活動案内:「常用針灸腧穴の基礎と応用」講習会案内

腧穴とは、いわゆる「ツボ」のことで、体内の臓腑経絡の気血が体表の皮肉筋骨に輸送されて注入する部位です。腧穴は経絡に属して体内で臓腑に繋がっているため、体内の病証を体外に反映する診断点であり、また針灸推拿・気功導引など外治療法の治療点でもあり、臨床における疾病の診断治療に重要な存在となっています。実際、刺針の刺激のみならず、指圧や温灸など様々な物理的刺激を腧穴に相応しく与える ことで、生体の臓腑経絡機能を調節し、陰陽気血精神を調整することができ、健康  増進・疾病予防の効果も大きく期待されています。

本講習は、腧穴学の基礎知識を始め、臨床で最も常用される凡そ120経穴を取り挙げ、それぞれ名称の解釈から、その精確な定位と取法及び主要な性能と主治を伝授し、更に具体的な応用実技まで指導する予定です。腧穴の具体的な臨床応用の方法や経験を習得し、健康の維持と増進、疾病の予防と治療に役に立てると期待しています。

講習終了時、NPO法人伝統医学教育会の修了証書を交付します。

 

講 師:陳 志強  特定非営利活動法人伝統医学教育会理事長、医学博士

日 程:全8回 月1回 午前10時30分~13時00分(計20学時間)

① 04月21日 腧穴の基礎知識、定位・取法・性能・主治の概説;

② 05月19日 任脈腧穴、督脈腧穴;

③ 06月16日 手太陰肺経腧穴、手陽明大腸経腧穴;

④ 07月21日 足陽明胃経腧穴;

⑤ 09月08日 足太陰脾経腧穴、手少陰心経腧穴、手太陽小腸経腧穴;

⑥ 10月06日 足太陽膀胱経腧穴;

⑦ 11月10日 足少陰腎経腧穴、手厥陰心包経腧穴、手少陽三焦経腧穴;

⑧ 12月08日 足少陽胆経腧穴、足厥陰肝経腧穴。

場 所:東京都千代田区外神田6-4-5-401  NPO法人伝統医学教育会事務所

交 通:東京メトロ銀座線 末広町駅4番出口より徒歩4分

東京メトロ千代田線 湯島駅5番出口より徒歩5分

都営地下鉄大江戸線 上野御徒町A4番出口より徒歩8分

JR御徒町駅・秋葉原駅・御茶ノ水駅より 徒歩10分~15分

定 員6名以上で開講 10名まで

費 用:73,000円(当会会員は8,000円の割引額、分割払い可)。

教科書「経穴の定位と技法」別途4,950円(当会会員は割引後3,500円)

教科書「経穴の性能と主治」別途3,300円(当会会員は割引後2,200円)

振込先:特定非営利活動法人伝統医学教育会

郵便貯金総合口座 10100-55927971

申込み:NPO法人伝統医学教育会事務局

FAX 03(5816)5235

締切り:2024年4月6日(土)まで

健康知識:新型コロナウイルス感染後遺症について

1、概説

新型コロナウイルス性肺炎は、中医学において外感病証の「疫病」の範疇に属する。疫病は強烈な伝染性と流行性を持つ疾病の一種であり、通常の外感六淫(風寒湿燥火)とは異なり、「疫癘」(瘟疫、疫毒、癘気、疫気、毒気、異気、雑気、乖戻之気などとも言う)という病邪(致病素因)により起こされる。疫癘の形成は自然界の異常気候、環境の汚染、飲食の不潔、社会制度などと密接に関係している。新型コロナウイルス性肺炎の発生は、急速な蔓延・広範囲の流行・重篤な病状などの特徴から一般的な外感六淫ではなくて「疫癘」によるものである。病状の性質から見ると、主に寒湿の邪気と密接な関係を持って「寒湿疫」と定義している。

中医学における邪気は一つの抽象的な概念で、人体に疾病を致す全ての素因を指し、いわゆる致病素因のことである。致病素因は大まかに外感病因(風寒湿燥火の六淫、疫癘)、内傷病因(喜怒憂悲恐驚の五臓七情)、そして不内外病因(飲食、労逸、外傷、寄生虫、水湿痰飲、瘀血など)の三大類に分けられるが、新型コロナウイルス性肺炎には外感病因の疫癘が致病素因となっている。邪気は主に発病する時に病状の特徴に従って病邪の性質をまとめてきたのであり、現代医学における細菌やウイルスなど具体的なものと全く一致しない。

