健康知識:三伏天における冬病夏治の食療処方

三伏天(さんぷくてん)は二十四節季の小暑と処暑の間にあり、一年中最も気温や湿度が高くて蒸し暑い時期である。今年も7月11日から三伏天に入り、ここ数年続いて、初伏10日、中伏20日、末伏10日で、計40日間である。中医学には「春夏養陽」の養生原則があるが、三伏天では特に陽気の保養に注意しなければならない。そのため、普段は温かい飲み物や熱性の生姜棗汁などを飲んだりし、冷たい飲み物や冷える食べ物を控える。また冷房環境に籠ってはいけない。

三伏天の時期、人体の陽気は自然界に従って最も旺盛になっているため、体内に凝集して冬季に疾病発作を起こす陰寒邪気は比較的解けやすい状態になっている。冬季持病の方や身体虚弱の方は、この時機を上手く利用して身体の奥に蓄積している頑固な寒邪宿疾を一気に追い払い、いわゆる「冬病夏治」のことである。また冬病治療と同時に、体内の虚弱陽気を調節し補充し、生体の免疫力を高めて一年中疾病の抵抗力を強める事が出来る。

冬病夏治の方法は沢山あるが、飲食薬膳の内治法も便宜的で効果的である。簡単な飲食薬膳だけで明らかに冬病の再発を減少させ、病状進行を緩和させることかでき、また身体虚弱の補養効果も大きい。ここでは、冬病夏治のための飲食薬膳処方を紹介する。

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健康知識:三伏天における冬病夏治の食療処方

三伏天(さんぷくてん)は二十四節季の小暑と処暑の間にあり、一年中最も気温や湿度が高くて蒸し暑い時期である。今年も7月11日から三伏天に入り、ここ数年続いて、初伏10日、中伏20日、末伏10日で、計40日間である。

中医学には「春夏養陽」の養生原則があるが、三伏天では特に陽気の保養に注意しなければならない。そのため、温暖・発散を適宜とし、寒冷・収斂を禁忌としている。簡単に言えば、「伏天に入ると、冷える物を食しない」と言われるように、普段は温かい飲み物や熱性の生姜棗汁などを飲んだりし、冷たい飲み物や冷える食べ物を控える。また冷房環境に籠ってはいけない。これによって生体に効果的な発汗をさせ、体内に伏せている寒湿邪気(代謝廃物)を順調に排泄する。

夏季の炎熱酷暑で、ついアイスクリーム、かき氷、冷たいビール、冷やした西瓜などを好んでしまう人が少なくないが、これらの寒冷食物は直接中焦陽気を傷めて脾胃虚弱を起こし、更に一身の陽気を損なう恐れがある。現代医学的にもこれらの寒冷食物は食道や胃腸のほか、近隣する心臓動脈を刺激して収縮痙攣を起こし、循環障害の発作を招いてしまうと指摘している。

三伏天の時期、人体の陽気は自然界に従って最も旺盛になっているため、体内に凝集して冬季に疾病発作を起こす陰寒邪気は比較的解けやすい状態になっている。夏季の暑熱が体内に貯まらないように、健常者には苦味や涼性でアッサリとした飲食物をお勧めしているが、慢性的な喘息咳嗽、胃痛泄瀉、関節冷痛など冬季持病の方や身体虚弱の方は、この時機を上手く利用して補虚助陽と共に温裏散寒の効能を持つ食物や薬物を加えるか、温灸を据えることなどで、天人の協力で身体の奥に蓄積している頑固な寒邪宿疾を一気に追い払う効果が果たせる。いわゆる「冬病夏治」のことである。また冬病治療と同時に、体内の虚弱陽気を調節し補充し、生体の免疫力を高めて一年中疾病の抵抗力を強める事が出来る。

冬病夏治の方法は沢山あるが、通常温灸法や三伏湿布などの外治法が多く知られて用いられている。実際、飲食薬膳の内治法も便宜的で効果的である。特に皮膚が過敏で外治法に合わない場合、簡単な飲食薬膳だけで明らかに冬病の再発を減少させ、病状進行を緩和させることかでき、また身体虚弱の補養効果も大きい。冬季では健康維持のために通常、羊肉、豚の腎臓、海老、韮、山芋、胡桃、黒胡麻など温熱性能で温腎祛寒の食材が用いられており、いずれも適当に応用できる。更に漢方薬を併用することで疾病治療の効果が期待できる。

