会員通信:NPO法人伝統医学教育会事業活動計画(2024年度)

2024年度は、昨年に引き続き教育活動である講習会及び普及活動の健康支援を進展していきたいと思います。

講習会は「常用針灸腧穴の基礎と実用」を予定しており、感染防止を徹底して従来の教育方針に従って少数人数で実行する予定です。本講習では、腧穴学の基礎知識を始め、臨床で最も常用される凡そ100経穴を取り挙げ、それぞれ名称の解釈から、その精確な定位と取法及び主要な性能と主治を伝授し、更に具体的な応用実技まで指導します。腧穴の具体的な臨床応用の方法や経験を習得し、健康の維持と増進、  疾病の予防と治療に役に立てると期待しています。講習は4月後半に開講し、計8回で12月前半に終了する予定です。

健康支援の活動は引き続きホームページを通じて健康情報を発信するほか、臨床センターにて会員の皆様に健康養生法の相談や指導なども実施していきたいと思います。状況が可能な範囲で会員限定の無料講座も開催する予定です。

ほかに、会員の交流を深めるため、年末懇親会を企画して開催する予定です。

会員通信:NPO法人伝統医学教育会事業活動報告(2023年度)

1、講習会

2023年度の定期講習会は、4月から翌年1月にかけて「常見病証の針灸治療実技」のⅢ期講習を実施しました。ほかには会員向けの特別健康講座「医療気功八段錦による健康増進」も主催しました。

「常見病証の針灸治療実技」の講習は2021年度及び2022年度に開催していますが、今年はⅢ期として、計4名が参加しました。今回も伝統医学教育の実用性に重点を置きましたが、Ⅰ期とⅡ期とは異なり針灸臨床の常見病証ではなく、日本の針灸現場では余り見られない、針灸治療で特効が得られる病証を6病証新たに取り上げ、それぞれの基本概念、病因病機、そして辨証分型を明確にしたうえ、治療原則と選穴処方を解説し、具体的な刺針実技を指導しながら、技能練習を行いました。更に近年流行っている「美容針灸」及び「新型コロナウイルス感染後遺症」についてテーマを立て、病理認識、辨証分析、そして治療原則などを解説し、実技の練習も行い、個人的な心得と経験を伝授しました。以前参加された針灸師や、新たに参加した針灸学生も大変熱心に取り組んでいました。辨証論治の思想に啓発され、臨床見聞が広がり、臨床実践の技術能力が高まると同時に、針灸治療の特殊技法を身に付けられるようになりました。

また、昨年7月30日当会会員を対象にし、「医療気功八段錦による健康増進」の特別講習を行いました。中国古代から伝わってきた最も完成度の高い導引養生術とされる八段錦は、八つの動作からなり、それぞれの動作は一定の臓腑または病証に対応しており、経絡気血疏通と臓腑機能調節の効果を持っています。八段錦は動作が簡潔で、運動量も適度で、健康効果も高いという特徴があるため、中国ではコロナ禍による外出制限の時期に在宅運動として推奨され、また効果的な免疫増強価値が確認されました。今回は多くの練習方法と特徴的な流派の中から、中国気功学会と北京中医薬大学による医療気功八段錦を紹介しました。実際に練習することで、日常生活に取り入れて健康の維持と増進、疾病の予防と治療に役立てて頂きたいです。

2、教本出版

当会の「針灸臨床実用参考書」シリーズである、新書「経穴の定位と技法」は2年3か月の時間を掛けて出版しました。針灸臨床では、正確かつ精密で迅速に経穴の定位を取ることは臨床技能の第一歩とされ、治療効果に最も深く関係しています。経穴の定位は決まっていますが、取穴方法は様々です。針灸学校の教育で腧穴の定位を学んで国家試験に合格したとは言え、実際臨床に入ると中々上手く取穴できず、取穴するには非常に時間が掛かるのが現状です。これを踏まえ、本書は腧穴の基礎知識を概説し、定位方法と取穴方法を説明し、更に針灸の操作技法を総説したうえ、針灸臨床において常用される212経穴を選び、それぞれの定位、様々な取法、そして針灸方法を詳細に説明しています。更にできるだけ精確に取穴要点を表現して理解しやすいように、自ら拘った図譜の考案と作成に工夫しました。一般の針灸師や針灸学生、按摩マッサージ指圧師などによる医療・健康関連職従事者の臨床治療、並びに伝統医学に関心を持っている方々の健康増進のための参考書にして頂きたく、本書を完成しました。多くの方々に活用して頂きたいと思います。