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健康知識:新型コロナウイルス感染後遺症について

1、概説

新型コロナウイルス性肺炎は、中医学において外感病証の「疫病」の範疇に属する。疫病は強烈な伝染性と流行性を持つ疾病の一種であり、通常の外感六淫(風寒湿燥火)とは異なり、「疫癘(えきれい)」(瘟(おん)疫(えき)、疫毒(えきどく)、癘(れい)気(き)、疫(えき)気(き)、毒気、異気、雑気、乖戻之(かいれいの)気(き)などとも言う)という病邪(致病素因)により起こされる。疫癘の形成は自然界の異常気候、環境の汚染、飲食の不潔、社会制度などと密接に関係している。新型コロナウイルス性肺炎の発生は、急速な蔓延・広範囲の流行・重篤な病状などの特徴から一般的な外感六淫ではなくて「疫癘」によるものである。病状の性質から見ると、主に寒湿の邪気と密接な関係を持って「寒湿疫」と定義している。

中医学における邪気は一つの抽象的な概念で、人体に疾病を致す全ての素因を指し、いわゆる致病素因のことである。致病素因は大まかに外感病因(風寒湿燥火の六淫、疫癘)、内傷病因(喜怒憂悲恐驚の五臓七情)、そして不内外病因(飲食、労逸、外傷、寄生虫、水湿痰飲、瘀血など)の三大類に分けられるが、新型コロナウイルス性肺炎には外感病因の疫癘が致病素因となっている。邪気は主に発病する時に病状の特徴に従って病邪の性質をまとめてきたのであり、現代医学における細菌やウイルスなど具体的なものと全く一致しない。例えば、一種のウイルスが人体に感染して様々な病状を現して来る時に、そのうち寒の特徴が現れる場合は寒邪による外感病証と判断するが、同時に湿の特徴も現れる場合は寒邪と湿邪が合わさって侵襲することによる外感病証と診断する。

また、中医学は単なる病邪から病証を認識するのではなく、生体と病邪を統一して一つの複合体として疾病の解析を行う。病因病機学説によると、正気は発病の決定素因で、邪気が発病の重要条件であるとされている。これは新型コロナウイルス性肺炎の感染発症時期にも感染後遺症時期にも同様である。感染初期では、発熱悪寒、咳嗽咽痛、頭身重痛、倦怠無力などの症状が見られるが、患者の体質などに従って臨床特徴が異なってくる。体質強壮のものは悪寒発熱や頭身緊痛など風寒束表の現れを主としているが、一方、体質虚弱のものは風寒表証のほか、疲労無力など気虚の現れも伴う。また感染後期では、身体困憊など湿邪が強い現れも認められている。

新型コロナウイルス性肺炎が治癒してから、多くの患者には様々な後遺症状が残っている。病状、体質、そして症状によって1~3ヶ月が続くものが多く見られるが、6ヶ月更に1年ほど続くこともある。疫病流行早期の病邪(デルタ種までのウイルス)は比較的強くて直接肺臓を侵襲するため、後遺症状も重篤であり、主に肺線維化(呼吸困難や胸痛など)、心筋損傷(不整脈や心胸重痛など)、嗅覚味覚喪失、疲労無力、睡眠障害、記憶障害ないし脳萎縮、性機能障害などが見られ、これは古代における瘟疫の記載に類似している。現在のオミクロン種ウイルスは感染力が強くなったものの、しばしば上気道を侵襲して症状が激しくなくなり、後遺症状も変化してきて疲労困憊、呼吸急迫、心拍過多、慢性疼痛、筋肉無力、感覚機能異常、不眠、認知障害などを主としている。

2、病機

感染症の初期では、主に正邪闘争の病理反応であり、高熱や煩渇など実熱の徴候が現れる。これによって邪気が追い払われるが、同時に正気も大いに消耗されて弱まっている。感染症の後期では、生体の正気虚損が主な病理となり、陰陽気血虚損の徴候が多く現れ、五臓虚弱の証を呈している。ほかに、病邪が完全に駆除されず体内に残存して痰熱内阻の徴候や、内生の毒が解消されず臓腑機能と気血運行を擾乱して瘀血・痰濁など病理産物による気機阻滞の徴候も伴い、虚実夾雑の証も見られる。

病位:疫癘は口鼻の径路から侵入して先ず肺系(気道)を通して肺臓を侵襲し、主に肺臓及び肺系を損傷する。その後は次第に心・脾胃など他臓腑に影響を及ぼす。

病機:臨床で主な病理機序は陽気損傷、痰湿停滞、そして陰液損耗などがある。

① 陽気損傷:寒は陰邪に属して陽気(主に心陽・脾陽・腎陽)を損傷する;また凝滞・収引の特徴を持ち、臓腑機能と気血運行に障害を来たす。

② 痰湿停滞:湿は土気にあたって脾に通じるため、湿邪が盛んになると、脾胃を損傷する;また重濁・粘着停滞の特徴を持ち、中焦の昇降失調を起こして体内の気機を阻害する。

