三焦経脈の経穴であり、五行では火に属するため、三焦の火熱邪気を疏散し、三焦の気機を調整して腑気を通調させる作用を持ち、古今に便秘治療の重要な腧穴として多く応用されている。

 

⑤ 照海

足少陰腎経の腧穴である。足内側にあり、内果尖の下方陥凹部に取る。

照海穴は八脈交会穴で陰蹻脈に通じ、腎経の脈気が聚まる場所となるため、気化作用が強いとされている。老年の多くは腎精虚損が発生し、「陽常有余、陰常不足」の陰陽特徴が現れ、便秘の発生に至る、或いは陰虚体質で大腸を滋潤できず便秘を来す。照海穴を用いて腎陰を調整して補益し、前後二陰を通調させ、陰液を養って「水液を増やして舟を行かす」ように便秘を緩解させる作用を果たす。

 

腧穴を用いて便秘を解消するには日々の習慣にする事が重要であり、毎日持続して上記の腧穴に按揉法を行うことが望ましい。手技の軽重は適宜に保つ。重症な便秘の場合は医療機関を受診し、明確な発病原因を辨別したうえ、総合な治療手段を受ける。

健康知識:秋季補肺のための百合の応用

酷暑が長引き、立秋から暫く経ちましたが、蒸し暑くて中々爽やかにならず、秋分になってようやく朝晩秋の気配が感じられるようになった。

秋季は「陰長陽消」の時期であり、万物が「引き締まる」特徴を現している。自然界の六気では燥が主気となり、燥は陰を傷め易い。また五行学説では、人体の肺臓は秋季と同じく金に属しているため、秋気に通じて合っている。肺は「嬌臓」と呼ばれるようにデリケートの臓で、湿を好んで燥を嫌悪する生理特徴を持ち、寒熱燥などの邪気に耐え難く、特に燥邪に傷められ易い。そのため、秋季では潤肺が最も重要な養生原則である。飲食薬膳による健康養生では、梨、冬瓜、百合、白木耳、蓮実、銀杏、杏仁、蜂蜜、鳩肉などの食材は直接肺臓に滋潤・補益の作用を持っている。中でも、百合が特にお勧めの一種である。

百合はユリなどユリ科の同属多種の植物の鱗茎であり、乾燥したものは漢方薬として応用されている。百合は甘微苦・微寒(平)の性味で、心・肺に帰経し、養陰潤燥・益肺止咳・清心安神の効能を持ち、主に肺陰虚損による久咳不止(気管支拡張症)、痰に血が混じる、肺熱壅滞による胸悶心煩、熱病後期で余熱が下がらないか、或いは情志不遂(精神不調)による虚煩驚悸、不眠多夢、精神恍惚、百合病(心肺陰虚証);癕腫、湿瘡などに用いられる。現代の薬理学研究によると、百合に含まれる多糖類、サポニン、コルヒチンなどの成分は抗炎症・抗腫瘍・免疫強化・抗酸化・抗疲労・血糖降下・血脂降下・止咳平喘・鎮静安眠・潤腸通便などの作用を持っている。また薬食両用の物として薬膳の良品でもあり、滋養補益の絶品と呼ばれるほど、補益且つ清潤の特徴を持ち、「補無助火・清不傷正」(補っても逆上せず、清めても正気を傷まない)のため、体内虚火がある衰弱の者には最適であり、特に秋季の食用に相応しい。

ここでは百合の食用方法を幾つか紹介して秋季の肺臓補益に役立てて欲しい。普段、羹や粥など煮込みの場合は多く干し百合、炒め料理の場合は主に新鮮な百合根を使用する。

1、百合蓮子銀耳羹(百合と蓮実と白木耳の羹)

[材料]干し百合20g、白木耳3枚、蓮実20g、氷砂糖100g、枸杞10g。

[方法]白木耳を30分間水に浸して戻してから小さく千切り、弱火で2時間半煮込んで粘々になったら氷砂糖を加え、水で浸した蓮実を入れて更に30分間煮込み、水で戻した百合と枸杞を入れて15分間煮込む。

[効用]滋陰潤肺、益気養心。主に肺気陰虚による咳嗽痰多、胸悶気短、不眠多夢、面色不華などに適する。

2、百合荸雪梨羹(百合と黒慈姑と梨の羹)

[材料]干し百合30g、黒慈姑50g、梨1個、氷砂糖少々。

[方法]黒慈姑を綺麗に洗って皮を剥いてから叩き潰しておき、梨を綺麗に洗って種を除いて細かく切り、百合と一緒にお鍋に入れ、適量の水を加えて柔らかくなるまで煮込み、更に氷砂糖を入れて少々煮込む。42回に分けて服用し、連続して10~15日を1クールとする。

