健康知識:冬の数九寒天に養生を語る

中国では、一年中最も暑い時期の三伏天に対し、最も寒い時期を「数九天」としてている。数とは数える事を指し、数九は九を数えることである。冬至から天候が本格的に冷え込むため、冬至から九日間ずつ日々を数えて行き、一つ目の九日間を一九、二つ目の九日間を二九とし、三九と四九が二十四節季の小寒小寒と大寒を含めて最も寒い時期で、その後は気温が徐々に暖かくなっていき、最後に九つ目の九日間まで数えると、「九尽桃花開」(九が尽くしたら桃の花が咲く)で春が来るため、数九天は計八十一日間とされているが、実際は更に九日間を加えて九十日間を数えている。

「数九天」の厳寒天候に人体は最も寒気に損耗され易いため、温補の原則に重点を置いて養生する必要がある。下記の衣・食・住・行などの面で充分注意しなければならない。

1、温暖を保持して消耗を防ぐ

寒気で生体の陽気が消耗され易く、更に冬至から陽気が芽生え始めるため、寒気に傷められないように十分に保温する必要がある。また寒邪は凝滞の性質が持ち、寒冷により生体の気血運行が緩慢になって停滞も起こり易い。平素に血液粘稠度が高い高血脂、高血糖、高コレステロールの患者を含め、特に頸・肩・腰・腿の部位を温めなければならない。

寒は陰邪で陽気を傷め易いため、特に頭と足の防寒を大切にすれば、より良く寒邪の侵襲を防ぐ。寒冷の日、温かい厚着だけを着ても頭から身体の熱が放散してしまう恐れもあるため、出来れば帽子やマフラーなどで頭を覆った方が無難である。一方、足が冷えると内臓まで及ぼして下痢、月経不順、陽痿、腰腿疼痛などの病症を引き起こす。足を暖めるためには、就寝前にお湯で足を浸す方法が効果的であり、冷え症の者には艾葉を加えたり、湿が多い者には花山椒を入れたりし、煎じてから足を浸すと更に効果を高める。

具体的な手段として、合理的に衣服の厚みを調整し、暖房などで室温を調節する。

但し、身体の温暖保持は適度にしなければならず、熱がりや汗かきのない程度を適宜とする。着過ぎたり室温が高過ぎたりすると、熱くて汗をかき、腠理が開いて陽気の封蔵を妨げ、寒邪を感受して罹病する恐れがある。

2、適度な飲食で身体を補う

飲食保養は健康養生において重要な手段であり、特に冬至を過ぎた後は身体を大いに補う最適な時期であり、温熱性質の食物を以って身体を補益すると、半分の労で倍の効果を上げる。

陽気が不足する数九寒天では、羊肉、大根、生姜、長葱など温熱性質の食物を多めに食すことにより、生体の陽気を補う。

但し、冬季では肉類など脂っこい物・甘い物・厚味を多く食し、飲食が消化されず湿痰や蓄熱を生じ易いため、温熱性質の食物に伴い、蓮根、大根、白菜、梨、黒慈姑など津液を補足する清涼性質の食物も必要である。

ほかに、一日一度くらい温かい雑穀粥を食べると、身体を暖めるほか、胃腸を暖めて消化機能を促進して食欲を増進させる。

3、充足な睡眠で陰陽を補う

充分な睡眠時間を確保することは、陽気の潜蔵と陰精の蓄積に有益である。数九寒天において最も直接な養生法として早寝遅起きであり、普段より一時間多めに寝るのをお勧めする。

《黄帝内経》には冬の養生について「早寝遅起き、必ず日光を待つ」と記載している。中医学的には、早寝は陽気を温存するためになり、遅起きは陰気を保養するのを助ける。このように体内の陰陽平衡、臓腑を滋養して生体の健康を増進する。

4、適度な運動で気血を助ける

運動養生は生体の防寒能力を高める効果があるが、自然の規則性に順応しなければならない。基本的に数九厳冬の時節には、「蔵」(陽気と精気の貯蔵)に工夫すべきで、運動を多めにすることをお勧めしない。運動する際には有酸素運動が重要である。

先ず運動の強度からみると、ジョギングや球技試合など激しい運動は身体のエネルギー消耗が大きく、汗かきにより肌膚腠理が開いて陽気や腎精の消耗を招くため不適切である。代わりに早足歩き、八段錦、太極拳などの緩やかな運動がお勧めである。

次に運動の時間からみると、早朝は気温が低くて陽気が消耗され易いため、運動には適宜ではない。特に老人や心脳血管罹患者などの場合は必ず日が出てから、昼前後の陽気が比較的強い時間帯(午前十時前後或いは午後三四時くらい)にお勧めする。

また運動前に充分な準備運動を行って身体を温め、寒冷時気の筋骨強硬による運動損傷の発生リスクを下げる。運動後は直ぐに温かい飲物を補給し、生体の水液消耗による血液粘稠度の変化を起こして心脳血管疾患を予防する。

5、日光浴で陽気を補給しながら情緒を調節する

太陽は自然界陽気の本源であり、生命の陽気も日光から摂取されている。陽気が少ない数九寒天に日を浴びる事は生体の陽気を保養する重要な手段である。

また寒冷時期は気候が乾燥しているし、暖房や焜炉などの使用で更に乾燥して逆上せを起こし、情緒の変化も見られ易い。中医的には「怒則気上」で、気が逆上せると陽気は乱されるため、数九寒天の情緒の調節も重要である。

日を浴びることで陽気を補って寒気を駆除できるし、同時に気分転換で情緒を調節して抑鬱を減少させる。具体的な方法としは、両側の手掌を開いて日に向け、散歩や深呼吸などを伴う。三十分から一時間ほどお勧めする。

今は数九寒天の三九の最中である。最も寒い時期のなか、正しい養生方法を以って健康な身体を作り、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの病邪から身を守りましょう。