3、健康支援

教育事業活動と同時に、会員の健康支援活動も引き続き行っています。伝統医学教育会ホームページの会員専用ページにて健康知識を定期的に更新していますので、皆様の健康増進の参考にして頂きたいです。

また、会員の健康支援を目的として前年度に引き続き、伝統医学的な薬茶を二回お送りしました。10月には秋季の寒冷変化と乾燥の特徴及びインフルエンザと新型コロナウイルスの両方の感染が急増する情勢、12月には冬季の寒冷と乾燥の特徴及び上気道感染症やインフルエンザ、そして溶血性連鎖球菌感染(溶連菌感染症)など外感病証が急増する情勢に従って薬茶を考案して処方と見本を送付しました。いつもと同じように、皆様にお送りした薬茶の主要材料は比較的容易に入手できる身近な ものを使って作成しました。作成方法は教育会の会員専用ページに公開しています。

4、懇親会

コロナ禍の影響で3年ほど会員の年末懇親会を控えておりましたので皆様との対面交流も暫く途絶えておりましたが、疫病情勢はようやく少し落ち着いてきましたので、10月1日(日)午後、当会事務所にて会員の懇親会を久しぶりに開催しました。感染を考慮してご参加を控えていた方もいましたが、今回は計8名が出席しました。

事務局で用意した簡単なお飲物や食物のほか、金子会員からお菓子と新鮮な棗、 紙谷会員からチョコレートを頂戴しました。この機会に長年に渡って支援して頂いた会員及び 新しく入会した会員の皆様は一堂に集まり、様々な情報交換や交流懇親をしました。事務局も会員の皆様とお会いして貴重なご意見や近況をお聞きすることができました。また、皆様との交流を通じて今後の伝統医学教育会の活動方針を明確にして事業活動を進んで行きたいと考えています。最後に、中国茶の賞味も少し体験して頂きました。

健康知識:経穴を用いた美顔方法

近年、日本において美容針灸が非常に流行っている。針灸院やエステサロンだけでなく、接骨院などでも美容針灸を取り入れ、様々な所で治療を受けられるようになっているが、場所により治療効果は大きく異なっている。美容針灸の治療院を選定することは普通の人にとって中々難しい。そのため、自身で経穴を用いた美顔方法がお勧めできる。

実際、刺針の代わりに手指を用いて経穴に適度な刺激を与えることで美顔の効果も充分に得られ、しかも安全かつ簡便である。基本的に美容針灸は針具でなく、経穴への刺激によって美容効果を果たしたのであり、経絡の調節作用は美容針灸の基礎となる。推拿(按摩)手法を用いて相応しく経穴に刺激を与えることにより、臓腑経絡の機能を強化して陰陽気血の平衝を調節し、顔面皮膚が濡養されて潤沢で弾性に富むことができる。これはいわゆる美容推拿の作用機序である。

美容針灸でも美容推拿でも、経絡腧穴が最も重要な決め手である。先ずは体質と体調に従って適切な経絡腧穴を選択して治療処方を決める。次に正確かつ精密に腧穴の定位を取る。最後に経絡腧穴において適宜な手法を行って適度な刺激を与える。

ここでは、美顔に常用される経穴の所属経脈と応用要点を紹介する。具体的な定位と取法は《経穴の定位と技法》、詳細な効能と主治は《経穴の性能と主治》を参照することができる。

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健康知識:経穴を用いた美顔方法

近年、日本において美容針灸が非常に流行っている。

厳密に言えば、美容針灸は針灸技法を用いて全身の経穴に適度な刺激を与え、経絡気血の運行を促進させることにより、全身の臓腑機能を調節するうえ、局所の皮膚組織を養護して老衰遅延・健身美顔を目的とする治療方法である。