③ 陰液損耗:疫癘が急激に人体に侵入すると、正気は奮い立って対抗し、これによって生体に高熱を起こし、陰液を損耗する。

上記のほか、外来の毒によって臓腑機能と気血運行の障害を起こし、瘀血・痰濁など内生の毒が生じ、生体の気機不利を起こし、昇降失調の病理を致す。

病状:臨床で多く見られる感染後遺症状は、疲労倦怠無力、胸悶気短、咳嗽気喘、咽痒腫痛、嗅覚味覚障害、動悸不眠、抑鬱焦慮などがある。

肺は気を主り、呼吸を司る。余邪が残存することで肺は宣発粛降機能を失い、肺気が上逆して咳嗽や気喘を起こす。外邪の侵襲により肺が損傷されて肺気は虚弱になると、胸悶や気短が現れる。また肺は鼻に開竅し、喉は肺の戸となるため、肺気が損耗されて不足すると、咽喉腫痛、嗅覚障害が見られる。

脾胃は後天の本であり、運化を主り、気血生化の源となり、また脾は肌肉を主る。外邪の侵襲により脾気が虚弱になると、全身まで気血を輸送できないか、湿邪が体内に停滞することで、身体疲労や倦怠無力が見られる。また湿邪が中焦に停滞して脾胃機能を障害し、悪心納呆や腹脹泄瀉、更に味覚障害が現れる。

心は神志を主る。余熱が完全に追い払わず心神を擾乱すると、動悸不安や虚煩不眠が見られる。心気が虚弱になると、精神疲労、更に抑鬱焦慮などを来たす。また心は舌に開竅するため、心気損傷なら味覚障害が現れる。

3、辨証

臨床では、感染後遺症に痰熱壅肺、陽気不足、気陰両虚、陰虚火旺、昇降不和などの証候が多く見られる。各証候の特徴を把握して辨別する。

① 痰熱壅肺:咳、呼吸急迫、喉中痰鳴、粘稠で黄色い痰を吐く、胸脇脹満、煩躁不安、または胸痛、食欲不振、大便秘結、舌は紅、苔は黄膩、脈は滑数。

② 陽気不足:精神萎靡、面色蒼白または萎黄無華、頭目眩暈、動くと汗かいて気喘、心悸、気短、話したがらない、手足不温、畏寒悪風、また頭痛、頸項痛、全身疼痛または肩背骨節痛が見られる、舌は胖淡、苔は白、脈は沈細無力。

③ 気陰両虚:倦怠無力、咳嗽で長く止まらない、咳音が低くて弱い、胸悶気短、身熱多汗、悪風、心悸、口乾、嘔悪納呆、精神疲労または虚煩不眠、舌は淡紅、苔は少、脈は沈細または虚数;また嗅覚・味覚の減退が見られる。

④ 陰虚火旺:面色潮紅、咽喉腫痛または咽喉乾痛で切られるよう、空咳、口鼻乾燥、口渇で冷飲を好む、五心煩熱、頭暈心悸、不眠多夢、盗汗、舌は紅、苔は少、脈は細数。

⑤ 昇降不和:胸脇苦満、心胸不快、呼吸障害、発熱が持続して冷めない、心拍過多など全身症状が明らかであるが、また呑酸、噯気、悪心、嘈雑、泄瀉、矢気、不眠、抑鬱、焦慮などが見られる、飲酒や過労により症状が増悪する、舌は白、苔は厚膩、脈は弦滑数。

4、対策

新型コロナウイルス感染後遺症に対する全体的な対策は辨証治療と飲食調節の二大方面から考える。

辨証治療は、健脾益気、潤肺滋陰、補腎温陽、養心安神を原則とし、相応する中薬処方や経穴処方を考える。

飲食調節は、補気、健脾、潤肺、安神の順位で薬効食物と食用薬物を組み合わせて考える。

ほかに、様々な養生方法も効果的に応用できる。例えば、就寝前に生姜や艾葉による足浴を行う、或いは太極拳、八段錦、五禽戯、坐禅などを行うことで睡眠補助が期待できる。腹式呼吸で気錬を行うことで老年の咳嗽・喀痰困黯の助力になる。