健康知識:秋冬養生のためのお粥

お粥は最も古い料理だと言われている。遥か三千年前の商代最初の調理法として、お水で穀物や野菜を煮込むことで、栄養素が最も人体に消化吸収され易くなる。またお粥は便宜かつ安価が特徴で、古来農耕生活の東洋人の食卓では多く食べられている。特に病人や老人・小児・妊婦など身体虚弱の者に対してお粥は最も滋養作用を持つ食物である。生体の状態に応じて食材の配合を調整することで目的性を明確にして病人に応用し易いし、老若男女に適応して応用範囲が広い。

お粥は主に二大効能を持ち、日頃の健康養生に役立っている。

① 健脾益腎:抵抗力と免疫力を高め、疾病予防と健康増進ができる;

② 和胃調腸:豊富な栄養の消化吸収を促進し、滋養強壮と体力増強ができる。

温補作用を持つお粥は秋冬の養生に不可欠な健康食である。お粥の種類は百以上に及んでいるが、中でも最も秋冬に相応しく補養効能の高い物として下記の六種類が数えられる。

1、粟と南瓜の粥

[作り方]

南瓜の皮を剥いて小さく角切りにし、粟を綺麗に洗う。お鍋に5倍のお水を入れて強火で沸かし、その後火を弱くして柔らかくなるまで煮込む。

[効能]

① 解毒排毒:大量のビタミンと繊維素を含有し、黴菌や重金属や放射能などの毒素を付着し排出する;

② 感冒予防:脾胃を温補し、栄養素が速やかに吸収されて生体の抵抗力を高める;

③ 健脾養胃:南瓜に含まれるぺプチンは胃粘膜を保護して潰瘍の癒合を促し、また胆汁分泌を促進して消化機能を助ける。

2、白木耳と百合根の粥

[作り方]

先に白木耳と百合根をお水で戻しておく。お米を煮込んで沸かしてから白木耳と百合根を千切ってお鍋に入れ、再度沸かしたら弱火に変えて2分ほど煮込む。

[効能]

① 癌予防と抗癌:百合根に含まれる多種のアルカロイドは血液細胞を増加させ、血球減少症の改善に有益であり、癌細胞の抑制にも効果的である;

② 潤肺止咳:清涼潤燥の作用を以て秋冬の乾燥季節に多発する肺燥咳嗽や虚煩不安を改善させられる;

③ 美白祛斑:黒色色素を抑制する作用がある。

3、人参粥

[作り方]

人参を角切りにし、お米を綺麗に洗い、一緒にお鍋に入れて煮立てから、弱火に変えて2分ほど煮込む。

[効能]

① 貧血改善:人参は造血機能を増加させて生体の必要な血を補給し、血液循環を促進する;

② 血管硬化予防:人参に含まれるケルセチンは生体の血流量を増加させ、血脂含量を降下させて血管硬化を予防する。

4、山芋と枸杞の粥

[作り方]

お米と山芋を綺麗に洗い、一緒にお鍋に入れ、お粥になるまで煮込んでから枸杞の実を加え、更に1~2分間ほど煮込む。

[効能]

① 益肺止咳:山芋にはサポニンや粘液質が含まれて気道を潤わせ、益気養肺の効能を以て肺虚咳嗽多痰の治療に用いられる;

② 血糖降下:山芋枸杞粥に含まれる粘液蛋白は血糖降下の作用を持ち、糖尿病患者に食事療法の良い物とされる。

5、黒胡麻粥

[作り方]

黒胡麻とお米を綺麗に洗い、一緒にお鍋に入れてお水を加えて煮込み、沸かしてから砂糖を適量加える。

[効能]

① 体虚改善:黒胡麻にはビオチンが豊富で、生体の抵抗力を高め、虚弱体質や早老症状を改善させ、羸痩虚弱の方に適する;

② 動脈硬化予防:黒胡麻に含まれるリノール酸は血中コレステロールを降下させ、動脈硬化の予防と治療を助ける;

③ 老衰対抗:黒胡麻は細胞の老衰を遅延させる作用を果たす。

6、竜眼と蓮実の粥

[作り方]

蓮実をお水で10分間浸してから、氷砂糖を加えて20分ほど煮込み、皮を剥いた竜眼を加えて引き続き3~5分間煮込んで沸騰させる。

[効能]

① 血圧降下:強心作用があり、末梢血管を拡張して血圧を降下させる;

② 記憶力増進:全身を補益し、特に脳細胞の疲労を解消して記憶力を増強させると実験研究から発見された;

③ 養血安胎:竜眼に多く含まれる鉄分とビタミンは妊婦の子宮収縮や下垂感を軽減させ、胎児の発育に有益である;

④ 癌予防と抗癌:蓮実に含まれるオキシキサンチニンは鼻咽癌に抑制作用がある。

秋冬時期の養生原則は温補に重点を置いているため、従来お粥は中医養生の第一良品として健康養生のために是非お勧めする。

健康知識:陳皮(蜜柑皮)の神秘的な効用

蜜柑を食べた後に残された皮を陰干しし、一年間以上経過したものを貴重な中薬の陳皮としているが、三年ほど保存された陳皮は薬効がもっと良いとされている。

陳皮は理気健脾・養胃散寒の効能を持ち、消化機能を促進させて消化不良や食欲不振などの症状を改善させる。

中薬として陳皮の応用歴史は長い。中国最初の薬学専門古典《神農本草経》では上品に並べ、「橘柚,味辛温。主胸中瘕熱逆気,利水穀。久服,去臭下気通神。」(陳皮は逆上せを冷まして消化を促進させ、長期服用で濁気を下して神気を通す)とあり、陳皮の性能について記載している。唐の《新修本草》や宋の《証類本草》には「下気通神,軽身長年」の養生作用を明らかにし、更に「陳者為良」という応用原則を提起している。明の薬学経典《本草綱目》には「苦能泄能燥,辛能散,温能和。其治百病,総是取其理気燥湿之功」とあり、陳皮の薬性薬効について性味帰経から詳しくまとめている。他に《本草匯言》には「其気温平,善于通達,故能止嘔止咳」と陳皮の止嘔・止咳効能を記載している。

