百会穴は「陽脈の海」と言われる督脈に属し、頭頂部の中央に位置して人体の最高点となり、天の気に通じる処とされている。天は陽に属しているため、百会穴は人体において陽気が最も盛んになる部位と言える。
また百会穴で交会する督脈と足太陽膀胱経は共に直接脳に通じている。脳は「髄の海」となり、人体の神志機能の根本的な所在であるため、百会穴は神志に最も深く関連すると考えられる。
ここでは、百会穴の意味と定位、効能主治、日常応用、施術操作、そして応用注意について紹介し、健康増進に役立って欲しい。
百会穴は「陽脈の海」と言われる督脈に属し、頭頂部の中央に位置して人体の最高点となり、天の気に通じる処とされている。天は陽に属しているため、百会穴は人体において陽気が最も盛んになる部位と言える。
また百会穴で交会する督脈と足太陽膀胱経は共に直接脳に通じている。脳は「髄の海」となり、人体の神志機能の根本的な所在であるため、百会穴は神志に最も深く関連すると考えられる。
ここでは、百会穴の意味と定位、効能主治、日常応用、施術操作、そして応用注意について紹介し、健康増進に役立って欲しい。
百会穴は「陽脈の海」と言われる督脈に属し、頭頂部の中央に位置して人体の最高点となり、天の気に通じる処とされている。天は陽に属しているため、百会穴は人体において陽気が最も盛んになる部位と言える。
また百会穴で交会する督脈と足太陽膀胱経は共に直接脳に通じている。脳は「髄の海」となり、人体の神志機能の根本的な所在であるため、百会穴は神志に最も深く関連すると考えられる。
百会穴の意味
百会穴の名称は手足三陽経脈及び督脈の陽気が交会する意味である。「頭は諸陽の会なり」と言われるように、全ての陽経が頭部に集まっており、百会穴は頭部の中心となり、百脈がここで交会するため、名付けられたのである。
百脈が交会することは、この一点を刺激すると百脈まで影響を及ぼす意味である。従って長期に百会穴を按摩することで、人体の半分以上の経絡及び大部分の経穴を引導し推進することができる。身体虚弱や老年の者に対して陰陽保養の作用をもたらし、《針灸資生経》に「百病皆主」と記載されている通り、百会穴は治療範囲が非常に広い。
百会穴の定位
百会穴は人体の頭頂部にあり、前髪際正中の直上5寸に定位される。具体的に応用する際、前髪際正中と後髪際正中の中点から前方へ1寸の処に取る。便宜の取り方として、左右の耳介を後方から前方へ折り曲げる時に、両側の耳尖を直上に結ぶ線と正中線との交点に取るか、自己取穴では両手の拇指指先で外耳道開口を押さえ、両手の中指指先が合わせている処に取ることができる。
いずれの方法でも、正中線上の前後に按えて詳しく探り当てると、明らかな陥凹部が確認でき、これが精確な位置である。古人は「百会可納豆」(百会穴には豆を納められる)と描いたように、身体が直立する際に、頭頂部の百会穴に一粒の豆を置くと、歩いても落ちないため、この凹みは小さくなく、探し易いはずである。
百会穴の効能主治
針灸臨床では、百会穴は主に頭部・顔面部疾患及び五官疾患、神志疾患の重要経穴として常用されているほか、また気虚下陥の病証にも多く応用されている。
中医針灸学では、百会穴は疏風散邪・清頭明目・安神鎮静・平肝熄風・醒神開竅・昇陽固脱などの効能を持ち、主に頭痛、頭重、頭脹、頭暈、目眩;不眠、健忘、驚悸(驚恐動悸);中風失語、失神卒倒、癲狂癇証、臓躁(躁鬱)、瘈瘲(痙攣)、後弓反張、小児驚風;脱肛、痔瘡、慢性泄瀉、遺尿、陰挺(子宮脱)、気喘、虚損;耳鳴、耳聾、鼻閉、鼻衄などの治療に応用する。