健康知識:便秘解消の五経穴

便秘は日常生活で多く見られ、年齢増加や運動不足などにより胃腸の機能が減退して現れ易い。特に秋季の乾燥に伴って便秘に悩まされている方が増えている。大便が乾燥して腸管に閉塞することで、腹脹腹痛や食思不振、更に煩躁不安などの病症が起こされることもある。

中医学的には、便秘の病位は大腸にあるが、脾胃・肺・肝・腎など臓腑の機能失調に関係している。

便秘の問題の解決には生活方式の調整するほか、人体における経穴の按揉法を行うことも効果的である。下記の五経穴は腑気通調・潤腸通便の効果を発揮して便秘の解消にお勧めできる。

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健康知識:便秘解消の五経穴

便秘は日常生活で多く見られ、年齢増加や運動不足などにより胃腸の機能が減退して現れ易い。特に秋季の乾燥に伴って便秘に悩まされている方が増えている。大便が乾燥して腸管に閉塞することで、腹脹腹痛や食思不振、更に煩躁不安などの病症が起こされることもある。

中医学的には、便秘の病位は大腸にあるが、脾胃・肺・肝・腎など臓腑の機能失調に関係している。

便秘の問題の解決には生活方式の調整するほか、人体における経穴の按揉法を行うことも効果的である。下記の五経穴は腑気通調・潤腸通便の効果を発揮して便秘の解消にお勧めできる。

 

① 天枢

足陽明胃経の腧穴である。中腹部にあり、臍中央から外方2寸に取る。

天枢穴の所在位置は腸に近隣して大腸の募穴であり、大腸の気が腹部に集結する場所となるため、大腸の機能を調節する作用を持ち、便秘、泄瀉、腹痛など腸管関係の病証を治療することができる。また便秘の場合は天枢穴に圧痛反応も現れ易い。

 

② 大腸兪

足太陽膀胱経の腧穴である。下腰部にあり、第4腰椎棘突起下(ほぼ両側の腸骨稜最高点を結ぶ線と同じ高さ)から外方1.5寸に取る。

大腸兪穴は大腸の背部兪穴であり、大腸の気が腰部に輸注する場所となるため、便秘、泄瀉、痔瘡など大腸に関係する病証の治療に効果的に用いられる。

 

天枢穴と大腸兪穴の併用は兪募配穴の方法であり、針灸臨床治療における前後配穴の代表方法となる。両者の配合には「陰病行陽、陽病行陰」の意味が含んでおり、これによって便秘に対して良好な調節作用が期待できる。

 

③ 上巨虚

足陽明胃経の腧穴である。下腿前外方にあり、外膝眼(膝蓋靭帯の外方陥凹部)の下方6寸で、脛骨前縁の外方1横指(中指)に取る。

上巨虚穴は大腸の下合穴であり、大腸の気が下って足陽明胃経に合する場所となり、《黄帝内経霊枢・邪気臓腑病形》にいわゆる「合治内腑」の理論により、便秘、泄瀉、腸癕(虫垂炎)など大腸疾患には上巨虚穴を取って治療する。

 

天枢穴と上巨虚穴の併用は募合配穴の方法であり、針灸臨床治療における上下配穴の代表方法となる。両者の配合により共同に大腸腑気を通調させる作用を果たして便秘治療のために役立つ。

 

④ 支溝

手少陽三焦経の腧穴である。前腕背側にあり、手関節背側遠位横紋の上方3寸で、橈骨と尺骨の間の中央に取る。

支溝穴は三焦経脈の経穴であり、五行では火に属するため、三焦の火熱邪気を疏散し、三焦の気機を調整して腑気を通調させる作用を持ち、古今に便秘治療の重要な腧穴として多く応用されている。

 

⑤ 照海

足少陰腎経の腧穴である。足内側にあり、内果尖の下方陥凹部に取る。

照海穴は八脈交会穴で陰蹻脈に通じ、腎経の脈気が聚まる場所となるため、気化作用が強いとされている。老年の多くは腎精虚損が発生し、「陽常有余、陰常不足」の陰陽特徴が現れ、便秘の発生に至る、或いは陰虚体質で大腸を滋潤できず便秘を来す。照海穴を用いて腎陰を調整して補益し、前後二陰を通調させ、陰液を養って「水液を増やして舟を行かす」ように便秘を緩解させる作用を果たす。

 

腧穴を用いて便秘を解消するには日々の習慣にする事が重要であり、毎日持続して上記の腧穴に按揉法を行うことが望ましい。手技の軽重は適宜に保つ。重症な便秘の場合は医療機関を受診し、明確な発病原因を辨別したうえ、総合な治療手段を受ける。