現代においても陳皮は「国民の保健薬」として下記のように広く応用されている。

① 芳香理気、寛中消脹;

② 脾胃調和、消食導滞;

③ 益肺化痰、止咳平喘;

④ 降圧降脂、心脳血管の改善;

⑤ 抗腫瘍・抗炎症。

また他の薬物に比べて陳皮は殆ど副作用が無く、天然の果物から来た食用薬物は安全に活用できる。

ここでは幾つかの具体的な応用を紹介する。

① 調味料としての主要作用

消臭:陳皮の芳香は魚や肉の異臭を取り除く;

香味:陳皮の苦辛味は他食物の味と混合すると独特な新鮮な香味を作り出す;

殺菌解毒:陳皮は一定の殺菌作用を持ち、魚や蝦による中毒を解消し、その寒性を緩和させる;

脂肪分解:肉料理に脂っこさを解消してお肉を柔らかく煮込み、消化促進にもなる。

② 薬膳食材としての応用

陳皮粥:お粥を煮る時に蜜柑半分または一個分の皮を入れて一緒に煮込む。朝食で陳皮粥を食べると、清々しく香って胃を暖めて食欲が増進でき、また感冒咳嗽の予防にも役立ち、胸腹脹満、咳嗽痰多の者に対して飲食治療の作用を果たす。滋補効果は陳皮人参粥と同等である。

陳皮牛肉:牛肉500g、陳皮1~2欠片(蜜柑1個分)、豆板醤1匙、甘酒適量(料理酒でも代用できるが、調理する際に砂糖と水を少し加える)。牛肉と陳皮を千切りにし、お鍋に油を塗して強火で牛肉を半熟まで炒め、豆板醤と陳皮を加えて均等に炒め、甘酒(或いは料理酒、砂糖、水)と醤油を加えて暫く煮込み、汁が乾きそうになると出来上がり。糖尿病など羸痩無力の方に適宜である。

陳皮香菜生姜汁:夏季では感冒に罹ると、頭暈頭痛に伴って悪心嘔吐、腹痛泄瀉などが見られるが、いわゆる胃腸型風邪である。これは空調に吹かれたり、雨に濡れたり、生ものや冷える物や消化し難い物を食べたりすると多く見られる。胃腸型感冒の場合は陳皮香菜生姜汁がお薦めである。陳皮1~2欠片(蜜柑一個分)、皮付きの生姜3スライス、香菜1小束。お鍋に水を入れて陳皮を煮て、沸かした時に微塵切りの香菜根と生姜スライスを加えて5分ほど煮込み、最後に微塵切りの香菜葉をいれて出来上がり。汁を飲んで香菜を食べる。また鼻閉、鼻汁を伴う者には髭付きの長葱白根を3本加えて一緒に煮込む。

③ 養生材料としての応用

陳皮枕:蜜柑皮を日差しの下で半乾きまで日干しし、細く千切りするか、「丁」字形に切ってから完全に干し、直接枕カバーに入れて出来上がり。安神助眠のほか、健康増進のためにもなる。

陳皮に含有される大量の天然揮発油は呼吸によって生体に入り、自律神経を調節して鎮静安神の効果を果たし、不眠や神経衰弱に緩解作用を持つ;特に体内積熱の方に対して清熱祛火の作用を持ち、長期間の使用により逆上せの症状を軽減させ、また消炎殺菌の効果もある;また脳循環を促進して血管の老化や硬化などを避け、脳梗塞など脳血管疾病の予防につながる。

健康知識:拍胸摩胸、養護心肺

一般的な健康養生法として摩腹揉腹法が多く知られており、臓腑機能を強化することにより、健康の維持と増進、疾病の予防と治療に大きく役立つ。実は摩腹揉腹と同じように、拍胸摩胸法も古来より養生医家に重視されている。胸部において拍打・摩擦など適切な保養動作を行うことにより、体内の濁気を排除し、心肺の機能を高め、そして健康増進と養生長寿に繋がる。

操作効果

① 経脈刺激:胸部には任脈を初め、肝・脾・腎の足三陰経及び足陽明胃経など全身に連絡する経絡が分布している。胸部の拍打・摩擦などを行うことで、寛胸理気・活血通脈・老衰対抗などの効果が得られ、健康増進で疾病予防の役割を果たす。

② 心肺養護:胸部には心肺二臓が納められ、肺は気、心は血を主っている。拍胸を行うことで、直接心臓と肺臓に刺激を与え、心肺の機能を強化して益肺養心・気血調暢の効果が得られる。現代研究によると、胸背部の拍打は肺法に対して軽度の衝撃波を起こし、患者の呼吸困難や胸部圧迫感を軽減させ、更に腹式呼吸を併用することで、肺の痰液や残気を上に動かす効果がある。これにより、冠状動脈心疾患、狭心症、慢性気管支炎、肺気腫などの予防と治療、そして胸悶動悸や気喘咳嗽や脇肋疼痛などの軽減改善に効果的である。

③ 免疫強化:胸骨の後方に胸腺組織があり、これは生体の生長発育促進及び免疫力向上に関わる内分泌腺である。加齢に伴い、胸腺が徐々に退化して脂肪組織に取り代わられ、それに従って免疫力も弱くなっていく。またストレス、心理障害、栄養不良、環境汚染、薬物損害、飲酒喫煙などの素因により、免疫機能も減弱し、感染症、免疫疾患、代謝疾患、更に悪性腫瘍などが発症し易い。拍胸を行うことで、胸骨に適度な震動を与え、胸腺の機能を活性化し、免疫力強化の効果が得られる。