[効用]潤肺清火・化痰止咳。熱証の慢性気管支炎、慢性咳嗽、熱病後期(回復期)の虚熱口渇などに適する。

3、西芹枸杞炒百合(セロリと枸杞の実と百合の炒め)

[材料]セロリ200g、枸杞10粒、新鮮な百合根140g、鶏がらスープの素、食塩。

[方法]セロリはお湯を通して強火で速やかに炒め、火が通ったら百合根を加えて透明になるまで炒め、調味料を加えて枸杞を均等に混ぜる。

[効用]清熱解毒・潤肺止咳。主に風熱感冒による咳嗽頭痛、肝陽上亢による頭暈煩熱、熱病後期・飲酒による煩熱口渇などに適する。

4、百合糯米粥(百合の糯米粥)

[材料]新鮮な百合根40g、糯米100g、氷砂糖適量。

[方法]百合を綺麗に洗って細かく切り、糯米と一緒にお鍋に入れ、水を加えて米が柔らかくなるまで煮込み、氷砂糖で調味して朝晩暖めて服用する。

[効用]潤肺止咳・寧心安神。秋燥による皮膚乾燥、心煩不眠、空咳痰少、大便秘結に適する。

5、百合紅棗糯米粥(百合と棗の糯米粥)

[材料]干し百合60g、糯米200g、棗30g、黒砂糖適量。

[方法]干し百合を水で30分ほど浸し、棗を小さく千切り、糯米と一緒にお鍋に入れて水を加えて柔らかくなるまで煮込み、お粥が粘稠になったら黒砂糖を加えて均等になるまで少し煮込む。

[効用]健脾養胃・益気安神。精神不振、四肢無力、食思不振、心煩不眠、肺虚空咳などに適する。

6、杏仁百合粥(杏仁と百合の粥)

[材料]杏仁9粒、干し百合15~20g、粳米30~50g、砂糖適量。

[方法]杏仁、百合、粳米を水で2回浸し、1回で30分間、砂糖を加えて柔らかくなるまで煮込む。

[効用]潤肺止咳・清心安神。空咳痰少、心煩不眠に適する。

7、苓術百合粥(茯苓と白朮と百合の粥)

[材料]茯苓5g、懐山薬30g、麩炒白朮15g、砂仁6g、百合10g、粳米250g。

[方法]茯苓、山薬、白朮、砂仁、百合を綺麗に洗って適量の水で30分間浸し、強火で煮てから弱火に変えて30分ほど煮込み、残渣を除いて汁を粳米と一緒に土鍋に入れ適量の水を加えて弱火でお粥になるまで煮込む。

[効能]健脾和胃・潤肺養陰。

百合は秋季養生の絶品であるが、適切に応用しなければならない。風寒感冒による咳嗽、脾胃虚寒による泄瀉便溏の者は食用を控える。

健康知識:三伏天における冬病夏治の食療処方

三伏天(さんぷくてん)は二十四節季の小暑と処暑の間にあり、一年中最も気温や湿度が高くて蒸し暑い時期である。今年も7月11日から三伏天に入り、ここ数年続いて、初伏10日、中伏20日、末伏10日で、計40日間である。

中医学には「春夏養陽」の養生原則があるが、三伏天では特に陽気の保養に注意しなければならない。そのため、温暖・発散を適宜とし、寒冷・収斂を禁忌としている。簡単に言えば、「伏天に入ると、冷える物を食しない」と言われるように、普段は温かい飲み物や熱性の生姜棗汁などを飲んだりし、冷たい飲み物や冷える食べ物を控える。また冷房環境に籠ってはいけない。これによって生体に効果的な発汗をさせ、体内に伏せている寒湿邪気(代謝廃物)を順調に排泄する。

夏季の炎熱酷暑で、ついアイスクリーム、かき氷、冷たいビール、冷やした西瓜などを好んでしまう人が少なくないが、これらの寒冷食物は直接中焦陽気を傷めて脾胃虚弱を起こし、更に一身の陽気を損なう恐れがある。現代医学的にもこれらの寒冷食物は食道や胃腸のほか、近隣する心臓動脈を刺激して収縮痙攣を起こし、循環障害の発作を招いてしまうと指摘している。

三伏天の時期、人体の陽気は自然界に従って最も旺盛になっているため、体内に凝集して冬季に疾病発作を起こす陰寒邪気は比較的解けやすい状態になっている。夏季の暑熱が体内に貯まらないように、健常者には苦味や涼性でアッサリとした飲食物をお勧めしているが、慢性的な喘息咳嗽、胃痛泄瀉、関節冷痛など冬季持病の方や身体虚弱の方は、この時機を上手く利用して補虚助陽と共に温裏散寒の効能を持つ食物や薬物を加えるか、温灸を据えることなどで、天人の協力で身体の奥に蓄積している頑固な寒邪宿疾を一気に追い払う効果が果たせる。いわゆる「冬病夏治」のことである。また冬病治療と同時に、体内の虚弱陽気を調節し補充し、生体の免疫力を高めて一年中疾病の抵抗力を強める事が出来る。