美容針灸は、広義的な意味で全身美化(全身肥満や腹部肥満などの痩身)と顔貌美化(顔面のシミやシワや弛みなどの美顔)との二つの内容を含む。現在、狭義的な意味で美顔を目的とし、主に先天的な生理欠陥及び後天的な病理疾患を軽減または消除する、或いは疲労や加齢老衰による機能低下を調節することが多く注目されており、この意味で美顔針灸と言うことが多い。

また、中医学的には生体の健康を無くして美顔が達成できないと考えている。本来、美容針灸は身体全体の状態を考えたうえ、全身の経穴に行う針灸治療の全般を指している。しかし、最近は一般的に直接顔面だけに刺針治療を行うのが主流になっている。

最近、針灸院やエステサロンだけでなく、接骨院などでも美容針灸を取り入れることが増え始め、様々な所で美容針灸の治療を受けられることが多くなっているが、場所により治療効果は大きく異なっている。美容針灸の治療院を選定することは難しく、色々注意点が喚起されているが、普通の人にとってやはり中々判断し難い。そのため、自身で経穴を用いた美顔方法がお勧めできる。

実際、余程の生理欠陥や病理変化を除き、普通の疲労や老衰による機能低下に対応するためには、刺針の代わりに手指を用いて経穴に適度な刺激を与えることで美顔の効果も充分に得られ、しかも安全かつ簡便である。基本的に美容針灸は針具でなく、経穴への刺激によって美容効果を果たしたのであり、経絡の調節作用は美容針灸の基礎となる。点・按・摩・揉・擦・推・捏・拿など推拿(按摩)手法を用いて相応しく経穴に刺激を与えることにより、臓腑経絡の機能を強化して陰陽気血の平衝を調節し、顔面皮膚が濡養されて潤沢で弾性に富むことができる。これはいわゆる美容推拿の作用機序である。

美容針灸でも美容推拿でも、経絡腧穴が最も重要な決め手である。先ずは体質と体調に従って適切な経絡腧穴を選択して治療処方を決める。次に正確かつ精密に腧穴の定位を取る。最後に経絡腧穴において適宜な手法を行って適度な刺激を与える。

ここでは、美顔に常用される経穴の所属経脈と応用要点を紹介する。具体的な定位と取法は《経穴の定位と技法》、詳細な効能と主治は《経穴の性能と主治》を参照することができる。

① 眼周腧穴

攅竹(足太陽経):眼精疲労、眼周浮腫、眉間の皺を緩和する。

睛明(足太陽経):眉間の皺、眼周浮腫、眼精疲労、眼裂縮小に用いられる。

絲竹空(手少陽経):眼周の浮腫みや弛み、眼瞼痙攣に用いられる。

太陽(経外奇穴):眼精疲労と眼周浮腫を解消する。

承泣(足陽明経):眼下クマ(弛み)を引き締め、眼周浮腫を解消する。

四白(足陽明経):眼下のクマや弛みに用いられる。

② 鼻旁腧穴

迎香(手陽明経):眼周浮腫を解消し、眼周肌膚の弛みを予防するほか、吹き出物、乾燥肌、ほうれい線などに用いられる。

③ 口周腧穴

巨髎(足陽明経):口周の皺、弛み、ほうれい線、表情筋の強硬に用いられる。

地倉(足陽明経):口周の皺、弛み、ほうれい線に用いられる。

承漿(任脈):顔面の浮腫みと弛みを消除する。口の歪み、皺、弛み、面皰、吹き出物に用いられる。

④ 面頬腧穴

下関(足陽明経):顔面の弛み、筋肉による腮張り、顔面の歪みに用いられる。

頬車(足陽明経):面頬浮腫を解消する。顔面の弛みを引上げ、筋肉による腮張りに用いられる。

大迎(足陽明経):顔面輪郭の弛み、浮腫み、歪み、口周の皺に用いられる。

⑤ 頭蓋腧穴

百会(督脈):自律神経の調節により精神を安定させ、飲食過剰や便秘を予防する。

神庭(督脈):顔面全体の浮腫み、弛みに用いられる。

翳風(手少陽経):顔面全体のリンパ循環を改善する。

美容針灸と美容推拿は中医学の整体観念(全体性)と辨証論治(個体性)の考え方に従い、全身調整の特徴を持っている。美顔を目的とした局所治療の経穴のほか、具体的な体質と病状に応じて全体治療も組み合わせると、治療効果が一層高められる。

