健康知識:三伏天養生の五大要点

本日より三伏天に入った。今年も閏中伏で、7月15日から24日までの初伏、7月25日から8月13日までの中伏、そして8月14日から23日までの末伏からなって計40日間にわたる。

三伏天は一年中で最も気温も湿度も高い時期であり、人体もこの自然界の陰陽変化に従って大きく変動している。日頃は防暑降温に注意を払い、飲食と起居を合理的に配置して酷暑から生体を守らなければならない。

三伏天の時期において下記の五大要点から養生に手を入れて欲しい。

1、温陽補気

暑熱は人体の気を傷め易い特徴があり、これによって体力元気が不足して生体の機能低下を来す。そのため三伏天において補気は大切である。《黄帝内経》における「春夏養陽」の養生原則に従い、三伏天において特に陽気を保養すれば、秋冬時期の陽気不足を防ぐ。

補益陽気の対策が様々あり、冷房回避、温熱飲食、温灸施術など、今までの健康知識に紹介したことがあり、再度参考にしてもらいたい。ここでは陽気保養のための新たな飲食調節を紹介する。

① 西洋人参:夏季の暑熱において西洋人参は最もお勧めの補気薬であり、気陰両補の性能を持つため、気を補い、陰を傷めて逆上せることはなく、陰虚や口乾口渇の場合も適用する。特に汗をかき過ぎて疲労や心悸が現れた場合は西洋人参を持って茶代わりに飲用すると、効果的に補気できるし、夏バテにも有益である。

② 蝦:養陽のためには肉類の効率が比較的に良く、特に羊肉に陽気を補う力が強い。しかし夏季では脂っこい温熱性質の肉類は適しない。その代わりに海鮮類があっさりした口当たりでこの季節に適し、蝦は最もお勧めである。代表的な蝦韮炒めのほか、蝦と胡瓜の炒めも柔らかくてさっぱりしている。

2、清熱解暑

三伏天は気温が高くて暑熱が強いため、清熱解暑は不可欠な養生要点である。

養生対策としては、下記の飲食調節で工夫して欲しい。

① 緑豆:緑豆は清熱消暑・利水解毒などの効能を持ち、軽度の中暑による頭暈頭痛、胸悶気短、無汗煩熱、汗疹や皮疹などの症状に対してより良い治療作用がある。中国北京の町のレストランではこの酷暑の時期になると、食事前に緑豆スープを無料で提供していることが多い。通常30分~1時間ほど豆粒が柔らかくなるまで煮込み、スープも濁ってザラザラとした口当たりで良い。ほかに、山査子と一緒に煮込んで適量の氷砂糖で調味し、冷まして清涼飲料水としても相応しい。

② 西瓜翠衣:西瓜は美味で清熱解暑・除煩止渇の効能があると一般に知られているが、その効能が最も強い部分は西瓜の緑色の皮である。新鮮な翠皮をお水で30分ほど煮込み、適量の氷砂糖を加えて飲用するか、千切りした翠皮を乾燥させてから他の相乗効果を持つ材料と一緒に茶代わりに飲用して良い。

3、健脾祛湿

夏季では食欲不振が多く見られるが、飲食栄養が上手く取れないと、健全な体力が失われる。脾胃は「後天の本」であり、脾胃の運化機能が健常であれば、飲食物の消化吸収及び水穀精微の運送を増進させる。また、三伏天では暑熱に伴って湿気が高く、生体に侵襲すると往々にして頭身困重、倦怠胸悶、飲食無味、口中粘々、更に抑鬱などの症状が現れる。脾は水湿を運化するため、脾気を強化することにより、諸症状の解消に役立つ。

養生対策としては、下記の飲食調節をお勧めする。

① 橘皮(陳皮):蜜柑の皮を陰干しするか、陳皮を購入し、10gほどを取って適量の氷砂糖と一緒にお湯に浸してから茶代わりに飲用すると、健脾燥湿・理気開胃の効能を持ち、暑熱による腹脹、消化不良、食思不振の時に適する。

② 赤小豆・はと麦:赤小豆には清熱、はと麦には利湿の効能があり、両者は清熱利湿の理想的な組合せである。それぞれを50g取って2時間ほど水に浸し、お米100gと一緒に柔らかくなるまで煮込んだお粥は清熱利湿の常用献立である。

③ 冬瓜:冬瓜は清熱化痰・利水消腫・生津除煩の効能を持ち、三伏天養生に重要な食物である。浅利と一緒にスープを作り、解暑利水に伴って補水潤燥の作用も果たす。また蓮の実と一緒にお粥を作ることで、更に健脾効果も高められる。

4、調心降火

五行学説によると、夏気は火に属して心気に通じるため、盛夏は最も心に関係が深い。炎熱は生体の熱毒を盛んにさせ、心火(逆上せ)になって口瘡(口内炎)、心煩、不眠、心悸などの症状が見られる。また、汗は心の液とされ、夏季では汗が多く流れて心陰を消耗するため、心を養うことが重要である。

養生対策としては、夏季養心のために紅棗、サクランボ、紅花など、赤色の食物が相応しく、心の陰陽を補って安神助眠の効果も期待できる。

一方、心火降下のためには、蓮実芯を常備薬とすべきである。蓮実の中にある緑の蓮実芯は清心祛火の効能を持ち、心煩、不眠、舌炎などの場合は約20粒を茶代わりに飲用すると良い。また緑茶を加えると更に美味しく効果的である。

5、養神安眠

《黄帝内経》では「夏三月,此為蕃秀。天地気交,万物華実,夜臥早起,無厭于日」とある。夏季では昼が長くて夜が短いし、天気が炎熱のため、夜間睡眠が上手く取れず、睡眠時間が少なくなり、睡眠の質も優れなく、不眠になり易い。また暑熱多汗による水分流失が随時に補充できないと、脱水傷津で元気損耗を起こして生体の免疫機能低下に至り易い。

自然の生長規律に従い、比較的涼しくなった夜間に入眠し、早朝に起床することで、気機が宣暢に疏泄し、できるだけ炎熱による津液損耗を減少させる。また不足した睡眠は短い昼寝で補給することもできる。

ほかに飲食調節として、蓮根が持つ清熱養血・安神除煩の効能で治療して安神助眠の作用を来たす。新鮮な蓮根を弱火で柔らかくなるまで煮込み、スライスして適量の蜂蜜で調味して食用できる。

健康知識:夏季に最も重要な睡眠時刻二つ

立夏を過ぎて気温が少しずつ上がり、万物が栄えて茂っている。この時節から自然界の陽気が徐々に生長して陰気が徐々に減弱する。生体も自然に従って陰陽の盛衰消長が変化しており、心気が強くなって肝気が弱くなる。この頃から逆上せ易くなり、これによって体力も消耗されて疲れを多く感じるる。特に夜間の睡眠が不安定になって朝も早く醒め易い。全て体内の陽気が盛んになってきた現れである。また夏は暑熱から津液を消耗するに伴って気の漏洩も考えられ、常に疲労倦怠、眠く感じる。体力保養・疲労解消のためには睡眠が非常に重要である。

《黄帝内経》には「夏三月,此謂蕃秀,天地気交,万物華実,夜臥早起,無厭于日,使志無怒,使華英成秀,使気得泄,若所愛在外,此夏気之応,養長之道也。逆之則傷心,秋為痎瘧,奉収者少,冬至重病。」という養生原則が記されてあるが、夏季は陽気が盛んになって暑熱の擾乱で心神が安定し難いため、遅寝早起きをお勧めしている。当然、睡眠不足の状態にしてはならず、不足の睡眠は昼寝で補足できる。一日の中で、下記の二つの時刻は睡眠に最も重要であるため、効率的に応用して欲しい。

一つ、子の時刻:深夜11時から早朝1時までの時間帯に当たる。

この時間帯は肝経の主時(対応する時刻)であり、肝臓が全身の気機を疏通させて調達させる時刻で、人体の陽気が生発(生成発展)の時刻である。子の時刻に深い睡眠状態に入ると、陽気昇騰や気血通調のためになり、生体における各臓器の機能回復と機能強化に役立つ。反対に子の時刻に睡眠状態を入らないと、肝の疏泄効能に影響を来たし、頭暈目眩、頭痛で怒り易い、耳聾耳鳴、胸脇脹痛、恐々動悸、睡眠不安、腰膝痠軟などの症状が現れる。