冬病夏治の方法は沢山あるが、通常温灸法や三伏湿布などの外治法が多く知られて用いられている。実際、飲食薬膳の内治法も便宜的で効果的である。特に皮膚が過敏で外治法に合わない場合、簡単な飲食薬膳だけで明らかに冬病の再発を減少させ、病状進行を緩和させることかでき、また身体虚弱の補養効果も大きい。冬季では健康維持のために通常、羊肉、豚の腎臓、海老、韮、山芋、胡桃、黒胡麻など温熱性能で温腎祛寒の食材が用いられており、いずれも適当に応用できる。更に漢方薬を併用することで疾病治療の効果が期待できる。

ここでは、冬病夏治のための飲食薬膳処方を紹介する。

① 卵の緑茶煮

緑茶15g、鶏卵2個、お椀1杯のお水に入れて煮込み、火が通ったら鶏卵の殻を剥いて更に煮汁がなくなるなるまで煮込む。益肺理気の効能を持ち、慢性気管支炎、気管支拡張症、気管支喘息など肺陰虚に用いられる。

② 卵の生姜炒め

生姜を千切りにし、落花生油を熱くして生姜を炒め、鶏卵1~2個を加えて固まるまで炒め、毎朝1回食する。利肺降気・健脾止瀉の効能を持ち、慢性咳嗽、慢性喘息、慢性泄瀉などに用いられる。

③ 梨貝母の煮汁

梨1個、皮を剥いてスライスし、川貝母12gを磨り潰して氷砂糖20gを加え、一緒に煮込んで汁を服用する。潤肺止咳の効能を持ち、老年性気管支炎の肺熱による空咳、痰少などに用いられる。

④ 二姜と豚胃袋のスープ

豚の胃袋1個、お酢で綺麗に洗って生臭みを取り、千切りにしておき、乾姜10g、高良姜10g、草果3g、土瓶に入れて葱と生姜を加えて柔らかくなるまで煮込み、塩3~5gで調味して空腹時に食する。健脾温胃・助運止瀉の効能を持ち、脾胃虚弱による胃脘冷痛、飲食不化、慢性泄瀉、面色萎黄、身体羸痩、倦怠無力などに用いられる。

⑤ 栗と羊背骨のスープ

栗12個、羊の背骨1本(金槌で砕く)、肉蓯蓉12g、草果3g、土瓶に入れて葱と生姜を加え、柔らかくなるまで2時間ほど煮込み、塩で調味して空腹時に食する。補腎固本の効能を持ち、腎精虚損による慢性婦人科疾患、腰膝痠軟冷痛、筋骨無力などに用いられる。

⑥ 鮒の胡椒スープ

新鮮な鮒1匹(約250g)、鰓と鱗と内臓を取り除き、生姜20gをスライスにし、砂仁と胡椒粉を一緒に魚のお腹に入れ、適量のお水を加えて中火で火が通るまで煮込み、塩で調味して食する。温補脾胃の効能を持ち、脾虚型または胃寒型の胃痛に用いられる。

⑦ 雄鶏の白胡椒スープ

雄の鶏1羽、綺麗に洗ってから角切りにし、白胡椒9g、草果3g、良姜3gと一緒にお鍋に入れ、葱と生姜を適量加えてお水から柔らかくなるまで煮込み、塩で調味して空腹で食する。温肺補虚・止咳平喘の効能を持ち、虚弱羸痩、畏寒少气、寒冷発作の咳嗽、繰り返す感冒,アレルギー性性鼻炎,冬季増悪の喘息などに用いられる。

⑧ 烏骨鶏の黄芪スープ

黄芪30g、乌骨鶏半身を共に煮込み、鶏肉が柔らかくなったら調味料を入れて肉を食べてスープを飲む。3回に分けることが出来、連続してひと月くらい食する。養肺益気・滋腎補血・固表防感の効能を持ち、身体虚弱、易感冒、咳嗽などに用いられる。。

⑨ 大豆花山椒スープ

大豆30g、花山椒5gをお水500mlに入れて強火で煮たってから、弱火に変えて柔らかくなるまで煮込み、お好みで調味して豆を食べて汁を飲む。健脾宽中・和胃止呕・散寒止痛の効能を持つ。