ここでは、冬病夏治のための飲食薬膳処方を紹介する。

① 卵の緑茶煮

緑茶15g、鶏卵2個、お椀1杯のお水に入れて煮込み、火が通ったら鶏卵の殻を剥いて更に煮汁がなくなるなるまで煮込む。益肺理気の効能を持ち、慢性気管支炎、気管支拡張症、気管支喘息など肺陰虚に用いられる。

② 卵の生姜炒め

生姜を千切りにし、落花生油を熱くして生姜を炒め、鶏卵1~2個を加えて固まるまで炒め、毎朝1回食する。利肺降気・健脾止瀉の効能を持ち、慢性咳嗽、慢性喘息、慢性泄瀉などに用いられる。

③ 梨貝母の煮汁

梨1個、皮を剥いてスライスし、川貝母12gを磨り潰して氷砂糖20gを加え、一緒に煮込んで汁を服用する。潤肺止咳の効能を持ち、老年性気管支炎の肺熱による空咳、痰少などに用いられる。

④ 二姜と豚胃袋のスープ

豚の胃袋1個、お酢で綺麗に洗って生臭みを取り、千切りにしておき、乾姜10g、高良姜10g、草果3g、土瓶に入れて葱と生姜を加えて柔らかくなるまで煮込み、塩3~5gで調味して空腹時に食する。健脾温胃・助運止瀉の効能を持ち、脾胃虚弱による胃脘冷痛、飲食不化、慢性泄瀉、面色萎黄、身体羸痩、倦怠無力などに用いられる。

⑤ 栗と羊背骨のスープ

栗12個、羊の背骨1本(金槌で砕く)、肉蓯蓉12g、草果3g、土瓶に入れて葱と生姜を加え、柔らかくなるまで2時間ほど煮込み、塩で調味して空腹時に食する。補腎固本の効能を持ち、腎精虚損による慢性婦人科疾患、腰膝痠軟冷痛、筋骨無力などに用いられる。

⑥ 鮒の胡椒スープ

新鮮な鮒1匹(約250g)、鰓と鱗と内臓を取り除き、生姜20gをスライスにし、砂仁と胡椒粉を一緒に魚のお腹に入れ、適量のお水を加えて中火で火が通るまで煮込み、塩で調味して食する。温補脾胃の効能を持ち、脾虚型または胃寒型の胃痛に用いられる。

⑦ 雄鶏の白胡椒スープ

雄の鶏1羽、綺麗に洗ってから角切りにし、白胡椒9g、草果3g、良姜3gと一緒にお鍋に入れ、葱と生姜を適量加えてお水から柔らかくなるまで煮込み、塩で調味して空腹で食する。温肺補虚・止咳平喘の効能を持ち、虚弱羸痩、畏寒少气、寒冷発作の咳嗽、繰り返す感冒,アレルギー性性鼻炎,冬季増悪の喘息などに用いられる。

⑧ 烏骨鶏の黄芪スープ

黄芪30g、乌骨鶏半身を共に煮込み、鶏肉が柔らかくなったら調味料を入れて肉を食べてスープを飲む。3回に分けることが出来、連続してひと月くらい食する。養肺益気・滋腎補血・固表防感の効能を持ち、身体虚弱、易感冒、咳嗽などに用いられる。。

⑨ 大豆花山椒スープ

大豆30g、花山椒5gをお水500mlに入れて強火で煮たってから、弱火に変えて柔らかくなるまで煮込み、お好みで調味して豆を食べて汁を飲む。健脾宽中・和胃止呕・散寒止痛の効能を持つ。

上記のほか、冬病の凍瘡に対して温熱性能を持つ食物薬物を外用する事もできる。紫色の大蒜(独株のが良い)を泥状に潰して暖かくなるまで天日干しし、薄く凍瘡再発部位に塗り付ける、一日に3〜5回、連続して5〜7日行うことで、冬季での再発を予防する。或いは新鮮の胡麻葉を丸めて凍瘡再発部位を擦り、汁を皮膚に残して1時間後に洗い落とす。一日に数回、連続して1週間ほど行う。或いは紅花10g、桂枝15gの煎じ汁を凍瘡再発部位に塗り付ける。一日に1回、連続して5日間行う(妊婦不適)。

三伏天にもう一つ簡単な陽気保養の方法がある。夕方に一日日光に当たって熱くなった木や石のベンチに座ることで、湿邪停滞による腰腿重痛、早朝の腹痛泄瀉や手足不温・月経腹痛など虚寒証、様々な持病を改善させられる。