もし、横になっても中々寝つきが良くない場合は、下記幾つかの経穴を揉むことで不眠解消のために効果的である。

  1. 神門穴:手少陰心経の原穴で、益気養心・鎮静安神・通脈止痛の効能を持ち、心病証の重要な経穴であり、主に心気不足や心陰虚損による不眠に適応する。現代では多く狭心症、脈無病、不眠症、神経衰弱、認知症、ヒステリー、統合失調症などに用いられる。拇指の指尖で反対側の経穴を2~3分間ほど点揉し、軽く痠脹感を催す。
  2. 内関穴:手厥陰心包経の絡穴で、寧心安神・理気降逆・寛胸和胃・活血止痛の効能を持ち、心・胸・胃病証の重要な経穴である。現代では多くリウマチ性心疾患、冠状動脈性心疾患、狭心症、心筋炎、心膜症、不整脈、胃腸炎、嘔吐、気管支喘息、不眠、自律神経失調症、鬱病、ヒステリーなどに用いられる。通常、拇指の指腹で反対側の経穴を5~10分間ほど按揉し、局所に軽く痠脹感を催す。
  3. 湧泉穴:足少陰腎経の井穴で、蘇厥開竅・鎮静安神・瀉熱滋陰・発汗利尿・降逆止嘔の効能を持ち、腎病証や失神の重要な経穴であり、主に心腎不交や腎陰不足による不眠に適応する。現代では多く意識障害、ショック、高血圧、低血圧、不眠、神経衰弱、神経性頭痛、三叉神経痛、ヒステリー、癲癇、統合失調症、精神障害、夜尿症、尿貯留などに用いられる。拇指の指腹で按圧するか揉擦し、或いは足湯の後に軽く叩いたり、按摩器具で刺激したりする。就寝前に3~5分間ほど行う。
  4. 太溪穴:足少陰腎経の原穴で、滋陰液腎・壮陽強腰・清熱安神・止咳平喘・調経理血の効能を持ち、腎病証の重要な経穴であり、主に腎虚による不眠や早く醒めるなどに適応する。現代では腎炎、膀胱炎、尿路感染、夜尿症、気管支炎、気管支喘息、肺気主、関節リウマチ、下肢麻痺、不眠症、神経衰弱、耳聾耳鳴、月経疾患、性機能障害、糖尿病などに用いられる。拇指の指腹で同側の経穴を2~3分間ほど按揉し、徐々に力を強くする。
  5. 三陰交穴:足太陰脾経の経穴で、足三陰(肝・脾・腎)経脈の交会穴として健脾益気・調補肝腎・通経活血・理気止痛・祛風利湿の効能を持ち、主に脾気虚弱や陰血虚弱による不眠や入眠障害などに適応する。現代では高血圧症、血管性頭痛、不眠、神経症、統合失調症、胃腸炎、肝炎、すい臓炎、腎炎、尿路感染、排尿障害、糖尿病、月経疾患、更年期障害、性器疾患、性機能障害、下肢麻痺、皮膚炎、湿疹、蕁麻疹などに用いられる。拇指の指腹で同側の経穴を3~5分間ほど按揉し、徐々に力を強くする。

二つ、午の時刻:午前11時から午後1時までの時間帯に当たる。

この時間帯は心経の主時(対応する時刻)であり、心臓が全身の血脈を統合させて調節する時刻で、また心神を緩和し整理する時刻でもある。

午前中の仕事や学習などを経て、体力労働や脳力労働に関わらず生体は高度の集中状態により疲労が現れる。この時間帯に昼寝を取ると、全身への調節機能が更新され、午後の心身状態を充溢させて仕事や学習の効率を高めることができる。譬え15分ほどの短い昼寝でも、生体に対して高速充電のような価値があり、疲労を解消して圧力を緩解し、精神状態の回復で集中力を高められ、更に生体の免疫力・抵抗力の増強に繋がる。

但し、昼寝の習慣にも良し悪しがある。例えば食後直ぐに寝るとか、机に伏せて寝るなどは、いずれも良くない癖であり、避けるように注意しなければならない。

健康知識:気力不足の認識と対策

中国の古書には「一年の計は春に在り、一日の計は朝に在る」という言葉があり、春は一年の計画、朝は一日の計画を行う時機である。春と朝は陽気が増長する時で、万物は生気溢れ、一年や一日のためにしっかり計画して基礎を築かなければならない。しかし、こんな時期になっても、どうしてもやる気が出ない、何となく気力不足などを感じている方が多い。普段でも動きたがらず、少し動いただけで直ぐに疲れる、話したがらず、話しても声が低い、更にいつも倦怠無力感、物事に無関心で、まるで怠けているように見えて自分でも情けない感じで悩んでいる。実際、このような方の大半は怠け者ではなく、身体が弱いからである。

中医学では、この気力不足の状態を気虚と言う。身体の気が足らないため、疲れて怠け、やる気が出ないわけである。

気は人体を構成して生命活動を維持する最も重要な物質であり、また臓腑経絡の基本機能でもある。気は臓腑の機能活動から生成され、また臓腑の機能活動に基本的な栄養と動力を与えている。先天的の素因もあるが、往々にして長期にわたる不良な生活習慣から生体の気を損耗して気虚を来たし、臓腑の機能活動も低下する。

気虚は発生部位により主に心気虚、肺気虚、脾気虚、腎気虚に分けられる。ここでそれぞれ異なる発病原因と病状特徴を解説し、治療方針と対策方法を紹介する。

1、気虚の原因と特徴

心気虚:平素の生活や仕事からのストレス蓄積、思考過度などにより心を傷めることから起こされる。主に心悸、気短、自汗、無力などの特徴がある。

肺気虚:幼い頃の肺病罹患による消耗のほか、運動不足、寒冷乾燥などにより肺を傷めることから起こされる。主に息切れ、話し声が低くて弱い、自汗、易感冒などの特徴がある。

脾気虚:多くは寒冷飲食や脂っこく甘い食物の過食など飲食失当、或いは長期に持続する体力労働により脾を傷めることから起こされる。主に四肢無力、消化不良、腹痛泄瀉などの特徴がある。

腎気虚:天賦不足のほか、長期に持続する過労、夜更かし、性生活過度などにより腎を傷めることから起こされる。主に腰腿痠軟、全身無力、手足不温などの特徴がある。

上記のほか、一臓の気虚で五臓間の機能協調が失われて全身に影響し、倦怠無力、精神不振、意欲不足など全体的な総合症状も伴ってくる。また、気虚者の6割以上は舌体の胖大・歯痕が認められる。

このように、日常の生活と仕事から蓄積された単なる疲労が長期化すると、病的な気虚に至る。また生体は有機的な生命体であり、五臓間は相互に緊密な関係を持っているため、一臓の気虚が発生すると、必ず他臓まで影響していき、心肺・心脾・肺脾・肺腎・脾腎・肺脾腎など多臓同病の気虚病証も現れる。更に、「気は血の帥なり」とされており、全身の血液や津液は全て気の推動作用によって循環運行されている。気が不足すると、原動力が弱くなり、血脈の運行や津液の代謝も停滞して瘀血や痰湿など様々な続発病証を来たす。

2、気虚の対策

気虚は生体の気が損耗され、臓腑機能が低下する病理状態に属する。これに対して先ずは病状の進行を止めるため、疲労解消と休養が大事である。この上、補気の治療原則を立て、中薬製剤や飲食調節、或いは針灸推拿や気功養生など伝統医学的な助力を用いて虚弱の気を補益し、臓腑機能を強化することが重要な対策である。

心気虚証:心は神志と血脈を主るため、心気虚が発生すると、精神不振、不眠健忘、面色無華、心悸不安、過労により増悪するなどが現れる。心気補益を治療原則にして生脈飲(人参、麦門冬、五味子)、または柏子养心丸(柏子仁、党参、川芎、遠志、五味子)の漢方薬が服用できる。

