会員通信:NPO法人伝統医学教育会事業活動計画(2022年度)

2022年度は引き続き教育活動の講習会と普及活動の健康支援を進展していきたいと思います。

講習会は「飲食薬膳療法の基礎と応用」と「常見病証の針灸治療実技(Ⅱ期)」の二つを予定しており、いずれも感染防止を徹底して実行する予定です。「飲食薬膳療法の基礎と応用」は、健康ブームで多く取り挙げられた時期もありました。当会ではその話題性を避けて伝統性・科学性・実用性の教育方針に基づき、伝統医学の一学科として12年前から2度と講習を行っていました。今年は4月後半に開講し、慣例の年間通しで計8回(4~7月後半と9~12月前半の日曜日午前中)を予定しています。一方、「常見病証の針灸治療実技」は昨年の講習経験を活かし、新たに針灸臨床において常見される6病証を取り挙げ、同じく実用性に重点を置いて実施します。今回も少数人数の設定で、5月後半に開講し、上記「飲食薬膳療法の基礎と応用」講習会の同日午後に行い、計6回で11月前半に終了する予定です。

健康支援は主に会員の皆様のために行っていきます。ホームページを通じて健康情報を発信するほか、臨床センターにて健康養生法の相談や指導なども催しております。ほかに、状況が可能な範囲で会員限定の特別講座も実施する予定です。

会員通信:NPO法人伝統医学教育会事業活動報告(2021年度)

1、講習会

2021年度の講習会は、6月から12月まで「常見病証の針灸治療実技」を行いました。本講習は梅田会員の希望と協力により実現し、感染防止対策により少数人数の設定で、針灸学校の卒業生・高学年生及び当会の鍼灸師を主として計6名が参加ししが参加されんで汁が淡い赤色になってから、枸杞とました。

針灸治療学(針灸学校では「東洋医学臨床論」に当たる)は実用的な臨床技能を育成するための最も実践的な学科とされています。日本では、東洋科目の西洋化傾向で伝統医学の病証に対して基本概念の認識がはっきりせず、また総合的な辨別分析の考え方も欠けているため、辨証論治の臨床応用は未だに広く普及されていません。更に学校教育では実践に接した臨床実習が不足しているため、臨床現場に入ると患者さんに対応し難く感じる方が多いようです。この現状を踏まえ、本講習は伝統医学教育の実用性に重点を置き、針灸臨床において最も常見される6病証を代表例として取り挙げ、その基本概念を明確にし、病因病機と辨証分型を解明し、治療原則と選穴処方を解説したうえ、具体的な診察技能及び刺針実技を指導しながら、技能練習を行ないました。参加者の皆さんは全て針灸医学の有志者で勉学意志が強く、講習では常に病証に対する認識を充分に理解したうえ、実技も積極的に練習しました。また講習内容を超えた関連する知識と経験も交流でき、明らかに臨床実践の技術能力が高まりました。

2、健康支援

講習会のほか、会員の健康支援活動も引き続き行っています。伝統医学教育会ホームページの会員専用ページにて健康知識を定期的に更新していますので、皆様の健康増進の参考にして頂きたいです。

また、コロナ禍で既に2年ほど会員の年末懇親会を行うことができませんでした。今年3月に感染情勢が安定して皆様との懇親を深めたいと期待していましたが、非常に残念ながら蔓延防止措置の期間延長により開催する事を断念しました。

その代わりとして、長くご支援下さった会員の皆様に感謝の気持ちを込めて健康支援のため、伝統医学的な薬茶を提案しました。事務局で様々な調査、そして試飲を重ねた結果、5種類の薬茶の処方と見本を送付しました。比較的容易に入手できる材料を用いて手頃に作成できるように工夫しましたので、長期に飲用し続けることで健康増進・病症改善の効果を期待しております。今回は先ず在宅時間増加の現状と季節変化の特徴に合わせて健康維持のための薬茶を考案しましたが、今後も季節の変化や社会の情勢に合わせて薬茶処方をお送りします。

健康知識:常に擦ると長寿に繋がる身体の九か所(後編)