通常、美顔治療の適応症状として面色不良(萎黄や晄白)、肥満や浮腫、シワ・シミ・弛み、褐色斑などが多く見られ、主に脾気虚弱・気血虚弱と肝気鬱結・気滞血瘀という二方面の病理機序から考えられる。これに対して健脾益気養血と疏肝理気行血の治療方針を立て、治療方法としてそれぞれ陽明経・太陰経の腧穴を主とするか、少陽経・厥陰経の腧穴を主とする。選穴処方の際に整体調節の原則が最も重要であり、全身と局所の腧穴を組み合わせなければならない。全身取穴は臓腑平衡の調節に着眼し、各系統の機能を調節することにより局所のための基礎を築く。一方、局所取穴は経絡疏通で循環を改善し、表皮細胞の新陳代謝を促進して斑点瑕疵を消去するに伴い、肌肉の弾力性を増強する。

なお、美顔推拿の施術には一定の順序がある。一般的には病症の部位に従うか、経脈の循行に従って施術順序を決める。

活動案内:「常用針灸腧穴の基礎と応用」講習会案内

腧穴とは、いわゆる「ツボ」のことで、体内の臓腑経絡の気血が体表の皮肉筋骨に輸送されて注入する部位です。腧穴は経絡に属して体内で臓腑に繋がっているため、体内の病証を体外に反映する診断点であり、また針灸推拿・気功導引など外治療法の治療点でもあり、臨床における疾病の診断治療に重要な存在となっています。実際、刺針の刺激のみならず、指圧や温灸など様々な物理的刺激を腧穴に相応しく与える ことで、生体の臓腑経絡機能を調節し、陰陽気血精神を調整することができ、健康  増進・疾病予防の効果も大きく期待されています。

本講習は、腧穴学の基礎知識を始め、臨床で最も常用される凡そ120経穴を取り挙げ、それぞれ名称の解釈から、その精確な定位と取法及び主要な性能と主治を伝授し、更に具体的な応用実技まで指導する予定です。腧穴の具体的な臨床応用の方法や経験を習得し、健康の維持と増進、疾病の予防と治療に役に立てると期待しています。

講習終了時、NPO法人伝統医学教育会の修了証書を交付します。

 

講 師:陳 志強  特定非営利活動法人伝統医学教育会理事長、医学博士

日 程:全8回 月1回 午前10時30分~13時00分(計20学時間)

① 04月21日 腧穴の基礎知識、定位・取法・性能・主治の概説;

② 05月19日 任脈腧穴、督脈腧穴;

③ 06月16日 手太陰肺経腧穴、手陽明大腸経腧穴;

④ 07月21日 足陽明胃経腧穴;

⑤ 09月08日 足太陰脾経腧穴、手少陰心経腧穴、手太陽小腸経腧穴;

⑥ 10月06日 足太陽膀胱経腧穴;

⑦ 11月10日 足少陰腎経腧穴、手厥陰心包経腧穴、手少陽三焦経腧穴;

⑧ 12月08日 足少陽胆経腧穴、足厥陰肝経腧穴。

場 所:東京都千代田区外神田6-4-5-401  NPO法人伝統医学教育会事務所

交 通:東京メトロ銀座線 末広町駅4番出口より徒歩4分

東京メトロ千代田線 湯島駅5番出口より徒歩5分

都営地下鉄大江戸線 上野御徒町A4番出口より徒歩8分

JR御徒町駅・秋葉原駅・御茶ノ水駅より 徒歩10分~15分

定 員6名以上で開講 10名まで

費 用:73,000円(当会会員は8,000円の割引額、分割払い可)。

教科書「経穴の定位と技法」別途4,950円(当会会員は割引後3,500円)

教科書「経穴の性能と主治」別途3,300円(当会会員は割引後2,200円)