健康知識:秋季補肺のための百合の応用

酷暑が長引き、立秋から暫く経ちましたが、蒸し暑くて中々爽やかにならず、秋分になってようやく朝晩秋の気配が感じられるようになった。

秋季は「陰長陽消」の時期であり、万物が「引き締まる」特徴を現している。自然界の六気では燥が主気となり、燥は陰を傷め易い。また五行学説では、人体の肺臓は秋季と同じく金に属しているため、秋気に通じて合っている。肺は「嬌臓」と呼ばれるようにデリケートの臓で、湿を好んで燥を嫌悪する生理特徴を持ち、寒熱燥などの邪気に耐え難く、特に燥邪に傷められ易い。そのため、秋季では潤肺が最も重要な養生原則である。飲食薬膳による健康養生では、梨、冬瓜、百合、白木耳、蓮実、銀杏、杏仁、蜂蜜、鳩肉などの食材は直接肺臓に滋潤・補益の作用を持っている。中でも、百合が特にお勧めの一種である。

ここでは百合の食用方法を幾つか紹介して秋季の肺臓補益に役立てて欲しい。

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健康知識:秋季補肺のための百合の応用

酷暑が長引き、立秋から暫く経ちましたが、蒸し暑くて中々爽やかにならず、秋分になってようやく朝晩秋の気配が感じられるようになった。

秋季は「陰長陽消」の時期であり、万物が「引き締まる」特徴を現している。自然界の六気では燥が主気となり、燥は陰を傷め易い。また五行学説では、人体の肺臓は秋季と同じく金に属しているため、秋気に通じて合っている。肺は「嬌臓」と呼ばれるようにデリケートの臓で、湿を好んで燥を嫌悪する生理特徴を持ち、寒熱燥などの邪気に耐え難く、特に燥邪に傷められ易い。そのため、秋季では潤肺が最も重要な養生原則である。飲食薬膳による健康養生では、梨、冬瓜、百合、白木耳、蓮実、銀杏、杏仁、蜂蜜、鳩肉などの食材は直接肺臓に滋潤・補益の作用を持っている。中でも、百合が特にお勧めの一種である。

百合はユリなどユリ科の同属多種の植物の鱗茎であり、乾燥したものは漢方薬として応用されている。百合は甘微苦・微寒(平)の性味で、心・肺に帰経し、養陰潤燥・益肺止咳・清心安神の効能を持ち、主に肺陰虚損による久咳不止(気管支拡張症)、痰に血が混じる、肺熱壅滞による胸悶心煩、熱病後期で余熱が下がらないか、或いは情志不遂(精神不調)による虚煩驚悸、不眠多夢、精神恍惚、百合病(心肺陰虚証);癕腫、湿瘡などに用いられる。現代の薬理学研究によると、百合に含まれる多糖類、サポニン、コルヒチンなどの成分は抗炎症・抗腫瘍・免疫強化・抗酸化・抗疲労・血糖降下・血脂降下・止咳平喘・鎮静安眠・潤腸通便などの作用を持っている。また薬食両用の物として薬膳の良品でもあり、滋養補益の絶品と呼ばれるほど、補益且つ清潤の特徴を持ち、「補無助火・清不傷正」(補っても逆上せず、清めても正気を傷まない)のため、体内虚火がある衰弱の者には最適であり、特に秋季の食用に相応しい。

ここでは百合の食用方法を幾つか紹介して秋季の肺臓補益に役立てて欲しい。普段、羹や粥など煮込みの場合は多く干し百合、炒め料理の場合は主に新鮮な百合根を使用する。

1、百合蓮子銀耳羹(百合と蓮実と白木耳の羹)

[材料]干し百合20g、白木耳3枚、蓮実20g、氷砂糖100g、枸杞10g。

[方法]白木耳を30分間水に浸して戻してから小さく千切り、弱火で2時間半煮込んで粘々になったら氷砂糖を加え、水で浸した蓮実を入れて更に30分間煮込み、水で戻した百合と枸杞を入れて15分間煮込む。

[効用]滋陰潤肺、益気養心。主に肺気陰虚による咳嗽痰多、胸悶気短、不眠多夢、面色不華などに適する。

2、百合荸雪梨羹(百合と黒慈姑と梨の羹)

[材料]干し百合30g、黒慈姑50g、梨1個、氷砂糖少々。

[方法]黒慈姑を綺麗に洗って皮を剥いてから叩き潰しておき、梨を綺麗に洗って種を除いて細かく切り、百合と一緒にお鍋に入れ、適量の水を加えて柔らかくなるまで煮込み、更に氷砂糖を入れて少々煮込む。42回に分けて服用し、連続して10~15日を1クールとする。