5、手掌を擦って強心健脳

両肘を下げて両手の十本指を伸ばして交差し擦る。一度に1分間或いは200回ほど続けて速やかに行うか、毎日の起床後と就寝前に20~30分間ほどゆっくりと行う。

手には生体の臓腑器官と緊密に連係している腧穴が沢山位置しており、表裏関係にある陰陽経脈が手指において交接している。特に手少陰心経と手太陰肺経が循行しているため、手を擦ることで、手掌に循行する経脈を疏通して腧穴に刺激を与えて全身の臓腑を調節し、とりわけ心肺に有益である。研究によると、手を擦る動作は走行より激しくないが、1分間だけ速く擦ることで、明らかに心拍を増加させて汗(心の液であるが、肺が皮毛を調節する)をかく反応が見られ、心肺機能を高める。また人類の手は非常に進化して巧緻運動に適し、手の筋肉と関節の運動は脳の調節に従っているため、手を擦ることは手指の敏捷度を高めるほか、手と脳の反射を強化して健脳作用も果たす。

6、胸郭を擦って理気活血

両手を重ねて手根部を胸骨中央の膻中穴(両側乳頭の中点)に軽く当て、円を描くように擦る。その後、両側の手掌をそれぞれ脇肋に軽く当て、同じく円を描くように擦る。各部位にそれぞれ54回ほど擦り、1日に何度も行う。

伝統医学的には「肺は気を主る」、「心は血脈を主る」とされ、胸は心肺二臓を納め、気血との関係が特に密接である。普段、精神不安で情緒が激動する時に、無意識で胸を擦ったり叩いたりして気分をスッキリし落ち着くことが多いが、実際この胸に対する動作は怒りによる逆気や鬱気を治まるためだけではなく、同時に心肺機能を高めて寛胸理気・調暢気血の効果が得、これによって情緒を調節して精神を安定させる。更に長期に続けていくことにより、胸に循行する任脈、肝・脾・腎の足三陰経、そして足陽明胃経など経絡に刺激を与え、養心益肺・活血通脈・老衰対抗などの作用があり、健康増進で疾病予防の役割を果たす。

7、臍腹を擦って健脾和胃

両側の手掌を交互に用いて臍を中心にして円を描くように腹壁を擦り、それぞれ時計回り方向と反時計回り方向に36回か54回ほど行う。その後、両手を温かくなるまで擦ってから重ねて臍中央に当て(男性には左手を下に、女性には右手を下に置く)円を描くように腹壁を揉み、それぞれ時計回り方向と反時計回り方向に36回か54回ほど行う。

伝統医学的には、「脾は運化を主る」、「脾胃は気血生化の源と為り」とされ、腹は脾に属し、「気機の枢」中焦に当たり、生命の後天根本である脾胃の所在である。脾胃不調で脾が健運を失って胃が和降を失うと、気血が不足して身体虚弱になるか、鬱滞させて肥満になる。また臍を人間の先天的な供養通路とし、生体を補養する任脈・衝脈・帯脈などが近くに順行している。腹を擦ることは、健脾和胃の効能を持ち、飲食物の消化吸収と気血の運化などを促進し、生体は充足な栄養を得られ、気血積滞による肥満も解消させ、健康強壮・養生長寿に繋がる。また毎晩の就寝前に行うと、腹筋への刺激により腹部の自律神経節及び血液循環及び・リンパ循環を調節することもでき精神状態を整えて睡眠を改善する。

8、腰骶を擦って補腎壮腰

両手を温かくなるまで擦ってから、腰両側の腰眼穴(第4腰椎棘突起両側3~4寸陥凹部)に当て、暫く温めてから下方へ尾骨端の長強穴(尾骨端と肛門との中点)まで、上下方向に54回か81回ほど擦る。1日に朝晩2回行う。

また風寒や寒湿や過労による腰痛の場合は特に腰眼穴の按揉をお勧めする。両手の拇指と四指を開き、四指を前方に、拇指を後方に両側から腰に当て、拇指がほぼ腰眼穴に当たり、ゆっくりと50~100回按揉する。拇指の代わりに両拳を用いても良い。