肺気虚証:肺は気を主り呼吸を司るため、肺気虚が発生すると、咳嗽気喘、痰を吐く、胸悶気短、話し声が低くて弱い、汗が出易い、風邪を引き易いなどが現れる。肺気補益を治療原則にして四君子湯(党参または人参、炒白朮、茯苓、甘草)の漢方薬が服用できる。

脾気虚証:脾は運化(飲食物の消化吸収と水穀精微の運送)を主リ、肌肉を主るため、脾気虚が発生すると、食欲不振、口淡無味、食後倦怠、脘腹不快、大便稀薄、四肢倦怠などが現れる。脾胃補益を治療原則にして補中益気湯(炙黄耆、党参、炙甘草、炒白朮、当帰、昇麻、柴胡、陳皮、生姜、大棗)、または六君子湯(党参、白朮、茯苓、半夏、陳皮、甘草)の漢方薬が服用できる。

腎気虚証:腎は精を蔵し髄(骨髄、脳髄)を生じ、生殖を主り、納気を主るため、腎気虚が発生すると、腰膝痠軟、四肢不温、呼吸困難(呼気が多くて吸気が少ない)、小便頻数、月経少量、遺精陽痿などが現れる。腎気補益を治療原則にして金匱地黄丸(日本では八味地黄丸:熟地黄、山薬、山茱萸、沢瀉、茯苓、牡丹皮、肉桂、附子)、或いは済生地黄丸(日本では牛車腎気丸:八味地黄丸に牛膝、車前子を加える)の漢方薬が服用できる。

飲食調節の場合は、食物の基本的な性能から温性・甘味を持つものは気を補う効能があり、更に食物の帰経性質(特定の臓腑に対して重点的に作用する)に応じて関連臓腑の虚損補益に用いられる。このほか、五行学説に基づき、五臓間の相生関係に応じて「虚なら其の母を補う」と言う治療原則から肺気虚証には脾気を補うことで対応することができるし、五色と五臓の相関性に応じて百合根や銀杏や白木耳など白色食物を肺気補養、南瓜や栗や薩摩芋など黄色食物を脾気補養、黒豆や黒胡麻など黒色食物を腎気補養に用いることも考えられる。なお、調理方式としてお粥やスープのような水を媒質として煮込む方法が消化吸収能力も低下する気虚状態に比較的相応しい。

針灸推拿の場合は、兪原配穴の配穴方法があり、気虚の臓の背部兪穴と原穴の組み合わせでそれぞれの臓気補益に応用する。即ち、心気虚証には心兪と神門、肺気虚証には肺兪と太淵、脾気虚証には脾兪と太白、腎気虚証には腎兪と太溪を取穴として応用できる。また一部の腧穴には生体補養の特異性を持ち、例えば足三里、気海、関元、大椎、命門などがあり、特に按揉法や温灸法を多く行うことで全身の気を温補する効果が期待できる。

気功養生の場合は、体力的な負担による気の消耗を避けるため、静養功など坐勢や臥勢を取った静功法が比較的相応しい。動功法なら、局部の軽い動作を伴う保健功も応用できる。また六字訣や八段錦などの気功法は、五臓のそれぞれに特定的な効果をもたらすため、具体的に機能低下の臓に対して部分的に応用できる。いずれにしても重要なのは練功時に無理な努力をしてはいけず、そして効果が現れるまで長く持続しなければならない。

健康知識:息を深く長くすることで健康養生

人間は、赤ちゃんとして母体から離れて産声を発して息が始まって自ら生命活動を営み始めるが、最期に息を引き取ることで生命活動の終止を示している。呼吸機能は生命活動の基本的な指標である。「人は一息で活きる」と言われるように、人間の生命は気によって営んでおり、生命活動自身は気の運動の一種である。健康の時には元気が充足し、病弱の時には息切れや息苦しいなど呼吸困難が現れてくる。

中医学的には、生体の気は肺に吸入された自然界の清気、及び脾胃に運化された飲食物の穀気から生成されている。脾胃による消化機能は確かに健康維持の基本であるが、肺による呼吸機能も健康増進の重要な素因である。気功養生療法では「調息」(息の調節)が非常に重要な要素とされている。

呼吸運動は姿勢、生活環境、そしてストレスなど様々な素因に影響され、浅くなったり苦しくなったりする。加齢に伴って胸郭が硬くなりがちで、呼吸運動も影響されやすい。清気の吸入が少なくなり、元気が不足する。

古代の養生術には、「呼吸が臍に至れば、寿命は天と等しい」との名言があり、呼吸が臍まで深くできれば、長寿ができる。このように呼吸を深く長くする鍛錬方法は養生に大きな役割を果たしている。呼吸の鍛錬方法は様々あるが、基本的な要領は緩慢、柔和、連続であり、代表的な簡易方法として腹式呼吸が挙げられる。

普段の呼吸方式として、胸郭の拡大と収縮によって肺臓の全体が外から動かされ、空気を肺中に納めて清気の吸収と濁気の排出を行う。呼吸運動の深まりに伴い、胸郭の動きに伴って腹部も起伏するように運動させると腹式呼吸になる。厳密に言うと、腹式呼吸は単純に腹部による呼吸ではなく、胸郭の呼吸運動が強化し深化したものである。

呼吸は吸気と呼気の律動的な動作からなるが、吸気より呼気が重要である。呼気により濁気を排出してはじめて、吸気により清気を吸収することができる。これによって「吐故納新」(腹から古い気を吐き出し、鼻から新しい気を吸い入れる)が求められている。また呼吸の一時的停止は停止前の呼吸に対して強化作用があると考えられるため、呼吸鍛錬の時に、吸息の時間より吐息の時間をやや長く調整し息を吐き尽くしたところで、少しだけ停めることをお勧めする。

腹式呼吸の鍛錬効果は下記にまとめられる。

① 肺気増強:中医学によると、肺は気を主り、呼吸を司るとされ、肺気が充足すると、生体の元気も充足している。また肺気とは呼吸だけではなく、また外邪侵襲の防御機能を意味しているため、生体の抵抗力や免疫力に繋がる。腹式呼吸は胸郭を最大限に広げて清気を多く深く吸い込み、肺臓の機能も増進させて肺気を増強させる。

② 内臓強化:腹部には任脈、腎経、胃経、脾経、肝経、帯脈など、多くの経絡が循行して通過しているため、腹式呼吸による腹部の起伏運動は腹部の内臓に按摩のような効果を持って内臓の蠕動が助長され、これに伴って全身の経絡と臓腑も同調して気血の循行を促進される。特に中焦脾胃の運化機能を直接強化して昇清降濁の機能を健全にさせる。

③ 気血増進:腹式呼吸を行っているうちに、内臓器官に按摩作用を果たして蠕動を促進させ、全身の気血運行を増進する。これによって頭痛眩暈、高血圧症、脳血管障害などの疾患に対して効果的に予防と回復の作用を果たす。中医学からみると、これらの疾患は気血上衝の種類に属し、腹式呼吸で気血を下方の丹田へ引き下ろすことができる。

④ 肌膚保養:中医学的には「肺は皮毛を主る」とされ、全身の皮膚と体毛は肺気に栄養されて調節されている。肺気が充足すると、肌がきめ細かくて滑らかであり、肺気が不足すると、皮膚・毛髪が疎らで外邪に侵襲されやすい。腹式呼吸で肺気を増強させ、肺気の充足によって美肌・潤膚・祛斑の効果を果たす。

⑤ 精神安定:腹式呼吸は精神に直接影響している。気分が悪く苛立つ時に、数回深呼吸をすると、精神が落ち着くことを経験した方は少なくない。息を深く長くすることにより、気血の運行が促進され、特に中焦脾胃による昇清降濁の機能を増進させ、心神(頭脳)がスッキリして愉悦な気分になる。

