便秘は日常生活で多く見られ、年齢増加や運動不足などにより胃腸の機能が減退して現れ易い。特に秋季の乾燥に伴って便秘に悩まされている方が増えている。大便が乾燥して腸管に閉塞することで、腹脹腹痛や食思不振、更に煩躁不安などの病症が起こされることもある。
中医学的には、便秘の病位は大腸にあるが、脾胃・肺・肝・腎など臓腑の機能失調に関係している。
便秘の問題の解決には生活方式の調整するほか、人体における経穴の按揉法を行うことも効果的である。下記の五経穴は腑気通調・潤腸通便の効果を発揮して便秘の解消にお勧めできる。
① 天枢
足陽明胃経の腧穴である。中腹部にあり、臍中央から外方2寸に取る。
天枢穴の所在位置は腸に近隣して大腸の募穴であり、大腸の気が腹部に集結する場所となるため、大腸の機能を調節する作用を持ち、便秘、泄瀉、腹痛など腸管関係の病証を治療することができる。また便秘の場合は天枢穴に圧痛反応も現れ易い。
② 大腸兪
足太陽膀胱経の腧穴である。下腰部にあり、第4腰椎棘突起下(ほぼ両側の腸骨稜最高点を結ぶ線と同じ高さ)から外方1.5寸に取る。
大腸兪穴は大腸の背部兪穴であり、大腸の気が腰部に輸注する場所となるため、便秘、泄瀉、痔瘡など大腸に関係する病証の治療に効果的に用いられる。
天枢穴と大腸兪穴の併用は兪募配穴の方法であり、針灸臨床治療における前後配穴の代表方法となる。両者の配合には「陰病行陽、陽病行陰」の意味が含んでおり、これによって便秘に対して良好な調節作用が期待できる。
③ 上巨虚
足陽明胃経の腧穴である。下腿前外方にあり、外膝眼(膝蓋靭帯の外方陥凹部)の下方6寸で、脛骨前縁の外方1横指(中指)に取る。
上巨虚穴は大腸の下合穴であり、大腸の気が下って足陽明胃経に合する場所となり、《黄帝内経霊枢・邪気臓腑病形》にいわゆる「合治内腑」の理論により、便秘、泄瀉、腸癕(虫垂炎)など大腸疾患には上巨虚穴を取って治療する。
天枢穴と上巨虚穴の併用は募合配穴の方法であり、針灸臨床治療における上下配穴の代表方法となる。両者の配合により共同に大腸腑気を通調させる作用を果たして便秘治療のために役立つ。
④ 支溝
手少陽三焦経の腧穴である。前腕背側にあり、手関節背側遠位横紋の上方3寸で、橈骨と尺骨の間の中央に取る。
支溝穴は三焦経脈の経穴であり、五行では火に属するため、三焦の火熱邪気を疏散し、三焦の気機を調整して腑気を通調させる作用を持ち、古今に便秘治療の重要な腧穴として多く応用されている。
⑤ 照海
足少陰腎経の腧穴である。足内側にあり、内果尖の下方陥凹部に取る。
照海穴は八脈交会穴で陰蹻脈に通じ、腎経の脈気が聚まる場所となるため、気化作用が強いとされている。老年の多くは腎精虚損が発生し、「陽常有余、陰常不足」の陰陽特徴が現れ、便秘の発生に至る、或いは陰虚体質で大腸を滋潤できず便秘を来す。照海穴を用いて腎陰を調整して補益し、前後二陰を通調させ、陰液を養って「水液を増やして舟を行かす」ように便秘を緩解させる作用を果たす。
腧穴を用いて便秘を解消するには日々の習慣にする事が重要であり、毎日持続して上記の腧穴に按揉法を行うことが望ましい。手技の軽重は適宜に保つ。重症な便秘の場合は医療機関を受診し、明確な発病原因を辨別したうえ、総合な治療手段を受ける。