操作方法

1、拍胸:直立または坐位を取り、腹式呼吸を行う。両手の五指を合わせて手掌をやや屈曲し、空心掌を用いて胸部において上から下へ拍打法を行う。拍打する際に口をやや開き、震動に伴って気を口から吐き出す。

片方ずつ右手で左胸、左手で右胸を拍打しても、両手同時に両側の胸部を拍打しても良い。30~40回ほど行う。

2、摩胸:坐位または仰臥位を取り、自然呼吸を行う。左側の手掌を用いて胸部の左上方から右下方へ、右側の手掌を用いて胸部の右上方から左下方へ、円を描くように摩法を行う。両手交互に30~40回ずつ行う。

一日に30分間ほど、夕飯の30分後から上記の動作を行う。

操作注意

① 動作を行う際に、爽快な気分で行う、全身をリラックスさせる。

② 拍打の時に手掌の着力面を広くし、手首の動きは自然に軽やかで弾力性を保ち、胸腔内に震動を感じさせる。

③ 上胸部ではやや力が大きく、下胸部では力は弱くし、損傷を避けるため粗暴な力を避ける。

④ 最初に動作を行う際に、力が強過ぎないように、自分で耐えられて震動が感じられるのを適度とする。少しずつ馴染んでいくと、拍打の力を強くすることができる。

⑤ 老年の方や骨粗鬆症の方は、胸部損傷や骨折の恐れがあるため、動作を軽やかに行う。また重篤な心疾患やペースメーカー装着の方には余りお勧めしない。

健康知識:養血明目の鶏レバー

現代社会では、毎日長時間パソコンやスマートフォンなどを利用して眼精疲労、目の乾燥や充血、視力減退、涙が出易い、近視、老眼など様々な病症が多発している。特に貧血の方に多く見られ、立ち眩みや頭暈感などを伴う。この場合は日頃から目に良い食物が必要とされ、通常は野菜の人参、菊花茶や枸杞の実、そして豚レバーなどを思い易いが、実際に最もお薦めするのは鶏レバーである。

中医学的には、肝は蔵血を主り、目に開竅している。血を以て目を補っているため、血虚(貧血に当たる)の方は目も弱くなる。古来「臓を以て臓を補う」という薬膳療法の原則に基づき、動物のレバーは昔から肝血虚や目症状などに用いられてきたが、その中でも鶏レバーが最も効果的だとされている。鶏レバーは甘・苦・温の性味で、肝・腎・脾に帰経し、補肝益腎・養血明目・消疳殺虫の効能を持ち、主に肝虚による目昏眼暗、視物不清、老年肝虚、眼目昏花、目翳白障、夜盲などに適応する。一方、現代研究によると、100gの鶏レバーにはビタミンAが10,414µgほど含有し、豚レバーの4,972µgや枸杞の1,625µgより遥かに多いため、その明目効果が豚レバーの2倍、枸杞の6倍ほど優れると言っても過ぎない。ほかに鶏レバーには蛋白質、カルシウム、鉄、ビタミンBなど栄養物質も豊富で、長期の食用により生体の免疫力を高め、益肝養血明目の効果を果たす。

レバーには独特な内臓の臭みがあって調理することに慣れないため、日常の食卓には余り現れていないが、ここで薬膳の一品として韮・玉葱の鶏レバー炒めを紹介する。

[材料]

鶏レバー400g、韮1束、人参100g、玉葱半分、長葱、生姜、大蒜それぞれ適量、醤油3大匙、料理酒1大匙、砂糖と塩それぞれ適量、五香粉または胡椒粉1小匙、胡麻油適量。

[調理]

1、鶏レバーを綺麗に洗っておく。お鍋に適量のお水を入れ、2~3スライスの生姜と適量の料理酒を加えて強火で沸かしたら、鶏レバーを入れて再度沸かし、灰汁を除き、弱火に変えて暫く茹でてから鶏レバーを取り出し、冷めてから手で小さく千切っておく(ハツが付いている場合はハツをスライスに切る)。

2、韮を短冊切り、玉葱と人参を角切り、葱と生姜と大蒜を微塵切りにしておく。

3、醤油と料理酒を一緒に合わせ、砂糖、塩、五香粉または胡椒粉など加えて均等に混ぜて調味汁を作っておく。

4、フライパンに油を入れ、長葱、生姜、大蒜を入れて香味が出るまで炒めてから、鶏レバーを加えてから調味汁を入れて均等に混ぜながら炒める。汁が無くなってから人参と玉葱を加えて炒め続ける。最後に韮を入れて均等に混ぜたらお皿に移し、胡麻油を垂らして出来上がり。

[要点]

1、調味汁を準備する際に、個人の好みに応じて調味料を加減する。

2、辛い味を好む方は、唐辛子の角切りを加えても良い。

 

健康知識:爪先立ち・踵落としの健康動作

爪先立ち・踵落としの動作は早く中国古代から健康養生に応用され、「敦踵法」と称されていた。前漢初期の《引書》に「敦踵以利胸中」や「敦踵,一敦左,一敦右,三百而已。」の記載があった。800年の歴史を持つ導引養生術の八段錦は、完結式動作を「背後七顛百病消」と言い、爪先立ち・踵落としで背中に振動を広げることで、五臓六腑に優しい按摩作用を果たして百病解消の効果があるとされている。

爪先立ち・踵落としは効果的な有酸素運動である。爪先立ちの際に、両側下腿の後部筋群から圧出した血液量は、凡そ心臓拍動時に拍出された血液量に相当する。これにより心臓のポンプ作用を助長して心脳血管の健康に有益である。同時に下腿の筋肉及び足関節を鍛え、静脈怒張を予防し、足関節の安定性を保つ。また四肢と頭脳を動かすことで、長時間の脳力集中や突然の立ち上がりによる目眩と頭暈を解消できる。膝関節の損傷も避けられるため、中老年の方には特に相応しいと言える。