健康知識:健脾利水・清熱除湿の良薬 はと麦

梅雨季節に入り蒸し暑い日々が続き、頭が重くて体がだるい、汗がベタベタしてすっきりしない、食欲が出ないなどの症状は湿邪が体内に溜まっている特徴である。そのため、この時期の健康維持で最も重要な原則は清熱除湿である。

中医学的に五臓の中の脾は、気血を化生し運輸するほか、水湿を運化する生理機能がある。脾が健常であれば、気血が充足するし、体内に停滞している湿邪も変化し排除されていく。逆に湿邪が盛んになると、脾の機能も影響されて低下してしまう。

健脾除湿と言うと、真っ先にはと麦が思い出される。はと麦は薬食両用の材料の一種として知られ、その清熱利湿の薬効効果が最も重視されている。栄養価が高く、適応範囲が広く、安価などのこともあり、日常飲食生活における健康増進に非常に適している。

但し普段の食生活では、はと麦の調理に慣れていない方が多いようで、ここで、はと麦の応用方法を紹介するので炎熱と湿気の強い梅雨季節に活用して欲しい。

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健康知識:健脾利水・清熱除湿の良薬 はと麦

梅雨季節に入り蒸し暑い日々が続き、頭が重くて体がだるい、汗がベタベタしてすっきりしない、食欲が出ないなどの症状は湿邪が体内に溜まっている特徴である。そのため、この時期の健康維持で最も重要な原則は清熱除湿である。

中医学的に五臓の中の脾は、気血を化生し運輸するほか、水湿を運化する生理機能がある。脾が健常であれば、気血が充足するし、体内に停滞している湿邪も変化し排除されていく。逆に湿邪が盛んになると、脾の機能も影響されて低下してしまう。

健脾除湿と言うと、真っ先にはと麦が思い出される。はと麦は薬食両用の材料の一種として知られ、その清熱利湿の薬効効果が最も重視されている。はと麦は涼・甘淡の性味で、脾・胃・肺・腎に帰経し、健脾止瀉・利水燥湿・舒筋除痹・清熱排膿などの効能を持ち、主に脾虚湿盛による泄瀉、浮腫、湿温病、脚気、婦人帯下、小便不利;風湿痹痛、筋脈拘攣;肺癕、腸瘍などに用いられる。現代研究によると、はと麦は血圧低下、糖質脂質代謝の改善、腸内菌の調節、抗癌、美白など様々な作用を持っている。また栄養価が高く、適応範囲が広く、安価などのこともあり、日常飲食生活における健康増進に非常に適している。はと麦の作用が平和で、微寒で清熱しながら胃を傷めず、益脾しながら補い過ぎない特徴があり、特に久病体虚や病後回復、そして老人・小児に多く適応している。なお、健脾益胃の場合ははと麦を炒り、利水滲湿・清熱排膿・舒筋除痹の場合は生の物を用いる。

