新型コロナウイルス感染が三年ほど延び、疫病情勢が緩和したり、また緊張したりし、収束の目途が中々見えない。ワクチン接種は元々重症化防止のためで、直接感染予防に役立たないし、ワクチン自身の生体に起こした免疫反応の安全性が未だに確認されていない。明確な効果を持つ特効治療薬の無い現段階では、感染されない、或いは感染されても発症せずに済むことは非常に重要で、それは恐らく自力に頼るしかない。そのため、健康増進に関連して免疫強化の話題も注目されてきた。
日常生活で何を食べれば免疫力が高められるのか?患者さんや学生さんに多く質問されるが、回答として、日常生活で免疫力を高める食物は無い。確かに普段、何らかのキノコ類の食べ物や菌類の飲み物の商品には免疫力アップや免疫力ケアの効果があると宣伝されているが、実際あくまでも人体の免疫力に関わる栄養物質を増やす効果に限られ、正確な意味では直接免疫力強化の効能とは言えない。
そもそも免疫とは病疫から免れることを指す。現代医学における免疫力は、人体が本来備える生理機能として、外界または体内の病邪(疾病を起こす素因)に対する自己防御機能である。具体的に血液中の白血球がこれを担っており、小食細胞と呼ばれる好中球(顆粒球)、大食細胞と呼ばれるマクロファージ(単球)、特定の抗体を作って病原体の侵襲を抵抗するB細胞(リンパ球)、病原体に感染された細胞を攻撃してその繁殖を抑えるT細胞(リンパ球)、そして主に癌細胞を見付け出して攻撃するNK細胞など、五つの免疫細胞が常に働いている。
こう見ると、日頃より何かの飲食物を多く摂取するだけで簡単にこれらの免疫細胞を増やしたり、活性化させたりすることは先ず無理であろう。また免疫力は増強され難いだけでなく、逆に減弱され易い。精神的なストレス、体力低下、栄養失調、睡眠障害、理化学的な不良刺激など、生活における様々な不良素因の影響により免疫低下が容易に起こされる。
一方、免疫力は人体の生命力の一方面として、治癒力や修復力(回復力)などと同じく、生体全体の健康状態の総合改善に従って増強できる。そのうち、体力と気力(精神力)は健康の基本となっているため、先ずは重要な影響素因となる睡眠と飲食を確保し、心身両面の消耗による免疫力減弱を避けなければならない。このうえに、東洋的な観点から医学的な手段を用いて免疫強化が可能である。
中医学的には、人体の正気が免疫力に当たる。具体的に体内の陰陽から言うと、身体の滋潤・栄養作用を持つ陰気に対して生体の推動・温煦・防御機能を持つ陽気が免疫力となり、また脈に流れている営衛之気から言うと、脈内に流れて栄養作用を持つ営気(営陰)に対して脈外に流れて防御機能を持つ衛気(衛陽)が免疫力となる。普段、背中に日光浴し、自然界の陽気を以て生体の陽気を保養する効果があるが、更に様々な中医療法の活用により免疫力を高める事が出来る。
1、長期的な養生法:医療気功
調身、調息、そして調神の三調節を長期的に持続することにより、生体全体の生理機能を高めるに伴い、人体の自然抵抗力と治癒力を高める。
2、即効性を持つ治療法:針灸推拿
体外から理学的な刺激を与えることで、体内に良性反応を起こして生体の免疫力を増強させる。実験針灸学の研究によると、ある特定の経穴に温灸または刺針を行うことにより、血液中の白血球数が顕著に増加する。お勧めできる経穴として、大椎、肝兪、脾兪、腎兪、足三里などがある。
また全身推拿を行うことで、全身の循環・呼吸・消化・泌尿・運動・神経・内分泌などの機能を調節するほか、免疫機能に明らかな良性調節作用を果たしている。実験研究によると、推拿施術は血液中の白血球総数を増加させ、リンパ球の比例も高め、白血球の呑食能力を増強させる。動物実験の結果で、推拿療法は免疫系への調節作用によりNK細胞を増加させることを示している。
3、総合的な健康法:薬剤薬膳
罹病患者には病証に基づく中薬処方の服用、また本来体質虚弱の者には薬効食物と食用薬物の相応しい応用により、それぞれの免疫力を改善させられる。基本的には補気養血の効能を持つ薬食両用のものを主としており、中には最も効能が優れてお勧めできるのは植物性の大棗と動物性の阿膠であり、両者は共に赤血球と白血球を明らかに増加させ、特に後者の阿膠は骨髄の造血機能を保護し、血球の外に血小板も増加させる。
陽気保養のための背中に日光を浴びる方法、温灸を行う方法、そして大棗を食用する方法などは、伝統医学教育会ホームページの会員専用ページの健康知識に紹介されているので、参考にして実施し、免疫力を高めて欲しい。