新型コロナウイルス感染が拡大し、緊急事態宣言の再度発令及び期間延長により不要不急の外出を自粛しているほか、天候も例年より寒さが厳しいため、在宅時間が更に長くなり、日常生活の中で運動不足などの懸念が出てくる。この情勢では、外出も気が気でないため家の中での運動が好ましい。そこで、五禽戯、六字訣、八段錦など余り空間を必要としない中医気功法は大いに役立つ方法とされている。しかし、これまで習得しておらず、今から始めようとすると少し難しいと考える方も多いと思う。そこで、代わりに自分で行う簡単便宜な養生推拿法をお勧めする。
ここでは、個人的に日頃行っている自己推拿法を紹介する。これを参考にして毎日15分~30分ほど続けることで、健康増進の効果が期待できる。
1、梳頭洗臉(頭髪をとかし、顔面を擦る)
坐位または仰臥位を取る。
[操作方法]
両手の十本指指先を用いて、前髪の生え際から頭頂・後頭へ、髪の毛をとかすような動作を36回行う。
両手の手掌を用いて、鼻翼の両側から上方へ額にゆき、そのまま両側へ分け、顳(こめかみ)・頬を経て下方へ、顔を洗うような動作を36回行う。
[追加動作]
百会穴の按揉:両手の中指を重ねて頭頂部の百会穴に当て、36回按えながら揉む。
2、揉眼搓耳(眼球を揉み、耳介を擦る)
坐位または仰臥位を取る。
[操作方法]
両手の手根部を同側の眼球に当て、時計回りと反時計回りの方向へそれぞれ36回揉む。
両手の手掌を用いて同側の耳介を覆い、36回擦る。
[追加動作]
睛明穴・太陽穴・四白穴の点揉:睛明穴に拇指の指先、太陽穴に拇指または示指の指先、四白穴に示指の指先を当て、それぞれ36回按えながら揉む。
耳輪の揉擦:両手の拇指を耳介背面に当てて支え、示指の側面を耳介正面に当てて挟みながら、上方から下方へ耳介を揉み、最後に耳垂を下方へ引っ張る。
3、叩大椎(大椎穴を叩く)
坐位を取る。
[操作方法]
拳を握り、その手掌面を用いて、頸項根部の大椎穴において18回軽く叩く。手が届かない場合は手掌(五本指を合わせて手掌の中に空を作る空心掌)を用いる。
4、擦腰暖腎(腰を擦って腎を暖める)
坐位を取る。
[操作方法]
両手の手掌を腰部の両側に当て、上方から下方へ36回擦る。
5、拍胸(胸部を叩く)
仰臥位または坐位を取る。
[操作方法]
一側の手掌(空心掌)を用いて、反対側の胸郭を上方から下方へ6往復6回ずつ計36回軽く叩く。その後、手を変えて同様に36回行う。
[追加動作]
膻中穴の按揉:手根部を胸骨中央の膻中穴に当て、36回按えながら揉む。
6、摩腹揉腹(腹部を摩り、揉む)
仰臥位または坐位を取る。
[操作方法]
両手の手掌を用いて、腹部において、それぞれ時計回りと反時計回りの方向へ、臍を円心にして円形に36回ずつ摩る。
その後、両手の手掌を重ねて(女性は右手を下、男性は左手を下に置く)上腹部の中脘穴に当て、反時計回りの方向に54回、下腹部の関元穴に当てて時計回りの方向に81回揉む。
[追加動作]
推腹:両手の手掌を腹部の両側(腹直筋上)に当て、上方から下方へ36回推し下ろす。その後、両手の手掌を両側の脇肋部に当て、外上方から内下方へ斜めに36回推し下ろす。
7、擦揉膝蓋(膝関節を擦って揉む)
坐位を取って脚を伸ばす。
[操作方法]
両手の手掌を用いて、同側の膝関節の上を覆い、上方から下方へ36回擦り、その後、円形方向に36回揉む。そのまま手掌を用いて36回軽く叩く。
[追加動作]
抓膝蓋骨:両手の拇指及び示指中指の指腹を用いて、膝蓋骨を両端から掴みながら、膝の上下方向(手の前後方向)に36回動かす。
8、推擦小腿(下腿を推して擦る)
坐位または仰臥位(下腿内側面)を取る。
[操作方法]
両手の手掌(特に手根部)を用いて、同側の下腿外側面において、膝の外下方から外踝付近へ36回推し下ろす。手が届かない場合は、左右を交替して前後に行う。
一側の足裏を用いて、反対側の下腿内側面において、膝の内下方から内踝付近へ36回擦る。その後、足を変えて同様に36回行う。
[追加動作]
足三里穴の按揉:拇指指腹を用いるか、或いは両手の拇指を重ねて、膝の外下方の足三里穴に当て、36回按えながら揉む。
9、揉圧太溪(太溪穴を押さえて揉む)
仰臥位または坐位を取る。
[操作方法]
一側の足踵を反対側の内踝後方の太溪穴に当て、36回押さえながら揉む。
10、擦湧泉(湧泉穴を擦る)
坐位を取って膝を曲げる。
[操作方法]
両手の手掌を用いて、両側の足裏を36回擦る。
上記の自己推拿法の各動作は基本的に頭部(上方)から足部(下方)まで行うが、一定の順序に拘る必要は無い。各自の都合や具体的な体位に従って操作し易いように行えば良い。例えば、寝る前に行う際に、頭部から背腰部を経て下肢までの動作を済ましてから、仰向けになって胸部と腹部の動作を最後に完成し、そのまま寝るのが睡眠改善にも効果的である。また回数も時間によって増減できる。