腹式呼吸の鍛錬方法は比較的容易で、個人的に調整しやすい。重要なのは呼吸鍛錬の要領を把握し、長期に持続することである。

簡単な鍛錬方法では、姿勢は立式でも臥式でも良いが、両手を臍の前に置く(立式)か、重ねて臍下の丹田に軽く当て(臥式)、心身全体を緩めて窮屈な姿勢を避ける。呼吸を自然な状態から少しずつ丁寧に深く長く調整し、呼吸に従って腹部も起伏する。通常では吸息時に胸腹部も膨らみ、吐息時に胸腹部も引き締める。呼吸鍛錬の長期持続で馴染んでから、吸息時に腹部を引き締め、吐息時に腹部を膨らむように意識的に調整することもでき、これを逆腹式呼吸と言う。いずれも吸息の時間より吐息の時間をやや長くし、吐息後に少しだけ間隔を置くことをお勧めする。

少し専門的な練習方法に拘る方には、下記の呼吸鍛錬方法を紹介する。

両脚を肩幅ほど開いて自然に立ち、両手を緩めて腹前に風船を持つように置く。吸息に伴って両手を微かに身体の内側へ収め、腹部は微かに体内へ収める。同時に両手に抱かれる気と吸い込んだ気は丹田(臍下の下腹内)に合流し、更に丹田から命門(両腎臓の間)へ収縮していくと連想し、これを「闔丹田」と言う。息を吸い切ったら、ゆっくりと吐息する。全身が緩み、全身の気が丹田から四肢百骸まで伸びて行くと連想し、これを「開丹田」と言う。息を吐き切ったら、やや停止する(鍛錬の深化により、停止間隔も徐々に長くする)。その後ゆっくりと吸い込み、前述した要領で吸息に進む。

このように繰り返して呼吸と丹田開闔を30分間ほど練習する。最初の7回は呼吸と丹田開闔の幅度は大きくし、その後は徐々に小さくし、全身のリラックスに伴い、リズムも自然に遅くなり、呼吸は微細で綿々と変わり、最後に有るようでもあり無いようでもある佳境に入る。

上記の腹式呼吸鍛錬には三つの要点がある。

① 吸気時に丹田を緊張させ呼気時に丹田を緩ませる。吸気と呼気に従って腹部が起伏し、吸気時に腹部の丹田から命門へ凹ませ、呼気時に腰部の命門から腹部の丹田へ緩める。呼吸の進行に従って腹部が律動的に起伏し、これによって臓腑への按摩効果が果たせる。

② 呼吸と丹田開闔はいずれも緩慢・柔和・自然に進行させる。練習の積み重ねにつれて呼吸は徐々に遅くなり、動作も細かくなる。無理な努力を避けて緩めて自然に行うことで、体内の気が充足することができるが、無理に力むと、焦りやすくなり、体内の気が乱れやすい。通常成人の呼吸は1分間に16回くらいあるが、腹式呼吸の鍛錬により呼吸は深く、長く、細く、均等になり、長期に持続すると養生長寿の効果が現れてくる。

③ 呼気後になるべく数秒ほど停止する。これによって心身静止の状態に入って休息の状態に入る。これを「息」との言葉で現し、古代に曰く「息なら則ち命が長い」のように、心身全体を呼吸に従って協調すれば充分に休息でき、精気神は滋養を得て充実になり、生命力も旺盛に回復して寿命も延長できる。

健康知識:経穴を用いた美顔方法

近年、日本において美容針灸が非常に流行っている。

厳密に言えば、美容針灸は針灸技法を用いて全身の経穴に適度な刺激を与え、経絡気血の運行を促進させることにより、全身の臓腑機能を調節するうえ、局所の皮膚組織を養護して老衰遅延・健身美顔を目的とする治療方法である。

美容針灸は、広義的な意味で全身美化(全身肥満や腹部肥満などの痩身)と顔貌美化(顔面のシミやシワや弛みなどの美顔)との二つの内容を含む。現在、狭義的な意味で美顔を目的とし、主に先天的な生理欠陥及び後天的な病理疾患を軽減または消除する、或いは疲労や加齢老衰による機能低下を調節することが多く注目されており、この意味で美顔針灸と言うことが多い。

また、中医学的には生体の健康を無くして美顔が達成できないと考えている。本来、美容針灸は身体全体の状態を考えたうえ、全身の経穴に行う針灸治療の全般を指している。しかし、最近は一般的に直接顔面だけに刺針治療を行うのが主流になっている。

最近、針灸院やエステサロンだけでなく、接骨院などでも美容針灸を取り入れることが増え始め、様々な所で美容針灸の治療を受けられることが多くなっているが、場所により治療効果は大きく異なっている。美容針灸の治療院を選定することは難しく、色々注意点が喚起されているが、普通の人にとってやはり中々判断し難い。そのため、自身で経穴を用いた美顔方法がお勧めできる。

実際、余程の生理欠陥や病理変化を除き、普通の疲労や老衰による機能低下に対応するためには、刺針の代わりに手指を用いて経穴に適度な刺激を与えることで美顔の効果も充分に得られ、しかも安全かつ簡便である。基本的に美容針灸は針具でなく、経穴への刺激によって美容効果を果たしたのであり、経絡の調節作用は美容針灸の基礎となる。点・按・摩・揉・擦・推・捏・拿など推拿(按摩)手法を用いて相応しく経穴に刺激を与えることにより、臓腑経絡の機能を強化して陰陽気血の平衝を調節し、顔面皮膚が濡養されて潤沢で弾性に富むことができる。これはいわゆる美容推拿の作用機序である。

美容針灸でも美容推拿でも、経絡腧穴が最も重要な決め手である。先ずは体質と体調に従って適切な経絡腧穴を選択して治療処方を決める。次に正確かつ精密に腧穴の定位を取る。最後に経絡腧穴において適宜な手法を行って適度な刺激を与える。

ここでは、美顔に常用される経穴の所属経脈と応用要点を紹介する。具体的な定位と取法は《経穴の定位と技法》、詳細な効能と主治は《経穴の性能と主治》を参照することができる。

① 眼周腧穴

攅竹(足太陽経):眼精疲労、眼周浮腫、眉間の皺を緩和する。

睛明(足太陽経):眉間の皺、眼周浮腫、眼精疲労、眼裂縮小に用いられる。

絲竹空(手少陽経):眼周の浮腫みや弛み、眼瞼痙攣に用いられる。

太陽(経外奇穴):眼精疲労と眼周浮腫を解消する。

承泣(足陽明経):眼下クマ(弛み)を引き締め、眼周浮腫を解消する。

四白(足陽明経):眼下のクマや弛みに用いられる。

② 鼻旁腧穴

迎香(手陽明経):眼周浮腫を解消し、眼周肌膚の弛みを予防するほか、吹き出物、乾燥肌、ほうれい線などに用いられる。

③ 口周腧穴

巨髎(足陽明経):口周の皺、弛み、ほうれい線、表情筋の強硬に用いられる。

地倉(足陽明経):口周の皺、弛み、ほうれい線に用いられる。

承漿(任脈):顔面の浮腫みと弛みを消除する。口の歪み、皺、弛み、面皰、吹き出物に用いられる。

④ 面頬腧穴

下関(足陽明経):顔面の弛み、筋肉による腮張り、顔面の歪みに用いられる。

頬車(足陽明経):面頬浮腫を解消する。顔面の弛みを引上げ、筋肉による腮張りに用いられる。

大迎(足陽明経):顔面輪郭の弛み、浮腫み、歪み、口周の皺に用いられる。

⑤ 頭蓋腧穴

百会(督脈):自律神経の調節により精神を安定させ、飲食過剰や便秘を予防する。

神庭(督脈):顔面全体の浮腫み、弛みに用いられる。

翳風(手少陽経):顔面全体のリンパ循環を改善する。

美容針灸と美容推拿は中医学の整体観念(全体性)と辨証論治(個体性)の考え方に従い、全身調整の特徴を持っている。美顔を目的とした局所治療の経穴のほか、具体的な体質と病状に応じて全体治療も組み合わせると、治療効果が一層高められる。

通常、美顔治療の適応症状として面色不良(萎黄や晄白)、肥満や浮腫、シワ・シミ・弛み、褐色斑などが多く見られ、主に脾気虚弱・気血虚弱と肝気鬱結・気滞血瘀という二方面の病理機序から考えられる。これに対して健脾益気養血と疏肝理気行血の治療方針を立て、治療方法としてそれぞれ陽明経・太陰経の腧穴を主とするか、少陽経・厥陰経の腧穴を主とする。選穴処方の際に整体調節の原則が最も重要であり、全身と局所の腧穴を組み合わせなければならない。全身取穴は臓腑平衡の調節に着眼し、各系統の機能を調節することにより局所のための基礎を築く。一方、局所取穴は経絡疏通で循環を改善し、表皮細胞の新陳代謝を促進して斑点瑕疵を消去するに伴い、肌肉の弾力性を増強する。