伝統医学的には「腰は腎の府なり」とされ、腎は「先天の本」として精を蔵している。過労や加齢に伴って腎気が消耗されて虚弱になり、腰脊冷痛・筋骨変形などの病症が多く見られる。腰骶を擦ることで、局所の毛細血管を拡張させて腰筋を強化すると同時に、腎陽を温煦させて腎精を固摂させ、養生長寿の役割を果たす。腰眼穴は、腰を環状に巡って縦行する帯脈に位置しており、帯脈は諸経脈を制約してそれらの連係を強化する作用を持ち、腰脊疼痛・腹部脹満などの病候を主るため、腰眼穴の按揉は帯脈を疏通させて気血を調暢させ、補腎固精・強壮腰脊の効果がある。

9、足底を擦って強身長寿

毎日の就寝前と起床後に、両手を温かくなるまで擦ってから、一側の手で同側の足背を支え、反対側の手を用いて足裏を前後に36回か72回ほど擦り、この時、気持ちよく感じる中等度の力で行うと足が温かくなる。夜には40℃くらいのお湯で足浴し、脚が赤く手が温かくなってから行うと、もっと効果的である。

老人の足底が乾燥する場合はオイルを数滴垂らしてから擦る。また足が怠く痛い場合は、焼酎などの蒸留酒を少し濡らしてから行うと活血止痛の効果が高まる。足底を擦った後、直ぐに床を踏むや歩くことをしないように、15分ほど休んでから動く。

人体を樹木に喩えると、足は木の根に当たる。木の根が枯れると、枝も葉も枯れて落ちてしまう。伝統医学的には、足は肝・脾・腎の三経脈が循行し始まる所として、生体の根本とされ、特に足心と足根は「先天の本」である腎に属する。また足は「第二の心臓」と言われるように、足の末梢循環は全身の循環に大きく関連している。足底を擦ることで、局所に活血通絡の効果を果たすほか、補腎固精の作用を持つ上、養心安神・健脾益気の効能もある。長期に続けていくと血圧安定・不眠改善、そして人体の免疫強化にも繋がる。

健康知識:常に擦ると長寿に繋がる身体の九か所

現代社会では日常の生活や仕事で心身疲労が溜まり易い。特に、ここ二年間はコロナ禍に影響されて精神的にストレスが大いに溜まっているほか、普段必要な運動も取り入れられず、ディスクワークなどで体内の気血循行が余計に弱まってくるため、様々な不快感や遅鈍化が現れる。

日頃より両手で身体の各部位を擦ることで、調気活血・通利官竅・舒筋通絡の効能を果たすほか、先天と後天の本として養生長寿に密接に関連する肺・脾・腎の機能を高めて疾病予防と延年益寿の目的を果たす。ここでは効果的な九か所を紹介し、常に擦って健康の維持と増進に役立てて欲しい。

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健康知識:常に擦ると長寿に繋がる身体の九か所(前篇)

現代社会では日常の生活や仕事で心身疲労が溜まり易い。特に、ここ二年間はコロナ禍に影響されて精神的にストレスが大いに溜まっているほか、普段必要な運動も取り入れられず、ディスクワークなどで体内の気血循行が余計に弱まってくるため、様々な不快感や遅鈍化が現れる。

日頃より両手で身体の各部位を擦ることで、調気活血・通利官竅・舒筋通絡の効能を果たすほか、先天と後天の本として養生長寿に密接に関連する肺・脾・腎の機能を高めて疾病予防と延年益寿の目的を果たす。ここでは効果的な九か所を紹介し、常に擦って健康の維持と増進に役立てて欲しい。

1、頭髪を擦って益腎黒髪

毎日の就寝前と起床後に、櫛の代わりに十本指を用いて髪の毛を梳かす。前頭と側頭の髪際から上方へ頭頂の中央まで、繰り返して数十回から数百回ほど行い、最後に頭髪を整える。

この方法は古代から「引鬢髪」や「流通」と伝えられて重要な健康養生法とされている。伝統医学的には「髪は血の余と為り」、「腎は骨を主り、髄を生じ、其の華は髪に在り」とされ、気血が旺盛で腎気が充足すれば、髪の毛も濃密で黒い。現代では若者にも年齢に相応しくなく脱毛や白髪が多く現れるが、いずれも気血が不足して腎気が虚弱する病理変化である。頭髪を擦ることで、清陽上昇と気血調和を促し、これによって腎気も強くなり、骨が強健で髄が充満され、脳髄充足で健脳作用を果たし、髪の毛もしっかりと丈夫になって白髪を無くす。

