艾草(蓬)は主に山野に生える多年草で、特有の匂いがある。羽状に切れ込みのある葉が互生し、裏面に白い絨毛が密生している。その若葉を摘み、草餅などを作ることで知られているため、餅草とも呼ぶ。中薬では艾葉と言い、純陽の性質に属し、温経止血、散寒祛湿、平喘止咳、安胎などの効能を持ち、また消炎、抗アレルギーの作用もある。蓬の葉を採集して干し、臼で搗いて篩にかけ、陰干しする工程を繰り返して綿状の物を作り、せんねん灸など、お灸を据える際に燃やす材料として用いる。
お灸のほか、日常生活では艾草は非常に簡単な応用法がある。
1、艾葉と焼酎による頸肩腰腿痛の解消
秋から冬に入ると、頚椎症、肩関節周囲炎、腰痛、膝関節症などの持病の発作が多く現れてくる。痛みを解消するために湿布を使用するが殆ど深部まで届かず、鎮痛剤も胃粘膜刺激など副作用が大きく、大変困っている方が少なくない。こんな時には艾葉と焼酎を配合する方法を用いて関節痛を緩解して欲しい。
材料:艾葉(蓬)60g、生姜15g、生葱2~3本、焼酎(30度以上が良い)適量。
方法:艾葉、生姜、生葱を細かく潰してガーゼの袋に入れておき、熱くした焼酎に付けて疼痛部位に塗り付けて擦る。
効果:温経散寒・舒筋止痛の効能を持ち、主に風寒湿邪による関節冷痛に適し、通常1~2回だけで疼痛が解消される。
2、艾葉と竜眼山椒の臍貼付による脾胃虚寒の改善
天気が寒くなるに伴い、本来寒さに弱く、胃腸虚寒で腹痛、下痢、手足が冷える方は症状が増悪し易くなる。少しだけでも生ものや冷たい物を食べると、すぐに吐気、嘔吐、下痢などを起こす。普段は温かい黒糖生姜茶なども役に立つが、艾葉と竜眼山椒の併用により症状を緩和させられる。
材料:艾葉(蓬)1摘み、桂園(干し竜眼)1粒、花山椒6~7粒。
方法:艾葉、桂園、花山椒を一緒に細かくなるまで磨り潰し、寝る前に臍の穴を埋める程度の量を入れ、絆創膏で封する。朝起床時に取り外す。
効果:中焦脾胃を温暖し体内の寒湿邪気を排除し、主に脾胃虚寒による脘腹冷痛、嘔悪泄瀉、手足不温、睡眠不安などに適し、多く2~3回の利用で温かく感じて症状が緩和される。
ほかに、艾草は足浴にも活用することができる。これにより冬季における風寒感冒、咳嗽喀痰、逆上せ(虚火、実火)、眼周の黒クマなどに治療効果があり、当然足の臭いや水虫などの対策としても効果的である。