なお、美顔推拿の施術には一定の順序がある。一般的には病症の部位に従うか、経脈の循行に従って施術順序を決める。

健康知識:新型コロナウイルス感染後遺症について

1、概説

新型コロナウイルス性肺炎は、中医学において外感病証の「疫病」の範疇に属する。疫病は強烈な伝染性と流行性を持つ疾病の一種であり、通常の外感六淫(風寒湿燥火)とは異なり、「疫癘(えきれい)」(瘟(おん)疫(えき)、疫毒(えきどく)、癘(れい)気(き)、疫(えき)気(き)、毒気、異気、雑気、乖戻之(かいれいの)気(き)などとも言う)という病邪(致病素因)により起こされる。疫癘の形成は自然界の異常気候、環境の汚染、飲食の不潔、社会制度などと密接に関係している。新型コロナウイルス性肺炎の発生は、急速な蔓延・広範囲の流行・重篤な病状などの特徴から一般的な外感六淫ではなくて「疫癘」によるものである。病状の性質から見ると、主に寒湿の邪気と密接な関係を持って「寒湿疫」と定義している。

中医学における邪気は一つの抽象的な概念で、人体に疾病を致す全ての素因を指し、いわゆる致病素因のことである。致病素因は大まかに外感病因(風寒湿燥火の六淫、疫癘)、内傷病因(喜怒憂悲恐驚の五臓七情)、そして不内外病因(飲食、労逸、外傷、寄生虫、水湿痰飲、瘀血など)の三大類に分けられるが、新型コロナウイルス性肺炎には外感病因の疫癘が致病素因となっている。邪気は主に発病する時に病状の特徴に従って病邪の性質をまとめてきたのであり、現代医学における細菌やウイルスなど具体的なものと全く一致しない。例えば、一種のウイルスが人体に感染して様々な病状を現して来る時に、そのうち寒の特徴が現れる場合は寒邪による外感病証と判断するが、同時に湿の特徴も現れる場合は寒邪と湿邪が合わさって侵襲することによる外感病証と診断する。

また、中医学は単なる病邪から病証を認識するのではなく、生体と病邪を統一して一つの複合体として疾病の解析を行う。病因病機学説によると、正気は発病の決定素因で、邪気が発病の重要条件であるとされている。これは新型コロナウイルス性肺炎の感染発症時期にも感染後遺症時期にも同様である。感染初期では、発熱悪寒、咳嗽咽痛、頭身重痛、倦怠無力などの症状が見られるが、患者の体質などに従って臨床特徴が異なってくる。体質強壮のものは悪寒発熱や頭身緊痛など風寒束表の現れを主としているが、一方、体質虚弱のものは風寒表証のほか、疲労無力など気虚の現れも伴う。また感染後期では、身体困憊など湿邪が強い現れも認められている。

新型コロナウイルス性肺炎が治癒してから、多くの患者には様々な後遺症状が残っている。病状、体質、そして症状によって1~3ヶ月が続くものが多く見られるが、6ヶ月更に1年ほど続くこともある。疫病流行早期の病邪(デルタ種までのウイルス)は比較的強くて直接肺臓を侵襲するため、後遺症状も重篤であり、主に肺線維化(呼吸困難や胸痛など)、心筋損傷(不整脈や心胸重痛など)、嗅覚味覚喪失、疲労無力、睡眠障害、記憶障害ないし脳萎縮、性機能障害などが見られ、これは古代における瘟疫の記載に類似している。現在のオミクロン種ウイルスは感染力が強くなったものの、しばしば上気道を侵襲して症状が激しくなくなり、後遺症状も変化してきて疲労困憊、呼吸急迫、心拍過多、慢性疼痛、筋肉無力、感覚機能異常、不眠、認知障害などを主としている。

2、病機

感染症の初期では、主に正邪闘争の病理反応であり、高熱や煩渇など実熱の徴候が現れる。これによって邪気が追い払われるが、同時に正気も大いに消耗されて弱まっている。感染症の後期では、生体の正気虚損が主な病理となり、陰陽気血虚損の徴候が多く現れ、五臓虚弱の証を呈している。ほかに、病邪が完全に駆除されず体内に残存して痰熱内阻の徴候や、内生の毒が解消されず臓腑機能と気血運行を擾乱して瘀血・痰濁など病理産物による気機阻滞の徴候も伴い、虚実夾雑の証も見られる。

病位:疫癘は口鼻の径路から侵入して先ず肺系(気道)を通して肺臓を侵襲し、主に肺臓及び肺系を損傷する。その後は次第に心・脾胃など他臓腑に影響を及ぼす。

病機:臨床で主な病理機序は陽気損傷、痰湿停滞、そして陰液損耗などがある。

① 陽気損傷:寒は陰邪に属して陽気(主に心陽・脾陽・腎陽)を損傷する;また凝滞・収引の特徴を持ち、臓腑機能と気血運行に障害を来たす。

② 痰湿停滞:湿は土気にあたって脾に通じるため、湿邪が盛んになると、脾胃を損傷する;また重濁・粘着停滞の特徴を持ち、中焦の昇降失調を起こして体内の気機を阻害する。

③ 陰液損耗:疫癘が急激に人体に侵入すると、正気は奮い立って対抗し、これによって生体に高熱を起こし、陰液を損耗する。

上記のほか、外来の毒によって臓腑機能と気血運行の障害を起こし、瘀血・痰濁など内生の毒が生じ、生体の気機不利を起こし、昇降失調の病理を致す。

病状:臨床で多く見られる感染後遺症状は、疲労倦怠無力、胸悶気短、咳嗽気喘、咽痒腫痛、嗅覚味覚障害、動悸不眠、抑鬱焦慮などがある。

肺は気を主り、呼吸を司る。余邪が残存することで肺は宣発粛降機能を失い、肺気が上逆して咳嗽や気喘を起こす。外邪の侵襲により肺が損傷されて肺気は虚弱になると、胸悶や気短が現れる。また肺は鼻に開竅し、喉は肺の戸となるため、肺気が損耗されて不足すると、咽喉腫痛、嗅覚障害が見られる。

脾胃は後天の本であり、運化を主り、気血生化の源となり、また脾は肌肉を主る。外邪の侵襲により脾気が虚弱になると、全身まで気血を輸送できないか、湿邪が体内に停滞することで、身体疲労や倦怠無力が見られる。また湿邪が中焦に停滞して脾胃機能を障害し、悪心納呆や腹脹泄瀉、更に味覚障害が現れる。

心は神志を主る。余熱が完全に追い払わず心神を擾乱すると、動悸不安や虚煩不眠が見られる。心気が虚弱になると、精神疲労、更に抑鬱焦慮などを来たす。また心は舌に開竅するため、心気損傷なら味覚障害が現れる。

3、辨証

臨床では、感染後遺症に痰熱壅肺、陽気不足、気陰両虚、陰虚火旺、昇降不和などの証候が多く見られる。各証候の特徴を把握して辨別する。

① 痰熱壅肺:咳、呼吸急迫、喉中痰鳴、粘稠で黄色い痰を吐く、胸脇脹満、煩躁不安、または胸痛、食欲不振、大便秘結、舌は紅、苔は黄膩、脈は滑数。

② 陽気不足:精神萎靡、面色蒼白または萎黄無華、頭目眩暈、動くと汗かいて気喘、心悸、気短、話したがらない、手足不温、畏寒悪風、また頭痛、頸項痛、全身疼痛または肩背骨節痛が見られる、舌は胖淡、苔は白、脈は沈細無力。

③ 気陰両虚:倦怠無力、咳嗽で長く止まらない、咳音が低くて弱い、胸悶気短、身熱多汗、悪風、心悸、口乾、嘔悪納呆、精神疲労または虚煩不眠、舌は淡紅、苔は少、脈は沈細または虚数;また嗅覚・味覚の減退が見られる。