振込先:特定非営利活動法人伝統医学教育会

郵便貯金総合口座 10100-55927971

申込み:NPO法人伝統医学教育会事務局

FAX 03(5816)5235

締切り:2024年4月6日(土)まで

健康知識:新型コロナウイルス感染後遺症について

1、概説

新型コロナウイルス性肺炎は、中医学において外感病証の「疫病」の範疇に属する。疫病は強烈な伝染性と流行性を持つ疾病の一種であり、通常の外感六淫(風寒湿燥火)とは異なり、「疫癘」(瘟疫、疫毒、癘気、疫気、毒気、異気、雑気、乖戻之気などとも言う)という病邪(致病素因)により起こされる。疫癘の形成は自然界の異常気候、環境の汚染、飲食の不潔、社会制度などと密接に関係している。新型コロナウイルス性肺炎の発生は、急速な蔓延・広範囲の流行・重篤な病状などの特徴から一般的な外感六淫ではなくて「疫癘」によるものである。病状の性質から見ると、主に寒湿の邪気と密接な関係を持って「寒湿疫」と定義している。

中医学における邪気は一つの抽象的な概念で、人体に疾病を致す全ての素因を指し、いわゆる致病素因のことである。致病素因は大まかに外感病因(風寒湿燥火の六淫、疫癘)、内傷病因(喜怒憂悲恐驚の五臓七情)、そして不内外病因(飲食、労逸、外傷、寄生虫、水湿痰飲、瘀血など)の三大類に分けられるが、新型コロナウイルス性肺炎には外感病因の疫癘が致病素因となっている。邪気は主に発病する時に病状の特徴に従って病邪の性質をまとめてきたのであり、現代医学における細菌やウイルスなど具体的なものと全く一致しない。

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健康知識:新型コロナウイルス感染後遺症について

1、概説

新型コロナウイルス性肺炎は、中医学において外感病証の「疫病」の範疇に属する。疫病は強烈な伝染性と流行性を持つ疾病の一種であり、通常の外感六淫(風寒湿燥火)とは異なり、「疫癘(えきれい)」(瘟(おん)疫(えき)、疫毒(えきどく)、癘(れい)気(き)、疫(えき)気(き)、毒気、異気、雑気、乖戻之(かいれいの)気(き)などとも言う)という病邪(致病素因)により起こされる。疫癘の形成は自然界の異常気候、環境の汚染、飲食の不潔、社会制度などと密接に関係している。新型コロナウイルス性肺炎の発生は、急速な蔓延・広範囲の流行・重篤な病状などの特徴から一般的な外感六淫ではなくて「疫癘」によるものである。病状の性質から見ると、主に寒湿の邪気と密接な関係を持って「寒湿疫」と定義している。

中医学における邪気は一つの抽象的な概念で、人体に疾病を致す全ての素因を指し、いわゆる致病素因のことである。致病素因は大まかに外感病因(風寒湿燥火の六淫、疫癘)、内傷病因(喜怒憂悲恐驚の五臓七情)、そして不内外病因(飲食、労逸、外傷、寄生虫、水湿痰飲、瘀血など)の三大類に分けられるが、新型コロナウイルス性肺炎には外感病因の疫癘が致病素因となっている。邪気は主に発病する時に病状の特徴に従って病邪の性質をまとめてきたのであり、現代医学における細菌やウイルスなど具体的なものと全く一致しない。例えば、一種のウイルスが人体に感染して様々な病状を現して来る時に、そのうち寒の特徴が現れる場合は寒邪による外感病証と判断するが、同時に湿の特徴も現れる場合は寒邪と湿邪が合わさって侵襲することによる外感病証と診断する。

また、中医学は単なる病邪から病証を認識するのではなく、生体と病邪を統一して一つの複合体として疾病の解析を行う。病因病機学説によると、正気は発病の決定素因で、邪気が発病の重要条件であるとされている。これは新型コロナウイルス性肺炎の感染発症時期にも感染後遺症時期にも同様である。感染初期では、発熱悪寒、咳嗽咽痛、頭身重痛、倦怠無力などの症状が見られるが、患者の体質などに従って臨床特徴が異なってくる。体質強壮のものは悪寒発熱や頭身緊痛など風寒束表の現れを主としているが、一方、体質虚弱のものは風寒表証のほか、疲労無力など気虚の現れも伴う。また感染後期では、身体困憊など湿邪が強い現れも認められている。

