人間は自然の一部分として、自然界の陰陽転化に従って生命活動を営んでいる。古来「日出而作(労作)、日暮而息(休息)」と言われるように、人間は一日における陰陽変化の規則性に順応し、陽の昼間は動き、陰の夜間は安静に休むべきである。これにより生体が自然に健康状態を維持しているのである。健康養生の観点から睡眠原則として「早寝早起き」を守らなければならない。
しかし止むを得ず、偶には一度夜更かし、或いは不眠の場合も避けられない。この場合は速やかに様々な善後策を立て、夜更かしによる損耗と副作用を最小限までに留める。
1、夜更かしの損耗を取り戻す
① 早起き
遅寝したら長く睡眠を補充するのも重要であるが、自然に覚めるまで寝坊すると、陽気が昼間における昇発を抑えてしまうため、更に頭がくらくらして重く感じ易い。
幾ら夜更かししたとしても、朝九時前に起きた方が良い。まだ陽明胃経の当令(当番)時刻7時~9時に起きてきちんとした朝食を食べる事をお勧めする。
② 睡眠の補充
良い睡眠の補充を取るのは最も重要な補益法で、相応しい時間は正午で11時~13時である。本格的な睡眠を5分間取れたら、他時間帯の2時間よりも効果的である。
もし入眠できない場合は、閉目静座法でリラックス呼吸を行っても良い。方法としては、両脚を交差し、臀部をやや高くして胡坐を取り、背筋を自然に伸ばし、何も考えず全てを忘却するように安静にする。静座時間は個人の状態により十数分間から数時間まで続けてよく、自ら気持よくリラックスが感じれば良い。脚が痺れて痛くなったら、無理せず姿勢を変えても良い。胡坐により気血を身体内に集中させて耗散させず、背骨を真っ直ぐにして座ると息が順調に通り、頭脳の気血も充足できる。
③ 頭目の按摩
目が醒めたら十本の手指指腹を用いて、櫛の様に前額から項部まで百回ほど撫でる。これにより夜更かし後の疲労と頭痛を解消する。またどんな時間でも、頭痛などの不快感があれば、風に当たらない場所で手指または先の太い櫛を用いて同じように行う。頭は諸陽の会であり、頭部の気血が順調に運行すれば、全身も気力が充ちる。
④ 食べる
夜更かし後に、手掌足裏の熱り、寝汗、顔の熱り、身体の痩せ、口咽乾燥、尿が黄色い、便秘など陰虚内熱の症状が多く見られる。この場合は黒豆、黒胡麻、桑の実など肝腎の陰を滋養する食物が好ましい。
ここでは滋養補益の薬膳処方を紹介する。黒豆30g、枸杞の実12g、竜眼肉9g、胡桃12g、棗6個、白木耳0.5房、生姜9g、山薬15g、黄耆15g、甘草9g。諸食材薬剤を2時間ほど水に浸してから、そのままお鍋に移して強火で煮込み、沸騰したら弱火に変えて40分ほど煮込む。煮汁を飲み、食材は食べても良い。またお好みにより、氷砂糖を加えて調味しても良い。
⑤ 飲む
夜更かした後に口が渇いて舌が乾く場合は濃い重湯を飲むことで、健脾滋陰・補益津液の効果を果たす。
他に、薄い緑茶や白茶を飲むと茶中ポリフェノール(Tea Polyphenols)が夜更かしによるラジカル(Radical)を取り除き、新陳代謝の促進が期待できる。
因みに、コーヒーは苦くて香ばしく、心火を助けて(心神興奮)元気を回復するように感じるが、実際は元気の借り越し(過剰支出)なので、本当はお勧めしない。
2、夜更かしの副作用を追い払う
① パンダの目(眼周の黒隈)
卵を茹でて殻を剥き、眼窩周辺にゴロゴロと転がって熱布する。最初は熱いので、火傷にならないように早く転がる。上手くできない恐れがある場合は、ゆで卵の殻を剥かず、タオルで巻いて眼窩周辺に転がって温めれば良い。
また濡れたタオル(おしぼり)を電子レンジ(500W40秒)で温めてから、目に当てて温めても局所の循環改善にも役立つ。
② 眠気
睡眠を補給してからも時々眠気が強くて無力感があるが、この場合は「鳴天鼓」の操作を試せば良い。
両側の手掌を温かくなるまで擦ってから耳介を覆って耳孔を塞ぎ、手指を後頭部に当て、示指を中指に重ねてから滑って下すことで、後頭部をトントンと軽く弾く。その後、耳を強く押えてから急速に放し、耳からスッキリする感じがある。
③ 顔面の豆(面皰)
夜更かした後に面皰ができ易い。この場合は生葱から協力を貰える。
長葱の先の一層の新鮮な内膜を剥いて面皰の部位に貼り付け、乾いたら剥がせばよい。早期の面皰に奇妙な効果がある。
中国では「一世の人生で半世の枕」との諺があるように、人生には半分が睡眠である。不眠を患うことがあるが、熟睡に悩むことはないため、睡眠を大切にしなければならない。やむを得ず夜更かししたら速やかに補足して初めて次の努力ができるのである。