動作効果

爪先立ち・踵落としは簡単な動作であるが、毎日行うと、以下の効果が期待できる。

① 強化臓腑、祛病養生:爪先立ち・踵落としの動作は全身に相応しい震動を起こし、五臓六腑の機能を激発し、生体の代謝を促進させて生命の活力を高進させ、陰陽調和・気血通暢に達し、糖尿病や肥満症の予防、冷え症の改善などに応用でき、健康増進の効果が期待できる。

② 通陽気、健脳髄:足趾は足三陰経の起始部位である。爪先立ち・踵落としの動作は肝・脾・腎の足三陰経と足太陽膀胱経を刺激し、陽気の上昇・宣通をさせ、頭部・顔面部の気血循行を促進させ、健脳益知・開竅解鬱の効果を図り、記憶力向上、認知症予防のためになる。

同時に肝・脾・腎三臓の機能を激発して気・血・精を養い、健康養生に最も密接に関係する。

③ 補腎気、強腰膝:腎気虚弱や腎陽不足の方は往々にして畏寒肢冷、下肢浮腫、足根冷痛などの症状が見られる。踵落としの動作は膀胱経と腎経が刺激され、腎気を補って腎気の通陽気化作用を促進する。補腎により白髪や脱毛の減少、性機能や生殖能力の増強、骨密度の増加で骨粗鬆症の予防などに効果的である。

また風寒湿邪が膀胱経絡に侵入して気血循行が阻害されて疼痛が発生する。踵落としの動作は膀胱経気を開通し疼痛を解消し、後頭痛、頚椎症、腰椎症などの予防と治療もできる。

④ 行血脈、防中風:足部は心臓から最も離れている末梢部位である。爪先立ち・踵落としの動作は末梢血液循環を促進させ、全身の血脈に大きく影響を及ぼし、動脈硬化、高血圧病、心筋梗塞、脳卒中などの予防に役立つ。

中医学的には、中風(脳血管障害)は真陽損傷による陰盛陽衰の証候とされており、脳出血や脳虚血は「陰盛格陽」によって陽気上衝の病証である。踵落としの衝撃は、脳部の気血運行を刺激すると同時に、浮陽を引き下げて膀胱経と腎経に沿って足部までに下行させる「潜陽」効果がある。

⑤ 小便不利改善:中医学の角度から見ると、小便不利は膀胱の気化不利による病症である。踵落としの刺激は、膀胱の気化機能を促進して排尿障害に働き、前立腺肥大や前立腺炎などにも良い治療法だと言える。

動作方法

身体を直立姿勢に保ち、両脚を自然に開き、両手を身体の両側に下ろし、ゆっくりと足趾で強く地面を掴むように爪先立ちして踵を上げる。その後、重心を趾先から足裏前半へと移し、身体をリラックスさせて自然にストンと踵を軽く地面に落とす。この柔らかい震動は両下肢に沿って上半身まで伝達されていく。一回に20~30で、10秒ほど休んでからもう一回続け、5~10回繰り返し、速度は自分で適当に調節する。

中老年の方や体力の弱い方には坐位で行うことができる。椅子に座って膝と太股を水平に保ち、体力によりペットボトルやペットを太股の上に置いて荷重練習しても良い。ゆっくりと爪先立ちして踵を上げから、ストンと踵を落として軽く地面にぶつける。一回に30~50で、直立姿勢と同様に繰り返す。

上記のほか、また爪先立ち・踵落としの関連動作を行うことができる。

1、爪先歩き:爪先立って歩き、一回は30~50歩で、暫く休んでから自分の体力に従って数回繰り返す。速度は軽くて気持ちよいことを程度とする。初心者は壁を支えても良い。

2、臥位の趾上げ(踵下げ):横に休む時に、両下肢を合わせて真っ直ぐに伸ばし、趾先を最大限に上げてから下げる(踵を踏み出す)。両脚を同時に行っても交互に行っても良い。下腿が疲れたら、暫く止めて休む。一回に20~30で、10秒ほど休んでからもう一回続け、5~10回繰り返し、速度は自分で適当に調節する。

動作注意

中老年以降の方が爪先立ち・踵落としを行う際に注意事項がある。

① 爪先立って歩く場合は、全身の協調性を必要としているため、高血圧や骨粗鬆症の方には強引に行うと、損傷の恐れがある。

② 爪先立ち・踵落としの練習は順を追って少しずつ進めなければならず、力を激しく入れ過ぎると足根痛の恐れがある。

③ デスクワークや将棋や麻雀など長く座り続け立って動かない場合は、一時間おきに一度爪先立ち・踵落としの運動を行えば、下肢の血液回流をスムーズにし、下肢の痺れなどを改善する。

健康知識:強靭な膝関節を作る動作

膝関節は身体において最も複雑な構造を持つ関節であり、体重を支えながら走行・蹲踞・跳躍など様々な運動を行う重要な役割を果たしている。加齢に伴い、膝関節の疼痛や運動障害など様々な症状が多く現れてくる。関節内の僅か1~2mm厚さの軟骨面及び関節周辺の靭帯・筋腱は、酷使や過労などにより慢性損傷を起こして関節老化が発症したり、急性損傷や慢性リウマチなど関節疾患も屡々発生したりする。これによって人々の日常生活にも大きな支障を来たしてくる。

強靭な膝関節を作ることは健康増進のために極めて重要である。そのため、下記の五つの動作で鍛えると大きく役に立つ。

1、馬歩動作

両下肢を平行して肩幅に開いて立ち、足先を前方に向け、ゆっくりと両膝を屈曲して身体をしゃがませる。膝蓋は足先の前を超えず、臀部を後方に突き出さず、上半身を真っ直ぐに緩める。この姿勢を暫く保ち、疲れを感じたら少し休んで再度行う。弱い方は腰臀部で壁に寄り掛かっても良い。