新型コロナウイルス性肺炎が治癒してから、多くの患者には様々な後遺症状が残っている。病状、体質、そして症状によって1~3ヶ月が続くものが多く見られるが、6ヶ月更に1年ほど続くこともある。疫病流行早期の病邪(デルタ種までのウイルス)は比較的強くて直接肺臓を侵襲するため、後遺症状も重篤であり、主に肺線維化(呼吸困難や胸痛など)、心筋損傷(不整脈や心胸重痛など)、嗅覚味覚喪失、疲労無力、睡眠障害、記憶障害ないし脳萎縮、性機能障害などが見られ、これは古代における瘟疫の記載に類似している。現在のオミクロン種ウイルスは感染力が強くなったものの、しばしば上気道を侵襲して症状が激しくなくなり、後遺症状も変化してきて疲労困憊、呼吸急迫、心拍過多、慢性疼痛、筋肉無力、感覚機能異常、不眠、認知障害などを主としている。

2、病機

感染症の初期では、主に正邪闘争の病理反応であり、高熱や煩渇など実熱の徴候が現れる。これによって邪気が追い払われるが、同時に正気も大いに消耗されて弱まっている。感染症の後期では、生体の正気虚損が主な病理となり、陰陽気血虚損の徴候が多く現れ、五臓虚弱の証を呈している。ほかに、病邪が完全に駆除されず体内に残存して痰熱内阻の徴候や、内生の毒が解消されず臓腑機能と気血運行を擾乱して瘀血・痰濁など病理産物による気機阻滞の徴候も伴い、虚実夾雑の証も見られる。

病位:疫癘は口鼻の径路から侵入して先ず肺系(気道)を通して肺臓を侵襲し、主に肺臓及び肺系を損傷する。その後は次第に心・脾胃など他臓腑に影響を及ぼす。

病機:臨床で主な病理機序は陽気損傷、痰湿停滞、そして陰液損耗などがある。

① 陽気損傷:寒は陰邪に属して陽気(主に心陽・脾陽・腎陽)を損傷する;また凝滞・収引の特徴を持ち、臓腑機能と気血運行に障害を来たす。

② 痰湿停滞:湿は土気にあたって脾に通じるため、湿邪が盛んになると、脾胃を損傷する;また重濁・粘着停滞の特徴を持ち、中焦の昇降失調を起こして体内の気機を阻害する。

③ 陰液損耗:疫癘が急激に人体に侵入すると、正気は奮い立って対抗し、これによって生体に高熱を起こし、陰液を損耗する。

上記のほか、外来の毒によって臓腑機能と気血運行の障害を起こし、瘀血・痰濁など内生の毒が生じ、生体の気機不利を起こし、昇降失調の病理を致す。

病状:臨床で多く見られる感染後遺症状は、疲労倦怠無力、胸悶気短、咳嗽気喘、咽痒腫痛、嗅覚味覚障害、動悸不眠、抑鬱焦慮などがある。

肺は気を主り、呼吸を司る。余邪が残存することで肺は宣発粛降機能を失い、肺気が上逆して咳嗽や気喘を起こす。外邪の侵襲により肺が損傷されて肺気は虚弱になると、胸悶や気短が現れる。また肺は鼻に開竅し、喉は肺の戸となるため、肺気が損耗されて不足すると、咽喉腫痛、嗅覚障害が見られる。

脾胃は後天の本であり、運化を主り、気血生化の源となり、また脾は肌肉を主る。外邪の侵襲により脾気が虚弱になると、全身まで気血を輸送できないか、湿邪が体内に停滞することで、身体疲労や倦怠無力が見られる。また湿邪が中焦に停滞して脾胃機能を障害し、悪心納呆や腹脹泄瀉、更に味覚障害が現れる。

心は神志を主る。余熱が完全に追い払わず心神を擾乱すると、動悸不安や虚煩不眠が見られる。心気が虚弱になると、精神疲労、更に抑鬱焦慮などを来たす。また心は舌に開竅するため、心気損傷なら味覚障害が現れる。