但し普段の食生活では、はと麦の調理に慣れていない方が多いようで、ここで、はと麦の応用方法を紹介するので炎熱と湿気の強い梅雨季節に活用して欲しい。

はと麦小豆粥

[材料]はと麦30g、小豆20g、米50g。

[方法]はと麦と小豆を綺麗に洗ってからお鍋に入れ、お水を加えて強火で煮立ってから弱火に変えて30分間ほど煮込み、更に米を加えて30分間煮込む。

[効用]健脾祛湿。脾虚湿盛による身体困憊、食少腹脹、大便が粘っこくてスッキリしない、舌苔厚膩に適する。

はと麦八宝粥

[材料]はと麦30g、白扁豆、蓮実、胡桃、小豆、竜眼肉各10g、棗6個、糯米100g。

[方法]上記食材を綺麗に洗ってお水と一緒にお鍋に入れ、弱火で柔らかくなるまで煮込んでから、適量の氷砂糖または黒砂糖で調味する。

[効用]健脾開胃祛湿・益気養血。脾虚血少による倦怠無力、食欲不振、慢性泄瀉、心煩不眠などに適する。

はと麦山薬の燕麦粥

[材料]はと麦200g、山薬(皮を剥いて角切り)150g、オートミール30g。

[方法]はと麦を綺麗に洗ってお水で30分間煮込み、そこに山薬を入れて柔らかくなるまで煮込み、オートミールを加えて均等に混ぜる。

[効用]健脾燥湿・開胃消食。脾胃気虚湿滞による面色萎黄、全身無力、食欲不振、消化不良、舌苔厚膩などに適する。

はと麦黄耆棗の粟粥

[材料]はと麦100~200g、生黄耆30~50g、棗10個、粟50g。

[方法]上記食材を綺麗に洗ってお水を加え、弱火で柔らかくなるまで煮込む。

[効用]健脾益気・清熱補血。脾胃虚弱による身体羸痩、面色晄白、倦怠無力、気短自汗などに適する。またはと麦にCoixol(6-methoxybenzoxazolon)、コイクノライド(Coixenolide )という成分が含まれ、また豊かなセレン元素(Selenium)を含有するため、癌細胞の増殖を抑制することができ、癌患者の補助食として用いられる。

はと麦小豆冬瓜皮の鮒スープ

[材料]鮒1匹(約400~500g)、はと麦50g、小豆30g、冬瓜皮50g、陳皮5g、生姜3スライス。

[方法]鮒の鱗と内臓を取り除いて綺麗に洗い、鉄鍋にサラダ油を少々塗して弱火で鮒を炒っておく。はと麦をお水で30分間煮てから小豆、冬瓜皮、陳皮、生姜、鮒を加えて30分間煮込み、料理酒を少々入れて沸騰したら出来上がり。

[効用]健脾利水。脾虚による水腫、脘腹脹満、食少、大便溏泄、四肢倦怠などに適する。

はと麦杏仁冬瓜仁葦茎スープ

[材料]はと麦50g、杏仁10g、冬瓜仁30g、芦の茎30g。

[方法]上記の食材を綺麗に洗ってお水に入れ、強火で沸騰してから弱火に変えて1時間煮込む。

[効用]健脾祛湿・止咳化痰。脾虚湿滞で、肺熱による咳嗽、粘っこい白色または黄色の痰を吐くなどに適する。

はと麦玫瑰花月季花茶

[材料]はと麦30g、玫瑰花5g、月季花3g。

[方法]はと麦を綺麗に洗ってお水に入れ、強火で煮立ってから弱火に変えて1時間ほど煮込み、火を止めて玫瑰花と月季花を加え、蓋を閉めて15分間蒸し、冷めてから飲用する。

[効用]美白潤膚・活血消斑。長期飲用により皮膚が滑々で、褐色斑や面皰を解消する。

 

健康知識:夏季における生姜の応用

中国では「冬に大根、夏に生姜を食べれば、医者の薬方をいらず」との言い方がある。夏季に向けて生姜を活用することで、健康維持に役立つ。

生姜は辛・温の性味で、脾・胃・肺経に帰経し、散寒解表・温肺化痰止咳・温中降逆止嘔・解毒の効能を持ち、主に風寒感冒による悪寒発熱、頭痛鼻閉、肺寒による咳嗽多痰、痰飲喘咳、胸脇脹満;脾胃虚寒による脘腹冷痛、泄瀉、胃寒または胃気不和による悪心嘔吐、食少;婦人月経不順、崩漏、産後血暈、瘀血腹痛、吐血、鼻衄、喀血、便血;魚蟹や半夏の中毒などに用いられる。また、姜には生姜と乾姜の違いがあるが、生姜は温性で発汗解表の作用が強く、乾姜は熱性で温中散寒の作用が強い。

ここで夏季における生姜の応用を紹介する。

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健康知識:夏季における生姜の応用

中国では「冬に大根、夏に生姜を食べれば、医者の薬方をいらず」との言い方がある。夏季に向けて生姜を活用することで、健康維持に役立つ。

生姜は辛・温の性味で、脾・胃・肺経に帰経し、散寒解表・温肺化痰止咳・温中降逆止嘔・解毒の効能を持ち、主に風寒感冒による悪寒発熱、頭痛鼻閉、肺寒による咳嗽多痰、痰飲喘咳、胸脇脹満;脾胃虚寒による脘腹冷痛、泄瀉、胃寒または胃気不和による悪心嘔吐、食少;婦人月経不順、崩漏、産後血暈、瘀血腹痛、吐血、鼻衄、喀血、便血;魚蟹や半夏の中毒などに用いられる。また、姜には生姜と乾姜の違いがあるが、生姜は温性で発汗解表の作用が強く、乾姜は熱性で温中散寒の作用が強い。

ここで夏季における生姜の応用を紹介する。

1、生姜黒糖汁

夏の朝起きてから先ず、生姜と黒糖の煮汁を飲むことで、消化液の分泌を促進して健脾開胃・消化促進の作用を果たし、同時に祛風散寒の効能を持ち、風寒感冒の症状がある場合は緩解する。