④ 陰虚火旺:面色潮紅、咽喉腫痛または咽喉乾痛で切られるよう、空咳、口鼻乾燥、口渇で冷飲を好む、五心煩熱、頭暈心悸、不眠多夢、盗汗、舌は紅、苔は少、脈は細数。

⑤ 昇降不和:胸脇苦満、心胸不快、呼吸障害、発熱が持続して冷めない、心拍過多など全身症状が明らかであるが、また呑酸、噯気、悪心、嘈雑、泄瀉、矢気、不眠、抑鬱、焦慮などが見られる、飲酒や過労により症状が増悪する、舌は白、苔は厚膩、脈は弦滑数。

4、対策

新型コロナウイルス感染後遺症に対する全体的な対策は辨証治療と飲食調節の二大方面から考える。

辨証治療は、健脾益気、潤肺滋陰、補腎温陽、養心安神を原則とし、相応する中薬処方や経穴処方を考える。

飲食調節は、補気、健脾、潤肺、安神の順位で薬効食物と食用薬物を組み合わせて考える。

ほかに、様々な養生方法も効果的に応用できる。例えば、就寝前に生姜や艾葉による足浴を行う、或いは太極拳、八段錦、五禽戯、坐禅などを行うことで睡眠補助が期待できる。腹式呼吸で気錬を行うことで老年の咳嗽・喀痰困黯の助力になる。

健康知識:便秘解消の五経穴

便秘は日常生活で多く見られ、年齢増加や運動不足などにより胃腸の機能が減退して現れ易い。特に秋季の乾燥に伴って便秘に悩まされている方が増えている。大便が乾燥して腸管に閉塞することで、腹脹腹痛や食思不振、更に煩躁不安などの病症が起こされることもある。

中医学的には、便秘の病位は大腸にあるが、脾胃・肺・肝・腎など臓腑の機能失調に関係している。

便秘の問題の解決には生活方式の調整するほか、人体における経穴の按揉法を行うことも効果的である。下記の五経穴は腑気通調・潤腸通便の効果を発揮して便秘の解消にお勧めできる。

 

① 天枢

足陽明胃経の腧穴である。中腹部にあり、臍中央から外方2寸に取る。

天枢穴の所在位置は腸に近隣して大腸の募穴であり、大腸の気が腹部に集結する場所となるため、大腸の機能を調節する作用を持ち、便秘、泄瀉、腹痛など腸管関係の病証を治療することができる。また便秘の場合は天枢穴に圧痛反応も現れ易い。

 

② 大腸兪

足太陽膀胱経の腧穴である。下腰部にあり、第4腰椎棘突起下(ほぼ両側の腸骨稜最高点を結ぶ線と同じ高さ)から外方1.5寸に取る。

大腸兪穴は大腸の背部兪穴であり、大腸の気が腰部に輸注する場所となるため、便秘、泄瀉、痔瘡など大腸に関係する病証の治療に効果的に用いられる。

 

天枢穴と大腸兪穴の併用は兪募配穴の方法であり、針灸臨床治療における前後配穴の代表方法となる。両者の配合には「陰病行陽、陽病行陰」の意味が含んでおり、これによって便秘に対して良好な調節作用が期待できる。

 

③ 上巨虚

足陽明胃経の腧穴である。下腿前外方にあり、外膝眼(膝蓋靭帯の外方陥凹部)の下方6寸で、脛骨前縁の外方1横指(中指)に取る。

上巨虚穴は大腸の下合穴であり、大腸の気が下って足陽明胃経に合する場所となり、《黄帝内経霊枢・邪気臓腑病形》にいわゆる「合治内腑」の理論により、便秘、泄瀉、腸癕(虫垂炎)など大腸疾患には上巨虚穴を取って治療する。

 

天枢穴と上巨虚穴の併用は募合配穴の方法であり、針灸臨床治療における上下配穴の代表方法となる。両者の配合により共同に大腸腑気を通調させる作用を果たして便秘治療のために役立つ。

 

④ 支溝

手少陽三焦経の腧穴である。前腕背側にあり、手関節背側遠位横紋の上方3寸で、橈骨と尺骨の間の中央に取る。

支溝穴は三焦経脈の経穴であり、五行では火に属するため、三焦の火熱邪気を疏散し、三焦の気機を調整して腑気を通調させる作用を持ち、古今に便秘治療の重要な腧穴として多く応用されている。

 

⑤ 照海

足少陰腎経の腧穴である。足内側にあり、内果尖の下方陥凹部に取る。

照海穴は八脈交会穴で陰蹻脈に通じ、腎経の脈気が聚まる場所となるため、気化作用が強いとされている。老年の多くは腎精虚損が発生し、「陽常有余、陰常不足」の陰陽特徴が現れ、便秘の発生に至る、或いは陰虚体質で大腸を滋潤できず便秘を来す。照海穴を用いて腎陰を調整して補益し、前後二陰を通調させ、陰液を養って「水液を増やして舟を行かす」ように便秘を緩解させる作用を果たす。

 

腧穴を用いて便秘を解消するには日々の習慣にする事が重要であり、毎日持続して上記の腧穴に按揉法を行うことが望ましい。手技の軽重は適宜に保つ。重症な便秘の場合は医療機関を受診し、明確な発病原因を辨別したうえ、総合な治療手段を受ける。

健康知識:秋季補肺のための百合の応用

酷暑が長引き、立秋から暫く経ちましたが、蒸し暑くて中々爽やかにならず、秋分になってようやく朝晩秋の気配が感じられるようになった。

秋季は「陰長陽消」の時期であり、万物が「引き締まる」特徴を現している。自然界の六気では燥が主気となり、燥は陰を傷め易い。また五行学説では、人体の肺臓は秋季と同じく金に属しているため、秋気に通じて合っている。肺は「嬌臓」と呼ばれるようにデリケートの臓で、湿を好んで燥を嫌悪する生理特徴を持ち、寒熱燥などの邪気に耐え難く、特に燥邪に傷められ易い。そのため、秋季では潤肺が最も重要な養生原則である。飲食薬膳による健康養生では、梨、冬瓜、百合、白木耳、蓮実、銀杏、杏仁、蜂蜜、鳩肉などの食材は直接肺臓に滋潤・補益の作用を持っている。中でも、百合が特にお勧めの一種である。

百合はユリなどユリ科の同属多種の植物の鱗茎であり、乾燥したものは漢方薬として応用されている。百合は甘微苦・微寒(平)の性味で、心・肺に帰経し、養陰潤燥・益肺止咳・清心安神の効能を持ち、主に肺陰虚損による久咳不止(気管支拡張症)、痰に血が混じる、肺熱壅滞による胸悶心煩、熱病後期で余熱が下がらないか、或いは情志不遂(精神不調)による虚煩驚悸、不眠多夢、精神恍惚、百合病(心肺陰虚証);癕腫、湿瘡などに用いられる。現代の薬理学研究によると、百合に含まれる多糖類、サポニン、コルヒチンなどの成分は抗炎症・抗腫瘍・免疫強化・抗酸化・抗疲労・血糖降下・血脂降下・止咳平喘・鎮静安眠・潤腸通便などの作用を持っている。また薬食両用の物として薬膳の良品でもあり、滋養補益の絶品と呼ばれるほど、補益且つ清潤の特徴を持ち、「補無助火・清不傷正」(補っても逆上せず、清めても正気を傷まない)のため、体内虚火がある衰弱の者には最適であり、特に秋季の食用に相応しい。

ここでは百合の食用方法を幾つか紹介して秋季の肺臓補益に役立てて欲しい。普段、羹や粥など煮込みの場合は多く干し百合、炒め料理の場合は主に新鮮な百合根を使用する。

1、百合蓮子銀耳羹(百合と蓮実と白木耳の羹)

[材料]干し百合20g、白木耳3枚、蓮実20g、氷砂糖100g、枸杞10g。

[方法]白木耳を30分間水に浸して戻してから小さく千切り、弱火で2時間半煮込んで粘々になったら氷砂糖を加え、水で浸した蓮実を入れて更に30分間煮込み、水で戻した百合と枸杞を入れて15分間煮込む。