上記のほか、冬病の凍瘡に対して温熱性能を持つ食物薬物を外用する事もできる。紫色の大蒜(独株のが良い)を泥状に潰して暖かくなるまで天日干しし、薄く凍瘡再発部位に塗り付ける、一日に3〜5回、連続して5〜7日行うことで、冬季での再発を予防する。或いは新鮮の胡麻葉を丸めて凍瘡再発部位を擦り、汁を皮膚に残して1時間後に洗い落とす。一日に数回、連続して1週間ほど行う。或いは紅花10g、桂枝15gの煎じ汁を凍瘡再発部位に塗り付ける。一日に1回、連続して5日間行う(妊婦不適)。

三伏天にもう一つ簡単な陽気保養の方法がある。夕方に一日日光に当たって熱くなった木や石のベンチに座ることで、湿邪停滞による腰腿重痛、早朝の腹痛泄瀉や手足不温・月経腹痛など虚寒証、様々な持病を改善させられる。

健康知識:健脾利水・清熱除湿の良薬 はと麦

梅雨季節に入り蒸し暑い日々が続き、頭が重くて体がだるい、汗がベタベタしてすっきりしない、食欲が出ないなどの症状は湿邪が体内に溜まっている特徴である。そのため、この時期の健康維持で最も重要な原則は清熱除湿である。

中医学的に五臓の中の脾は、気血を化生し運輸するほか、水湿を運化する生理機能がある。脾が健常であれば、気血が充足するし、体内に停滞している湿邪も変化し排除されていく。逆に湿邪が盛んになると、脾の機能も影響されて低下してしまう。

健脾除湿と言うと、真っ先にはと麦が思い出される。はと麦は薬食両用の材料の一種として知られ、その清熱利湿の薬効効果が最も重視されている。はと麦は涼・甘淡の性味で、脾・胃・肺・腎に帰経し、健脾止瀉・利水燥湿・舒筋除痹・清熱排膿などの効能を持ち、主に脾虚湿盛による泄瀉、浮腫、湿温病、脚気、婦人帯下、小便不利;風湿痹痛、筋脈拘攣;肺癕、腸瘍などに用いられる。現代研究によると、はと麦は血圧低下、糖質脂質代謝の改善、腸内菌の調節、抗癌、美白など様々な作用を持っている。また栄養価が高く、適応範囲が広く、安価などのこともあり、日常飲食生活における健康増進に非常に適している。はと麦の作用が平和で、微寒で清熱しながら胃を傷めず、益脾しながら補い過ぎない特徴があり、特に久病体虚や病後回復、そして老人・小児に多く適応している。なお、健脾益胃の場合ははと麦を炒り、利水滲湿・清熱排膿・舒筋除痹の場合は生の物を用いる。

但し普段の食生活では、はと麦の調理に慣れていない方が多いようで、ここで、はと麦の応用方法を紹介するので炎熱と湿気の強い梅雨季節に活用して欲しい。

はと麦小豆粥

[材料]はと麦30g、小豆20g、米50g。

[方法]はと麦と小豆を綺麗に洗ってからお鍋に入れ、お水を加えて強火で煮立ってから弱火に変えて30分間ほど煮込み、更に米を加えて30分間煮込む。

[効用]健脾祛湿。脾虚湿盛による身体困憊、食少腹脹、大便が粘っこくてスッキリしない、舌苔厚膩に適する。

はと麦八宝粥

[材料]はと麦30g、白扁豆、蓮実、胡桃、小豆、竜眼肉各10g、棗6個、糯米100g。

[方法]上記食材を綺麗に洗ってお水と一緒にお鍋に入れ、弱火で柔らかくなるまで煮込んでから、適量の氷砂糖または黒砂糖で調味する。

[効用]健脾開胃祛湿・益気養血。脾虚血少による倦怠無力、食欲不振、慢性泄瀉、心煩不眠などに適する。

はと麦山薬の燕麦粥

[材料]はと麦200g、山薬(皮を剥いて角切り)150g、オートミール30g。

[方法]はと麦を綺麗に洗ってお水で30分間煮込み、そこに山薬を入れて柔らかくなるまで煮込み、オートミールを加えて均等に混ぜる。

[効用]健脾燥湿・開胃消食。脾胃気虚湿滞による面色萎黄、全身無力、食欲不振、消化不良、舌苔厚膩などに適する。

はと麦黄耆棗の粟粥

[材料]はと麦100~200g、生黄耆30~50g、棗10個、粟50g。

[方法]上記食材を綺麗に洗ってお水を加え、弱火で柔らかくなるまで煮込む。

[効用]健脾益気・清熱補血。脾胃虚弱による身体羸痩、面色晄白、倦怠無力、気短自汗などに適する。またはと麦にCoixol(6-methoxybenzoxazolon)、コイクノライド(Coixenolide )という成分が含まれ、また豊かなセレン元素(Selenium)を含有するため、癌細胞の増殖を抑制することができ、癌患者の補助食として用いられる。