主に大腿四頭筋(膝蓋靭帯)を鍛える。

2、弓歩動作

片側の膝を屈曲して下肢を身体前方へ踏み出し、膝蓋は足先の前を超えず、反対側の下肢を身体後方へ自然に伸ばして膝を真っ直ぐにし、上半身を真っ直ぐに緩める。この姿勢を暫く保ち、疲れを感じたら少し休んで前後の下肢を変えて行う。

主に腰部と大腿四頭筋(膝蓋靭帯)を鍛える。

3、挙腿運動

片側の下肢に重心をかけ、反対側の下肢を前方と後方へ交互にゆっくりと最大限に挙げる。疲れを感じたら反対側の下肢に変えて行う。弱い方は椅子の背もたれや壁などを支えながら行って良い。

主に大腿前後(大腿四頭筋と大腿二頭筋)と下腿前後(前脛骨筋と下腿三頭筋)の筋肉を鍛える。

4、坐勢伸腿

椅子に座って片側の膝を伸ばして下肢を挙げ、踵を最大限に伸ばして1~2分間ほど姿勢を保ってから緩め、反対側の下肢に変えて行う。

主に大腿前後(大腿四頭筋と大腿二頭筋)と下腿前後(前脛骨筋と下腿三頭筋)の筋肉を鍛える。

5、拍揉関節

椅子に座って両側の手掌を用いて膝関節の正面を軽く叩き、また膝関節の上下内外(外周)を揉む、3~5分間ほど行う。

主に膝蓋靭帯と関節軟骨を強化する。

健康知識:春夏における艾葉(蓬)の食用

艾草はキク科の多年生植物であり、全草を薬用植物として応用でき、温経・止血・散寒・祛湿・平喘・止咳・安胎などの効能を持っている。現代研究によると、艾草は広域スペクルトの抗菌・抗ウイルス作用があり、病菌とウイルスに対して抑制・殺傷の作用を果たして呼吸器疾患の予防治療に用いられる。

日常では、艾葉は主に温経脈・暖気血・祛寒湿などのために応用されている。一般的に温灸材料として、乾燥した艾葉を臼で搗いて篩に掛けて陰干しして綿状物に作成される。また枕の中身として活用して安神助眠・疲労解消の効果を果たすほか、煎じ液で足を浸して水虫の治療、下腿静脈怒張の改善、そして関節疾患の予防治療などが期待できる。ほかに、民間では艾草で編んだ縄を燃やすことで蚊蠅駆除や滅菌消毒などの使い方もある。

新鮮な艾草は食物でもある。家庭料理として、蓬餅や天婦羅などは多く食用されてきた。沖縄ではフーチバーと呼ばれ、昔から細かく刻んでジューシー(炊き込みご飯)をはじめ、沖縄そば、ヤギ汁や魚汁など様々な料理に使われている。ここでは薬効のある料理を二品挙げて具体的な作り方を紹介する。

1、艾葉と卵の煮込み

効能:温経活血。

材料:艾葉100g、卵3個、食塩少々、胡麻油適量。

方法:艾葉の茎と不純物を取り除き、暫くお水に浸して綺麗に洗い、取り出して細かく切り、お湯を沸かした鍋に入れて沸騰させる時に、散らして混ぜた卵液を加えて再度沸騰したら弱火に変えて少し煮込み、食塩と胡麻油を掛けて出来上がり。

2、艾葉の糯米菓子

効能:安神助眠。

材料:艾葉、糯米粉、胡麻、落花生、小豆。

方法:先ず胡麻、落花生、小豆をフライパンで火が通るまで炒り、研磨機で粉に磨り潰しておく。次に艾葉をお湯通ししてから粉砕機で細かく切り、少しの糯米粉と水と一緒に鍋に入れて糊状になるまで弱火で炒め、まな板に移して糯米粉を掛けて捏ねて柔らかい生地を作り、小さく分けて丸い扁平状に押さえ、それを使って胡麻、落花生、小豆の粉を包んでお菓子を作る。最後に蒸し器で15~20分間蒸して出来上がり。

健康知識:清熱解毒の良薬 蒲公英

蒲公英(タンポポ)と言えば、知らない人はいない。春の4~5月及び秋の8~9月の開花季節になると、蒲公英は緑色の葉が茂り、黄色い花を咲かせて綿毛の付いた種を飛ばしている。生命力の強い草本植物で、アスファルトやコンクリートの裂目から生えることもある。普段自生している蒲公英は殆ど雑草扱いされているが、実は人体に有益な健康栄養の物質が大量に含まれ、日常の食物として食用できるほか、常用の生薬として「薬草の皇后」や「天然消炎抗菌剤」と呼ばれるほど薬用価値が高い。

蒲公英はキク科の植物に属する。中医学的によると、性は寒、味は苦・甘であり、肝・胃経に帰経する。

薬用効果

① 清熱解毒・消腫散結:蒲公英は体内の熱毒を解消し、急性熱証の口渇、咽喉腫痛に用いられ、これにより腫脹硬結、癕瘡疔毒、乳癕(乳腺膿瘍)、腸癕(化膿性虫垂炎)、肺癕(肺膿瘍)などの熱毒壅滞証に良い効果がある。