[効用]潤肺清火・化痰止咳。熱証の慢性気管支炎、慢性咳嗽、熱病後期(回復期)の虚熱口渇などに適する。

3、西芹枸杞炒百合(セロリと枸杞の実と百合の炒め)

[材料]セロリ200g、枸杞10粒、新鮮な百合根140g、鶏がらスープの素、食塩。

[方法]セロリはお湯を通して強火で速やかに炒め、火が通ったら百合根を加えて透明になるまで炒め、調味料を加えて枸杞を均等に混ぜる。

[効用]清熱解毒・潤肺止咳。主に風熱感冒による咳嗽頭痛、肝陽上亢による頭暈煩熱、熱病後期・飲酒による煩熱口渇などに適する。

4、百合糯米粥(百合の糯米粥)

[材料]新鮮な百合根40g、糯米100g、氷砂糖適量。

[方法]百合を綺麗に洗って細かく切り、糯米と一緒にお鍋に入れ、水を加えて米が柔らかくなるまで煮込み、氷砂糖で調味して朝晩暖めて服用する。

[効用]潤肺止咳・寧心安神。秋燥による皮膚乾燥、心煩不眠、空咳痰少、大便秘結に適する。

5、百合紅棗糯米粥(百合と棗の糯米粥)

[材料]干し百合60g、糯米200g、棗30g、黒砂糖適量。

[方法]干し百合を水で30分ほど浸し、棗を小さく千切り、糯米と一緒にお鍋に入れて水を加えて柔らかくなるまで煮込み、お粥が粘稠になったら黒砂糖を加えて均等になるまで少し煮込む。

[効用]健脾養胃・益気安神。精神不振、四肢無力、食思不振、心煩不眠、肺虚空咳などに適する。

6、杏仁百合粥(杏仁と百合の粥)

[材料]杏仁9粒、干し百合15~20g、粳米30~50g、砂糖適量。

[方法]杏仁、百合、粳米を水で2回浸し、1回で30分間、砂糖を加えて柔らかくなるまで煮込む。

[効用]潤肺止咳・清心安神。空咳痰少、心煩不眠に適する。

7、苓術百合粥(茯苓と白朮と百合の粥)

[材料]茯苓5g、懐山薬30g、麩炒白朮15g、砂仁6g、百合10g、粳米250g。

[方法]茯苓、山薬、白朮、砂仁、百合を綺麗に洗って適量の水で30分間浸し、強火で煮てから弱火に変えて30分ほど煮込み、残渣を除いて汁を粳米と一緒に土鍋に入れ適量の水を加えて弱火でお粥になるまで煮込む。

[効能]健脾和胃・潤肺養陰。

百合は秋季養生の絶品であるが、適切に応用しなければならない。風寒感冒による咳嗽、脾胃虚寒による泄瀉便溏の者は食用を控える。

活動案内:「経穴の定位と技法」 教本出版のご案内

針灸臨床実用参考書シリーズの「経穴の性能と主治」と「病証の辨析と処方」に続き、伝統医学教育会理事長陳志強の新書「経穴の定位と技法」を当会にて出版する運びとなりましたので、皆様にお知らせ致します。

針灸治療では腧穴の定位と取法が最も重要な基礎となっています。腧穴の定位を 精確に把握し、臨床で正しく取穴することにより、刺針施灸の刺激で相応しい針響を促して治療効果を果たせます。また処方配穴の協同作用を考え、速やかに取穴して 処方組成の腧穴を同時に刺激して相乗効果を活かすことにより、治療効果が最大限に発揮できるし、更に病人の緊張する待機時間も短縮できるのです。そのため、精確かつ迅速に腧穴の定位を取ることは大きな意義があります。

本書では、腧穴の基礎知識を概説し、定位方法と取穴方法を説明し、更に針灸の  操作技法を総説したうえ、針灸臨床において常用される212経穴を選び、それぞれの定位、様々な取法、そして針灸方法を詳細に説明しています。更にできるだけ精確に取穴要点を表現して理解しやすいように、2年3ヶ月の時間をかけて自ら拘った図譜の考案と作成に工夫しました。一般の針灸師や針灸学生、按摩マッサージ指圧師などによる医療・健康関連職従事者の臨床治療並びに伝統医学に関心を持っている方々の健康増進のための参考書にして頂きたく、本書を完成しました。

「針灸臨床実用参考書 経穴の定位と技法」

NPO法人伝統医学教育会理事長・医学博士 陳 志強 著

B5判 / 320頁 / 2色刷  定価 4,500円(税別、送料無料)