はと麦小豆冬瓜皮の鮒スープ

[材料]鮒1匹(約400~500g)、はと麦50g、小豆30g、冬瓜皮50g、陳皮5g、生姜3スライス。

[方法]鮒の鱗と内臓を取り除いて綺麗に洗い、鉄鍋にサラダ油を少々塗して弱火で鮒を炒っておく。はと麦をお水で30分間煮てから小豆、冬瓜皮、陳皮、生姜、鮒を加えて30分間煮込み、料理酒を少々入れて沸騰したら出来上がり。

[効用]健脾利水。脾虚による水腫、脘腹脹満、食少、大便溏泄、四肢倦怠などに適する。

はと麦杏仁冬瓜仁葦茎スープ

[材料]はと麦50g、杏仁10g、冬瓜仁30g、芦の茎30g。

[方法]上記の食材を綺麗に洗ってお水に入れ、強火で沸騰してから弱火に変えて1時間煮込む。

[効用]健脾祛湿・止咳化痰。脾虚湿滞で、肺熱による咳嗽、粘っこい白色または黄色の痰を吐くなどに適する。

はと麦玫瑰花月季花茶

[材料]はと麦30g、玫瑰花5g、月季花3g。

[方法]はと麦を綺麗に洗ってお水に入れ、強火で煮立ってから弱火に変えて1時間ほど煮込み、火を止めて玫瑰花と月季花を加え、蓋を閉めて15分間蒸し、冷めてから飲用する。

[効用]美白潤膚・活血消斑。長期飲用により皮膚が滑々で、褐色斑や面皰を解消する。

 

健康知識:夏季における生姜の応用

中国では「冬に大根、夏に生姜を食べれば、医者の薬方をいらず」との言い方がある。夏季に向けて生姜を活用することで、健康維持に役立つ。

生姜は辛・温の性味で、脾・胃・肺経に帰経し、散寒解表・温肺化痰止咳・温中降逆止嘔・解毒の効能を持ち、主に風寒感冒による悪寒発熱、頭痛鼻閉、肺寒による咳嗽多痰、痰飲喘咳、胸脇脹満;脾胃虚寒による脘腹冷痛、泄瀉、胃寒または胃気不和による悪心嘔吐、食少;婦人月経不順、崩漏、産後血暈、瘀血腹痛、吐血、鼻衄、喀血、便血;魚蟹や半夏の中毒などに用いられる。また、姜には生姜と乾姜の違いがあるが、生姜は温性で発汗解表の作用が強く、乾姜は熱性で温中散寒の作用が強い。

ここで夏季における生姜の応用を紹介する。

1、生姜黒糖汁

夏の朝起きてから先ず、生姜と黒糖の煮汁を飲むことで、消化液の分泌を促進して健脾開胃・消化促進の作用を果たし、同時に祛風散寒の効能を持ち、風寒感冒の症状がある場合は緩解する。

2、生姜棗汁

生姜と棗の煮汁は和胃降逆止嘔の作用を果たし、寒冷による胃痛、吐気、嘔吐、腹痛、下痢などに対して緩和効果がある。

3、生姜紅茶

紅茶1~3g、生姜3スライスをコップに入れてお湯を加えて茶代わりに飲むことで、夏季における寒冷飲食による消化機能低下、胃腸機能失調などの諸症状を緩和する。

4、生姜汁外用

夏冷房の室内に長時間いると、肩背部や背腰部の強張りや痛みが屡々見られる。この場合、温かい生姜の煮汁に少々食塩とお酢を加えてそこにタオルを入れて濡らし、患部に当てることで、舒筋活血の効果を持ち、局所筋組織の強張りを緩め、痛みを解消する。

注意して欲しいのは、陰虚内熱及び実熱証のものには生姜の長期食用が適さず、肝疾患、目疾患、痔瘡のものは慎重に食する。また、生姜黒糖汁は風寒感冒の軽症に適するが、風熱感冒や暑湿感冒には適しない。

健康知識:葱姜蒜による春季の疫病予防

春が近付くと自然界は陽気昇発という特徴になり、万物生成の光景が現れている。同時に春は風を主り、風を特徴とする病証が流行り易い。そこで、今の季節には新型コロナウイルス感染症に加え、様々な感染症が多発している。感染症の予防には感染源遮断と免疫力増強が重要な方針である。マスク着装・対人距離保持・随時の手洗いなどは感染源遮断のため効果的な方法であるが、人体生命力の一面である免疫力は医療気功、針灸推拿、薬剤薬膳など東洋的な医療方法により強化できる。

