一般的な健康養生法として摩腹揉腹法が多く知られており、臓腑機能を強化することにより、健康の維持と増進、疾病の予防と治療に大きく役立つ。実は摩腹揉腹と同じように、拍胸摩胸法も古来より養生医家に重視されている。胸部において拍打・摩擦など適切な保養動作を行うことにより、体内の濁気を排除し、心肺の機能を高め、そして健康増進と養生長寿に繋がる。
月: 2020年9月
健康知識:拍胸摩胸、養護心肺
一般的な健康養生法として摩腹揉腹法が多く知られており、臓腑機能を強化することにより、健康の維持と増進、疾病の予防と治療に大きく役立つ。実は摩腹揉腹と同じように、拍胸摩胸法も古来より養生医家に重視されている。胸部において拍打・摩擦など適切な保養動作を行うことにより、体内の濁気を排除し、心肺の機能を高め、そして健康増進と養生長寿に繋がる。
操作効果
① 経脈刺激:胸部には任脈を初め、肝・脾・腎の足三陰経及び足陽明胃経など全身に連絡する経絡が分布している。胸部の拍打・摩擦などを行うことで、寛胸理気・活血通脈・老衰対抗などの効果が得られ、健康増進で疾病予防の役割を果たす。
② 心肺養護:胸部には心肺二臓が納められ、肺は気、心は血を主っている。拍胸を行うことで、直接心臓と肺臓に刺激を与え、心肺の機能を強化して益肺養心・気血調暢の効果が得られる。現代研究によると、胸背部の拍打は肺法に対して軽度の衝撃波を起こし、患者の呼吸困難や胸部圧迫感を軽減させ、更に腹式呼吸を併用することで、肺の痰液や残気を上に動かす効果がある。これにより、冠状動脈心疾患、狭心症、慢性気管支炎、肺気腫などの予防と治療、そして胸悶動悸や気喘咳嗽や脇肋疼痛などの軽減改善に効果的である。
③ 免疫強化:胸骨の後方に胸腺組織があり、これは生体の生長発育促進及び免疫力向上に関わる内分泌腺である。加齢に伴い、胸腺が徐々に退化して脂肪組織に取り代わられ、それに従って免疫力も弱くなっていく。またストレス、心理障害、栄養不良、環境汚染、薬物損害、飲酒喫煙などの素因により、免疫機能も減弱し、感染症、免疫疾患、代謝疾患、更に悪性腫瘍などが発症し易い。拍胸を行うことで、胸骨に適度な震動を与え、胸腺の機能を活性化し、免疫力強化の効果が得られる。
操作方法
1、拍胸:直立または坐位を取り、腹式呼吸を行う。両手の五指を合わせて手掌をやや屈曲し、空心掌を用いて胸部において上から下へ拍打法を行う。拍打する際に口をやや開き、震動に伴って気を口から吐き出す。
片方ずつ右手で左胸、左手で右胸を拍打しても、両手同時に両側の胸部を拍打しても良い。30~40回ほど行う。
2、摩胸:坐位または仰臥位を取り、自然呼吸を行う。左側の手掌を用いて胸部の左上方から右下方へ、右側の手掌を用いて胸部の右上方から左下方へ、円を描くように摩法を行う。両手交互に30~40回ずつ行う。
一日に30分間ほど、夕飯の30分後から上記の動作を行う。
操作注意
① 動作を行う際に、爽快な気分で行う、全身をリラックスさせる。
② 拍打の時に手掌の着力面を広くし、手首の動きは自然に軽やかで弾力性を保ち、胸腔内に震動を感じさせる。
③ 上胸部ではやや力が大きく、下胸部では力は弱くし、損傷を避けるため粗暴な力を避ける。
④ 最初に動作を行う際に、力が強過ぎないように、自分で耐えられて震動が感じられるのを適度とする。少しずつ馴染んでいくと、拍打の力を強くすることができる。
⑤ 老年の方や骨粗鬆症の方は、胸部損傷や骨折の恐れがあるため、動作を軽やかに行う。また重篤な心疾患やペースメーカー装着の方には余りお勧めしない。