3、辨証

臨床では、感染後遺症に痰熱壅肺、陽気不足、気陰両虚、陰虚火旺、昇降不和などの証候が多く見られる。各証候の特徴を把握して辨別する。

① 痰熱壅肺:咳、呼吸急迫、喉中痰鳴、粘稠で黄色い痰を吐く、胸脇脹満、煩躁不安、または胸痛、食欲不振、大便秘結、舌は紅、苔は黄膩、脈は滑数。

② 陽気不足:精神萎靡、面色蒼白または萎黄無華、頭目眩暈、動くと汗かいて気喘、心悸、気短、話したがらない、手足不温、畏寒悪風、また頭痛、頸項痛、全身疼痛または肩背骨節痛が見られる、舌は胖淡、苔は白、脈は沈細無力。

③ 気陰両虚:倦怠無力、咳嗽で長く止まらない、咳音が低くて弱い、胸悶気短、身熱多汗、悪風、心悸、口乾、嘔悪納呆、精神疲労または虚煩不眠、舌は淡紅、苔は少、脈は沈細または虚数;また嗅覚・味覚の減退が見られる。

④ 陰虚火旺:面色潮紅、咽喉腫痛または咽喉乾痛で切られるよう、空咳、口鼻乾燥、口渇で冷飲を好む、五心煩熱、頭暈心悸、不眠多夢、盗汗、舌は紅、苔は少、脈は細数。

⑤ 昇降不和:胸脇苦満、心胸不快、呼吸障害、発熱が持続して冷めない、心拍過多など全身症状が明らかであるが、また呑酸、噯気、悪心、嘈雑、泄瀉、矢気、不眠、抑鬱、焦慮などが見られる、飲酒や過労により症状が増悪する、舌は白、苔は厚膩、脈は弦滑数。

4、対策

新型コロナウイルス感染後遺症に対する全体的な対策は辨証治療と飲食調節の二大方面から考える。

辨証治療は、健脾益気、潤肺滋陰、補腎温陽、養心安神を原則とし、相応する中薬処方や経穴処方を考える。

飲食調節は、補気、健脾、潤肺、安神の順位で薬効食物と食用薬物を組み合わせて考える。

ほかに、様々な養生方法も効果的に応用できる。例えば、就寝前に生姜や艾葉による足浴を行う、或いは太極拳、八段錦、五禽戯、坐禅などを行うことで睡眠補助が期待できる。腹式呼吸で気錬を行うことで老年の咳嗽・喀痰困黯の助力になる。

健康知識:便秘解消の五経穴

便秘は日常生活で多く見られ、年齢増加や運動不足などにより胃腸の機能が減退して現れ易い。特に秋季の乾燥に伴って便秘に悩まされている方が増えている。大便が乾燥して腸管に閉塞することで、腹脹腹痛や食思不振、更に煩躁不安などの病症が起こされることもある。

中医学的には、便秘の病位は大腸にあるが、脾胃・肺・肝・腎など臓腑の機能失調に関係している。

便秘の問題の解決には生活方式の調整するほか、人体における経穴の按揉法を行うことも効果的である。下記の五経穴は腑気通調・潤腸通便の効果を発揮して便秘の解消にお勧めできる。

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健康知識:便秘解消の五経穴

便秘は日常生活で多く見られ、年齢増加や運動不足などにより胃腸の機能が減退して現れ易い。特に秋季の乾燥に伴って便秘に悩まされている方が増えている。大便が乾燥して腸管に閉塞することで、腹脹腹痛や食思不振、更に煩躁不安などの病症が起こされることもある。

中医学的には、便秘の病位は大腸にあるが、脾胃・肺・肝・腎など臓腑の機能失調に関係している。

便秘の問題の解決には生活方式の調整するほか、人体における経穴の按揉法を行うことも効果的である。下記の五経穴は腑気通調・潤腸通便の効果を発揮して便秘の解消にお勧めできる。

 

① 天枢

足陽明胃経の腧穴である。中腹部にあり、臍中央から外方2寸に取る。

天枢穴の所在位置は腸に近隣して大腸の募穴であり、大腸の気が腹部に集結する場所となるため、大腸の機能を調節する作用を持ち、便秘、泄瀉、腹痛など腸管関係の病証を治療することができる。また便秘の場合は天枢穴に圧痛反応も現れ易い。