2、生姜棗汁

生姜と棗の煮汁は和胃降逆止嘔の作用を果たし、寒冷による胃痛、吐気、嘔吐、腹痛、下痢などに対して緩和効果がある。

3、生姜紅茶

紅茶1~3g、生姜3スライスをコップに入れてお湯を加えて茶代わりに飲むことで、夏季における寒冷飲食による消化機能低下、胃腸機能失調などの諸症状を緩和する。

4、生姜汁外用

夏冷房の室内に長時間いると、肩背部や背腰部の強張りや痛みが屡々見られる。この場合、温かい生姜の煮汁に少々食塩とお酢を加えてそこにタオルを入れて濡らし、患部に当てることで、舒筋活血の効果を持ち、局所筋組織の強張りを緩め、痛みを解消する。

注意して欲しいのは、陰虚内熱及び実熱証のものには生姜の長期食用が適さず、肝疾患、目疾患、痔瘡のものは慎重に食する。また、生姜黒糖汁は風寒感冒の軽症に適するが、風熱感冒や暑湿感冒には適しない。

会員通信:NPO法人伝統医学教育会事業活動計画(2023年度)

2023年度は、昨年に引き続き教育活動である講習会及び普及活動の健康支援を進展していきたいと思います。

講習会は「常見病証の針灸治療実技」Ⅲ期を企画しており、感染防止を徹底して少数人数で実行する予定です。2年連続の講習経験を活かし、今回は日本の針灸現場で余り見られない針灸治療で、特効が得られる病証を取り挙げ、同じく実用性に重点を置き、具体的な刺針実技を指導しながら練習を実行し、更に個人的な心得と経験を伝授します。これにより辨証論治の思想を導き、臨床実践の技術能力が高まると同時に針灸治療の特殊技法を身に付けられる事を期待しています。講習は4月後半に開講し、計8回で12月前半に終了する予定です。

健康支援活動はホームページを通じて健康情報を発信するほか、臨床センターにて会員の皆様の健康養生法の相談や指導なども催してゆきたいと思います。ほかに、状況が可能な範囲で会員限定の無料講座も実施する予定です。また引き続き季節の変化や社会の情勢に合わせて薬茶を新たに考案して見本をお送りします。

コロナ禍で3年ほど会員の年末懇親会を開催することができず、非常に残念でしたが、疫病情勢はようやく少し落ち着いてきたようで、夏頃に安全確保の上で会員の交流を深めるため、懇親会を企画してゆく予定です。

 

会員通信:NPO法人伝統医学教育会事業活動報告書(2022年度)

1、講習会

2022年度の講習会は、4月から12月にかけて「飲食薬膳療法の基礎と応用」講習を行い、4月から11月にかけて前年度実施した「常見病証の針灸治療実技」のⅡ期講習を行いました。

「中医飲食薬膳療法」はテーマが非常に大きくて講習内容がとても広範囲ではありますが、これまでに二度ほど講習を行いました。昨年は10年ぶりの講習に備え、テキストを修正したほか、疫病蔓延の時期における健康増進のため新たな解説方法を加え、これまでと同様に理論と実用の知識に重点を置いて講習しました。最後に薬膳一品の作成実演と試食、薬酒の試飲も行いました。

一方、「常見病証の針灸治療実技」講習は前年度から開催していましたが、今年はⅡ期として継続し、計4名が参加されました。今回も伝統医学教育の実用性に重点を置き、針灸臨床に常見される6病証を新たに取り上げ、その基本概念、病因病機、そして辨証分型を明確にしたうえ、治療原則と選穴処方を解説し、具体的な刺針実技を指導しながら、技能練習を行いました。参加者の皆さんは実技も積極的に練習し臨床での即戦力が高まったようです。

 

2、健康支援

教育事業活動のほか、会員の健康支援活動も引き続き行っています。伝統医学教育会ホームページの会員専用ページにて健康知識を定期的に更新していますので、皆様の健康増進の参考にして頂きたいです。

また、長くご支援下さった会員の皆様に感謝の気持ちを込めて、健康支援のために伝統医学的な薬茶をお送りしました。今回は主に新型コロナウイルス感染の急増状態、及び盛夏の暑熱湿聚の特徴に従って5種類の薬茶を考案して処方と見本を送付しました。会員の皆様にお送りした薬茶の主要材料は比較的容易に入手できる身近なものを使って作成しましたが、作成方法は教育会の会員専用ページに公開しています。