古来、伝統医学では薬食同源を提唱して食物の特性を以て疾病の予防と治療に用いている。これによって陰陽のバランスを取り戻して生体の免疫力を高める。「厨房三宝」と呼ばれる長葱・生姜・大蒜は薬食両用の重要な食材である。辛熱発散の薬性を持っているため、春の特徴と共通し、人体の陽気を助長して風寒湿の邪気を取り除き、疫病の予防効果を果たす。《傷寒論》、《千金方》、《本草綱目》など薬物経典に収録してある疫病の予防治療の食療処方に長葱・生姜・大蒜を含むものが数多くあり、また熱く炒って臍や合谷などの経穴に付けて熱罨法を行う外治療法をも記載している。

ここでは長葱・生姜・大蒜の薬性効果と応用方法について紹介する。疫病蔓延の時期に当たって多めに食用することにより、予防治療の作用を果たして欲しい。

1、長葱

葱は辛味・温性で、肺・胃に帰経し、発汗解表・通達陽気・殺虫解毒の薬効を持つ。風寒感冒の良薬であり、医聖張仲景はその通陽作用を熟用して君薬(処方の主薬)として推奨し、《本草綱目》には「生辛散,熟甘温,外実中空,肺之菜也,肺病宜食之。」と記載している。

長葱には発揮油が含まれ、その成分はアリシンAllicinで、強い殺菌作用がある。調理上、長く茹で過ぎたり煮過ぎたりすべきではない

[応用]葱白粥。

[作り方]お米50g、長葱の白い根、砂糖適量。先ずお米を煮込み、柔らかくなりそうな時に葱白を段冊切りして入れ、一度沸騰してから、砂糖で調味して温かく飲む。1日に1回。

[効能]解表散寒、和胃補中。主に風寒感冒に適応する。

また、咳嗽咽喉疼痛を伴う場合は、長葱を丸ごとフライパンで柔らかくなるまで炒るかグリルで焼いてガーゼやハンカチに巻いて喉に巻き付けることも効果的である。

2、生姜

姜は辛味・温性で、脾・胃・肺に帰経し、発散風寒・発汗解表・活血除湿・化痰止咳・温中止嘔・解毒などの薬効を持つ。これによって血液循環を促進し、毛穴を広げて汗を排出させ体内の余分の熱や邪気を払い出し、また人体の新陳代謝を速めるほか、血栓の形成を予防する。

[応用]生姜紅棗水

[作り方]生姜5スライス、棗5個、黒砂糖適量。たっぷりのお水を入れたお鍋に生姜と棗を入れて強火で沸かしてから、弱火に変えて15分間ほど煮込む。黒砂糖で調味して飲用する。

[加減]好みによって黒砂糖を食塩に変えても良い。寒性体質の場合は生姜を増量する;薄い鼻水、鼻詰まりの場合は長葱の白い根を4~5個加え、根の鬚が更に良い;熱性体質で逆上せ易い場合は生姜を減量し、杭白菊を数個加える。

3、大蒜

大蒜は辛味・温性で、脾・胃・肺・大腸に帰経し、温中健胃・消食止痢・解毒殺虫・理気止咳・抗癌消瘤・宣竅通閉・健脳益知・老衰遅延などの薬効を持つ。「天然の広域スペクトル抗生物質」と呼ばれるように、インフルエンザウイルスや寄生虫などに対して優れている抑制や殺傷の作用を果たす。

大蒜にはアリシンAllicinが含有され、広範の抗菌・殺菌・抗原虫の作用を持っているが、有効成分は加熱すると失ってしまうため、生で食用するのが適宜である。

[応用1]大蒜水

[作り方]生の大蒜を数欠片スライスに切るか潰し、朝昼晩に分けて温湯に浸して飲用する。或いは醤油、お酢、胡麻油で食用する。

[応用2]大蒜泥吸入

[作り方]生の大蒜を泥状に磨り潰し、匙一杯を口に入れ、深呼吸を行う。1回15分間繰り返して1日に3回行う。鼻水、痰、涙などが出る場合は直ぐに鼻をかんだり、痰を出したりして呼吸を続ける。

[効能]清肺健脾、抗ウイルス。

 

健康知識:冬季における感冒咳嗽の食療方法

冬の季節は、感冒(風邪)に罹り易くなり、悪寒発熱や鼻水頭痛などの症状が伴うほか、咳が多く見られる。しかも諸症状が治まっても咳だけが中々治らず、飲食や睡眠など日常生活に支障を来たし、更に慢性化すると咽喉炎や気管支拡張なども起こし易い。