② 清肝明目・瀉火利胆:蒲公英は肝火を清瀉し、肝火上炎による頭暈目眩、焦燥易怒、目赤腫痛、乳房脹痛、黄疸などに用いられる。

③ 清熱利湿・利尿通淋:蒲公英は利尿作用を持ち、腎臓による各種の浮腫を改善させ、熱淋証(急性尿路感染)による頻尿、尿急、尿痛の治療に用いられる。

④ 美顔利膚:蒲公英の葉には湿疹や皮膚炎を緩解する成分が含まれ、皮膚の積熱を解消して皮膚疾患に用いられる。また花は褐色斑の解消に効果的である。

現代研究によると、蒲公英は広域スペクルトの殺菌・静菌作用を持ち、黄色ブドウ球菌、チフス菌、赤痢菌、C型肝炎ウイルスなどに対して殺傷や抑制の効果があり、結膜炎、眼瞼炎、咽喉炎、扁桃炎、耳下腺炎、皮膚炎、胃炎、乳腺炎など様々な炎症、感染症、化膿性疾患などに用いられる。またイヌリン(腸内において人体に有益な細菌を増やすのに貢献する多糖類で、植物繊維でもある)及びグルコースが豊富なため、人体の抗毒素作用を高め、生体免疫力を強化させ、これによって抗腫瘍に繋がる。他に、蒲公英は抗酸化作用のβ-カロチンを豊かに含み、血管内の代謝物を排出して血管を通調させ、血栓の形成を降下させる。

食用方法

蒲公英の食用方法は様々である。そのうち、根はお湯に浸して茶代わりに飲用することで、肝毒を排出して肝火を降下させる効果が強く、アルコール性肝障害の予防にも役立つが、花はお茶または薬酒を製作し、飲むことで皮膚疾患に有効である。

春季の食用は最も効果的とされ、新鮮な蒲公英の葉を取って洗浄する食べ方が多い。味噌を付けて生食したり、1~2分間お湯を通してから冷やして辣油、胡麻油、お酢、食塩、大蒜など調味料を加えて野菜サラダとしたり、お湯を透してから細かく切って挽肉と和えて野菜饅頭や餃子など主食の中身としたり、更に短冊切りしてスープや炒め物としたりすることができる。

注意事項

蒲公英は無毒であるが、寒涼性質を持っているため、虚寒体質や脾胃虚弱の者は機能低下や食欲減退や腹痛泄瀉の恐れがあり、慎重に食用する。空腹時の食用や長期間の食用を避ける。茶代わりの場合は冷たく飲まない。

また、漢方薬局から購入するのが良い。自分で取る時に、大通りや化学工場などを避け、また公園や景勝地では農薬を掛けたどうかに充分気を付ける。

配伍応用

① 蒲公英+水:眼赤腫痛(虚実火熱の全て)に用いる。新鮮な蒲公英(根、茎、葉、花の全草)120g、或いは乾燥した蒲公英60gを水で煎じ、汁を2碗ほど取り、1碗を温かく服用し、もう1碗で目を温かく薫洗する。

② 蒲公英+金銀花:咽喉腫痛に用いる。蒲公英60g、金銀花30gを水で煎じ、汁を取って粳米100gを加えてお粥に煮て、一日に2回服用して3~5日間で治癒する。

③ 蒲公英+蜂蜜:便秘に用いる(痰湿壅盛、脘腹脹満、体弱泄瀉の者を除く)。新鮮な蒲公英60gを水で50~100mlまで煎じ、蜂蜜を適量加え、一日に1回服用して連続して3~5日間続く。

④ 蒲公英+豚レバー:清熱毒・養肝血の作用を果たす(春の暖かくなった頃が最適)。新鮮な蒲公英の若い葉を取って綺麗に洗って熱い塩水に透し、豚レバーのスライスをお湯に透して灰汁を落とし、生姜の微塵切りと一緒にお鍋に入れ、サラダ油と水を加えて強火で煮てから弱火に変えて15分間ほど煮込んで、塩で調味する。

⑤ 蒲公英+緑豆:美容利顔の作用を果たす。緑豆を適量洗ってお湯に20分間浸して置き、蒲公英を水から煎じて汁を取り、緑豆を加えて緑豆が割れるまで煮込み、蜂蜜で調味し、緑豆を食べて汁を飲み、少し汁を残して顔に塗って30分後洗い落とす。

⑥ 蒲公英+苦参:水虫に用いる。蒲公英と苦参それぞれ500g、水を2000ml加えて沸かしてから更に15分間煮て、少し冷めてから罹患の脚を一日に1回10分間ほど浸す。

上記のほか、新鮮な葉を潰して汁を取り、蚊など虫に刺された時に塗ることで、腫れ・痛み・痒みを軽減させられる。

薬茶応用

① 蒲公英+紅茶:紅茶は全発酵茶であり、性質が温で蒲公英の寒性を取り除き、また養胃解毒・清熱生津・消脂減肥の効果を果たす。両者を併用することで、主に脾胃虚寒、高血圧・高血脂・高血糖の者に適する。

② 蒲公英+枚瑰花:枚瑰花は活血化瘀の作用を持ち、蒲公英と併用することで、清熱活血・内分泌機能調整の効果があり、主に内分泌失調、逆上せ易い者に適する。

③ 蒲公英+紅棗:紅棗は補気養血・健脾益胃の作用を持ち、身体虚弱、気血不足に良い効果がある。蒲公英と併用することで、主に陰虚火旺の者に適する。

④ 蒲公英+枸杞:枸杞は性質が温和で、滋陰補腎・養血護肝の作用を持ち、蒲公英と併用することで、主に腎気虚弱、肝火旺盛の者に適する。

⑤ 蒲公英+竜眼:竜眼は補心安神・養血益脾の作用を持ち、安神作用も明らかであり、また甘味で蒲公英の苦味を調和できる。両者を併用することで、主に心腎不交による不眠、身体虚弱で貧血の者に適する。