ご希望の方は、TEL 03-5816-5234またはFAX 03-5816-5235で事務局へお申込み下さい。また多くの方々に広げていくため、まとめて購入する場合は割引き致します。

振込先:ゆうちょ銀行00150-5-426953、特定非営利活動法人伝統医学教育会。

代金が確認でき次第、発送致します。

健康知識:三伏天における冬病夏治の食療処方

三伏天(さんぷくてん)は二十四節季の小暑と処暑の間にあり、一年中最も気温や湿度が高くて蒸し暑い時期である。今年も7月11日から三伏天に入り、ここ数年続いて、初伏10日、中伏20日、末伏10日で、計40日間である。中医学には「春夏養陽」の養生原則があるが、三伏天では特に陽気の保養に注意しなければならない。そのため、普段は温かい飲み物や熱性の生姜棗汁などを飲んだりし、冷たい飲み物や冷える食べ物を控える。また冷房環境に籠ってはいけない。

三伏天の時期、人体の陽気は自然界に従って最も旺盛になっているため、体内に凝集して冬季に疾病発作を起こす陰寒邪気は比較的解けやすい状態になっている。冬季持病の方や身体虚弱の方は、この時機を上手く利用して身体の奥に蓄積している頑固な寒邪宿疾を一気に追い払い、いわゆる「冬病夏治」のことである。また冬病治療と同時に、体内の虚弱陽気を調節し補充し、生体の免疫力を高めて一年中疾病の抵抗力を強める事が出来る。

冬病夏治の方法は沢山あるが、飲食薬膳の内治法も便宜的で効果的である。簡単な飲食薬膳だけで明らかに冬病の再発を減少させ、病状進行を緩和させることかでき、また身体虚弱の補養効果も大きい。ここでは、冬病夏治のための飲食薬膳処方を紹介する。

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健康知識:三伏天における冬病夏治の食療処方

三伏天(さんぷくてん)は二十四節季の小暑と処暑の間にあり、一年中最も気温や湿度が高くて蒸し暑い時期である。今年も7月11日から三伏天に入り、ここ数年続いて、初伏10日、中伏20日、末伏10日で、計40日間である。

中医学には「春夏養陽」の養生原則があるが、三伏天では特に陽気の保養に注意しなければならない。そのため、温暖・発散を適宜とし、寒冷・収斂を禁忌としている。簡単に言えば、「伏天に入ると、冷える物を食しない」と言われるように、普段は温かい飲み物や熱性の生姜棗汁などを飲んだりし、冷たい飲み物や冷える食べ物を控える。また冷房環境に籠ってはいけない。これによって生体に効果的な発汗をさせ、体内に伏せている寒湿邪気(代謝廃物)を順調に排泄する。

夏季の炎熱酷暑で、ついアイスクリーム、かき氷、冷たいビール、冷やした西瓜などを好んでしまう人が少なくないが、これらの寒冷食物は直接中焦陽気を傷めて脾胃虚弱を起こし、更に一身の陽気を損なう恐れがある。現代医学的にもこれらの寒冷食物は食道や胃腸のほか、近隣する心臓動脈を刺激して収縮痙攣を起こし、循環障害の発作を招いてしまうと指摘している。

三伏天の時期、人体の陽気は自然界に従って最も旺盛になっているため、体内に凝集して冬季に疾病発作を起こす陰寒邪気は比較的解けやすい状態になっている。夏季の暑熱が体内に貯まらないように、健常者には苦味や涼性でアッサリとした飲食物をお勧めしているが、慢性的な喘息咳嗽、胃痛泄瀉、関節冷痛など冬季持病の方や身体虚弱の方は、この時機を上手く利用して補虚助陽と共に温裏散寒の効能を持つ食物や薬物を加えるか、温灸を据えることなどで、天人の協力で身体の奥に蓄積している頑固な寒邪宿疾を一気に追い払う効果が果たせる。いわゆる「冬病夏治」のことである。また冬病治療と同時に、体内の虚弱陽気を調節し補充し、生体の免疫力を高めて一年中疾病の抵抗力を強める事が出来る。

冬病夏治の方法は沢山あるが、通常温灸法や三伏湿布などの外治法が多く知られて用いられている。実際、飲食薬膳の内治法も便宜的で効果的である。特に皮膚が過敏で外治法に合わない場合、簡単な飲食薬膳だけで明らかに冬病の再発を減少させ、病状進行を緩和させることかでき、また身体虚弱の補養効果も大きい。冬季では健康維持のために通常、羊肉、豚の腎臓、海老、韮、山芋、胡桃、黒胡麻など温熱性能で温腎祛寒の食材が用いられており、いずれも適当に応用できる。更に漢方薬を併用することで疾病治療の効果が期待できる。