中医学の飲食薬膳療法を活用することで、早急に咳の症状を改善させることができる。具体的に応用する際には、感冒の臨床辨証を行う必要があり、これにより咳嗽の治効を高める。

中医学的に、感冒は外界の邪気を感受して発病する外感病(外感表証)に属する。感冒による咳嗽は主に風寒か風熱の邪気から起こされるが、ほかに風燥によるものもある。臨床では、主に寒熱の辨証に従って相応しい薬膳献立を選択して対応することができる。

1、風寒咳嗽:咳の音は重く濁る、咽喉が痒い、喀痰が薄くて白い、また悪寒発熱、無汗、頭痛、全身痠痛、嚏、鼻詰まり、薄い鼻水など風寒束表の症状を伴う。

寒性咳嗽の場合は、大根葱白生姜湯を勧める。宣肺解表・止咳化痰・理気消食の作用を以て風寒咳嗽に多く用いられる。作り方は、大根と長葱の白い部分と生姜をそれぞれ15g薄切りにしておき、先ず大根をお椀3杯ほどの水に入れて柔らかくなるまで煮て、葱と生姜を加えて再度沸騰させ、汁を飲んで具も食する。

また、大根のスライスを紫蘇の実(或いは棗)と蜜柑の皮と一緒に煮て黒糖を加えて温かく飲む事も風寒疏散・宣肺止咳・消食化痰の効果を果たす。

ほかに、風寒感冒で悪寒無汗、全身痠痛などで苦しい場合は、生姜と黒糖の煮汁を大量に飲用して発汗することで対策するが、駆寒暖胃の効能に加えて潤肺止咳の効果も強化するため、生姜黒糖大蒜の煮汁をお勧めする。人体の免疫力強化に繋がって風寒感冒の予防策としても用いられる。作り方は、大蒜を15gスライスして10~15分ほど放置し、生姜も15gスライスし、お椀1杯ほどの水に入れて煮立てて大蒜のスライスと黒糖を加え、再度沸騰したら弱火にして10分間煮込む。

2、肺熱咳嗽:咳、咽喉が乾いて腫れて痛い、喀痰が黄色く粘っこい、また発熱頭痛、汗出悪風、黄色い鼻水などの風熱襲肺の症状、或いは空咳で痰が少なくて吐き出し難い、咳が甚だしい時に血痰、胸痛など燥熱傷肺の症状を伴う。

熱性咳嗽の場合は、オレンジの塩蒸しをお勧めする。オレンジの実には理気化痰・潤肺止咳の効能があるが、オレンジの皮にも化痰止咳の重要な成分のノスカピンと橙皮油が含まれ、皮つきで蒸してはじめて有効成分が取り出される。作り方は、食塩でオレンジの外皮を綺麗に洗い、オレンジの上端を水平に切って蓋として残しておく。オレンジを茶碗に入れ、お箸でオレンジの果肉に数個の穴を刺し、適量の食塩を塗してから切り落とした蓋を閉める。鍋に入れて10分間ほど蒸し煮し、オレンジの果肉を取り出して汁と一緒に温かく飲む。通常一日に一個を食す。

老年性慢性気管支炎による咳嗽で痰が多い場合は、大根蜂蜜水をお勧めする。大根には生津止咳・理気化痰の効能があり、蜂蜜には潤肺止咳・潤腸通便・潤膚美顔の効能がある。作り方は、大根を綺麗に洗って千切りするか小さい塊に切り、適量の蜂蜜を掛けて均等に混ぜ、水も油もない容器に2時間ほど放置すると汁が染み出る。汁を飲んで大根も食す。

肺燥による空咳が長らく止らない場合は、鶏卵の胡麻油炒めをお勧めする。胡麻油は通気理肺の効能を持って咳嗽を軽減させるほか、様々な異物による肺臓への損傷を軽減させ、鶏卵は補肺養血・清熱解毒・潤利咽喉の効能を持っている。作り方は、胡麻油を鍋に入れて熱し、生姜の微塵切りを少々加えて香りが出たら、溶いた鶏卵を入れて熱が通るまで炒め、調味料は入れない。

健康知識:冬至に冬季養生を再び語る

二十四節気の冬至が到来し、これから本格的な厳冬時期を迎える。今年は陰陽消長の変化が激しく、夏は余りにも酷暑であったため、冬は例年より酷寒になりそうで、冬季の養生についてもっと意識を強化する必要がある。

* 2020年送付した《中国伝統医学 健康養生知識》の112頁における「冬季における補腎養生(2014年12日公開)」も参照できる。

陰盛陽衰の冬季では冬至が一年中の陰陽転化の転換点であり、自然界の陰気が極めて盛んになると同時に陽気が生み始める。この陰陽変化に従い、生体も陽気が生み始めて弱いため、外界の寒邪に損なわれ易い。そのため、健康養生のため陽気の封蔵と養護はこの時期、最も重要な原則とされている。また中医学では、腎気は冬気に繋がっており、冬季は腎陽腎気を大切に補う時期でもある。