 

活動案内:「常見病証の針灸治療実技(Ⅲ期)」講習会

針灸医学は理論に基づいた実践的な学科です。臨床では、中医学の辨証論治を元にして正確な診断を下すことができて、初めて正しい治療方針が立てられます。そこから、腧穴の性能に従って相応しい処方を組み合わせ、更に正しい技術を用いた効果的な治療を実施できます。日本の現状は、中医学の病証に対して基本概念がはっきり認識されておらず、また総合的な辨別分析の考え方も欠けているため、辨証論治の臨床応用は広く普及されていません。更に学校教育では実践に接した臨床実習が不足しているため、臨床現場に入ると、患者さんに対応し難く感じる方が多いようです。

伝統医学教育会では、これを踏まえ鍼灸師・鍼灸在学生を対象として針灸臨床にて多く見られる病証を取り挙げて、これまでに治療実技の二回講習を行いました。今回も少数人数で、実用性に重点を置き、日本の針灸現場で余り見られず針灸治療で特効が得られる病証を取り挙げ、その基本概念、病因病機、辨証技能、治療方針などを解説したうえ、具体的な刺針実技を指導しながら練習を実行し、更に個人的な心得と経験を伝授する予定です。これにより辨証論治の思想を導き、臨床実践の技術能力が高まる事と同時に針灸治療の特殊技法を身に付けられる事を期待しています。

講習終了時、NPO法人伝統医学教育会の修了証書を交付します。

 

講 師:陳 志強 医学博士

日 程:全8回 月1回 日曜日10時30分~13時00分(計20学時間)

毎回約30分理論解説、120分実習指導

① 04月23日 喘息(灸法操作を含む);

② 05月28日 帯状疱疹;

③ 06月25日 円形脱毛(梅花針操作を含む);

④ 07月30日 美容針灸の観点(美顔、痩身);

⑤ 09月03日 眩暈;

⑥ 10月01日 顔面神経麻痺;

⑦ 11月05日 坐骨神経痛;

⑧ 12月03日 COVID-19感染後遺症対策(倦怠疲労、咳嗽咽痛、味覚障害)。

場 所:東京都千代田区外神田6-4-5-401 NPO法人伝統医学教育会臨床センター

交 通:東京メトロ銀座線末広町駅より徒歩4分、千代田線湯島駅より徒歩4分

都営地下鉄大江戸線上野御徒町より徒歩8分

JR御徒町駅・秋葉原駅・御茶ノ水駅より徒歩10分~12分

定 員4名以上で開講 6名まで

費 用:73,000円(実習用具の費用込み、分割払い可) 当会会員は8,000円割引

振込先:特定非営利活動法人伝統医学教育会

郵便貯金総合口座 10100-55927971

申込み:NPO法人伝統医学教育会事務局 FAX 03(5816)5235

締切り:2023年4月10日(月)まで

健康知識:葱姜蒜による春季の疫病予防

春が近付くと自然界は陽気昇発という特徴になり、万物生成の光景が現れている。同時に春は風を主り、風を特徴とする病証が流行り易い。そこで、今の季節には新型コロナウイルス感染症に加え、様々な感染症が多発している。感染症の予防には感染源遮断と免疫力増強が重要な方針である。マスク着装・対人距離保持・随時の手洗いなどは感染源遮断のため効果的な方法であるが、人体生命力の一面である免疫力は医療気功、針灸推拿、薬剤薬膳など東洋的な医療方法により強化できる。

古来、伝統医学では薬食同源を提唱して食物の特性を以て疾病の予防と治療に用いている。これによって陰陽のバランスを取り戻して生体の免疫力を高める。「厨房三宝」と呼ばれる長葱・生姜・大蒜は薬食両用の重要な食材である。辛熱発散の薬性を持っているため、春の特徴と共通し、人体の陽気を助長して風寒湿の邪気を取り除き、疫病の予防効果を果たす。《傷寒論》、《千金方》、《本草綱目》など薬物経典に収録してある疫病の予防治療の食療処方に長葱・生姜・大蒜を含むものが数多くあり、また熱く炒って臍や合谷などの経穴に付けて熱罨法を行う外治療法をも記載している。

ここでは長葱・生姜・大蒜の薬性効果と応用方法について紹介する。疫病蔓延の時期に当たって多めに食用することにより、予防治療の作用を果たして欲しい。

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