ここでは、冬病夏治のための飲食薬膳処方を紹介する。

① 卵の緑茶煮

緑茶15g、鶏卵2個、お椀1杯のお水に入れて煮込み、火が通ったら鶏卵の殻を剥いて更に煮汁がなくなるなるまで煮込む。益肺理気の効能を持ち、慢性気管支炎、気管支拡張症、気管支喘息など肺陰虚に用いられる。

② 卵の生姜炒め

生姜を千切りにし、落花生油を熱くして生姜を炒め、鶏卵1~2個を加えて固まるまで炒め、毎朝1回食する。利肺降気・健脾止瀉の効能を持ち、慢性咳嗽、慢性喘息、慢性泄瀉などに用いられる。

③ 梨貝母の煮汁

梨1個、皮を剥いてスライスし、川貝母12gを磨り潰して氷砂糖20gを加え、一緒に煮込んで汁を服用する。潤肺止咳の効能を持ち、老年性気管支炎の肺熱による空咳、痰少などに用いられる。

④ 二姜と豚胃袋のスープ

豚の胃袋1個、お酢で綺麗に洗って生臭みを取り、千切りにしておき、乾姜10g、高良姜10g、草果3g、土瓶に入れて葱と生姜を加えて柔らかくなるまで煮込み、塩3~5gで調味して空腹時に食する。健脾温胃・助運止瀉の効能を持ち、脾胃虚弱による胃脘冷痛、飲食不化、慢性泄瀉、面色萎黄、身体羸痩、倦怠無力などに用いられる。

⑤ 栗と羊背骨のスープ

栗12個、羊の背骨1本(金槌で砕く)、肉蓯蓉12g、草果3g、土瓶に入れて葱と生姜を加え、柔らかくなるまで2時間ほど煮込み、塩で調味して空腹時に食する。補腎固本の効能を持ち、腎精虚損による慢性婦人科疾患、腰膝痠軟冷痛、筋骨無力などに用いられる。

⑥ 鮒の胡椒スープ

新鮮な鮒1匹(約250g)、鰓と鱗と内臓を取り除き、生姜20gをスライスにし、砂仁と胡椒粉を一緒に魚のお腹に入れ、適量のお水を加えて中火で火が通るまで煮込み、塩で調味して食する。温補脾胃の効能を持ち、脾虚型または胃寒型の胃痛に用いられる。

⑦ 雄鶏の白胡椒スープ

雄の鶏1羽、綺麗に洗ってから角切りにし、白胡椒9g、草果3g、良姜3gと一緒にお鍋に入れ、葱と生姜を適量加えてお水から柔らかくなるまで煮込み、塩で調味して空腹で食する。温肺補虚・止咳平喘の効能を持ち、虚弱羸痩、畏寒少气、寒冷発作の咳嗽、繰り返す感冒,アレルギー性性鼻炎,冬季増悪の喘息などに用いられる。

⑧ 烏骨鶏の黄芪スープ

黄芪30g、乌骨鶏半身を共に煮込み、鶏肉が柔らかくなったら調味料を入れて肉を食べてスープを飲む。3回に分けることが出来、連続してひと月くらい食する。養肺益気・滋腎補血・固表防感の効能を持ち、身体虚弱、易感冒、咳嗽などに用いられる。。

⑨ 大豆花山椒スープ

大豆30g、花山椒5gをお水500mlに入れて強火で煮たってから、弱火に変えて柔らかくなるまで煮込み、お好みで調味して豆を食べて汁を飲む。健脾宽中・和胃止呕・散寒止痛の効能を持つ。

上記のほか、冬病の凍瘡に対して温熱性能を持つ食物薬物を外用する事もできる。紫色の大蒜(独株のが良い)を泥状に潰して暖かくなるまで天日干しし、薄く凍瘡再発部位に塗り付ける、一日に3〜5回、連続して5〜7日行うことで、冬季での再発を予防する。或いは新鮮の胡麻葉を丸めて凍瘡再発部位を擦り、汁を皮膚に残して1時間後に洗い落とす。一日に数回、連続して1週間ほど行う。或いは紅花10g、桂枝15gの煎じ汁を凍瘡再発部位に塗り付ける。一日に1回、連続して5日間行う(妊婦不適)。

三伏天にもう一つ簡単な陽気保養の方法がある。夕方に一日日光に当たって熱くなった木や石のベンチに座ることで、湿邪停滞による腰腿重痛、早朝の腹痛泄瀉や手足不温・月経腹痛など虚寒証、様々な持病を改善させられる。