この養生原則の下で、具体的な方法を紹介する。

1、保暖避寒・少動多蔵:陽気は最も陰寒に傷められ易いため、常に暖めなければならない。普段の服装や室温でも充分に保温に気を付け、また身体に持病のある方や体調不良の場合にホカロンなども活用して良い。また封蔵を特徴とする季節なので、陽気の損耗や漏洩などを避けて活動運動も少なめにし、特に激しい運動を控える。最もお勧めするのは八段錦や太極拳など優しい動きの医療気功である。

2、早寝遅起・必待日光:この時期ではある程度の「懶惰」が必要である。日が未だ短いため、早く寝て遅く起き、日が出てから動き出して陽気の消耗を避ける。また自然界の陽気を以て生体の陽気を補充する方法として、背中に日を浴びるか、晴天の夕方に日差しで温まった椅子やベンチに座るなどがある。

3、艾灸腧穴・袪寒壮陽:艾を燃やして身体の腧穴に据えて温まる艾灸法はこの時期に最適である。艾灸法には温陽益気・袪散寒湿の効能があり、陽気を温めて補うことで抵抗力・免疫力・修復力など人体生命力を高めるほか、寒湿邪気や疫病邪気を追い払う作用を以て、この疫病蔓延の冬季に一石二鳥の効果が期待できる。実際、中国の大学病院では新型コロナウイルス肺炎の治療に対して、温灸の応用で確実な効果が臨床治験に実証され、現在艾灸も防疫物資の一種に数えられている。

4、飲食調養・加食牛羊:飲食薬膳療法は健康養生の重要な手段とされている。秋の収穫に恵まれ、冬は補うための充実した季節だと言える。食べる事で一番身体を補養でき、翌年春夏の生長に堅実な土台を築く。また腎陽が生体の元陽となり、冬季は補腎に相応しい。腎陽を補うため、羊肉、牛肉、海老、韮、山芋などが多く用いられる。

ほかに、基礎保健気功には、「鳴天鼓」(手掌で外耳道開口を覆い、示指で後頭部を軽く叩く)を行ったり、臍下丹田を揉んだり、耳介・腰・足裏を擦ったりすることも補腎の役割を果たして冬季養生の一環として重要である。

健康知識:重曹の薬用効果

重曹は重炭酸曹達(ソーダ)の略称で、重炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムとも呼ばれる白い粉末であり、生活用品や食品、医療、農業、工業、土木など、様々な分野で活用され、重要な役割を果たしている。

重曹は天然の原料を使用して精製されている。現在、製法は原料から大きく二つに分け、岩塩を水に溶かして電気分解するか、重曹成分を含有する鉱石などを水に溶かし、炭酸ガスを添加して結晶化する方法である。

重曹は日常生活において料理や清掃など幅広く応用価値があるが、薬用効果を以て下記の活用もできる。

1、リウマチ関節痛の緩解

重曹を膏薬状(糊状)に調合し、関節疼痛の局部に塗り付け、自然に乾燥してから綺麗に洗い落とす。

またタオルに重曹の溶液を浸けて患部に熱布することができる。

2、痛風の予防治療

300~400gの重曹をお湯で希釈し、タオルで巻いた脚(患部)にかけて20分間ほど温める。お湯の温度は熱過ぎないように注意しよう。一日に二回行い、慢性痛風の場合は更に多く行うことをお薦め。

3、身体疲労の解消

適量の重曹と食塩を浴槽のお湯に入れて30分間ほど入浴すると、鎮静作用を果たし、また筋緊張を緩和させ、同時に皮膚のタコ消除できる。

因みに、長期の家事などで両手の皮膚が粗くなる場合があるが、重曹とココナツオイルでスクラブを作って両手で擦ることで、手の皮膚がきめ細かく柔らかくなる。

重曹の安全性について、元々生体の中にもあるし、天然成分なので、身体に大きな危害は無いと考えられる。しかし弱アルカリ性(pH約8.2~8.6)のため、肌に長時間付着したり、目に入ったりすると沁みる刺激性がある。また重曹には薬用、食品用、工業用、飼料用など様々な種類があり、服用の際は塩化物基準や純度、衛生面などを考慮して薬用か、食品用の物を使用し、1日目安は概ね3gくらいにした方がよい。長期間の服用は身体の健康に適せず、口腔異臭や食欲不振などが現れ、更に筋肉痛、引き攣り、持続性頭痛などが見られる。