⑥ 蒲公英+山楂子:山楂子は性質が微温で、消食導滞・活血化瘀の作用を持ち、蒲公英と併用することで、食滞不化、脾胃積熱の者に適する。また血脂調節にも効果的である。

⑦ 蒲公英+甘草:甘草は性味が甘・平で、蒲公英の寒涼性質を調和する。両者を併用することで、主に倦怠無力、肺熱久咳の者に適する。

⑧ 蒲公英+丁香:丁香は温中降逆・温腎助陽の作用を持ち、蒲公英と併用することで、主に脾胃虚寒による嘔吐呃逆の者に適する。

健康知識(特別公開):30秒中医養生動作

新型コロナウイルスの感染拡大で、不要不急の外出を自粛したり、在宅勤務を提唱したりし、普段より健康のための散歩や運動も不足しているように感じているだろう。暫くの間は疫病収束の見込みもないため、室内に居る時間が長い生活を快適に過ごせるよう簡単便宜な30秒中医養生動作を四種類紹介するので健康増進のためになって欲しい。

推腹30秒、昇清降濁

運動不足や加齢などに伴って便秘や睡眠不安などの状況が多く見られる。これらは濁気が降下せず正気が上昇しないことから起こされる。推腹法は生体の正気を上げて濁気を下すことができる。

✦ 推腹は腹筋及び胃腸平滑筋の血流量を増加させ、胃腸の内壁筋力とリンパ系機能を強化し、蠕動運動を促進して消化機能を高めることで便秘の予防と解消に役立つ。

✦ 推腹は肝火を平熄させて心気平和・血脈流暢の効果があり、高血圧・動脈硬化・心脳血管疾病の患者に対して補助治療の作用を果たす。

✦ 睡眠前の推腹は自律神経を調節して精神愉悦を保ち、入眠を助けて不眠を防ぐ。

[方法]

自然に呼吸して腹筋を緩める。

両手の手掌を用い、先ず鳩尾から下方へ推し、次に両側の脇腹から前下方へ推す。それぞれ30秒で、約36回繰り返す。手の下に硬い塊が触れた場合は、それを丁寧に按えて揉む。

毎日の朝起床前に一度、夜就寝前に一度を行うと良いが、普段時間がある時に行っても良い。経穴に拘る必要もなく、人体の腹部に循行する9本の主な経脈を一括で操作できる。

正座30秒、健腿護膝

正座は多くの方にとっては辛いことだと言えるが、実際には身体の腰膝に有益な鍛錬の一種でもある。

✦ 正座は腰部を保養して腰痛の予防治療に役立つ。腰痛の原因は殆ど脊柱不正や血行不良などであるが、早朝30秒の正座だけで効果的に改善できる。

✦ 正座の際に、膝関節の靭帯と筋肉は牽引されて緊張し、これによって血液循環が促進され、膝関節に豊富な栄養供給を与えるほか、積液を解消して腫脹疼痛を軽減させる効果もある。

但し注意を要することがあり、正座は随意の動作ではない。本来膝関節は脆弱であり、正座時の負荷は直立時の8倍くらい大きいと研究から示唆されているため、正確な正座姿勢を行って初めて関節保護のためになる。

[方法]

先ず正座する両下肢の膝窩部に柔らかいパットや折り畳んだタオルを入れる。

上半身を直立に保ってやや後方へ反らすように、自分の踵部に座る。全身の重量を下腿に掛けるのではなく、両脚の踵で臀部を支えるように気を付けよう。

一回の正座は15分間を超えない。正座の際に手指で膝蓋の周辺を按圧すると良い。

蹲踞30秒、強筋健骨

蹲踞(しゃがむ)は常用される運動である。簡単に見えるが、長期に持続することで筋骨強壮の作用を果たす。

✦ 蹲踞は膝関節の敏捷性を高めて関節老衰を遅らせる。常時に行うことで、下肢の筋力を強化して転倒を効果的に防ぐことができる。

✦ 蹲踞は血管機能を改善させて心血管疾病の予防治療に役立つほか、同時に新陳代謝と血液循環を促進して心筋の血液供給を改善させる。

✦ 蹲踞はまた高齢者の大脳機能を増強させ、大脳老衰を効果的に予防する。

[方法]

両脚を肩幅ほど開き、身体を自然にリラックスさせる。足先は前方に向けて内側や外側の八文字を呈しない。膝をゆっくりと曲げ、膝の先端は足先を超えない。背部を伸ばして壁に寄り掛かり、頭部・背部・腰部を真っ直ぐにして緩める。臀部を下方へ下ろしてしゃがむ。

最初の段階は膝関節を30度から45度くらい屈曲して良い。徐々に慣れてきたら関節をもっと曲げて身体を深く下げるが、90度を超えない。

一回は30秒程度で、通常耐えられなくなってから1~2分間休憩してもう一回行う。朝昼晩にそれぞれ一度行い、一度に三回繰り返す。

金鶏独立30秒、調整平衡

金鶏独立は個人の老衰程度を測定できるとされているが、運動としては体内の平衡を取り戻る効果がある。

✦ 中医学によると、疾病の発生は生体の陰陽失調から起こされる。詳細な分析では五臓六腑間に相互の協調関係が崩れたというように理解できる。金鶏独立は直接生体平衡を調整する方法である。

✦ 金鶏独立は意守(意念の集中)によって生体の気血を足底に導き、高血圧や糖尿病の患者、そして頸椎腰椎疾病による疼痛などに即時の緩解効果がある。

[方法]

両目を微かに閉じ、両手を自然に身体両側に下ろす。身体の重心を一側の足に移して反対側の足を膝から引き上げ、太股はなるべく水平にし、膝から下は自然に垂らす。状態を出来る限り長く安定させ、耐えられなくなったら足を変えて行う。

重要な点は目を開けてはいけない。閉眼時に身体の平衡は目ではなく、脳神経の全身各器官への調節によって行われたのである。

また足部に6本の重要な経脈が循行しており、足部の平衡調節を通して虚弱の経脈部位に痠痛を感じる。これによって経脈の相応臓腑及び循行部位も調節されている。

上記四つの動作を全て行っても良いが、自分に必要とする一つの動作を選んで普段の生活に取り入れて行っても良い。いずれにしても長く続けることが大切である。