また現代医学では、高血圧、低血圧、ショック、脳循環不全症;鼻炎、副鼻腔炎、内耳性眩暈(メニエール病)、神経性頭痛、不眠症、鬱病、統合失調症、老人性認知症、脳血管障害による意識障害、片麻痺、言語障害;胃下垂、脱肛、子宮下垂などの内臓下垂;舞踏病、夜尿症、小児高熱痙攣、小児夜泣きなどに適応する。
百会穴の日常応用
日常生活では、百会穴は病症改善・健康増進に広く活用でき、大きな役割を果たしている。
① 血圧調節
百会穴は血圧に対して二方向の良性調節作用を持っている。ある程度まで、高血圧の者に血圧降下の作用を、低血圧の者に血圧上昇の作用を果たす。また健康動作「金鶏独立」では、低血圧や貧血の者は動作を行う際に意識を百会穴に集中すると効果がより高い。
② 鎮静安眠・頭痛緩和
百会穴は精神安定の効能を持っている。緊張過度、精神疲労、ストレスなどによる不眠や頭痛で困っている者は百会穴を用いた治療で即時に良好な効果が得られる。
③ 精神振奮・健脳養神
百会穴は脳神に繋がり、脳機能の調節作用を以て、心力不足、煩悶驚恐、健忘、不眠惰眠、慢性頭痛、意欲低下、孤独内向など様々な精神状態の低下症状を調整する。また学生は毎日百会穴を軽く叩くことにより、脳疲労の解消に伴い、健脳作用を得る。
④ 陽気補充
陽気は温煦作用を以て全身を暖めており、陽気不足の者は普段寒がりで、年中手足が冷え、時々下痢が発作する。百会穴は全身の陽経と督脈の経気を振奮させ、これによって陽虚体質を改善させる。
⑤ 昇陽挙陥
脾気は陽気昇挙の作用を以て気血栄養を身体上部に持ち上げるに伴い、全身の臓器を一定の位置に固定する役割も担っている。中気虚弱(脾気虚)の者は上昇不足で気陥が発生し、泄瀉が長期に渡って治らず、更に胃下垂や子宮下垂など内臓下垂が見られる。百会穴は陽気を上昇させる効能を持ち、これらの症状を改善させる。
百会穴の施術操作
通常、百会穴を用いた健康増進の場合は経穴の按揉法を行う。片手の中指または示指を用いて百会穴に当て、徐々に力を強くして30~50回按え、その後それぞれ時計回りと反時計回りの方向に30~50回揉む。体調が弱い方や内臓下垂に患う方は最初軽くして次第に強く変わり、回数も少しずつ増やすことができる。
また精神振奮や頭痛緩和の場合は、百会穴において叩打法を行うことができる。空心掌を用いて百会穴を10回ほど軽く叩くことで、精神をゆったりさせてストレスを解消し、頭痛が緩和できる。
陽気虚弱や中気下陥の場合は、百会穴において温灸法を行うと更に高い効果が期待できる。艾灸箱を頭頂部に固定して一回で15分間、一週間に2~3回の温灸を行う。忙しくて艾灸できない場合は、片手で百会穴を100回ほど軽く叩くことだけでも陽気を保養に役立つ。
百会穴の応用注意
百会穴による健康増進は青年、中年、老年に適し、年齢が高ければ適応するが、児童の場合は慎重に応用しなければならない。特に嬰児幼児の場合は頭蓋骨が柔らかく、泉門が閉鎖していないため、百会穴の応用はとりわけ小心が必要である。
また、推拿手法において軽刺激は補で通と、強刺激は瀉で滞だとされている。百会穴の按揉を行う際に、強い力で按圧してはいけない。猛烈な力をかけると、経脈に損傷を与えて気血の運行失調を起こす恐れがあり、頭痛や頭暈など不快感が現れ易く、更に「一竅乱而百竅乱」(一穴の乱れにより百竅の乱れを致す)の結果になり、五官五感の失調が発生してしまう。百会穴には陽気を上昇させて下陥気血を挙上させる効能があるが、強刺激を与えると、虚弱の陽気が上昇し過ぎるか、肝陽が上亢し易い。特に本来血圧の高い方には、強い力で按圧することで、気血が急激に変動して頭暈目眩などを起こし易く、更に高血圧症の症状発作を来たす。
最後に、経穴推拿は治療の補助手段として応用できるが、降圧薬の代わりにはならない。