 

② 大腸兪

足太陽膀胱経の腧穴である。下腰部にあり、第4腰椎棘突起下(ほぼ両側の腸骨稜最高点を結ぶ線と同じ高さ)から外方1.5寸に取る。

大腸兪穴は大腸の背部兪穴であり、大腸の気が腰部に輸注する場所となるため、便秘、泄瀉、痔瘡など大腸に関係する病証の治療に効果的に用いられる。

 

天枢穴と大腸兪穴の併用は兪募配穴の方法であり、針灸臨床治療における前後配穴の代表方法となる。両者の配合には「陰病行陽、陽病行陰」の意味が含んでおり、これによって便秘に対して良好な調節作用が期待できる。

 

③ 上巨虚

足陽明胃経の腧穴である。下腿前外方にあり、外膝眼(膝蓋靭帯の外方陥凹部)の下方6寸で、脛骨前縁の外方1横指(中指)に取る。

上巨虚穴は大腸の下合穴であり、大腸の気が下って足陽明胃経に合する場所となり、《黄帝内経霊枢・邪気臓腑病形》にいわゆる「合治内腑」の理論により、便秘、泄瀉、腸癕(虫垂炎)など大腸疾患には上巨虚穴を取って治療する。

 

天枢穴と上巨虚穴の併用は募合配穴の方法であり、針灸臨床治療における上下配穴の代表方法となる。両者の配合により共同に大腸腑気を通調させる作用を果たして便秘治療のために役立つ。

 

④ 支溝

手少陽三焦経の腧穴である。前腕背側にあり、手関節背側遠位横紋の上方3寸で、橈骨と尺骨の間の中央に取る。

支溝穴は三焦経脈の経穴であり、五行では火に属するため、三焦の火熱邪気を疏散し、三焦の気機を調整して腑気を通調させる作用を持ち、古今に便秘治療の重要な腧穴として多く応用されている。

 

⑤ 照海

足少陰腎経の腧穴である。足内側にあり、内果尖の下方陥凹部に取る。

照海穴は八脈交会穴で陰蹻脈に通じ、腎経の脈気が聚まる場所となるため、気化作用が強いとされている。老年の多くは腎精虚損が発生し、「陽常有余、陰常不足」の陰陽特徴が現れ、便秘の発生に至る、或いは陰虚体質で大腸を滋潤できず便秘を来す。照海穴を用いて腎陰を調整して補益し、前後二陰を通調させ、陰液を養って「水液を増やして舟を行かす」ように便秘を緩解させる作用を果たす。

 

腧穴を用いて便秘を解消するには日々の習慣にする事が重要であり、毎日持続して上記の腧穴に按揉法を行うことが望ましい。手技の軽重は適宜に保つ。重症な便秘の場合は医療機関を受診し、明確な発病原因を辨別したうえ、総合な治療手段を受ける。

健康知識:秋季補肺のための百合の応用

酷暑が長引き、立秋から暫く経ちましたが、蒸し暑くて中々爽やかにならず、秋分になってようやく朝晩秋の気配が感じられるようになった。

秋季は「陰長陽消」の時期であり、万物が「引き締まる」特徴を現している。自然界の六気では燥が主気となり、燥は陰を傷め易い。また五行学説では、人体の肺臓は秋季と同じく金に属しているため、秋気に通じて合っている。肺は「嬌臓」と呼ばれるようにデリケートの臓で、湿を好んで燥を嫌悪する生理特徴を持ち、寒熱燥などの邪気に耐え難く、特に燥邪に傷められ易い。そのため、秋季では潤肺が最も重要な養生原則である。飲食薬膳による健康養生では、梨、冬瓜、百合、白木耳、蓮実、銀杏、杏仁、蜂蜜、鳩肉などの食材は直接肺臓に滋潤・補益の作用を持っている。中でも、百合が特にお勧めの一種である。

ここでは百合の食用方法を幾つか紹介して秋季の肺臓補益に役立てて欲しい。

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