2、顔面を擦って醒神栄顔

両手を温かくなるまで擦ってから、目を閉じて顔を洗うような動作で擦る。顔面下方の下顎から上方へ前頭まで、3~5分間ほど顔が熱く感じるまで繰り返し、力は軽くから徐々に強くする。1日に2回ほど行う。皮膚乾燥の方は擦傷になる恐れがあるため、動作の力度と速度に気を付ける。

また疲労時は特に前頭を擦ることをお勧めする。両手の四指を合わせて手指の手掌面を前頭の正中から左右両側へ側頭にかけて、一方方向に36回か54回ほど擦る。これによって清醒神志の効能をもたらし、また皺取りの効果もある。顔面が気持よくなり目も明るく感じ、気分が爽やかになるため、毎朝醒めてから行うのが良い。

喜怒哀楽の神志活動は先ず顔面に表し、また身体の健康状態も顔面から現れている。伝統医学的には「心は神志と血脈を主り、其の華は面に在り」、「心は五臓六腑の大主と為り」とされており、精神と肉体の健康状態はいずれも心の制御に頼り、顔面は心と密接に連係している。顔面を擦ることで、気血の循行を促進させ、情緒の緊張も緩和させ、これによって心気を調整して精神が優れると共に、顔面の張りを高めて皺を取って若返りの効果も期待できる。

3、鼻翼を擦って利肺通鼻

鼻の両側にクリームを塗り付け、次指または中指の指腹を用いて鼻翼から鼻根にかけて上下方向に100~200回ほど擦る。その後、鼻翼中点外方で鼻唇溝にある迎香穴、及びその上方で鼻唇溝上端にある鼻通穴(上迎香穴)をそれぞれ60回ほど揉む。力は中等度にして皮膚の擦傷を避け、また行ってから少し多めに水分を取ることも助力となる。

伝統医学的には「肺は気を主り、呼吸を司る」、「鼻に開竅する」とされ、肺は一身の気を主リ、鼻は肺の開竅で自然界からの清気を取り込む重要な玄関口であり、同時に邪気が体内に侵入する入口でもある。鼻に充足な気血が巡ると、呼吸機能も健全に働くし、外邪の侵襲も防御できる。気血循行の不調により、嚏や鼻閉(鼻詰まり)や鼻汁(鼻水)が止まらず、更に鼻炎などが現れ、呼吸に支障を来たす。鼻翼を擦ることで、気血運行を促進し、効果的に諸症状を緩解でき、鼻炎や蓄膿症も改善させる。毎日1~2回で長期に続けていくと、肺気を通利することによって呼吸系の免疫機能を強化する予防と養生の作用を果たす。

 4、耳介を擦って補腎聡耳

両手を温かくなるまで擦ってから、手掌を用いて耳介全体を揉みながら擦る。その後、拇指を耳介の後面に当てて、次指中指を用いて耳輪(耳介の外周でまくれた軟骨部分)を上方から下方へ耳垂(耳たぶ)まで揉み下ろし、最後に耳垂を引っ張る。それぞれ36回か81回ほど行うと耳介全体が温かく感じる。

また静養気功法の「鳴天鼓」動作をお勧めする。両側の手掌を用いて耳介全体に当てて外耳道開口をしっかり塞ぎ、次指中指環指の指先で後頭を18回か36回ほど軽く叩く、音は太鼓を敲くようである。耳介を深く按えたまま暫く経ってから、手掌を耳介から速やかに離す。この鳴天鼓の動作を数回ほど繰り返す。

耳介には生体の各部に繋がる腧穴が密布しており、体内に病理変化が発生すると、往々にして耳介に現れてくる。伝統医学的には「腎は耳に開竅する」とされ、耳は先天の本である腎気に密接に関連している。耳介を擦ることで、腎気を補って養生長寿の効果が果たせる。また耳輪の刺激により毛細血管を充満させて末梢循環を改善させるし、耳輪にある耳穴は清熱の効能を以て逆上せや発熱にも効果的である。「鳴天鼓」の動作を長期に続けていくと、醒脳清竅・記憶増進の効果を果たし、また高血圧の方には血管拡張で血圧安定の作用がある。

(つづき)