[効用]滋陰潤肺、益気養心。主に肺気陰虚による咳嗽痰多、胸悶気短、不眠多夢、面色不華などに適する。

2、百合荸雪梨羹(百合と黒慈姑と梨の羹)

[材料]干し百合30g、黒慈姑50g、梨1個、氷砂糖少々。

[方法]黒慈姑を綺麗に洗って皮を剥いてから叩き潰しておき、梨を綺麗に洗って種を除いて細かく切り、百合と一緒にお鍋に入れ、適量の水を加えて柔らかくなるまで煮込み、更に氷砂糖を入れて少々煮込む。42回に分けて服用し、連続して10~15日を1クールとする。

[効用]潤肺清火・化痰止咳。熱証の慢性気管支炎、慢性咳嗽、熱病後期(回復期)の虚熱口渇などに適する。

3、西芹枸杞炒百合(セロリと枸杞の実と百合の炒め)

[材料]セロリ200g、枸杞10粒、新鮮な百合根140g、鶏がらスープの素、食塩。

[方法]セロリはお湯を通して強火で速やかに炒め、火が通ったら百合根を加えて透明になるまで炒め、調味料を加えて枸杞を均等に混ぜる。

[効用]清熱解毒・潤肺止咳。主に風熱感冒による咳嗽頭痛、肝陽上亢による頭暈煩熱、熱病後期・飲酒による煩熱口渇などに適する。

4、百合糯米粥(百合の糯米粥)

[材料]新鮮な百合根40g、糯米100g、氷砂糖適量。

[方法]百合を綺麗に洗って細かく切り、糯米と一緒にお鍋に入れ、水を加えて米が柔らかくなるまで煮込み、氷砂糖で調味して朝晩暖めて服用する。

[効用]潤肺止咳・寧心安神。秋燥による皮膚乾燥、心煩不眠、空咳痰少、大便秘結に適する。

5、百合紅棗糯米粥(百合と棗の糯米粥)

[材料]干し百合60g、糯米200g、棗30g、黒砂糖適量。

[方法]干し百合を水で30分ほど浸し、棗を小さく千切り、糯米と一緒にお鍋に入れて水を加えて柔らかくなるまで煮込み、お粥が粘稠になったら黒砂糖を加えて均等になるまで少し煮込む。

[効用]健脾養胃・益気安神。精神不振、四肢無力、食思不振、心煩不眠、肺虚空咳などに適する。

6、杏仁百合粥(杏仁と百合の粥)

[材料]杏仁9粒、干し百合15~20g、粳米30~50g、砂糖適量。

[方法]杏仁、百合、粳米を水で2回浸し、1回で30分間、砂糖を加えて柔らかくなるまで煮込む。

[効用]潤肺止咳・清心安神。空咳痰少、心煩不眠に適する。

7、苓術百合粥(茯苓と白朮と百合の粥)

[材料]茯苓5g、懐山薬30g、麩炒白朮15g、砂仁6g、百合10g、粳米250g。

[方法]茯苓、山薬、白朮、砂仁、百合を綺麗に洗って適量の水で30分間浸し、強火で煮てから弱火に変えて30分ほど煮込み、残渣を除いて汁を粳米と一緒に土鍋に入れ適量の水を加えて弱火でお粥になるまで煮込む。

[効能]健脾和胃・潤肺養陰。

百合は秋季養生の絶品であるが、適切に応用しなければならない。風寒感冒による咳嗽、脾胃虚寒による泄瀉便溏の者は食用を控える。

健康知識:三伏天における冬病夏治の食療処方

三伏天(さんぷくてん)は二十四節季の小暑と処暑の間にあり、一年中最も気温や湿度が高くて蒸し暑い時期である。今年も7月11日から三伏天に入り、ここ数年続いて、初伏10日、中伏20日、末伏10日で、計40日間である。

中医学には「春夏養陽」の養生原則があるが、三伏天では特に陽気の保養に注意しなければならない。そのため、温暖・発散を適宜とし、寒冷・収斂を禁忌としている。簡単に言えば、「伏天に入ると、冷える物を食しない」と言われるように、普段は温かい飲み物や熱性の生姜棗汁などを飲んだりし、冷たい飲み物や冷える食べ物を控える。また冷房環境に籠ってはいけない。これによって生体に効果的な発汗をさせ、体内に伏せている寒湿邪気(代謝廃物)を順調に排泄する。

夏季の炎熱酷暑で、ついアイスクリーム、かき氷、冷たいビール、冷やした西瓜などを好んでしまう人が少なくないが、これらの寒冷食物は直接中焦陽気を傷めて脾胃虚弱を起こし、更に一身の陽気を損なう恐れがある。現代医学的にもこれらの寒冷食物は食道や胃腸のほか、近隣する心臓動脈を刺激して収縮痙攣を起こし、循環障害の発作を招いてしまうと指摘している。

三伏天の時期、人体の陽気は自然界に従って最も旺盛になっているため、体内に凝集して冬季に疾病発作を起こす陰寒邪気は比較的解けやすい状態になっている。夏季の暑熱が体内に貯まらないように、健常者には苦味や涼性でアッサリとした飲食物をお勧めしているが、慢性的な喘息咳嗽、胃痛泄瀉、関節冷痛など冬季持病の方や身体虚弱の方は、この時機を上手く利用して補虚助陽と共に温裏散寒の効能を持つ食物や薬物を加えるか、温灸を据えることなどで、天人の協力で身体の奥に蓄積している頑固な寒邪宿疾を一気に追い払う効果が果たせる。いわゆる「冬病夏治」のことである。また冬病治療と同時に、体内の虚弱陽気を調節し補充し、生体の免疫力を高めて一年中疾病の抵抗力を強める事が出来る。

冬病夏治の方法は沢山あるが、通常温灸法や三伏湿布などの外治法が多く知られて用いられている。実際、飲食薬膳の内治法も便宜的で効果的である。特に皮膚が過敏で外治法に合わない場合、簡単な飲食薬膳だけで明らかに冬病の再発を減少させ、病状進行を緩和させることかでき、また身体虚弱の補養効果も大きい。冬季では健康維持のために通常、羊肉、豚の腎臓、海老、韮、山芋、胡桃、黒胡麻など温熱性能で温腎祛寒の食材が用いられており、いずれも適当に応用できる。更に漢方薬を併用することで疾病治療の効果が期待できる。

ここでは、冬病夏治のための飲食薬膳処方を紹介する。

① 卵の緑茶煮

緑茶15g、鶏卵2個、お椀1杯のお水に入れて煮込み、火が通ったら鶏卵の殻を剥いて更に煮汁がなくなるなるまで煮込む。益肺理気の効能を持ち、慢性気管支炎、気管支拡張症、気管支喘息など肺陰虚に用いられる。

② 卵の生姜炒め

生姜を千切りにし、落花生油を熱くして生姜を炒め、鶏卵1~2個を加えて固まるまで炒め、毎朝1回食する。利肺降気・健脾止瀉の効能を持ち、慢性咳嗽、慢性喘息、慢性泄瀉などに用いられる。

③ 梨貝母の煮汁

梨1個、皮を剥いてスライスし、川貝母12gを磨り潰して氷砂糖20gを加え、一緒に煮込んで汁を服用する。潤肺止咳の効能を持ち、老年性気管支炎の肺熱による空咳、痰少などに用いられる。

④ 二姜と豚胃袋のスープ

豚の胃袋1個、お酢で綺麗に洗って生臭みを取り、千切りにしておき、乾姜10g、高良姜10g、草果3g、土瓶に入れて葱と生姜を加えて柔らかくなるまで煮込み、塩3~5gで調味して空腹時に食する。健脾温胃・助運止瀉の効能を持ち、脾胃虚弱による胃脘冷痛、飲食不化、慢性泄瀉、面色萎黄、身体羸痩、倦怠無力などに用いられる。

⑤ 栗と羊背骨のスープ

栗12個、羊の背骨1本(金槌で砕く)、肉蓯蓉12g、草果3g、土瓶に入れて葱と生姜を加え、柔らかくなるまで2時間ほど煮込み、塩で調味して空腹時に食する。補腎固本の効能を持ち、腎精虚損による慢性婦人科疾患、腰膝痠軟冷痛、筋骨無力などに用いられる。

