健康知識:冬の数九寒天に養生を語る

中国では、一年中最も暑い時期の三伏天に対し、最も寒い時期を「数九天」としてている。数とは数える事を指し、数九は九を数えることである。冬至から天候が本格的に冷え込むため、冬至から九日間ずつ日々を数えて行き、一つ目の九日間を一九、二つ目の九日間を二九とし、三九と四九が二十四節季の小寒小寒と大寒を含めて最も寒い時期で、その後は気温が徐々に暖かくなっていき、最後に九つ目の九日間まで数えると、「九尽桃花開」(九が尽くしたら桃の花が咲く)で春が来るため、数九天は計八十一日間とされているが、実際は更に九日間を加えて九十日間を数えている。

「数九天」の厳寒天候に人体は最も寒気に損耗され易いため、温補の原則に重点を置いて養生する必要がある。下記の衣・食・住・行などの面で充分注意しなければならない。

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健康知識:冬の数九寒天に養生を語る

中国では、一年中最も暑い時期の三伏天に対し、最も寒い時期を「数九天」としてている。数とは数える事を指し、数九は九を数えることである。冬至から天候が本格的に冷え込むため、冬至から九日間ずつ日々を数えて行き、一つ目の九日間を一九、二つ目の九日間を二九とし、三九と四九が二十四節季の小寒小寒と大寒を含めて最も寒い時期で、その後は気温が徐々に暖かくなっていき、最後に九つ目の九日間まで数えると、「九尽桃花開」(九が尽くしたら桃の花が咲く)で春が来るため、数九天は計八十一日間とされているが、実際は更に九日間を加えて九十日間を数えている。

「数九天」の厳寒天候に人体は最も寒気に損耗され易いため、温補の原則に重点を置いて養生する必要がある。下記の衣・食・住・行などの面で充分注意しなければならない。

1、温暖を保持して消耗を防ぐ

寒気で生体の陽気が消耗され易く、更に冬至から陽気が芽生え始めるため、寒気に傷められないように十分に保温する必要がある。また寒邪は凝滞の性質が持ち、寒冷により生体の気血運行が緩慢になって停滞も起こり易い。平素に血液粘稠度が高い高血脂、高血糖、高コレステロールの患者を含め、特に頸・肩・腰・腿の部位を温めなければならない。

寒は陰邪で陽気を傷め易いため、特に頭と足の防寒を大切にすれば、より良く寒邪の侵襲を防ぐ。寒冷の日、温かい厚着だけを着ても頭から身体の熱が放散してしまう恐れもあるため、出来れば帽子やマフラーなどで頭を覆った方が無難である。一方、足が冷えると内臓まで及ぼして下痢、月経不順、陽痿、腰腿疼痛などの病症を引き起こす。足を暖めるためには、就寝前にお湯で足を浸す方法が効果的であり、冷え症の者には艾葉を加えたり、湿が多い者には花山椒を入れたりし、煎じてから足を浸すと更に効果を高める。

具体的な手段として、合理的に衣服の厚みを調整し、暖房などで室温を調節する。

但し、身体の温暖保持は適度にしなければならず、熱がりや汗かきのない程度を適宜とする。着過ぎたり室温が高過ぎたりすると、熱くて汗をかき、腠理が開いて陽気の封蔵を妨げ、寒邪を感受して罹病する恐れがある。

2、適度な飲食で身体を補う

飲食保養は健康養生において重要な手段であり、特に冬至を過ぎた後は身体を大いに補う最適な時期であり、温熱性質の食物を以って身体を補益すると、半分の労で倍の効果を上げる。

陽気が不足する数九寒天では、羊肉、大根、生姜、長葱など温熱性質の食物を多めに食すことにより、生体の陽気を補う。

但し、冬季では肉類など脂っこい物・甘い物・厚味を多く食し、飲食が消化されず湿痰や蓄熱を生じ易いため、温熱性質の食物に伴い、蓮根、大根、白菜、梨、黒慈姑など津液を補足する清涼性質の食物も必要である。

ほかに、一日一度くらい温かい雑穀粥を食べると、身体を暖めるほか、胃腸を暖めて消化機能を促進して食欲を増進させる。

3、充足な睡眠で陰陽を補う

充分な睡眠時間を確保することは、陽気の潜蔵と陰精の蓄積に有益である。数九寒天において最も直接な養生法として早寝遅起きであり、普段より一時間多めに寝るのをお勧めする。

《黄帝内経》には冬の養生について「早寝遅起き、必ず日光を待つ」と記載している。中医学的には、早寝は陽気を温存するためになり、遅起きは陰気を保養するのを助ける。このように体内の陰陽平衡、臓腑を滋養して生体の健康を増進する。

4、適度な運動で気血を助ける

運動養生は生体の防寒能力を高める効果があるが、自然の規則性に順応しなければならない。基本的に数九厳冬の時節には、「蔵」(陽気と精気の貯蔵)に工夫すべきで、運動を多めにすることをお勧めしない。運動する際には有酸素運動が重要である。

先ず運動の強度からみると、ジョギングや球技試合など激しい運動は身体のエネルギー消耗が大きく、汗かきにより肌膚腠理が開いて陽気や腎精の消耗を招くため不適切である。代わりに早足歩き、八段錦、太極拳などの緩やかな運動がお勧めである。

次に運動の時間からみると、早朝は気温が低くて陽気が消耗され易いため、運動には適宜ではない。特に老人や心脳血管罹患者などの場合は必ず日が出てから、昼前後の陽気が比較的強い時間帯(午前十時前後或いは午後三四時くらい)にお勧めする。

また運動前に充分な準備運動を行って身体を温め、寒冷時気の筋骨強硬による運動損傷の発生リスクを下げる。運動後は直ぐに温かい飲物を補給し、生体の水液消耗による血液粘稠度の変化を起こして心脳血管疾患を予防する。

5、日光浴で陽気を補給しながら情緒を調節する

太陽は自然界陽気の本源であり、生命の陽気も日光から摂取されている。陽気が少ない数九寒天に日を浴びる事は生体の陽気を保養する重要な手段である。

また寒冷時期は気候が乾燥しているし、暖房や焜炉などの使用で更に乾燥して逆上せを起こし、情緒の変化も見られ易い。中医的には「怒則気上」で、気が逆上せると陽気は乱されるため、数九寒天の情緒の調節も重要である。

日を浴びることで陽気を補って寒気を駆除できるし、同時に気分転換で情緒を調節して抑鬱を減少させる。具体的な方法としは、両側の手掌を開いて日に向け、散歩や深呼吸などを伴う。三十分から一時間ほどお勧めする。

今は数九寒天の三九の最中である。最も寒い時期のなか、正しい養生方法を以って健康な身体を作り、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの病邪から身を守りましょう。