⑥ 鮒の胡椒スープ

新鮮な鮒1匹(約250g)、鰓と鱗と内臓を取り除き、生姜20gをスライスにし、砂仁と胡椒粉を一緒に魚のお腹に入れ、適量のお水を加えて中火で火が通るまで煮込み、塩で調味して食する。温補脾胃の効能を持ち、脾虚型または胃寒型の胃痛に用いられる。

⑦ 雄鶏の白胡椒スープ

雄の鶏1羽、綺麗に洗ってから角切りにし、白胡椒9g、草果3g、良姜3gと一緒にお鍋に入れ、葱と生姜を適量加えてお水から柔らかくなるまで煮込み、塩で調味して空腹で食する。温肺補虚・止咳平喘の効能を持ち、虚弱羸痩、畏寒少气、寒冷発作の咳嗽、繰り返す感冒,アレルギー性性鼻炎,冬季増悪の喘息などに用いられる。

⑧ 烏骨鶏の黄芪スープ

黄芪30g、乌骨鶏半身を共に煮込み、鶏肉が柔らかくなったら調味料を入れて肉を食べてスープを飲む。3回に分けることが出来、連続してひと月くらい食する。養肺益気・滋腎補血・固表防感の効能を持ち、身体虚弱、易感冒、咳嗽などに用いられる。。

⑨ 大豆花山椒スープ

大豆30g、花山椒5gをお水500mlに入れて強火で煮たってから、弱火に変えて柔らかくなるまで煮込み、お好みで調味して豆を食べて汁を飲む。健脾宽中・和胃止呕・散寒止痛の効能を持つ。

上記のほか、冬病の凍瘡に対して温熱性能を持つ食物薬物を外用する事もできる。紫色の大蒜(独株のが良い)を泥状に潰して暖かくなるまで天日干しし、薄く凍瘡再発部位に塗り付ける、一日に3〜5回、連続して5〜7日行うことで、冬季での再発を予防する。或いは新鮮の胡麻葉を丸めて凍瘡再発部位を擦り、汁を皮膚に残して1時間後に洗い落とす。一日に数回、連続して1週間ほど行う。或いは紅花10g、桂枝15gの煎じ汁を凍瘡再発部位に塗り付ける。一日に1回、連続して5日間行う(妊婦不適)。

三伏天にもう一つ簡単な陽気保養の方法がある。夕方に一日日光に当たって熱くなった木や石のベンチに座ることで、湿邪停滞による腰腿重痛、早朝の腹痛泄瀉や手足不温・月経腹痛など虚寒証、様々な持病を改善させられる。

健康知識:健脾利水・清熱除湿の良薬 はと麦

梅雨季節に入り蒸し暑い日々が続き、頭が重くて体がだるい、汗がベタベタしてすっきりしない、食欲が出ないなどの症状は湿邪が体内に溜まっている特徴である。そのため、この時期の健康維持で最も重要な原則は清熱除湿である。

中医学的に五臓の中の脾は、気血を化生し運輸するほか、水湿を運化する生理機能がある。脾が健常であれば、気血が充足するし、体内に停滞している湿邪も変化し排除されていく。逆に湿邪が盛んになると、脾の機能も影響されて低下してしまう。

健脾除湿と言うと、真っ先にはと麦が思い出される。はと麦は薬食両用の材料の一種として知られ、その清熱利湿の薬効効果が最も重視されている。はと麦は涼・甘淡の性味で、脾・胃・肺・腎に帰経し、健脾止瀉・利水燥湿・舒筋除痹・清熱排膿などの効能を持ち、主に脾虚湿盛による泄瀉、浮腫、湿温病、脚気、婦人帯下、小便不利;風湿痹痛、筋脈拘攣;肺癕、腸瘍などに用いられる。現代研究によると、はと麦は血圧低下、糖質脂質代謝の改善、腸内菌の調節、抗癌、美白など様々な作用を持っている。また栄養価が高く、適応範囲が広く、安価などのこともあり、日常飲食生活における健康増進に非常に適している。はと麦の作用が平和で、微寒で清熱しながら胃を傷めず、益脾しながら補い過ぎない特徴があり、特に久病体虚や病後回復、そして老人・小児に多く適応している。なお、健脾益胃の場合ははと麦を炒り、利水滲湿・清熱排膿・舒筋除痹の場合は生の物を用いる。

但し普段の食生活では、はと麦の調理に慣れていない方が多いようで、ここで、はと麦の応用方法を紹介するので炎熱と湿気の強い梅雨季節に活用して欲しい。

はと麦小豆粥

[材料]はと麦30g、小豆20g、米50g。

[方法]はと麦と小豆を綺麗に洗ってからお鍋に入れ、お水を加えて強火で煮立ってから弱火に変えて30分間ほど煮込み、更に米を加えて30分間煮込む。

[効用]健脾祛湿。脾虚湿盛による身体困憊、食少腹脹、大便が粘っこくてスッキリしない、舌苔厚膩に適する。

はと麦八宝粥

[材料]はと麦30g、白扁豆、蓮実、胡桃、小豆、竜眼肉各10g、棗6個、糯米100g。

[方法]上記食材を綺麗に洗ってお水と一緒にお鍋に入れ、弱火で柔らかくなるまで煮込んでから、適量の氷砂糖または黒砂糖で調味する。

[効用]健脾開胃祛湿・益気養血。脾虚血少による倦怠無力、食欲不振、慢性泄瀉、心煩不眠などに適する。

はと麦山薬の燕麦粥

[材料]はと麦200g、山薬(皮を剥いて角切り)150g、オートミール30g。

[方法]はと麦を綺麗に洗ってお水で30分間煮込み、そこに山薬を入れて柔らかくなるまで煮込み、オートミールを加えて均等に混ぜる。

[効用]健脾燥湿・開胃消食。脾胃気虚湿滞による面色萎黄、全身無力、食欲不振、消化不良、舌苔厚膩などに適する。

はと麦黄耆棗の粟粥

[材料]はと麦100~200g、生黄耆30~50g、棗10個、粟50g。

[方法]上記食材を綺麗に洗ってお水を加え、弱火で柔らかくなるまで煮込む。

[効用]健脾益気・清熱補血。脾胃虚弱による身体羸痩、面色晄白、倦怠無力、気短自汗などに適する。またはと麦にCoixol(6-methoxybenzoxazolon)、コイクノライド(Coixenolide )という成分が含まれ、また豊かなセレン元素(Selenium)を含有するため、癌細胞の増殖を抑制することができ、癌患者の補助食として用いられる。

はと麦小豆冬瓜皮の鮒スープ

[材料]鮒1匹(約400~500g)、はと麦50g、小豆30g、冬瓜皮50g、陳皮5g、生姜3スライス。

[方法]鮒の鱗と内臓を取り除いて綺麗に洗い、鉄鍋にサラダ油を少々塗して弱火で鮒を炒っておく。はと麦をお水で30分間煮てから小豆、冬瓜皮、陳皮、生姜、鮒を加えて30分間煮込み、料理酒を少々入れて沸騰したら出来上がり。

[効用]健脾利水。脾虚による水腫、脘腹脹満、食少、大便溏泄、四肢倦怠などに適する。

はと麦杏仁冬瓜仁葦茎スープ

[材料]はと麦50g、杏仁10g、冬瓜仁30g、芦の茎30g。

[方法]上記の食材を綺麗に洗ってお水に入れ、強火で沸騰してから弱火に変えて1時間煮込む。

[効用]健脾祛湿・止咳化痰。脾虚湿滞で、肺熱による咳嗽、粘っこい白色または黄色の痰を吐くなどに適する。

はと麦玫瑰花月季花茶

[材料]はと麦30g、玫瑰花5g、月季花3g。

[方法]はと麦を綺麗に洗ってお水に入れ、強火で煮立ってから弱火に変えて1時間ほど煮込み、火を止めて玫瑰花と月季花を加え、蓋を閉めて15分間蒸し、冷めてから飲用する。

[効用]美白潤膚・活血消斑。長期飲用により皮膚が滑々で、褐色斑や面皰を解消する。